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シナリオ第二稿(完成稿)

以下は全三章のうち第一章の主要シナリオとそれ以外の概要。


【第一話 覚醒】

〇カラトのアパート 朝


起床した半裸のカラトがカーテンを開ける。殺風景なワンルーム。朝日に照らされるトレーニング器具たち。顔を洗ったカラトは、冷蔵庫に入っている大量のプロテインバーとゼリー飲料から朝食の分を取り出す。無言で食べ終えると、制服を来てテーブルの中央に立てられた両親の写真に挨拶する。


カラト「行ってきます」


〇登校路


鞄を担いで歩くカラト。道中でホームレスの老人が引き攣った笑みを浮かべながら若者に殴られている場面に遭遇する。


若者「不信の税金泥棒が!指導、指導!」

老人「あ、ありがとうござ、ございます……!」


カラトは光を失った目で無視する。


〇街中


人通りの多い歩道では、カラトと同じ高校の生徒が多数見られる。


学生A「それにしても、中学時代に我らが機神:素戔嗚尊が降臨なされた時はどうなるかと思ったよね〜。もうお先真っ暗って感じで」

学生B「ね〜!でも神械結社が日本を統治しなかったら今頃本当にヤバかったやつだよね!他国の侵略を防いで、日本の悪いとこ全部直して!むしろこの時代にJKやれてラッキーって感じ!」

カラト「……チッ」


車道では、拡声器を搭載した自動人形・神械兵がプロパガンダを喧伝している。


音声「――八日後より、我らが機神:素戔嗚尊の降臨四周年を祝うスサノヲ・ウィークが始まります!この国に律と叡智をお授け下さった機神に、感謝の祈祷を捧げましょう――」


〇カラトの高校、教室


教室に着いたカラト。すぐ後に教師がやって来て、朝のホームルームが始まる。それが終わると、全員起立して窓の方へ向き、外に見える直立した超巨大ロボット――『機神:素戔嗚尊スサノヲ』に向けて、目を閉じ手を合わせ祝詞を唱える。カラトは口パクで誤魔化している。


カラト以外の全員「我らが機神:素戔嗚尊よ……」


カラトは静かに目を開け、周りを見渡す。


カラト(気づけば、これが日常だ。四年前に降りたあの変なロボット。そしてそれを信奉する新興宗教――『神械結社』。奴らが日本を支配してから、この気色悪い風習が続いている)


授業が始まるが、カラトは窓の向こうの機神を眺めながらハンドグリップで握力を鍛えている。


カラト(あの時、父さんと母さんが殺されてから……)


無力な子どもの自分を攻めるように、カラトはハンドグリップを握り締める。


〇高校の廊下 夕方


いつものようにカラトが帰ろうとすると、廊下がいつもより騒がしい。人混みの向こうを覗くと、同級生の赤堀 ミサキが憲兵に周りを固められながら歩いている。生徒たちは詳しい事情も分からず騒ぐことしかできない。


