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約束

「…………落ち着いた?」



「…………うん。ごめん澪ちゃん」



私は雛が落ち着くまで待った。私の感覚だと数日だが、彼女からは半年、しかも二度と会えないことが確定していたのだ。



寂しがりで甘えん坊な雛にとってそれは絶望に近いものだっただろう。



「ごめん雛。置いて行かないって約束したのに、本当にごめん。許してくれとは言えない。本当に、寂しい思いをさせてごめん」



今は私ができるのは彼女を抱きしめて謝ることだ。それしかないと私には考えられなかった。



「いいの……、いいんだよ澪ちゃん。私は、澪ちゃんにまた逢えてすっごく嬉しいんだ」



雛は猫の様に擦り寄りながら抱きしめ返した。その腕は力が込もっていたが震えていた。



だから私は時期が来たら言おうとしていたことを雛に伝えた。



「雛、私は誓おう。もうお前を1人にしない。お前に寂しい想いをさせない。だから、私と一緒にこれからの人生を共に歩んでくれないか?」



雛は少し体を離して私の顔を見つめた。そして、私が彼女を好きになった要素の1つである可憐な笑みを浮かべ。



「当然だよ澪ちゃん、ずっとずっと一緒だよ。だから私はここまで来たんだよ?──大好きだよ澪ちゃん」



「あぁ、私もだ、雛。君を心の底から愛しているよ」



そうして、体を再度近づけて、その紅玉の様に輝く瞳と見つめ合い、自然とお互いの唇を寄せ合って。



『あのーー?おふたりさん?いちゃいちゃするなら地上に戻ってからにしてよ?』



「「ッ!?」」



突然後ろから響いた呆れた声に驚いて私は反射的に《龍滅魔法》の"カオスブレス"を声がした方に放った。雛も同様に黒い焔を発射した。



『うわっとぉ!?いきなり殺意マシマシ!?』



その声の主はイスチーナ様だった。



「なんだイスチーナ様か。驚かせるな」



『いやいやそれはこっちのセリフだよ!?なんで2人して殺す気でブレス放ってくるかなぁ!?』



私はギャーギャー喧しいイスチーナ様に目を白黒させている雛を守る様に抱きしめた。少し戸惑っている雛も可愛いものだ。



すると雛は嬉しそうにして私の胸に擦り寄ってきた。それだけで私の理性は溶けかけた。なんなら今ここで襲っても………



『君たち本当にブレないねぇ………。ほら、早く雛さんを地上に送らないと』



「………あぁ!そうだった!雛、行こうか」



「うん!」



私は雛を抱き上げて私が最初にいた場所に戻った。



『門は開いているから、あとは入るだけだよ。場所は出来るだけルナティアちゃんに近い場所だからね。それじゃ、良い転生を!』



イスチーナ様はそう言うとポンッと音を立てて消えた。



イスチーナ様が言った通り、どデカく豪華な扉があり、そこから光が漏れ出ていた。



「ねぇ、澪ちゃん」



「なんだ?」



雛は少し不安そうな顔をして私を呼んだ。



「ほんとに向こうでも逢えるよねぇ?夢とかじゃなくて本当に逢えるよね?」



「あぁ、必ず逢える。そして、私が必ず迎えに行く。だから、私にも判るように空高く炎を出してくれないか?それを目印に私は雛の元に向かうよ」



「約束だよ?絶対だからね」



「わかってる。あと、私は向こうの世界だとルナティア・フォルターで口調もロールプレイのものになっているからね」



「ロールプレイ………あぁ!のじゃロリ口調!あははっ、なにそれっ!」



雛は私の説明に声をあげて笑った。



「笑うな……仕方ないだろ?何故か定着して元に戻せないんだから」



「あははっ………ごめんごめん。でも、澪ちゃんらしくて安心したよ。澪ちゃん………ルナちゃんがそうなら私もあっちじゃリュウエンって名乗るよ。口調は作ってないから大丈夫だけどね」



「それがいいかもしれないな。…………また後でなリュウエン」



「うん後でね。ルナちゃん」



そうして雛………リュウエンは光る扉に入っていった。それを見届けると私の意識は暗く沈んでいった。




***




「……………ぅん?」



朝日が瞼を刺激して私は目を覚ました。



「なんじゃ………朝か……」



頭を掻きながら備え付けの洗面所で顔を洗う。鏡を見るとそこには慣れ親しんだルナティア・フォルターの顔が写っていた。



「さて、迎えに行くかのぉ」



私は雛と……リュウエンとの約束を果たすために気合を入れた。



そうして朝食を取り、支度を済ませた後、私は魔王城へと向かった。

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