転生して〜1
7/9 主人公ステータス一部追加
気がつくと、鉄臭い匂いと粘着くじっとりとした空気に包まれた荒地にいた。
見渡せば辺り一面は血の海で鎧を来た人間達と浅黒い肌と角を生やした人達が呆然としながら私を見ていた。
身を包む圧迫感のある拘束服に血塗れの外套。視界の端に映るサラサラと流れ落ちる赤銅色のまだら模様のある銀髪と骨のみの翼と尾が見えた。
「───ふむぅ?」
声を出してみると鈴が鳴る様な声が自分の喉からした。
「なんじゃ?ずいぶんと血生臭い場所じゃの」
普通に喋ったつもりが口から出たのはのじゃ口調になっていた。まぁ、これはゲームでロールプレイしていた時の口調だからいいが、問題は姿だ。
イスチーナ様には悪いが少し疑問に思っている。"本当にあの姿なのか"と。
とここで、どこからともなく空から一枚の紙が降ってきた。それを掴み取って見ると何やら文が書いてあった。
************************
『拝啓、天野 澪様もといルナティア様。
この手紙を読んでいるということは既に転生はお済みでしょう。
その世界は現在、私を信仰する魔族と亜人族vs私の敵対関係であるナシアナを信仰する人間族と大規模戦争をしています。
色々とありますが良い世界なのでこれからの人生を楽しんでください。
餞別として魔法の鏡を貴方様のアイテムボックスに入れておきましたのでご自身の姿を確認してください。スキルや魔法の使い方はその身体が覚えていますので後々慣らしていってください。
みんなの邪神、イスチーナより』
************************
イスチーナ様からの手紙でした。頭の中を探ってみると確かに使い方などはきちんとインプットされていました。
私はゲームでストレージを開く要領でアイテムボックスを開いた。すると電子音と共に平たい画面が出てきて、1番上にあった"神製姿見"というやつを引っ張り出して立ててみた。
その姿見には『nightmare memory』で慣れ親しんだ私のアバターが写っており、私の動作に一部の狂いも無く行動を模倣した。
足まで伸びた血が飛び散った様に見える赤銅色のまだら模様のある絹の様は銀髪、目端が下がった眠そうで十字の模様のある金眼、引き裂く様に爪痕が入った左頬と小さな鼻に八重歯が印象的なあどけなさの残る顔つき。
革ベルトを絡み合わせたような全身拘束衣を身を包んでおり、その上から血塗れの神々しい紋様の入った元は白い外套を羽織り、頭には真っ赤に染まったウィンプルと魔法陣が描かれたベールを付けている。両手両足首には幾何学模様の入った重厚は枷がつけられていて、腰には肉切り包丁や釘抜き、モーニングスターなどがぶら下がっている。
最後に頭には捻じ曲がった剣の様な4つの角に、真っ黒な骨格のみを残した4対の翼と2メートルくらいの尾が生えている。
続いて私はステータス画面を開いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルナティア・フォルター
種族:天魔邪龍
カルマ:クリフォト
職業:拷問帝
レベル:100
HP:8.6万
MP:2.3万
称号:背信者・堕ちた龍・闇を喰らいし者・神殺し・同族喰い・人食主義・厄災・人類の絶望・マギアクラフター・血塗れの悪夢・七つの大罪 《暴食》・愛する心を持つ者
加護:邪神の加護・堕天龍の加護
【固有スキル】
龍の金剛体・龍眼・龍滅魔法・龍化・痛覚強化・肉体解析・調教・精神汚染・威圧・暴食の骸
【スキル】
翻訳・アイテムボックス・深淵魔法・精神魔法・人体破壊魔法・拷問魔法・鍛治魔法・機械技師・ゴーレム生成・食人・加虐快楽・魔導具制作・眷属召喚 ・火炎完全耐性・炎熱完全耐性
頭部:『呪血塗れのウィンプル』【反転】・【破壊不能】
