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そして、二人は対峙する

 そよ風が木々の枝葉をゆらす。

 それは、何気ない音だ。

 どこの森でも、奏でられている音にすぎない。


 黒い霧が晴れた、ニーベルンの森。

 この地でも、それは、変わらない。


 何気ない音、風景、匂い、それらを感じると、人は、気分で、それを読む。


 聖騎士アリオンがとった行動。

 彼の抜剣。


 その相手は、この森にいた女の子だ。


 その光景に、場は静まる。


 そして、討伐軍、それに属してる兵士たちは、誰しもが、木々の揺れる音を、不穏なざわめきに感じていた。


 たまりかねた、部隊長の一人が、

「アリオンさま、それは、あまりに」

 と発するも最後まで言わせてもらえない。


 アリオンは、剣を両手で握り、剣先を、アリシアへと向ける最中、

「黙れ! この地は、すでに、ニーベルンだ!」

 と腹から出した声で叫ぶ。


 彼は、剣を、自らの体の中心線に沿う所で止める。

 無理のない、正眼の構え。

 そこには、油断も、隙も、見当たらない。


 アリオンは、

「念の為に、名前だけは、聞いておこう」

 と言い、アリシアに向けた剣先を、わずかに揺らす。


 当のアリシアは、なぜか、目の前の聖騎士らしき人物がとる行動を嬉しく感じた。


 剣先をアリシアに向けてきた、聖騎士アリオン。


 それは、誰の目にも物騒な行為。

 彼女からしたら、敵対行為だ。


 それでも、さっきまでよりは、ましね。


 アリシアは、視線を、少し離れた場所で対峙しているアリオンの背の向こうに向ける。


 討伐軍の兵士たちは、戸惑って、声も出せない状況。

 さっきまでの騒ぎが、うそのようね。


 アリシアの話に耳を傾けなかった、討伐軍の兵士たち。

 それは、彼女にとって外見をバカにされたようにも感じられた。


 彼らを率いているであろう人物は違う。

 明らかな敵意、身に迫る危険、それは、アリシアも承知している。


 アリオンの敵意は油断のない武人のものだ。

 それは、アリシアにとって、外見ではないところで、認められたという感覚。


 だから、アリシアは、

「あたしの名前は、アリシアよ。破滅の魔女といった方が、いいかしら?」

 と、もう一度いう。


 討伐軍の兵士たちが、すぐに反応した。

「そんなバカな、あんな子が、破滅の魔女であるはずがない」


 同じような内容の言葉の数々。

 それらを、風が運び、アリシアに耳に届けた。


 だが、聖騎士アリオンは、

「女子供とて、容赦するな!」

 と一喝だ。


 アリシアの背を馬上から見下ろす形のルシファーは、「ほおー」と目を細めて感嘆の声を出す。


 アリシアは、両のこぶしを構えた。

 一応、足は肩幅やら広く、腰を落として重心は低い位置にある。


 しかして、それは、やや未熟。

 しかも、剣を相手に素手で挑むは無謀の極み。


 討伐軍の誰もが、そう思っていた。

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