カラト「すみません、彼女に何かあったんですか?」

憲兵「申し訳ありません。一般信徒の方には開示できない情報となっております」


憲兵の物言いにひとつの絶望的な可能性が頭をよぎる。祈るように、カラトは話し続ける。


カラト「それは、おかしいでしょう……武装した憲兵が何人も、女子高生囲んで連行するとか……彼女は優秀な委員長で、内申点だってとても高いんですよ……?」

憲兵「申し訳ありません。一般信徒の方には開示できない情報となっております。お引き取りください」


やはりそうだった。カラトは確信する。


カラト「……昔、隣に住んでた爺さんがこんな風に連れて行かれたのを見た事がある」


カラトは憲兵を睨みながら、ミサキの腕を掴む。


カラト「彼女を、粛清するんだろ」


その瞬間、憲兵は銃床で殴りかかってくる。カラトはミサキを引き戻しつつ、その腕で攻撃を受け止める。取っ組み合いになるが、カラトは全く引き下がらない。


憲兵「クソッ、なんだこのガキ!?やたら強いぞ!?」

カラト「逃げるぞ!」

ミサキ「ち、ちょっと……!」


カラトはミサキを抱えると、窓を突き破った。木をクッションにして這う這うの体で走り出す。


ミサキ「あなた伊野穹くん!?どれだけ無茶するの!?」

カラト「無茶せずに逃げられるわけねぇだろ馬鹿が!」

ミサキ「馬鹿ァ!?今のあなたにだけは言われたくないんだけど!?とにかく降ろして、私の方が走れるから!」


カラトが言う通りにすると、ミサキは先行して走る。


カラト「どこ行く気だ!?」

ミサキ「知り合いのとこ!あなたのせいで段取りめちゃくちゃよ!死にたくなかったら死ぬ気で走りなさい!」


〇住宅街


二人は様々な障害物を乗り越え走る。途中で横切ろうとする憲兵が見えたので、二人は路地裏に隠れる。


ミサキ「一旦隠れて、少し息を整えましょう」

カラト「ハァ、ハァ……ちょうどいい。お前が何者か教えろ」

ミサキ「察していると思うけど、ただの学生ではないわ。それ以上は言えない。でもあなたの身柄は保護するから、安心して」

カラト「そんなもんは要らねぇ。それよりだ。お前の言を聞く限り、神械結社への反抗組織か何かなんだろ?俺をそこに入れてくれ」

ミサキ「いきなり何を――待って」


通り過ぎる憲兵に、息を潜める二人。


ミサキ「……行ったわね。えっと、結論から言うとあなたじゃ無理よ。私も特例で入ってるから……」

カラト「じゃあ何故入れたんだ?条件を満たすにはどうすりゃいい?身体なら鍛えてある。人だって何人だろうと殺してやる。座学だって学年一位だぞ!何が足りない!?教えろよ!」

ミサキ「違うの、能力の問題じゃなくて!というかあなたどうしてそんなに入りたいの!?」

カラト「復讐だ」

ミサキ「……まぁ、そんなところだと思ったけど」


ミサキは少し逡巡してから話し始める。


ミサキ「あなたが考える通り、私は結社に対抗する組織に属している。そして私が入れたのは、あるチカラを持っているからよ。それは努力で身に付くものじゃない。だから諦めて」


カラトはすがるようにミサキを見つめる。


カラト「どうにか……出来ないのか?頼む、この機会を逃したら……俺は、何も出来ずに……」

ミサキ「ごめんなさい。でも、あなたの気持ちは痛いほど分かる。私も結社に人生を壊されたから。任せて、と言えるほど私たちは強くないけど、それでもあなたの意志は果たせるよう努力する。だから、どうか自分を大事にして」


そう言って手を握るミサキ。


そのとき、巡回していた無人神械兵に見つかる。


ミサキ「しまった!伏せて!」


機銃掃射。ミサキは能力を解放して守る。


カラト「……これが、チカラって奴か」

ミサキ「『防護エナジャイズ』。死に瀕して手に入れた、バリアを展開する共鳴能力よ。ここは私が防ぐから、あなたは逃げて」


カラトは一歩だけ下がるが、そこで止まる。

少し考えた後、ミサキに質問する。


カラト「……その共鳴能力とかいう奴は、誰でも死にかければ手に入るのか?」

ミサキ「そんなわけないでしょ!?というかまだ諦めないの!?いい加減にしてよ!」

カラト「言っただろ、この機会は逃せねぇんだよ!ここで逃げ帰ったら、俺はもうこの怒りを晴らせない!父さんと母さんの仇を討てない!カイに復讐出来ない!それは!嫌なんだよ!」

ミサキ「それの何が悪いのよ!命があるだけマシじゃない!こっちは遊びでやってんじゃないの!無力なガキがしゃしゃんじゃないわよ!」


カラトは焦燥した顔でミサキと神械兵を交互に見る。

ミサキに守られるか、神械兵に突っ込み死に瀕することで能力を手に入れ、血路を開くか。

過呼吸になりかけながら、カラトは逡巡する。


カラト「ごめん!」

ミサキ「あ、バカ――」


カラトはバリアから飛び出し神械兵に突っ込む。

神械兵の機銃が彼を狙う。数秒もせず明らかに死ぬことが分かる。周りの景色がスローになり、走馬灯が見えてくる。


そのとき、機神:素戔嗚尊の声らしきものが頭に響く。


素戔嗚尊『怒リ発テ』『打チ砕ケ』『諍イコソ 汝ガ道』

カラト「……聞こえた」

カラト(初めてお前に感謝するよ。機神:素戔嗚尊)


