プロローグ ササヤクコト
私には推しがいる。
その人物はとても尊い。
彼女は学生であり、夜に駅の構内を使用して路上ライブをしている。
昼などには、黒川ライブと呼ばれる場所で路上ライブをする。
路上ライブをするためには、施設管理者や所有者の許可が必要である。
調べたとこによると、施設管理者や所有者の許可がちゃんと下りているようだ。
推しは路上ライブだけではなく、ライブ配信なども行っている。
両眼を白い包帯で巻かれた少女、全身を黒のロックな服装で統一されている。
彼女は全盲で光すら感じられない。
噂で聞いたのだが、彼女は不登校で引き籠りだそうだ。
しかし、時々こうしてギター片手に、自分は確かにここにいると、主張するかのように路上ライブをしている。
彼女は夜にライブをしていて補導されたこともある。
だが、彼女は変わらずここにいる。
私はそれが何よりも嬉しかった。
一度だけ彼女は、ライブ配信でピアノを弾いたことがある。
言葉が出なかった。
彼女の音楽に対する才能は卓越していた。
ギターだけではなく、ピアノを弾く技術も優れている。
彼女の声は、鈴の音色のようにとても澄んでおり、聞く人に安らぎを与える。
そして時には涙を流す人もいた。
路上ライブ終了時は、いつもペコッと深く一礼をする。
彼女が少し歳離れたお兄さんと、車まで手を繋いで歩くのを遠くから見送り、私も自宅に帰る。
それが私の推しであるSolaさんである。