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特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


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 俺が取り出し、掲げて見せたその書類。

 正式に言えば、『能力保持資格者認定証(仮)』となる代物である。


 他の国だとまた違うらしいのだが、この日本では『能力』に覚醒した場合、国に申請する事が法で決められている。

 これは、不意に『能力』を使ってしまい他人を傷付けたり、自身の『能力』に付いて理解不足からくる事故を防ぐ為の施策であり、決して国が強力な『能力』持ちを管理する為の施策では無い、と建前上はされているが、重要なのはソコでは無い。



 この法には、無許可での『能力』行使を厳罰に処する、との記述が盛り込まれているのだ。



 通常、この手の法案は、基本的人権に配慮する形で『任意で〜』だとかの記述が入っていたり、特に罰則を明文化していなかったり、別の箇所にて罰則に付いて言及していたり、と言った具合に、ある程度濁すのがお決まりだった。

 現に、この世界に魔力が満ち、『能力』を得る者が増え始めた頃に出来た法案では、その様な記述となっていた。


 …………だが、とある段階から、現在の記述へと変更される事になる。

 国会により、法案を変更してまでその文が追加されるのに至ったのは、案の定やはり原因があった。



 ────そう、最早説明は不要かも知れないが、未届けの『能力』持ちが、大事件を発生させたのだ。



 詳細は、不明。

 と言うよりも、政府が厳重に情報統制を敷き、徹底してネットワークにも監視を拡げていた為に、当時の人間ですら、当事者と政府関係者以外は結局何が起きたのか、を詳しく知る者は居ないし、知れる者も今は居ない。何なら、当時の被害者にしても、生き残って当時の状況を知っている、と言う者は時折現れるが詳細を語る前に大体が消えてしまう。

 だが、取り敢えず未登録にして未届けの『能力』持ちが盛大にやらかし、当時のヒーロー達が何とかどうにかした、と言う事だけは民間にも伝わって来ている事柄だ。


 そして、それらを受け、満場一致で通された法案改正案。

 コレにより、無許可・未登録の状態での『能力』行使は、例えソレが緊急時であったとしても厳重に禁止され、破れば厳罰に処される、と決まった訳だ。

 故に、普通は覚醒した、と分かればこうして登録しておいた方が無難なので、俺を含めたほぼ全員が自らの意志かそうでないかは置いておくとして、登録している、と言う訳だ。


 まぁ、とは言え、別段悪い事ばかりでは無い。

 いざという時、例えば大規模な複数の侵略組織による攻勢が掛けられた時なんかは強制的に収集が掛けられたりもするみたいだが、強制的に何かされるなんて事は、それくらいのモノである。

 どちらかというと、ソレを持っているヤツに下手なちょっかいを掛けるとどうなるか分かってるよね?と周囲に知らしめる事に役立つので、見た目が弱そうでも絡まれたりする事が減る、らしい。

 尤も、大昔のマンガみたいに、割りと倫理観絶滅した世紀末的思考(俺の方が強い=俺の方が偉い=偉ければ何やっても良い)な連中も、目の前のお猿さん(笑)共を含めて結構な数居る為に、効果はイマイチな場合も多々あるみたいだけど。


 因みに、俺が掲げている書類が何故(仮)と付いているか、と言えば、まだ発行されたてだから。

 本来であれば免許証みたいに本人確認も出来る身分証としても使えるカードになるのだが、流石に今朝認定されて直ぐ様、と言う訳には行かず、認定員である真名目先生の権限で出せる証明書類の形で出して貰っている、と言う訳なのだ。

 別段、脅して無理矢理に出させたから紙ペラ1枚、と言う訳では無い。ホントウダヨ?


 それだけの権威がある書類を、裂埼の前でヒラヒラと舞わせて見せる。

 同じモノを以前受け取り、現在はカードの形で所持しているハズの彼女にとって、見慣れたソレは決して偽物では無い、と言えてしまうモノとなっていた。


 衝撃により、沈黙する裂埼。

 しかし、周囲はそんな彼女の状態に気を配ってくれる事が無いままに、目にした光景に驚き、ざわめいて行く。

 特に、俺の至近距離で目にした友人達だとか。



「…………ちょ、おぉい!?