その時、見えないプレッシャーがミサキを襲い、カラトが能力に覚醒したことを理解する。

カラトはザザっとブレーキをかける。


ミサキ「まさか、この場面で……!?」

カラト「止まれェェェェェ!!!」


カラトの渾身の叫び。

特有の音が響き、神械兵は止まる。


カラト「開けろ!」


カラトはまた命令してハッチを開け、乗り込む。


カラト「赤堀、乗れ!」

ミサキ「……了解!」


ミサキは衝撃を受けつつも、現状の最善策を取る。


ミサキ「操作分かるの!?」

カラト「そういう能力だ!俺は機械を操れる!指示をくれ!」

ミサキ「このまま直進!」

カラト「了解!」


カラトは神械兵を全速力で走らせる。


カラト「そこに通信機があるんだが、連絡とれるか?俺はコイツとやり合う」

ミサキ「分かった、やるだけやってみる!」


ミサキが通信しようとする間、やってきた追加の神械兵と戦うカラト。


カラト「クソ、流石にキツイか……!」


劣勢になると、ミサキのバリアが張られて守られる。


ミサキ「あらやだ、すごく調子いい。神械兵ってそういう働きもあるのね」

カラト「助かった!オラァァァ!!」


カラトは神械兵の頭を殴り飛ばす。

背後の敵にも立ち向かおうとするが、その敵は横から爆発を受けて倒れる。


カラト「なんだ!?」

通信機『聞こえているか?ミサキ、そして新たな共鳴者』


軍人達がカラト達の乗った神械兵を囲む。その少し後ろで、ヘルメットを外した男が通信機と共にこちらを見ている。


ミサキ「あの人がうちのリーダー。剛田総司令よ」

剛田『我々は、神械結社への反抗秘密組織『神籬ヒモロギ』だ。うちのミサキが世話になったな。降りてきてくれ、話をしよう』


【第二話 誕生日】


カラトは神籬の地下基地にある剛田の部屋に来ていた。


カラト「伊野穹カラトです。僕を組織に入れてください」

剛田「生き急いでいるな、君は。加入に関しては君が共鳴者へと覚醒した時点で確定している。おめでとう、今日から我々はチームだ」

カラト「ありがとうございます!」

剛田「これから色々と忙しくなるだろうが、その前に。ミサキから事の次第を聞いたよ。正直、自殺行為と言っていい。彼女からもきつく言われただろうが、今後戦いたいなら二度とあんな真似はするなよ」


〇回想 神籬に救われた直後


神籬メンバーが慌ただしく動く中、神械兵から降りたカラトにミサキが声をかける。


ミサキ「……伊野穹くん」


カラトが振り向くと、ほぼ同時にミサキからビンタが飛んでくる。


ミサキ「……二度としないで」

カラト「……分かった」


涙目になっているミサキの目を見据えて、カラトは真剣に言った。


〇回想終了


カラト「……分かってます」

剛田「……君は復讐に取り憑かれているな。それ以外を全て置き去りにしている。うちにも似たようなメンバーは多いが、君は頭一つ抜けている。話を聞いてもいいだろうか?」


剛田を手で座るように指示する。


カラト「四年前の話です――」


椅子に座ったカラトは、ゆっくりと話し出す。


〇回想 四年前 伊野穹家にて


都内一戸建てで、リビングの明かりは消されている。ケーキに刺さったロウソクが、十三歳になったカラトの顔を照らしている。


カラト(その日は俺の誕生日でした。俺、父さん、母さん。それと幼なじみの美空カイ、カイの両親。みんなが集まってくれました)


カラトが貰ったプレゼントが映る。両親からはロボット犬、カイの親からは子ども二人で遊ぶための新作ゲーム。


カラト(例の機神が日本に落ちて来て、てんやわんやの時期でしたが。それでも息子の誕生日を祝うぐらいは、と)


カラトがロウソクを吹き消す。暗闇に呑まれるリビング。


カラト(その時、何が起こったのか俺にはよく分かりませんでした。ただ、俺がロウソクを吹き消した瞬間、カイは四人の親の喉を切り裂いていました)


カーテンを開くカイ。外には機神が見える。

月明かりに照らされる、血まみれで微笑むカイ。カラトは理解不能といった表情で固まっている。


カラト(カイとは幼稚園の頃から仲良くしていて、喧嘩の一つもしたことが無い親友でした。だからこそ、余計に分からなかった。親殺しの動機が)


