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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
平穏で賑やかな日常
80/120

魔王城の賑やかな騒動〜8

決闘の幕を挙げたのはガゼルだった。



「ーーゼイッ!!」



ガゼルは予備動作無しの縮地からの近距離ストレートパンチをナザールに繰り出した。その速さは常人の目には止まらない程だった。



ナザールはそれを視認して難なく回避する。



それにガゼルは特に気にした様子はなく、そのまま怒涛の勢いで拳を繰り出した。四方八方から繰り出される鋼をも打ち抜くその拳は今までに数え切れないほどの歴戦の戦士や強者を地に沈めてきた。普通ならば耐えられない。



だが、ナザールは最小限の動作で避けて時には剣の腹で流していた。元より肉体のスペックが異常であり、ナザールも自身の変化した肉体に慣れる為に日々特訓を重ねてきた。故に彼女の精神と肉体は完全に馴染んでいる。



「ハハッ!まるで水殴ってるみてぇだ!全部流されてるわ!」



「…………」



ガゼルが嬉しそうに叫ぶ一方でナザールは無表情の無言で返した。



ただガゼルが攻撃を仕掛けてナザールが流す攻防が続いていたその時、ナザールが持つ剣に嫌な音と共に僅かに亀裂が走った。



ナザールが今使っている剣はルナティアが数打ちした訓練用の剣であり、頑丈さは折り紙付きだ。しかし、いくら頑丈といえど何度も攻撃を受けて流していればいずれ壊れる。



「………っ」



ナザールはそこではじめて僅かに顔を歪めた。剣の耐久は亀裂から見てガゼルの拳2発か3発受ければ砕け散るだろう。



一度間合いを取って新しい武器に持ち帰るにしてもガゼルの猛攻がそれを許さない。



なら、どうするか。



ナザールは一瞬の間に思考を巡らせて1つの考えに至った。それは…………



「ーーーハッ!!」



猛攻の隙に斬りかかり、わざと剣を砕け散らせた。



「ーなっ!?」



ナザールの剣撃を腕でガードしたガゼルは急に砕け散った剣に驚き、ふいに攻撃を止めてしまった。



ナザールはその隙を見逃さず、すかさず自らもガゼル同様拳を握り締めて叩き込む体勢を作った。



ガゼルもナザールの拳を相殺するべく同じ様に拳を打ち込む体勢を取り、繰り出した。



そして2人の拳は交差することなく、互いの拳がぶつかり合いーーー



『『ドパンッ!!』』



両者の拳が肘丈まで爆ぜた。



驚きと僅かな悲鳴が木霊する訓練所でナザールとガゼルはお互いに距離を取り、体勢を立て直した。



「まさか俺の拳が打ち合わせで爆ぜるなんてなぁ…………。生まれてはじめてだぜ」



「…私もこの世界に来てからは初となる。この様な負傷は。お前は他の者とは違う様だな」



「おう、そうかい。そいつは光栄だ」



そう会話している間にも両者の腕は瞬く間に再生し元通りとなった。それは2人が人外の領域にいる事を示す証拠でもあった。



「…ガゼル・ドラゴロード、貴殿に問う。貴殿はこの決闘に於いて何を思い、何を成し得たい?答えろ」



ナザールはガゼルにそう強い意志を込めて聞いた。



「最初は俺が強者である事を示す為だったが、今はただお前という強者と闘いたいと思いで満たされている。己の全力をぶつけて本気の俺を見せつけてぇさ!!今の俺は戦に身を投じる戦士だ!!」



ガゼルはそう笑いながら言い、すぐさまファイティングポーズを取った。すると彼の全身から黄金のオーラが発生し彼を包み込み、彼自身の存在感と闘気が大きく跳ね上がった。



「……そうか。ーーーならば、私もそれ相応の敬意を示さなばいかんな」



ナザールはそう言い切ると全身が黒い光に包まれて、服装は露出度の高い漆黒のドレスアーマに変わり、翼の様に展開された10本の闇色の剣が背後に浮遊した。そして、右手には片刃の漆黒の大剣が握られていた。



それはナザールの完全武装形態であった



「ーーー戦士ガゼル・ドラゴロード。私は今ここで貴殿を"挑戦者"と見なす。ーーーーーーー全力で来い。私を楽しませろ」



ナザールがそう言った瞬間、強烈な威圧と心臓を握り潰されると錯覚する壮絶な殺気が辺り一帯に叩き付けられ、周りの草木もその殺気により枯れ果てた。



そして、普段なら無表情のナザールは口元をまるで三日月の如く裂けて笑い、十字の瞳孔が収縮するほど爛々と目を輝かせた。



「ーーー俺は底辺から己が拳一筋で成り上がり、この世界に於いて"世界最強"を手にした龍人族の王ガゼル・ドラゴロードなり。今はただの戦士として貴女に立ち向かう」



ガゼルはそう言い、更に自身の闘気を高めた。



「…いいだろう。さぁ、始めるとしようか!」



「あぁ!望むところだッ!!」



こうして、2人は再度決闘を始めた

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