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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
被虐の堕天使と傲慢の鉄杭聖女
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ティアムンクの土産〜2

私たちはとりあえず天人族の子供達を清めて食事を与えた。食事に関しては最初は食べようとはしなかったが、ティアムンクが優しく諭した(笑顔で脅迫した)お陰でがむしゃらに食べた。



あとはスルースが作った睡眠促進の香を焚いて眠らせた。そして、その日の夜に私たちはリビングに集まって会議をする事にした。



小鈴さんには子供達に何かあるとまずいから側に居てもらっている。



「……さて、あの子達をどうするかだな」



そう切り出したのはナザールだ。



小鈴さんが言うには天人族は伝説上の種族であり、女神ナシアナが定めた尊き種族……らしい。まぁ、別にどうでもいいが。



「まず、ティアは論外じゃな。孤児院も何が起こるか分からん。…………我々でなんとかするか?」



「やっぱりそうだよね………。というかあの糞女神の眷属って本当なの?全く気配を感じないんだけど……」



リュウエンの言う通り、あの子供達からは前にナシアナに会った時に感じた気配は見受けられなかった。さっき、ティアムンクに頼んで苗床になった大人を確認したら微かだがナシアナの嫌な気配を感じた。どういう事だろうか?



「………というかチビ助。さっきからお前何やっとんや?降霊術でもするんか?」



とバルザックが先程から何かの準備しているスルースに聞いた。



「似た様なもの。邪魔しないで」



スルースは小さな筆で円を描き、その中によくわからない文字や記号を大量に描いて周りを蝋燭で装飾している。側から見れば怪しい宗教の降霊術の様だった。



「…描けた。みんなの血をこの杯をいっぱいになるまで満たして」



そう言ってスルースが出したのは少し血が入った大きな杯だった。



「…この杯を血で満たせばいいのか?」



「そうだよ。お願い」



「…わかった」



ナザールは特に何も聞かず、手首を切って杯に流し込んだ。



「はい、次バルやれ」



「わかったわかった。やればええんやろ?」



そうしてバルザック、ティアムンク、リュウエン、私と続けてスルースに渡された杯を血で満たしていく。



「はい完了。始めるよ〜」



杯が満たされたのを確認したスルースはその杯の中身を墨で描いた円の中にぶちまけた。すると血は円の中に留まり、小さな血の池が出来た。



「なぁ姉。これで釣り上げて」



次にスルースがナザールに手渡したのは大きな釣竿だった。



「…釣り上げる?」



「そう。これで上手くいく筈」



「…………………そうか」



ナザールはスルースから釣竿を受け取り、血の池に釣り糸を垂らした。釣り針は床に着くことはなく、そのまま血の池に沈んでいった。



『…………………………』



誰もが言葉を発さず、聞こえるのは遠くからの街の喧騒のみだ。



「……………………ッ!!かかったぞ!」



ナザールは目をカッと見開き竿を力任せに引き上げた。ーーーーすると。



「ニギャアアアアアアアッブベェ!?」



勢いよく少女が飛び出して天井に激突した。



古めかしい服を着ていて、狼の様な耳に長い黒髪の少女でその顔と少女から感じ取れる気配には随分と見覚えがあった。



「痛たた…………、もうっ!こんな乱暴な降臨は生まれてはじめてだよ!僕のプリティなお顔が歪んだらどうしてくれるのさッ!!」



それは私たちをこの世界に転生させてこの身体を与えてくれた邪神イスチーナ様だった。




***



「まったくもうっ………君達は常識はないのかい?僕を呼び出すなら神殿に行きなよ」



イスチーナ様はぷりぷりと怒りながら出されたお茶と茶菓子を食べて飲んでいた。



「僕を呼び出した理由は天人族の子供達についてでしょ?なんで知っているかって?そりゃあ、君達は僕の眷属だからね。四六時中見ていないけど、今日の周りで起こったことはわかるんだよ」



むふんっとドヤ顔で笑うイスチーナ様。



「それであの子供達からあの糞女神の気配がしない理由はどうしてじゃ?」



「それはあの子達はまだ洗礼を受けてないからさ。洗礼を受けないと彼らはナシアナの加護を得られないからねぇ。まぁ、ナシアナが完全消滅した今じゃあこれから先、あり得ないからねぇ」



私の質問にイスチーナ様はなんでもない様にそう言った。



「というか、君達ほんとに好き勝手やったねぇ………。ナシアナの完全消滅にその眷属の事実上絶滅、人類なんて滅亡待ったなしだよ」



「…別に滅ぼそうとしてやった訳ではない。向こうが最初に引っ掛けてきたのだ」



「……それでも周りの被害が甚大なんだけど。まぁ、いいか。とりあえず天人族の子供達には夢の中で私の眷属にしておくからね。あとは宜しくね〜」



イスチーナ様はそう言って席を立ち、血の池に入っていった。



「あ、そうだ。ねぇ、みんな。僕の世界は気に入ってくれたかな?」



イスチーナ様は身体半分まで血の池に浸かった時、ふと思い出した様に私たちに聞いた。



「んなもん気に入ったに決まってるやろ。可愛い嫁さんできたしな!」



そう笑いなから言うバルザック。



「…ここは自由にできるからいい。………全力を出せないのは些か不満ではあるが」



珍しく周りから見てわかるくらい顔を緩ませて言うナザール。



「気候穏やか、みんないい人、居心地いいよ」



ほわほわとした笑みでそう言うスルース。



(わたくし)はまだこちらに来て間もないですが、見た限りでは過ごしやすい場所ですわ」



ふふんっと腕を組んでそう言うティアムンク。



「私はルナちゃんにまた一緒になれて嬉しいし、この世界はとても過ごしやすいよ」



私の片腕を抱いて笑いながらそう言うリュウエン。



「この世界は我にとっても過ごしやすいし、何より自由気ままに過ごす事ができる。故に我はこの世界を気に入っておるよ」



私はもう既に1年近く過ごしているこの世界のことを考えてそう言った。



「そっか………、気に入ってくれて良かったよ。それじゃ、またいつか会える日まで。君達に邪神の祝福があることを願おう!」



そうしてイスチーナ様はめでたいのかよくわからない事を言って去っていった。

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