カイが口を開く。


カイ「カラト!鬼ごっこしようか」

カラト「……は……?」

カイ「鬼は君だよ。君は今日から、僕を殺す為に生きていくんだ。動機はたった今与えたよね?」

カラト「……何、言ってんだよ……?」

カイ「最近落ちてきたあのロボット、あるだろ?僕はアレを使って色々やってみようと思っててさ。大人はみんな気づいてないけど、アイツが僕にだけ教えてくれた『法則』がある。人の精神に作用する法則。誰でも扱えるけど、理屈は僕だけ知っている」


カイは椅子に乗っていた自分の母親を蹴落とし、腰掛ける。


カイ「ねぇ、何やったら面白いと思う?僕はやっぱ宗教が良いと思うんだよね!一番相性良さそうだし。実はもう名前も決めてるんだ。『神械結社』!カッコイイだろ?」


カラトは抜けた腰に鞭打って、カイに飛びかかる。

だがカイは冷静にカラトの首へナイフをあてがう。カラトは動けない。


カラト「お前は――!!」

カイ「もうちょい話聞いててよ。そう、神械結社。僕はそれを創って、二年くらいで日本を制圧する予定なんだ。君はそんな僕を殺しに来るの。ルールも時間制限も無し。相手を殺した方が勝ち。人生を賭けたゲームだ、楽しいぜ?」


カラトは怒りのあまり、首に食い込むナイフさえ気にせずカイの首を締めようとする。


カラト「……なんで、なんなんだよお前は……!」

カイ「ストップストップ……死んじゃうって、お互いに……!」


その時、カラトは後頭部に衝撃を受ける。気絶寸前の状態で、目も見えず床に倒れる。


カイ「ありがとクロ、助かった……」

クロ「調子に乗り過ぎだ。帰るぞ」


カラトは朦朧とした意識の中、その場を去ろうとするカイを睨みつける。


カラト「……殺して、やる……ッ!!」


〇回想終了、エピソードも終了


*以下は予定するエピソードの概要*

【初陣】

"カラトがカイの痕跡を探しながら、神械結社の基地ミリタリーコロニーに潜入し神械兵を奪取する"

- キャラクターの行動:

* カラトが神籬の施設を見回りつつ、カイの情報を探す

* カラトが初任務で神械兵を奪取する

- エピソードの目的:

* カラトの能力による敵機体の初めての鹵獲

* 神籬と神械結社の戦力差を説明する

【霊装】

"カラトとミサキが霊装神械兵との死闘を繰り広げ、神械兵の自爆作戦で窮地を脱する"

- キャラクターの行動:

* カラトとミサキが宇都宮ミリタリーコロニーで神械兵奪取任務を遂行

* 霊装を被った神械兵と戦闘

* カラトが自爆作戦で敵を撃破

- エピソードの目的:

* 霊装神械兵という新たな脅威を紹介する

* カラトの戦略的思考と決断力を示す

* 初めての自爆の披露

【交差】

"街の闇を目の当たりにしたカラト、そして知らぬ間にニアミスするカイ"

- キャラクターの行動:

* カラトとミサキが渋谷に外出

* 美空カイと七曜会のメンバーが会議を開く

- エピソードの目的:

* 神械結社支配下の日本の状況を描写

* カイと七曜会の存在を明らかにする

【邂逅】(ミッドポイント)

"待望の大規模作戦で勝利を確信したカラトの部隊が、突如現れたカイにより壊滅的打撃を受ける"

- キャラクターの行動:

* カラトが鹵獲した神械兵で作り上げた部隊『神刀』を率いて武蔵ミリタリーコロニーを攻撃

* カイが現れ、カラトの副官を殺害

- エピソードの目的:

* カラトとカイの劇的な再会シーンを描く

* カイの残虐性と強さを示す

【壊滅】

"カイの罠に気づいたカラトの努力も空しく、神籬の本拠地が壊滅的な攻撃を受ける"

- キャラクターの行動:

* カラトが神械兵に仕掛けられていた発信機を発見

* その瞬間に神籬基地が攻撃を受け壊滅

- エピソードの目的:

