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特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


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 Side︰雷斧



「ヨシッ!

 じゃあ、手合わせ開始だ!!」



 そう宣言すると同時に、オレは弟であるキミヒトとの距離を詰める。

 アイツ、自称とは言え、漫画やアニメなんかに登場する『錬金術師』が出来る事は大体出来た、とか言っていたからな。

 本気で考えるなら、やっぱり距離は開けておくよりかは詰めておいた方が何かとやりやすいだろう。


 普段からココを利用しているオレとは違い、アイツはココは初めてだ。

 だから、床だとかに何かしらの仕掛けをしておく、だなんて事は出来ないだろう。

 まぁ、偶に錬金術の遠隔起動、だとか、空間に陣を固定しておいて、だとかの、普通はそんなの無理!って事をやらかすキャラとか居たりもするし、遠距離攻撃は来るモノ、罠の類いも有る前提で組み立てた方が良いなコレは。


 と、決めた時には、既に射程距離。

 改造手術で諸々弄られ、思考速度すらも常人のソレよりは上昇している俺にとって、本気になれば10メートル程度は1秒掛からないし、その間に作戦を建てる事も可能だ。

 流石に、ここまでの反応速度はキミヒトのヤツも持って無いだろう。多分。


 だから、と言う訳ではネェが、加速と同時に振りかぶっていた拳の勢いを殺し、手加減しながら胴体へと叩き込む!…………と考えた0.1秒後、俺は今出せる全力で拳を繰り出していた。

 特に殺意や悪意の類いがあった訳では無いし、悪戯心が顔を出した訳でも、手合わせする以上手加減は〜とかの熱血論が迸った訳でもネェ。

 ただ単に、オレの闘争本能が、そのままだと殺される、とオレに訴え掛けて来たから、だ。


 何故かは、知らネェ。

 どうしてか、も分からネェ。

 が、この本能的な勘は、良く当たる。

 オレが今まで勝ち続け、同世代の中でエース張らせて貰っている理由の1つは、伊達じゃネェって事だ。

 その勘が、本能が、オレの耳元で囁いて来やがる。

 本気でヤらないと、あっと言う間に潰されて終わるぞ、と。


 だから、本気で仕掛けた。

 一応、殺しはしない程度に加減して、だが。

 確実に、入った、と思ったンだが……その直前で、床が立ち上がりやがった。


 至近に居たオレの目からは、そう見えた。

 突然床が立ち上がり、オレへと目掛けて伸び上がって来やがったンだ。

 キミヒトのヤツが、確実に何かやらかしやがったのは、間違いネェ。

 が、何をされたのかの方はサッパリだった。


 だから、って訳じゃネェが、その場は全力で立ち止まる事にした。

 大方、オレを足止めする為のナニカ、って事だったのだろうから、当然次の手が用意されている事だろう。

 が、オレの速度を以てすれば、アイツが次の手を繰り出して来てからでも十分に間に合わせられる。

 なら、油断を誘う事も含めて考えれば、オレがこの場で一旦止まるのが最善の選択肢だ、と思っていた。


 だが、オレの思考速度を上回る速度とタイミングで、アイツの手が閃き、銀色の刃がオレの顔を目掛けて迫って来た。

 急ブレーキを掛け、体勢が崩れると同時に振るわれた刃。

 確実に、オレが一旦足を止めると分かっていないと繰り出せない、空振れば絶大な隙を晒す事になるハズの一撃。

 ソレを、躊躇する事無く、受ければ死ぬ軌道で放って来た、ダト!?


 咄嗟に、床へと目掛けて身体を投げ出す。

 流石に、態勢を立て直す為に一拍使っていたら、冗談抜きに殺されるルートで振るわれた刃を回避しネェとならなくなったから、仕方無く恥も外聞も投げ捨てて、床に転がって距離を取る。

 直ぐに立ち上がり、油断しないで視線をアイツから逸らさずに構える。

 が、ソレと同時に頬に違和感と、床に何かが滴る音がオレの耳に届いて来る。


 手を頬にヤれば、そこには紅く染まる指先。

 となると、さっきの攻撃、チャンと回避出来て無かった、って事になるんじゃネェか。

 しかも、音の場所とかから考えると、結構派手に血ィ出てるって事になんネェか、コリャ?


