魔王城の賑やかな騒動〜5
〜sideアリシア〜
波乱から始まった会合は昼休憩を挟んでまた始まった。というかルナティア達のおかげで会合なんていう雰囲気ではなくなってしまったが。
「……………まったく、何故貴女達はこうも毎度喧嘩しているのですか。もう少し節度を持って行動してください」
「「すみません」」
現在、バルザックとスルースは地面に正座させられてカグラに説教を受けている。
「特にバルザック。貴女はいい歳なんですから不用意に煽るのは止してください。いいですね?」
「…………はい」
「スルース、貴女もやたら無闇に挑発に乗るんじゃありませんよ」
「…………わかった」
……………まるで子供を叱り付ける母親だな。
「少しは周りの事を考えて行動してください。ストレスが原因で既にアリシアさんは薬が手放せない生活になっているのですよ?」
と私の方に飛び火してきた。
「か、カグラ。私のこれは元からだから気にしないでくれ……」
「ですが、薬の減りが加速したのは我々が来てからでしょ?『七大罪龍』は個性の塊の様な存在ですから気苦労が絶えませんよ………」
とカグラはそう言ってため息を吐いた。
「おいカグラ、何常識人ぶってんや。お前こそぶっ飛んでるやろ。ウチ知っとるからな?休日に物陰からショタを鼻息荒く遠くから見つめてノールックでショタの半裸の絵を高速で描い『ジャコンッ』いやなんでもありません許してくださいっ!」
バルザックがとんでもないカミングアウトをした直後にカグラは聖母の様な微笑みを見せて例の超巨大な銃槍をバルザックに構えた。
「バルザック。言っていいことと悪いことの区別は出来ていますか?というか、その情報どこから?」
「近所の子持ちのお母様方からや。全身黒尽くめのトレンチコートでコソコソする奴はお前しかおらんやろ」
「……………………『ジャコンッ』」
バルザックの回答にカグラは再度笑みを深めて銃槍をバルザックに構えた。今度の銃槍は中心部の魔導具部分が高速回転をはじめ、青白い放電を放ち始めた。
「待て待て待てぇ!?なんで構えるんや!?そんなん受けたらウチどころか周りもひとたまりもないんやぞ!?」
「安心しなさい。これは貫通特化型ですから貴女以外はあまり被害はありません」
「そういう問題じゃなッ『ズガンッッ!!!』」
バルザックが何か言い終わる前にカグラはバルザックに向かって銃槍を発射した。するとバルザックが居た場所には巨大なクレーターが出来て近くにいたスルースは吹き飛ばされてどこかに飛んでいった。
銃槍はシュウシュウと白い蒸気を放ちながら止まり、ジャコンッという物々しい音を立てて直径が30センチ程の空薬莢が排出され地面に落ちた。
「……………お見苦しいところを失礼しました」
「い、いや、気にするな。それよりも………バルザックは大丈夫なのか?」
「問題ありません。水を与えればこの通りに」
カグラがそう言ってクレーター部分にバケツ1杯分の水をかけると水はまるでスライムの様にもぞもぞと動いて形を成していき、最終的に元のバルザックが現れた。
「し、死ぬかと思ったわ…………」
「嫁を残して死ねないでしょ?貴女は」
「誰のせいだと思っとるん!?というかその貫通弾なんか変わってないん?」
「ルナティアが気まぐれに開発した対高装甲貫通弾です。弾丸から半径1メートル範囲のオリハルコンクラスの耐久物を常時破壊し続け、神剛凶星鋼クラスの対象物ならば貫通します。更に電磁加速により2倍ほどの威力が付く代物です。それを1番威力を抑えた物になります」
「気まぐれでなんちゅうバケモン弾作っておるんやあののじゃロリ娘!?というか神剛凶星鋼クラスって何と戦うつもりなんや………。この世界だとオリハルコンが2番目なんやけど」
「ほんとそうですね。ですが面白いからいいではありませんか」
いや、面白いで済まされる話じゃないんだが…………