* カイの策略と神籬の敗北を描く

* カラトの自責の念を表現する

【拝領】

"全てを失った神籬が最後の望みをカラトに託し、敵の本拠地である旧東京都庁に命がけの突入を図る"

- キャラクターの行動:

* 生き残った神籬メンバーが素戔嗚尊に祈ることを決意(伏線として【霊装】にて言われた敵共鳴者の「素戔嗚尊に願った」という言葉から発想する)

* カラトたちが旧東京都庁・現神械結社総本山に突入

- エピソードの目的:

* 神籬の反撃の始まりを描く

* カラトの決意と戦闘力を示す


【方舟】

〇総本山内部、素戔嗚尊御殿 防衛卿との戦い後


カラトは傷だらけになりながら素戔嗚尊の前に立つ。


カラト「素戔嗚尊!俺の願いを――」


〇回想 カラトは先刻戦った防衛卿の言葉を思い出す


防衛卿(本当に心底復讐したいのなら、シンプルにそれを願えばいい。あの神はきっと応えてくれるだろうさ)


〇回想終了


カラト「……ッ」


カラトは願えば簡単に自分の目的が成されることに気づき、言葉に詰まる。


〇回想 神籬として戦った日々を思い出す、一番強く思うのは喫茶店でのミサキ


ミサキ(カラトは、なんで私を助けてくれたの?)

カラト(ミサキだったから。それだけだ)

ミサキ(……私の前に殺された人達にも、カラトみたいな人はいたのかな)

カラト(……いたんじゃないか。誰だって、友人が殺されたらムカつくだろ)


〇回想終了 現在に戻る


カラト「……フゥ」


カラトはため息をつき、肩の力を抜いて素戔嗚尊をまっすぐに見る。


カラト「お前は酷い野郎だよ。勝手に降りて来て、俺の日常をめちゃくちゃにして。お前のせいで、カイは自分をさらけ出す機会を見つけちまった。あのモンスターの本性を

暴いちまったんだ。だから」


カラトは決意のこもった目をしつつ拳を向ける。


カラト「責任取れよ。神だってんなら」


素戔嗚尊が鳴動し、光りながら声を発する。


素戔嗚尊『承レリ』


〇総本山外部、旧都庁前広場 神籬と神械結社の戦闘中


管財卿による神械兵の大群に段々と数を減らしていく神籬メンバー。ミサキのバリアも消えかかっている。そんな中、素戔嗚尊が光り輝き出す。目を見張る神籬メンバー。


剛田「あれは……!?」

ミサキ「カラト……!」


素戔嗚尊が動き出し、胸の光から何かを引き抜く。それは剣のようで、しかし戦艦のようにも見える。遠くから見つめる管財卿。


管財卿「ショウタの奴、防げなかったのか……」

防衛卿「悪ぃクロ!トロールしたわ!」

管財卿「お前でダメなら誰にも止められん。こうなったらこっちの負けだよ。治療してろ」

防衛卿「ウィース」


戦艦は上空を航行し始め、同時に眼下に向けて多数の砲門からエネルギー砲を発射する。ある程度撃つと、今度はハッチから大量の神械兵に似たロボットを投下する。彼らは自動で戦い始め、その物量に神籬メンバーを包囲していた管財卿の部隊は壊滅していく。


