やさしい娘たち
お嬢ちゃんえらいねえ、お母さんのお手伝いをしてるのねえ。
お母さんはみんなのために頑張ってくれてるんだから、しっかりお手伝いするのよ。
親孝行しないとだめだよ、ここまで育ててくれたんだから。
お母さんのおかげでここまで大きくなれたんだよ。
「恵!アンタどこほっつき歩いてたの!!」
金切り声が聞こえる。
またやってる、と玄関の外を覗き込むと、向かいの家の玄関口でおばさんと恵が騒いでいる。
「うるせえ!アタシがどこで何してようが、お前に関係ねえだろうが!!」
「ひ、ひいっ!」
ガシャン、と大きな音を立てて何かが壊れる。
玄関扉のガラスが道路にまで飛び散っていた。
「ああん、何見てんだよ涼子!」
「べ、別に。おばさん、かわいそうよ」
目ざとい恵は視線に気が付き声を掛けてきた。
「なにも、悪いことしてないじゃない。どうしてそんなに怒るの」
「涼子~」
恵は不敵に笑った。
涼子は顔を顰めた。
幼いころは幼馴染として一緒に学校にも通ったし、放課後にもよく遊んだ。中学に入って荒れ始めた恵は、夜中に悪い仲間と遊びあるいている。深夜に帰ってきては咎められ、大暴れするのだ。
長い髪も、赤すぎる唇も、目を黒く縁取ったメイクも、裾の長いセーラー服も。
何もかもが涼子とは正反対だった。
「いい子の涼子は、いいよな。悪いことしてなかったら、それでいいもんな」
ふふふふ、と笑う恵が気味悪かった。
「こんな夜遅くよ。近所迷惑だわ」
そう言って家の中に戻る涼子の背中を、恵の鋭い目つきが追いかけていた。
涼子と恵は正反対だった。
素行の悪い恵と優等生の涼子。
共に母子家庭で育ったというのに、こうも育ちがちがうと母親の育て方に問題があるのではないかと、世間の目は厳しかった。
「恵ちゃんのところ、また親子喧嘩だね」
涼子の母は働きに出ている。夕食の支度をするのはもっぱら涼子だった。
「…一体どんな高校に行くことやら」
涼子の作った夕食が母の口へと運ばれていく。
それを黙ってみていた涼子は、口を開けば誰かの悪口を言う母に話しかけた。
「ねえ、お母さん。私、I高校に行こうかと思うんだけど」
「I高校?あんな進学校に?」
母はきょとんとして、口に運びかけていたご飯を落とした。
I高校と言えば、県内屈指の進学校だったからだ。
「お前、大学にでも行くのかい?」
「…でも、先生も目指せないレベルじゃないって」
「そうはいってもお前、I高校に行く子は皆塾にも通ってるんだろう」
「うん…」
涼子は顔を曇らせた。
わかっていることだった。
働きづめの母に、これ以上金銭的な負担をお願いするわけにはいかなかった。
「塾は、行かないで済むように、勉強を頑張るつもり」
「涼子」
母の声は真剣だった。
涼子ははっとする。
「問題は塾じゃなくて、そのあとだよ。大学に行っても、ウチは下宿代なんて出せる家じゃないし、それに大学を出たってどんな仕事をするんだい。そりゃI高を出たらいい大学に入っていい仕事につけるかもしれないけど、家はどうなるの?」
「家って?」
「お母さんも60になるし、お前に家を出ていかれちゃ寂しいよ」
「お母さん…」
そのとおりだ、と涼子は思った。
いい仕事は都会にしかないし、それも激務だ。
バリバリ働くことに憧れはあるが、それがどんなものかもよくわからない。涼子の知っている仕事、というのは母のレジ打ちのパートだからだ。
仕事にかまけて、60歳になる母をこの家に一人にしてしまっていいはずがない。
夕食後の茶碗を洗いながら、涼子は考える。母は風呂に入っていた。
仕事でつかれた母には、夕食を作ることも皿を洗うことも大変なのだ。
