ティアムンクの土産〜1
*人によっては不快になる描写があります。
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あの後のことは私は覚えてない。
頭にモヤがかかったみたいにぼんやりとしていて、けど、凄く興奮したというくらいしか覚えてない。
気づいたらベッドの上で雁字搦めに拘束されていた。リュウエンに聞こうにもリュウエンは顔を真っ赤にして可愛いらしい悲鳴を上げて逃げてしまった。
…………………一体、なにしたんだ?私は。
「あ、そうですわお姉様。お姉様にお土産がございますの♪」
朝食を食べ終えて仕事の支度をしていた時、ティアムンクが私にそう言ってきた。
ティアムンクは被虐欲求が高まると先日の様なことになる。その被虐欲求が収まると一応まともになる。
「なんじゃティア。ここに来る前にどこか行っておったのかの?」
「えぇ、見渡す限り真っ白な場所でしてね?そこでのんびり待っていましたら、あの糞女神に似た気配を持つ一団がやってきまして、それと遊んでいたのですの」
「お前…………ほんとどこ行っておったんじゃ………」
糞女神に似た気配って…………おおかたあの女の眷属だろうが、そんなのがいたのか………。
「つまりはお土産とはそこで得た戦利品というわけじゃな。………仕事が終わってからでも良いか?」
「あー…………それは別に構いませんが、ナマモノが多いですので………」
「お前ほんと何持ってきたんじゃ」
ティアムンクの少し気不味そうな顔をして私は呆れた。
「……わかった。傷み物ならば地下の冷凍庫に入れておいて欲しいのじゃ」
「えぇ、わかりましたわ」
そうして私は仕事に向かった。
***
仕事が終わり、全員が帰ってきた後ティアムンクのお土産をリビングで確認することにした。そのお土産は全部が全部趣味の悪い金ピカで溶かしてインゴットにすればそれなりの価値が出るだろう。
「これまた趣味の悪い金細工やなぁ〜。ただ豪華なだけやでこれは」
バルザックは宝石で装飾された金の盃を検分しながらそう言った。
「貴金属はその物品の資産価値や財産性を高める為に使いますが、これはやり過ぎですね……。バル様の感性からもこれは駄目ですか?」
金の鎖で作られた瞳サイズのダイヤモンドの首飾りを手にしながら小鈴さんはバルザックに聞いた。
「ウチはこんな金ピカなのは嫌や。そこのティアの様なワンポイントに金が使われているのならいざ知らず、こんなに使っていたら返って品格を疑うものや」
「そうですか………。確かに私もこんな物貰っても嬉しくありませんし。あ、でも気持ちが籠っていれば嬉しいですよ!この前、バル様からくださった真珠の首飾りはとても嬉しかったです!」
「にゃはは!確かにそうやなぁ!しかし、ちまちま集めた甲斐があって良かったわぁ」
バルザックはそう言って笑い、小鈴さんも一緒に笑った。
バルザックの言う通り、こうまで金で覆われていると返って気持ち悪い。まぁ、金は魔力の伝達率が高い魔銀やオリハルコンといった魔鉱金属の材料にもなる為、魔導具技師の私としては嬉しいが。
「しかし、あのバルザック様がご結婚なんて………、驚きですわねぇ」
ティアムンクはバルザックと小鈴さんの様子を見てそう言った。
「………………………なんでみんなウチが結婚したことに驚くんや」
「いやだって、貴女は自由を愛する海賊女帝でありましょ?それによく酒の席で結婚なんてあり得ないとか豪語していたではありませんか。そんな貴女が一目惚れして、他人事には首を突っ込まない主義の貴女がそれを破って解決するなんて………。しかも、その一目惚れは無自覚だなんてっ」
「それはその………………別にええやろがっ!」
ティアムンクはバルザックを揶揄いながらそう言い、バルザックは顔を赤くして机を叩いた。
「まぁ、それはいい事ですわ。……小鈴様。貴女の旦那様は普段の物言いから軽く見えますが、その内は一途であります。どうか、末長くお幸せに」
ティアムンクはバルザックを揶揄うのを切り替えて小鈴さんにそう言った。こういうところがあるから嫌いになれないのだ。