 おま、お前!?!?!?」


「おま、おまっ!?

 ふざけんなゴラァ!?!?」


「あぁ、だから彼女にも言わずに、って事かい?

 でも、だとしても、俺達に位は言って欲しかったな?」


「わぁ、ソレ本物じゃん!

 アタシ、前ソレと同じの持ってたもん!」



 木宮と円山が半ギレで俺に絡み付き、水連が納得の声を挙げ、炎上寺が本物だと保証する。

 そんな一連の流れを、それまで俺の事を『無能』なのだから何をしても良い、と思って接していた連中が、顔を青ざめさせながら呆然と眺めていた。



「ちょ、悪かったって!

 ちゃんと言うつもりだったから!

 昼休みとか、時間がある時にキチンと説明する予定だったんだって!!」


「だからって、俺達にまでだんまりって事は無いだろうか!

 で?どんな事が出来るんだ??」


「どうせ、アレだけ魔力にも『能力』にも渇望してたお前なんだから、試して無い訳ないよな?

 等級とかはどうなったんだ?」


「あぁ、ハイグレードからのスタートだってさ。

 まぁ、名前の通りに汎用性が高いから、ってのが理由みたいだけどな。

 それと、一応試すだけは試したが、あまり大っぴらに言うんじゃないぞ?

 慣例で見逃されているだけで、本当は一応アウトらしいんだかな?」


「えぇ!?ハイグレードからなの!?

 アタシ、またミドルなんだけど!?

 いきなり追い抜かれた!?!?」


「まぁまぁ、落ち着いて。

 ミキは『能力』の殺傷力が高すぎて制御が難しいから、まだミドルなんでしょう?

 なら、頑張れば直ぐにハイグレードまで行けるって。

 俺も訓練手伝うから、一緒に頑張ろう?」


「うん、頑張りゅ♡」



 因みに、今出てきた『グレード』と言う単語は、『能力』持ちの等級を指す単語だ。

 一応、国家公認の能力値を示す単位であり、如何にその能力を使いこなせているか、どれだけの性能があるのか、を示す1つの基準となっていて、『ロー』『ミドル』『ハイ』『ハイエンド』の4種類に分類不能な『エクストラ』を加えた5種類がある。


 …………が、別段コレ、等級が高ければ強い、だとか凄い、だとかの意味では無いし、『エクストラ』が至高、と言う訳でも無い。

 先程も述べた通りに、コレはあくまで『如何に能力を使いこなせているか』の基準値であって、強力な『能力』であるか否か、を判定している訳では無いのだ。


 だから、割りとあるあるな話なのだが、『ハイエンド』が決闘なんかで『ロー』に負ける、だなんて話は珍しい事では無い。

 それに、『エクストラ』はあくまで規格外・分類不能な状態のヤツに付けられるモノで、良くあるのは特定の状況下だと抜群に制御力が高まるが、それ以外は点でダメ、もしくはその逆、とかだ。


 まぁ、一応『どんな能力なのか』も選考には含まれているらしいので、俺の様に汎用性に優れているモノだったり、強力なモノだったりだと高くはなりやすい。

 なりやすいのだが、同時に高い制御力が求められる為に、ミスって其処ら一帯纏めてドカンッ!!なんてやらかした日には、等級を下げられるどころか下手すれば認定証没収か、最悪収監される事すらもあり得る。


 まぁ、俺に限って言えば有り得ないけどね?

 伊達に死と隣り合わせな環境で、数年間誰からも援護を貰えずに孤軍奮闘し続けた訳では無いからな!(血涙)


 なんて事を考えていたからか、目の前にいた裂埼の表情が目に入って居なかった。

 故に、と言う訳では無いのだが、それから彼女が口にする言葉を先読みする事が出来ておらず、我ながら珍しく驚愕する事となるのであった。




「…………決闘よ!

 アンタ、ウチと決闘しなさい!

 勝ったほうが、負けた方を好きにする!

 条件は、それだけよ!!!」




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