カラト「生きてるか!?全員輪っかに入れ、撤退するぞ!」


カラトの声と共に、戦艦の真下から光の輪が落ちてくる。それの中に入った者は戦艦の中に転送されていく。管財卿は配下をけしかけつつ、カイに通信をかける。


管財卿「カイ。おれ達は負けたわけだが、最後に何か嫌がらせでもするか?」

カイ「ちょうどその話してたとこ!」

管財卿「さすが、我らが枢機卿」


〇素戔嗚尊御殿 カラトが去った後


カイは祭壇の上で寝転がり、スマホで戦艦の様子を見ながら管財卿と通信している。近くには鏖刃卿がいる。


カイ「ミコトちゃんに願ってもらって、一発デカいのを撃ち込むのさ」

管財卿「いいのか?ミコト。一生に一度の神頼みだぞ」

鏖刃卿「元々みんなの為に使う予定だったから。願いなら、既に叶ってるようなものだし」

管財卿「そうか……なら何も言うまい。お前に任せるよ」


〇戦艦『くさなぎ』内部


艦内に転送された神籬メンバーは、仲間の治療や戦艦の操作分担に奔走している。そのとき、素戔嗚尊から凄まじい高エネルギー反応が検出される。


臨時管制担当「素戔嗚尊から超高密度のエネルギー反応!」

剛田「溜めている!?カラト、防御兵装はこの艦にあるか!?」

カラト「あるにはあるが、あのヤロウの攻撃だ!多分受け切れねぇ!緊急回避する、全員何かに掴まれ!」


素戔嗚尊が手を伸ばし、くさなぎに狙いを定める。


カラト「ミサキ!」


カラトは近くにいたミサキを引っ張り、抱き抱える。


ミサキ「カラト、こんなときにっ……」

カラト「ミサキ……お前が頼りだ。角度つけて逸らすだけでいい。合図したら、全力でこの艦にバリアを張ってくれ」

ミサキ「カラト……」

カラト「あとお前のことが好きだ」

ミサキ「かかかカラト!?」

カラト「言いたいことは山ほどあるが、とにかく今は集中してくれ」

ミサキ「無茶を仰るっ!」


いよいよ素戔嗚尊がエネルギー砲を発射しようとする。


カラト「覚えてるか?最初に神械兵を奪った時、一緒にコクピットに乗ってたよな。あの時と同じだ」

ミサキ「……もし生き残ったら……」

カラト「なんだ?」

ミサキ「……キス、して欲しい……」

カラト「ああ。ファーストキスはお前のものだ」


そして、遂に素戔嗚尊は砲撃を放った。


カラト「今だ」

ミサキ「やあああああ!!!」


【最終話 開幕】


〇場面転換 数日後の戦艦『くさなぎ』改め『ひもろぎ』ブリッジ、昇進式


やっと着ることになった制服に身を包み、カラトは剛田の前に立っている。


剛田「……以上の武勲を持って、伊野穹カラト特別少尉。貴君を戦艦『ひもろぎ』艦長に任命する」

カラト「謹んで受任致します」


少ない人数だが、割れんばかりの拍手で祝福される。カラトは剛田にマイクを手渡される。


カラト「俺は……最初この組織に入ったとき、カイに復讐する為の足がかりだとしか思っていなかった。カイは俺の両親を殺したクソ野郎だ。そして今でも、アイツを殺したい気持ちは少しも変わっていない。ただ……俺は戦いの苦しさを知った。殺しの重さに気づいた。刃が届かない悔しさを味わった。これを成長だとか言うつもりは無い。クソガキがやっと瞼を開けたってだけの話だ。それだけのことに払った代償は、とても償えるものじゃねぇ」


〇回想 神籬基地が爆撃された時の様子

〇回想終了


カラト「俺は神械結社を潰す。カイを殺して、日本を解放する。それが、俺の見てきた沢山の死者に対する贖罪、両親と、結社に粛清された人と、死んで行った神籬メンバーへ手向けられる唯一のモノだ。だからどうか――」


カラトは深々と頭を下げる。


カラト「皆さんの命を、使わせてください」


頭を下げ続けるカラト。やがて拍手が聞こえ、それは段々と大きくなり、いつしか万雷の喝采になる。

剛田がカラトの肩に手をかける。


剛田「お前は偉いよ」

カラト「……どうだか」


〇『ひもろぎ』甲板にて


甲板から雲海にそびえる素戔嗚尊を眺めるカラト。そこへミサキが来て、何も言わず隣に立つ。しばらく無言で眺める二人だが、やがてミサキから口を開く。


ミサキ「これから大変だね」

カラト「ああ。メンバーの補充、艦を使った戦闘の訓練、最初に解放する場所の選定。山積みだ」


再び無言になる二人。


ミサキ「……あのさ」

カラト「ストップ。俺から言わせてくれ」


カラトはそう言うと、少し顔を赤くしながら、それでもミサキの目を見て言う。


カラト「待たせて悪かった。キスしよう」

ミサキ「……うん」


ミサキは目を瞑る。カラトは彼女の両肩に手を置いて、ゆっくりと唇を近づける。


ミサキ「ん……」


そよぐ風の中で、二人だけの時間が過ぎていく。


カラト「……お前を守る。絶対に守る。カイに殺させやしない」

ミサキ「ふふっ……守るのは私の十八番なのに」


二人は抱き合う。


カラト「……愛してる」

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