これから若くなることなどありえない母にとって、涼子がいつか家を出ていくことで増える家事の負担に耐えられるだろうか。
「私って、自分のことばっかりだったわ」
「なに、涼子。近くのT商業高校に行けばいいよ。あそこは就職のあっせんもしてくれるし、高校生になったらお前もアルバイトできる。お前は頭がいいんだから、根をつめて勉強しなくてもT商業高校なら大丈夫さ。その分の時間で働いて、皆よりも早く世の中のことを知ったらいい」
そう言ってくれる母の言葉に、涼子はうなづいた。
「うん、そうするわ」
高校に入学してすぐ、涼子はアルバイトを始めた。
小さなスーパーの品出しの仕事だった。
やることは単調だけれども、しゃがんだり立ちっぱなしだったりで、腰掛けて休む暇もない。
高校の勉強は少しも難しいということはなかった。
うんとレベルが下の高校なので当然だった。
T商業高校にいく、と中学の担任に話した時の何とも言えない残念そうな顔。
涼子の胸の奥で何かがうずくような気がしたが、それが何かはわからなかった。
「よう、涼子」
「恵ちゃん、昼間からそんな化粧と服で、なにをしているの」
恵は下着が見えそうな短いスカートに、T商業高校では禁止されている派手な化粧のいで立ちで、ガムを噛みながらスーパーの裏にやってきていた。
ブレザーのポケットから煙草が見える。
「お前こそなんだよ。I高校にいくんだと思ってたぜ」
バイクにまたがった数名が、道路から恵を呼ぶ。
「知り合いなんだ!こいつ」
ろくに学校にも通っていないだろういで立ちに、涼子は顔を顰める。いわゆる不良だった。
「私ももう高校生なんだから、働いてお母さんを楽させてあげなきゃいけないわ。進学校になんか行ったら勉強だけで手いっぱい。それに大学なんてお金がかかるし、優秀なら学歴なんか必要ないわよ」
「へえ」
きっと恵はばかにしたようににやにやと笑っているに違いない。
そう思って片付けていたゴミ箱から顔を上げると、能面のように表情を失った恵が立っていた。
「…恵、ちゃん?」
「お前と話すと、気が狂いそうだぜ。あたしが間違っているみたいだ」
虫唾が走るかのように吐き捨てて、恵は背を向けた。
いら立ちが収まらないかのように近くのカートを足で蹴飛ばし、待たせていた友人のバイクにまたがって去って行った。
恵はろくに高校にはいかなかった。夜中まで仲間と遊び倒し、家では相変わらず親子喧嘩が絶えなかった。ガラの悪い高校の生徒同士で縄張り争いを繰り返しているらしく、よくケンカで補導されていた。
「あんたなんだってこんなことするの!」
母親が怒鳴りつける。
そのたびに恵はぎろりと睨みつけて、唇をかみしてめ奥歯を噛みしめる。
「ろくに勉強もしないくせに!」
「なんだって?クソババア!!!お前のせいだろうが!」
時々腹に据えかねて母親に殴りかかることもあった。
そのたびに涼子の母親は顔を顰めて、涼子にささやく。
「恵と違ってあんたは優秀だし、親孝行な娘をもてて私は幸せだよ」
その言葉に何の疑問もなく、涼子はうなずいた。
そこには母に褒められて喜ぶ16歳がいるだけだった。
涼子は卒業後すぐに地元の小さな会社の事務職員になった。
仕事には真面目に取り組み、中々評判がよかった。
一人前に給料をもらい、母を支えながら暮らしていた涼子は、人生で一番自分のことが好きだった。頑張りを認めてくれる職場、優しい先輩たち、嬉しそうな母、経済的な余裕。安定した生活をてにいれたのだという事実を噛みしめるたび、涼子は自分が誇らしかった。
成人式に足を運ぶと、懐かしい顔ぶれがあった。
話しかけると、皆驚いた表情ですこしだけ言葉を詰まらせた。