気まぐれに殲滅兵器作らないでほしい………
「ちょ、ちょっといいですかね?」
とその時、しばらく静かだったセシリアがカグラの方へと近寄ってそう聞いた。
「はい?なんでしょうか?」
「そ、その武器って………どんな物で?」
セシリアは目をギラギラさせながら息荒くそうカグラに聞いてきた。
セシリアはふたつ名の殲滅の機械王の通り、魔導具の製作にかなり熱を入れている。故に彼女から見たカグラの武器は非常に興味惹かれる物だろう。
「これですか?これはパイルバンカーの系統です。パイルバンカーは炸薬などで射出した杭を相手に打ち込む武器で普通ならば単発のみですが、これは10連装タイプかつ銃剣付きに改良してあるサブウェポンです」
「か、改良でサブウェポン?メインは別で?」
「はい。メインはこちらです」
カグラはそう言ってはじめて会った時に見た2メートル半程の大楯付きの超巨大2丁パイルバンカーを出した。すると、重さでカグラが立っている柔らかい地面が足1つ分沈み込んだ。
「お、おぉ!!スゲェ!!」
その重装な見た目にセシリアはキラキラした目でパイルバンカーを見ている。まるで憧れの物を見つけた子供の様だった。
「こちらは私のメインウェポンの『対巨獣殲滅双射突型銛』です。弾数20のフルオートでアタッチメント無し弾有りで片方6トン、アタッチメント有りで10トンになります。鎧などを合わせれば完全武装で40トン近くになります」
「ま、そのおかげででウチらの中で1番硬くて1番進軍速度が遅いんやけどな」
「進軍速度については召喚獣などで補っております」
「ねぇねぇ!弾ってどんなの!?」
「こちらですよ」
カグラがそう言って取り出したのは直径が20センチ程ある巨大な黒塗りの杭だった。私でもこれほど巨大な杭は見た事ない。
「こちらが通常弾になります。重さはだいたい100キロくらいでしょう」
「これが片方20発入っているっていうこと?」
「そうですよ。これだけでもかなり威力はありますが、なにぶん重量がアレですから使い手は非常に限られますし、何より撃った時の反動も凄まじいものです」
「使い手を選ぶ武器ならばなんでこれにしたの?」
「こうでもしなければ勝てない敵がわんさか居たのですよ。私達がいた世界には。それに…………カッコいいじゃないですか。巨大武装なんて!」
カグラはそう言うとむふんっとドヤ顔を決めた。
「わかるよ〜それ!やっぱり巨大魔導具を使って戦うの楽しいもんね〜」
セシリアもカグラの言葉に頷いて同意した。
……………案外この2人は気が合うかもしれない。
「それでそのパイルバンカー?は誰が作ったの?」
「製作者はルナティアです。今朝工房で大剣を派手に拵えていた人ですよ」
「なるほど!じゃあ、会いに行こう!」
とセシリアはパイルバンカーの製作者であるルナティアの元へ行こうとした瞬間、
強烈な威圧と心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が辺り一帯に叩き付けられた。
『『ーッ!?』』
ビリビリと空気が振動して息がし辛くなっていくその殺気と威圧に私は思わず膝をついてしまった。
「こ、これはッ、間違いないナザールや!!ナザールの奴、誰かと戦うつもりや……。誰やッ!?そんなアホな事する奴は!!」
と辛うじて立っているバルザックが焦った表情でそう言った。そして、その『アホな奴』に私は1人心当たりがあった。
「お、おそらく、カゼフだろう………。彼は最強の名を欲しいままによく誰彼構わず決闘を申し込むんだ」
「馬鹿かいなそいつ!?あの破壊神に喧嘩ふっかけるとか世界滅ぼしたいんかぁ!?」
「と、とにかく!早く現場に行きましょう!」
そうして私達は殺気と威圧の発信源である首都郊外にある騎士団野外訓練所へと急いだ。
次の話からがこの話で1番最初に思いついた箇所になります。
………書けるかなぁ?私




