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特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


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取り敢えず説明回その2

 


「…………さて、脇道に逸れたけど、話を戻そうかぁ。

 さっきも言った通り、我々は最初のスーツを開発し、最初期の『戦隊ヒーロー』小隊が結成されるまで、良くて現状維持しか出来なかったぁ。

 それは、何故だろうかぁ?」


「はいっ!

 それは、私達がそれまで『魔力』を認識する事が出来ずにいたから、です!」



 話を戻す、と言っていた教師が、早速質問を放った。

 ソレに対して、先程までは困惑した様子で沈黙していたが、教科書に書いてある事ならば回答できる!と委員長タイプの真面目な女子が、手を挙げて返答する。



「うぅん、一応正解ぃ。

 正確には、それまでも一応は『観測』も『知覚』も『認識』も出来ていたけどぉ、『利用』が出来なかった、って感じだねぇ」



 ソコで一旦言葉を切った教師は、黒板に手早く何かを書き始める。

 ほんの十数秒程度で書き上げられたソレは、歪な平行四辺形に似た『ナニカ』に見えた。



「…………まぁ、こうして平面に書くとぉ、結構変に見えるけど、実際にコイツ、現在でも仮称しか付いていない『凝固体魔力結晶』が、例の侵略組織が開いた空間の割れ目、通常『ゲート』の近くで発見された事が、事態の流れを変えた訳だけどぉ。

 それまでは、我々は『魔力』を活用する事も出来ず、ただただ科学のみで対抗し、部分的に拮抗させながら押し込まれるしか出来て居なかったのさぁ」



 当時を知るらしい教師は、遠い目をして何かを見詰める。

 喪われたモノなのか、それとも過去の栄光か、それは本人のみぞ知る所であった。



「さて、そうして『凝固体魔力結晶』、まぁ長いから大体は『魔力結晶』と呼ばれるソレを発見・回収した所から、我々の反撃が始まった訳だぁ。

 ソイツらを核にすると同時に動力炉として活用した特殊スーツを着用することで、それまで連中しか使えなかった『魔力』と『魔術』を行使する事が可能となり、同時にその感覚を周囲の者へと伝える事も出来る様になった訳だねぇ。

 それにより、多少の得手不得手、それとその先に在る『能力』の有無により別れる事にはなれども、基本的に理論上は誰しもが扱えるモノだと理解され、現在に至るって訳だよぉ。

 この辺り、偶にテストに出るから覚えておいてねぇ」



 その言葉に反応する形で、皆がノートを開き、メモを取る。

 特に板書はしないスタイルである為か、皆『先に言えよ!』と言いたげな雰囲気ながらも、特に文句を言う事無くペンを走らせて行く。



「んでぇ、歴史に関してはこんな感じだけどぉ、コレに絡めて『魔力とは何ぞや?』って問題が出る事が多いから、一緒に解説しておくねぇ。

 我々が普段振るっている『魔力』はぁ、普遍的なモノとして認識される切っ掛けこそ例のスーツの開発が最初であったけどぉ、オカルト史って形でかなり前から存在自体は確認されていたみたいなんだよねぇ。

『マナ』『イド』『気』『魔力』『精神力』

 呼び方は国や時代で色々とあるけどぉ、効果や用法をみる限りだと、指すものは基本的に一緒だねぇ。

 まぁ、今ではこれらの不思議エネルギーを総称して『魔力』と呼び、それらを使って発生させる、科学では起こせない、または発生自体は可能だがソレに必要なプロセスを経ずに発生させた現象を、総じて『魔術』と呼ぶ訳だねぇ」



 ソコで一旦言葉を切り、何やら意味深な視線を俺へと向けて来る。

 ソレに対して首を傾げていると、何やら苦いものでも噛み潰した様な表情を浮かべながら視線を外し、再び口を開く。



「…………そうして、普遍的なモノとして『魔力』と『魔術』が認識された訳だけどぉ、何事にも例外、ってモノが有るよねぇ。

 ソレが、ズバリ『能力』さぁ。

『魔力』を用いている事は、間違い無い。

 だけど、『魔術』を使って事象を引き起こしている、と言う訳ではどうやら無い。

 なら、コレはなんだ?となったのが、当時初めて見付かった『能力』持ちの人に対する評価、だねぇ。

 まぁ、当時は『魔術』は万能の力、だとか思われていたみたいだけどぉ、今ではある程度の法則に従い事象を発生させているだけ、だと分かっているからねぇ。

 定義的には、『魔術では再現出来ない・再現が限り無く難しく1代で完結する特殊能力』を持っている事、ってなっているけど、大体は『魔術』の延長線上に在るモノが多く、時折突拍子も無い『能力』が飛び出して来る事もあるし、『能力』に覚醒するタイミングも割りとバラバラだから、君達もその辺り良く考えておいた方が良い、かもねぇ」