「涼子ちゃん、振袖は着ないの?」
遠慮がちにそう声を掛けてきた子がいた。
「うん。振袖借りたり買ったりするお金がもったいないから」
たった一日の数時間しか着ない服。
そんなものにお金を書けるなんて、お金持ちのすることだ。
母のその意見に涼子もうなづいた。
確かに、母の言い分が間違っているとは少しも思えなかった。
「そ、そうなんだ」
「…うん」
そう思っていたのに。
ここにいる皆にとっては、その数時間にお金をかけることが価値のあることなんだ。
涼子の心の中で何かがうずく気がしたが、涼子にはもうそれの正体はわからなかった。
「あ、恵ちゃん…!」
「涼子、やっぱりてめえそんな恰好で…」
「…変、かな」
「せめてスーツくらい着て来いよ。それ私服だろ」
「でも、たった数時間だし…」
恵は派手な恰好をしていた。
花魁のように締めた帯に肩を出して着物を着崩している。
黄色に近い金髪はなぜかとてもよく似合っていた。
「どうせお前の家のババアがそう言ってるんだろ」
「あの、恵ちゃんは今何してるの?私、事務員をしてて」
「…大学、いかなかったのか」
「え?うん。うちにそんなお金ないし、お母さんにこれ以上迷惑かけられないよ。女手一つでここまでそだててくれたし、もう65だよ?楽させてあげたいって思うの、当たり前でしょう?」
恵はまるで汚いものを見るような視線を涼子に向けた。
「あたし、今は水商売してる」
「ええっ?未成年なのに?」
「今日から違う。確かに年はごまかしてるけど、アルバイトの給料実家出てひとりでやっていくのに足りねえから」
「え、おばさんじゃあ今一人なの?」
「だから何だよ!」
恵の怒声が響き渡る。
「てめえにもあいつにも、優しくしてやる義理なんかねえんだよ!勝手に産んだんだ!偉そうにする権利なんてねえ!」
涼子は目に涙を浮かべた。
「…ひどいよ。どうしてそんなこと言うの?どうしてもっと、おばさんにやさしくしてあげないの?」
恵は涼子を見た。
それは深い深い水の底を覗き込もうとするまなざしだった。
「じゃあ、お前はやさしいのかよ」
「え……」
涼子は即答できなかった。
汚泥の中に何が沈んでいるのかを見極めたような顔をして、恵は成人式の会場を去って行った。
「ねえ、涼子。そろそろ職場にいい人はいないのかい?」
20歳を過ぎたころから、母は時折そういうようになった。
「うち、女性の社員さんが多いから。男の人は皆うんと年上だし」
「そんなこと言ってないで、誰か見つけに行かないといけないよ。お前もほっといたって年を取るんだし」
「それは、そうだけど」
「お母さんも速く孫の顔が見たいわ。いつまでもお母さんも元気じゃないしね」
そう言われて涼子は言葉が出なかった。
何かがぎゅっと胸を締め付けていた。
「君は僕のことを、なんだと思っているんだ」
「え?」
実は結婚を考えている人がいた。
ある時相手はそう言い放った。
その視線は、あの時の恵と同じ、汚いものを見るかのようだった。
「きみはお母さんのために僕と結婚したいのか。お母さんのために子供を産みたいのか」
「それは、いいえ、そういうことじゃ」
「そういうことだ。きみから僕との人生や、僕たちの子供の話を聞くたびに、君のお母さんの話がいつも登場する。僕はお義母さんが何を願っているかなんて、正直どうでもいい。僕は、君が何をどうしたいのかが知りたいんだ」
「言っているじゃない。子供がほしいの。結婚もしたいの」
「『お母さんが生きている間に』だろ」
ぎゅっと何かが、今までで一番強く胸を締め付けた。
「ぼくは君と結婚したかった。でもこのままじゃ、お義母さんと結婚するみたいだ」