「わかっておりますティアムンク様。バル様の愛は毎日感じております故に」
小鈴さんがほわほわと幸せそうな笑顔でそう言えば、バルザックは髪まで真っ赤にして机に突っ伏した。微笑ましい空間がリビングの中を満たしていく。
「そういえばティア。朝言っていたナマモノとは一体どんな物じゃ?」
私は今朝、ティアが言っていたことについて聞いてみた。
「あぁ、それでしたら少々お待ちくださいませ」
ティアはそう言うとリビングを出ていき、少し大きめな物音がした後に麻袋を担いで戻ってきた。その麻袋はもぞもぞと蠢いていた。
ナマモノって生き物かいな…………。
「こちらになりますわ」
ティアムンクは少し乱暴に床に置いて麻袋を開けた。
麻袋の中には金髪碧眼の少女であり、背にはティアムンクのよりかは可愛らしい翼が生えていた。
「こちらは天人族の幼体でありまして、その悪趣味な金細工を作っていた女神ナシアナの眷属であります。雄の成体は私が殲滅してしまい、雌の成体も私の可愛い眷属達の苗床になって貰いました故に雌雄ともに幼体のみとなっております。さぁ、どうでしょうか?玩具にするのも良し、魔導具の素材にするのも良し、躾けて側に置くのも良し。なんでもありですわぁ」
ティアムンクはそう言って天人族の少女を撫でながら笑いかけた。すると天人族の少女は酷く怯えた様子でガタガタと震え出した。
「…ティアムンク。一体お前はなにしたんだ……」
ナザールはその様子を見て呆れながらそう聞いた。
「はい?……あぁ、なんかコレの国がお姉様達に復讐だーとか血祭りだーとか汚く叫んでいましたのでその戦士 (笑)の一団を駆除しましたの。それでそのまま私の自慢の軍隊で蹂躙しましたわ♪」
ティアムンクの説明に小鈴さんを除く私たちは天人族の悲惨な末路に心から合掌した。
ティアムンクが言う自慢の軍隊……それは私の《セフィロト・シュヴァリエ》をティアムンクが真似して作った魔改造吸血鬼の軍隊、《ヘルシング》である。
ステータス、スキル構成、武装など全てが一級品であり、死すらも恐れない狂気の吸血鬼軍隊。しかもティアムンクの手により吸血鬼以外にも様々なモンスターの特性を混ぜ込んだハイブリッド吸血鬼軍隊、それが《ヘルシング》である。
『nightmare memory』でプレイしていた時、ティアムンクとははじめは敵対関係であり、私の《セフィロト・シュヴァリエ》とティアムンクの《ヘルシング》はよく衝突を繰り返している為にそれの恐ろしさは誰よりも知っている。
「お姉様達を血祭りにあげると言っていた割にはすぐに鎮圧されてしまいまして………。はじめのうちは騒いでおりましたがまぁ、これの前で成体を喰べて差し上げたらこの様に大人しくなりましたわぁ。……………ねぇ?そうですわよねぇ?」
ティアムンクはそう言って天人族の少女を抱き上げて少女が顔を近寄せると、ぬるりと少女の頬を舐めた。それだけで少女は見るからに死にそうなくらい青褪めてその顔を恐怖に染めた。
私と同じく《食人》を持っているティアムンクだから確実にその子の前で親を喰べたのだろう。反応から見て明らかだ。
「……ティア、もう虐めるのはよせ。それとその子を我に」
「お姉様も喰すのでしょうか?これは人間と違って少し苦いですわよ?」
「違う違う。我は喰わんよ。少し見るだけじゃ」
「………?わかりましたわ」
頭に疑問形を浮かべるティアから天人族の少女を受け取り、抱きかかえてみる。体重は非常に軽く、煤や垢で汚れてはいるが綺麗な顔立ちをしているのがわかった。
「てぃあ姉。あの子と同じ天人族はあと何人いるの?」
「14人ですわ。どうやら子供は1組に1人となっていた様で手頃なサイズのものはそれくらいしかおらず、あとは徴兵されて私に蹂躙されるか苗床になっておりますわ」
「ふーん…………つまり、生き残りはそれだけなんだ」
「そういう事になりますわね」
私はティアムンクとスルースの会話を聞きながら、今だ震えている腕の中の天人族の少女をどうするか考えた。
お陰様で総合評価が1,000を超えました。
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