 そう言って、授業を締め括る教師。

 それと同時にチャイムが鳴り、1限目が終わりを迎えた事を周囲に報せるのであった……。







 ******






 授業が終わり、教師が頭を光らせながら教室を退出したその瞬間。

 左右の木宮と円山から、だけでなく、前後からも囲まれ、グイグイと迫られる事になる。



「さぁ、話して貰おうか!

 あのハゲを黙らせた、例の紙の正体を!」


「そうだそうだ!

 さっきの約束、忘れたとは言わせないぞ!」


「俺は前の席だったから見てなかったが、それでもあのハゲに何か見せたのは見えてたからな。

 説明する気があるのなら、俺が聞いても良いだろう?」


「ほらほら、早くゲロっちゃいなって〜。

 でないと、アタシの『能力』でちょ〜っと炙って吐いて貰う事になっちゃうけど〜?」


「…………分かった、分かった。

 説明するから、木宮と円山は落ち着け。

 それと、『炎上寺(えんじょうじ)』。

 お前の冗談は冗談で済まなくなるし、お前の『能力』で炙られたら本当に燃える事になるんだから、止めておけ。

 『水連(すいれん)』も、早く止めろよ。

 一応、お前の彼女だろう?」



 こうして顔を見て、声を聞いて、漸く友人達の名前を思い出す。

 俺の肩に手を掛けて覗き込んで来ているのは炎上寺で、前から完璧イケメンな雰囲気を醸し出しているのが水連。


 炎上寺は『能力』持ちであり、その詳細は『燃焼』。

 火によって焼くだとか、対象に炎を発生させる、だとかでは無く、『燃焼』と言う反応そのものを操る事が出来る、らしい。

 で、なんでそんな『能力』持ちがここまで『無能』な俺に気安いかと言うと、彼女と交際している水連が俺の友人で、その繋がりで会話する様になって、と言うのが切っ掛けだ。

 因みに、『能力』持ちである事がステータスになる現代に於いて、『能力』持ちでは無い水連と交際した理由は、ズバリ顔が好みだったから、だそうな。


 そんな彼らへと、詰め寄られるがままに何故遅れて来たのか、を説明する。

 勿論、本当の事を話す訳では無い。

 唐突に異世界に召喚(拉致)されて死ぬ目に遭いながら戦っていたら『能力』が覚醒しました、だなんて、今時安っぽい三文小説でも扱わない題材なのだから、信じてもらえるハズも無し、と言うやつだ。


 なので、取り敢えず『能力』が覚醒した、とは直接言わず、なんだが魔力が使える様になったみたい、と伝えて反応を見る。

 すると、やはりと言うか何と言うか、皆驚いた様子を見せていた


 それもそうだ。

 何せ、土日の休みに入るまでは、『無能』として嫌な意味で広く知られてしまう状態となっていた俺が、突然に魔力に目覚める形となったのだ。

 しかも、血統的なアレコレを加味した上で、皮肉も込めて『最後の『無能』』だとか呼んでくれる連中もおり、ソイツらは学術的な意味合いでのサンプル消失に愕然としている様子だった。



「…………成る程、だから今日マナ先来なかったんだ」


「…………あ、あぁ。

 そう言えば、真名目先生って、そう言うのが見える『能力』の持ち主、だったっけ?」


「そうだな。

 確か、『能力』の検定も行ってたハズだ。

 …………でも、今の話を聞く限りだと、主水お前、1人で行ったみたいだけど、大丈夫なのか?」


「あ?何が??」


「何が、ってアンタ。

 アレだけ散々、アタシ等に零しておいて、今更忘れた、なんて言うつも!?」



 皆が納得した様子を見せる中、水連が不穏なセリフを口にする。

 ソレに釣られる形で、炎上寺も変な事を口走るが、その語尾を遮る形で荒々しく扉が開かれ、教室内の視線がそちらへと集中する事となる。


 気配で既に察していた俺も、慌てる事無くそちらへと視線を向ける。

 すると、とある人影が視界に飛び込んで来ると同時に、俺の脳裏に鋭く頭痛が走り、何故か今朝の嫌な予感を強く感じる様になるのであった……。




最近渡って無い夜を知らないせいか書き溜めがががが……

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