「待って」
「もうだめだ。耐えられない」
「お願い、どうして? わたし、あなたにひどいことなんかしたことないのに」
男が振り向く。
まただった。
水の底に何があるのか、見つめようとしていた。
「待って」
「君はお義母さんと同じことを、自分の子供にするのか?」
「え………」
走馬灯のように今まですべてがよぎる。
息が止まりそうだった。
「しない…しないよ、そんなこと」
「どうして」
「だって、だって、お母さんは女手一つで私を育てて、年を取ってからの子供で、それで…」
「同じ状況ならするのか」
涼子は顔を覆った。
無言で首を振る。
「なのに君はお母さんのために結婚するのか」
言葉にならなかった。
涙が両手の指の間をすり抜けていった。
高校
大学
就職
成人式
結婚
涼子の指をすり抜けていったものと同じように、ひとつづつ地面にこぼれて落ちた。
「でも、お母さんはッ……悪いことしてない…ッ。私をぶったりしたことなんか、一度もない…いつも、いつもやさしい私のお母さんなの。悪く言わないで…、お願い、お願い…ッ」
「…もう行くよ」
男は去っていった。
その背中に弱弱しく叫ぶ。
「親を大切にしてなにがいけないの? どうしてなの?」
男は答えなかった。
なぜだか涼子の脳裏には恵の姿がよぎっていた。
「おまえ、涼子だろ」
街でばったり出会ったのは、恵だった。
黄色い髪は相変わらずだった。
「今暇か?カットモデルやらねえか?」
そう言ってつれてこられたのは、ちいさな美容室だった。
「美容師になったの?」
「ああ、最近な。国家試験突破するの大変だったぜ」
「そうなんだ」
勉強が苦手だった恵を思い出し、涼子は笑った。
「どんな髪型にしたい?」
「…えっと」
鏡の中の恵と視線が合った。
あまりにも優しいまなざしにはっとする。
「涼子がしたい髪型にしていいんだぜ」
心臓が、ぎゅっと締まる。
別れた恋人の顔が脳裏に浮かぶ。
「…わからないわ。やっぱり私、帰るわ」
「あ、おい、涼子!」
しばらくして、恵が涼子の家にやってきた。
どうして自分にこんなに構ってくるのか、涼子にはわからなかったが、どうしてもとせがまれて、恵の美容室に足を運んだ。
何人かの指名もついているらしく、恵は順調に美容師として歩き始めているらしい。
「こないだはごめん。任せて、今度は涼子に一番似合う髪型にするから」
新しい髪型は職場の人にも母にも驚かれた。
職場の人からはとても良く似合っているとほめられた。母からは、髪を染めるなんて不良にみられるんじゃないかと心配していた。
もう70歳になっていた。
「わたしさ、今度結婚するんだ」
涼子はあれ以来、恵に髪を切ってもらっていた。
黒髪を一つくくりにしてずっと生きてきた涼子にとって、それは冒険だった。
「独立しても、あたしに髪を切らせてくれる?」
「うん、恵ちゃん、ありがとう」
「お礼を言うのはこっちだよ」
恵は実母と仲直りをしたらしく、恵の結婚生活は彼女の実家で始まった。
お金がないとかで結婚式は上げていなかったが、やがて子供ができた。
「涼子ちゃん、だっこしたげてよ」
「ほら、涼子おばちゃんだぞ」
恵夫婦は涼子にも子供をだっこさせてくれた。
「わあ……かわいい。かわいいね」
恵はそのうちに実家を改装して、ちいさな美容室にした。
中々繁盛しているらしく、夫と一緒に暮らし、喧嘩もしながらも、子供もすくすくと育っていった。
「どうして恵ちゃんにはできて、お前にはできないんだろうね」
ランドセルを孫に買ってやる恵の母親を見た日、涼子の母はそういった。
「恵ちゃんは親孝行だよまったく。お前とは大違いだ」