 慌てて視線をアイツに戻す。

 すると、それまでは何も持って無かったハズのアイツの手に、銀色に染まる二振りの短剣が握られていた。

 長さはそれなり、刃渡り自体もまァ普通。

 造りも、そこまで精巧な、って訳じゃネェ、ただただ刃として用いられる事を前提にした、そんな刃。

 …………だが、オレはその短剣に見覚えが有る。

 アリャ、昨日の夜にオレに向かって放って来たヤツじゃネェか?


 ソレが、アイツの手に左右で二振り。

 しかも、左に握られてる方の刃が真っ赤に染まってる、って事は、もしかしなくてもオレを切り裂いたのはアレって事になるのか?

 マジかよアイツ!?


 アレが飾りのモノでは無く、実際に血を吸ったモノである、とは持っただけでも理解出来た。

 が、あの野郎、身内相手に得物を、しかも刃物の類いを振り回せるとか、向こうでどんな経験積んで来やがったんだ!?


 なんて内心でオレが驚愕していると、アイツは両手に持っていた短剣の持ち方を僅かに変えると、特に躊躇した様子も見せずに投げ付けて来やがった!?

 しかも、狙いは胸と足?

 どっちに受けても、コレからの運びに支障が出るし、両方避けようとすれば大きく動かざるを得ないから隙がデカくなりやがる!?


 仕方無しに、蹴りと拳とで飛んできた短剣を叩き落とすと、今度はアイツの方から接近してきやがった!?

 しかも、ついさっき投げ付けて来やがったばかりの短剣と、ソックリなモノを両手にまた持ってコッチの急所を抉ろうと振るって来やがる!?



「オイ、テメェ!?

 マジで殺しに来てやがるじゃネェかよ!?」


「そうしろ、と言ったのはそちらだろう?

 望み通りにしてやっているのだから、何の不満が有ると言うつもりだ?」



 振るわれる刃に反応しつつ、思わず言葉がオレの口から飛び出す。

 が、ソレに帰ってきた言葉には、少し前まで話していた時に感じられた親しみや温かさ、と言ったモノが感じられない、冷たく無機質なモノに変わっていやがった。

 …………思わず、オレの背筋に冷たいモノが滑り落ちる感覚が張り付いて来やがった。

 コレは、今までも何度か経験した、侵略組織の幹部級の連中を相手にした時に、オレに死ぬ可能性が有る時に現れる、一種の予感だった。


 コイツ、ガチでオレの事殺しに来てやがるな!?

 足元から槍衾が迫り、急所へと銀閃が走る最中、オレが出した結論はソレだった。

 キミヒトの野郎、戦闘中はスイッチを切り替えられる類いのヤツだったか。

 出来るヤツは、こうして身内相手でも遠慮無く切り替えが出来るンだが、出来ネェヤツはどれだけヤッても出来ネェで苦労するんだよなァ……。


 コンクリ製の槍は蹴り砕き、短剣は部分的に装甲を展開して受け止めないで弾く感覚で防御する。

 ソレでも、角度を少し間違えるだけで普通にオレの装甲抜いて来やがるンだから、どんだけ鋭い刃とソレを手繰る手腕を持っていやがるンだよ!?

 ついでに言えば、コッチが合間合間に差し込んだ攻撃も、拳だろうが蹴りだろうが、難なく防いで涼しい顔をし続けてやがる!?


 …………クソッ!!

 コイツ相手に使うつもりなんて無かったが、このクソ澄ました顔を歪めてヤるよ!!


 そう決めたオレは、現時点で出せる最大出力の蹴りで無理矢理アイツとの距離を作ると、腰の後ろに刺していた『柄』を握り締め、引き抜いて見せてやるのだった。




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