表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

奈落の底で

 魔女狩りで火あぶりされてから何年が経過しただろう。


 数年?

 数百年?


 長い、長い、時間、ずっと夢を見ていた。


 世界征服。


 それが、あたしの復讐。

 そして、夢なのです。


 たとえ、天のあれが認めなくても。

 どんなに暗い奈落の底へと落とされても。


 あたしは、あきらめない。

 だって、それが夢というものでしょ。


 魂が朽ちて消えても、その欠片まで、きっと……


 そして、ついに彼女は、地獄の第九階層まで落とされた。

 そこは、奈落の底。光がない、闇の世界。


 契約を結べ!


 羽の生えた黒猫が現れた。

「我はルシファー、天を追われし堕天の悪魔」


 偉そうに黒猫が言う。

 とにかく偉そう。それでも、言葉を交わすのは、いつ以来だろう。火刑の際、浴びせられた罵倒ばとうの数々、それすら、今は、とても懐かしい……


 黒猫が言う。羽の生えた黒猫。禍々しい羽。

 暗い闇の中、光る黒い影。


 その猫が

「我はルシファー、天を追われし堕天の悪魔」

 と言う。


 はいはい、二度目なので聞き流す。


「我は」

「ルシファーでしょ」

 三度目だ。


 もしかして、壊れてる?

 暗い暗い、闇の底、その先客なのだから、仕方ないといえば、仕方ない。


「そう、我はルシファー、契約を結べ」

「契約?」


 契約には、良い思いでがない。裏切られてばかり……

 だから、あたしは、きっと、ここにいる。


 だから、契約は嫌いだ。


「ドラゴンズ・ミート、竜の肉質を持つ破滅の魔女、アリシアよ! さあ、契約を結べ。その願いは、地獄の第九階層、そして、そのあるじである、ルシファーさまが、叶えようぞ!」


 尊大な猫は、自分自身に陶酔をしている様子だ。

 あるじと自称するだけあって、この場の全てが、応じろという圧をかけてくる。


 ルシファー、魔王サタンの堕落前の呼称……

 本物か? 偽物か?


 真偽のほどは関係ない。


「いやよ!」

 あたしの答えは決まっていた。


 自称ルシファーの黒猫は、

「にゃっ!」

 と猫らしい悲鳴。


 そんなことは、関係ない!


「さあ、あたしに従いなさい、ルシファーよ! そうすれば、きっと、あなたの願いはかなうわよ!」


 黒猫のルシファーは、再び「にゃっ」と小さな悲鳴。そして、牙を少しのぞかせニヤリと笑う。


 それが、彼の返事。


 そして、アリシアの魂と黒髪のルシファーは、地上を目指す。


 契約は嫌い。

 約束は、裏切られる。


 だから、あたしに従いなさい。

 あたしは、絶対に裏切らない。


 そして、夢もかなえてみせる。

 夢は、自分でかなえるもの。


 従え!

 それ以外は、全て、踏み潰して見せましょう!


 世界の片隅、とある一角、深い森の中、朽ちた屋敷。


 物理的に重い悪役魔法少女、ここに、爆誕!!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