亡霊の海賊船団〜1
"強欲龍"バルザック・セレスト。
水の中に於いて自他共に認める最強の海賊女帝。『フライング・ダッチマン』をはじめとする数多くの水棲アンデットやモンスターを配下にしており、その圧倒的な殲滅力と絶望的なまでの巨大戦力からプレイヤー間では畏怖と恐怖を込めて『冥海の死神』と呼ばれている。
そんな船乗りの悪魔の異名で呼ばれているバルザックは………。
「なぁなぁ、リュウちゃん」
「………なんですか?」
「今日までルナと何回セッ○スしたんやッブホォ!?」
開口早々にリュウエンに夜の営みについて聞いて顔を真っ赤にしたリュウエンに捻りを加えたボディブローを決められていた。
「…相変わらずだなバルザック」
地面に沈むバルザックをゴミ虫を見る様な冷ややかな目で見るナザール。
「茶番はそこまでにしてじゃな…………。バルザック、ヌシはここ最近、人間の奴隷船を襲ったか?中には亜人や獣人の子供達が乗っていた筈じゃ」
私はバルザックを引き上げた目的について聞いた。
「奴隷船?……あぁ!あれか!確かに襲ったやで。仰山可愛子ちゃんがおったから、ウチの拠点に歓迎したんや。人間はそこら辺の海竜の餌にしたがな」
ハッハッハッとそのスイカサイズの胸を揺らして笑うバルザック。その言葉にやはりかと私は思った。
「…その子供達は無事か?」
「ウチを誰だと思っておるん?可愛子ちゃんの正義の味方で紳士なウチやで!」
「…紳士ならその手に握り締めているのはなんだ?」
ナザールが指摘するバルザックの手には彼女を誘き寄せる為の"餌"があった。
特徴的な三角形で材質は絹か綿だろう。オーソドックスな白に可愛らしいリボンがつけられている。
……………………そう、それは下着だ。しかも小さな女の子用の。
「これはウチの戦利品や。…………できれば使用済みが良かったのぉ」
『…………………………………………………………』
辺りを包むなんとも言えない静寂。
今更ではあるがバルザックは変態である。
***
そうしてナザールのバルザックに対しての交渉 (物理)により子供達は地上に戻って来れた。
バルザックは変態だが、一度取り入れた者は大切にする為、奴隷の首輪は外されて怪我をしていた子は治療されており、服も新調されていた。
子供達はすぐに親元に返される手筈になっているからそっちはバロメッツさん達に任せよう。
そしてその日の夜………………。
「にゃはははッ!やっぱ酒は最高やなーー!!」
港町にある漁師行きつけの酒場で私たちはバルザック主催の宴をしていた。魚介類を中心とした料理の数々は内陸部にある城下町では味わえない物だ。
「ルナちゃん。あ~ん♪」
しかも隣のリュウエンが私の肩を叩いて「あ~ん」してくれる。これで美味しい料理が更に美味しくなるものだ。
「おふたりはこっちでもお熱いなぁ。酒が甘くなるわぁ」
とバルザックは酒樽ごと葡萄酒をラッパ飲みしていた。これは既に3樽目だ。その異常な光景に他の客も驚いている。
「…それは甘口の葡萄酒だからだろ」
一方でナザールは樽ジョッキ片手に足を組んで優雅に魚料理を嗜んでいた。やはり、美人はどうやっても映えるなぁ…………。
「そういえば、バルザックさんはこの世界に来てから何をしていたのですか?」
とここでリュウエンがバルザックに聞いてきた。
「うん?ウチが転移したのは海のど真ん中の無人島やったで?まぁ、船召喚して人間の船を襲って略奪して沈めたり、海竜と戯れたりしたおったよ」
にゃはははと笑うバルザック。彼女なりに楽しんでいた様だ。
「んで、これからウチはお前さんらについて行けばいいんか?それとも今までの様に海で自由にすればいいんか?」
「できれば我らと一緒に来て欲しいのじゃ。まぁ、仕事に関しては斡旋してくれる場所があるから心配無い」
おそらくアリシアの胃がマッハで崩壊するだろうが……………。
「そうかいな。なら、そっちで世話になるか。ルナ達の夜の営みとか見たいからなぁ……ぐへへ」
「姉上。此奴は夜には樽に詰めて監禁しておいてくれんか?」
「…わかった」
「ちょっと!?なんでウチだけ辛辣なんやァ!?」
「「「それは日頃の行いだ」」」
こうして私たちの住まいにバルザックがやって来ることになった。
そんなこんなで楽しく宴をしていると酒場の出入り口が勢いよく開いた。見るとそこには息を切らしたバロメッツさんがいた。
「『七大罪龍』の皆様、早く海上保安庁に来てくださいッ!一大事であります!」
なんだか嫌な予感がした。
デイヴィ・ジョーンズのテーマは私が1番好きな曲です。
歌詞付きも切なさと荒々しさも相まってとても素晴らしい曲であります。