胸が締め付けられるが、もう涼子には痛くはなかった。
石のように固くなったものは、どれだけ締め付けられても痛くなどなかった。
「お母さん、煮物おいしい?」
「ふん、まあまあだね。煮物なんかじゃなく、もっとこじゃれたものを作れるようになっとけば、あんたも結婚できるんじゃないかい?恵ちゃんは旦那さんとは専門学校で知り合ったそうだよ。あんたも専門学校ぐらい行けばよかったのに」
「…そうだね」
「昔から、自分に甘いところがあるからね、あんたは。最後の最後で頑張らない。I高だって行けたのに、結局レベルを下げたじゃないか」
「………うん、ごめん」
「もっと自分ってもんを強く持たないから、町工場の事務員なんかしてるんだよ」
なにかが。
なにかが、崩れていった。
ただの普通の一日だったのに。
朝起きて出勤した。昼に自作の弁当を同僚と食べた。帰宅して夕食を作り、体が痛いという母に湿布を這ってやってから、一緒に食事をとった。
たったそれだけの普通の日だったのに。
食卓で投げかけられた母からの言葉で、涼子の何かが崩れていった。
何が傷つけられて、痛めつけられたのか。
何が固くなって、何が崩れてしまったのか。
涼子にはわからなかった。
わからないまま、涼子はなにもかもを手放してしまった。
そうする方が、ずっとずっと涼子にとって楽だった。
もう何も感じなくていいと思うと、とても安らかな気持ちだった。
涼子の葬式で、恵は号泣した。
怒り狂って涼子の母親に掴みかかった。
「てめええええ!涼子に何言ったんだよ!!!全部全部てめえのせいじゃねえか!!!」
「め、恵!」
夫が止めても恵は止まらなかった。
「何が親孝行だ!何が育ててやっただ!お前が勝手に産んだんだろうが!」
恵は涼子の棺桶にしがみついた。
「親不孝もんだよ、涼子は。親より先に逝くなんて」
涼子の母はポツリとそうこぼした。
この世で一番汚いものを見る視線で、恵は涼子の母をにらみつけた。
「昔からそうだ。てめえはいつもそんな言葉を涼子にかけてた。自分で首を吊ったんだぞ!なにもかもてめえのために生きてた涼子が、てめえから逃げる方法がそれしかなかったんだぞ!それなのにまだ、まだ親孝行が足りねえっていうのか!」
それは絶叫だった。
小さな時から。
幼馴染に降り積もっていく何かを感じ続けた、恵の叫びだった。
「こんなにかわいそうな目にあわされるぐらいなら、涼子を産んでやらなきゃよかったんだ!こんな、こんなことのために、涼子は頑張ってきたのかよ!涼子!涼子!」
生まれた、というそれだけの理由で。
まるで母親の奴隷のように、道徳で縛られた涼子。
涼子にとってはこの結末が救いだったのだと、心の片隅でわかっていた。
それがどうしようもなく悲しくて、口惜しかった。
ランドセルを孫に買ってやるお向かいさんを見た日、涼子の母は不愉快だった。
自分の娘の方が優秀だと、いつも胸のすく思いだったのに。
どうしようもない不良の恵と比べて、涼子はいつも優秀で優しい子だった。
けれどどうだろうか。
いつまでも独身のまま、色気の一つもないまま年を取った娘。
片や向こうは結婚して子どももいて、家をリフォームまでして、おしゃれな美容室になった。
孫にランドセルを買ってやる、当たり前の幸せが。
どうして自分にはないのだろうか。
そう思うと、目の前の涼子の至らなさを指摘せずにはいられなかった。
やさしい子だったのに。
なぜ玄関で首つりなど。
すりガラスから様子がおかしいと気が付いた恵が発見して、大騒ぎになった。
せめて自分の部屋でなら、こんなにご近所に知れ渡ることもなかったかもしれないのに。
涼子はやさしい娘だったのに。