胴体1:『呪詛龍の拘束具』【天邪鬼】・【破壊不能】
胴体2:『穢されし天の羽衣』【侵食】【破壊不能】
メイン武器:『嘆きの翼』【聖母の虐殺】・【破壊不能】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ステータス画面を見るとそれは『nightmare memory』で見慣れた私自身のステータスだった。
それを見終わりふと姿見を見るとそこには歪んだ笑みを浮かべた私の姿があった。
「──あぁ、最高じゃ。最高に、愉快なことじゃッ!!アハハハハハハハハッ!!!」
私は天を仰ぎ、イスチーナ様に感謝した。
サァ、タノシイタノシイジカンノハジマリダ。
***
静寂が包む戦場に鈴の様に可憐な音色の狂った笑い声が響き渡った。
数刻前………
人類と魔族の戦争の最前線であるこの場所には戦争で初となる勇者が投入されることから魔王も戦場に来ていた。
敵味方入り乱れる戦場の最中、突如として発生した高密度な魔力。
双方どちらも敵側が殲滅魔法を放ったと考えたが、それは違った。
巨大な闇を纏う光の柱が天から降り注ぎ、魔力を荒野一帯に撒き散らした。その魔力には数え切れぬ程の恐怖と絶望の感情がこびりついており、負の象徴たるアンデッドですら無意識のうちに立ちすくんでしまった。
「……………なんだあれは」
その光景を呆然としながら見ているのは人間から"魔王"と恐れられているアリシアだった。
短く纏めた金色の髪に吊り上がった灼眼、男よりも女受けしそうな美女で、見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあり、女性として完成したプロポーションを誇っていた。闇に溶け込んでしまいそうな漆黒の鎧を着て、腰には氷の様に刀身が透き通った剣を帯剣していた。そして、背には"吸血鬼"を象徴する蝙蝠の翼が生えている。
『アリシアさん〜!聞こえる〜?』
呆然としていたアリシアの脳内にイスチーナの声が響いてきた。そう、彼女はイスチーナの加護を受けた眷属でもあるのだ。
「イスチーナ様ッ!?あれは一体なんなのですか!」
『あれはね、僕の新しい眷属さ!別の世界でナシアナが連れてきたけど勇者召喚であぶれちゃった子でね?それがめちゃくちゃ強いの!』
「新しい眷属ですか?」
『そうそう、名前はルナティア・フォルター。勇者に匹敵する強さを有している逸材さ』
「そうなんですか!なら、すぐに保護を……」
『あーー………、それはちょっと待ってね』
アリシアがルナティアを保護しようと駆け出した直後、イスチーナは待ったをかけた。
「何故ですか!?早くしなければ殺されてしまいますよ!」
『それは大丈夫だよ。というか今あの子に近づくと殺されるよ?』
アリシアの懸念はルナティアがまだこの世界に慣れていない時に勇者に殺されるということだ。故にイスチーナが止めた理由がわからなかった。
『ルナティアちゃんはね、この世界よりも過酷で残虐な世界で恐れられた存在なんだよ。彼女は人間を好んで拷問で痛めつけたりして楽しんだりするサディストでね?平気で人間や同族を喰ったりしていたんだよ。そして、今の彼女は腹ペコ状態、これで分かった?』
イスチーナの説明でアリシアは言葉を失った。そんな危険人物を眷属にしたのかと………。
『あ、でもあの子は基本的に魔族には優しいよ?むしろ人間を憎んでいるからね。だから、あの子の"食事"が終わるまで少し待ってね』
イスチーナがそう言い終わった直後、鈴の様に可憐な音色の狂った笑い声と生き物が発するには歪で身体の内側を抉る様な不快な咆哮が戦場に響き渡った。
その声と咆哮を聞いた途端、アリシアは心臓を鷲掴みにされた様な感覚に襲われた。
『あ、始まった。ルナティアちゃんの声には精神を狂わせる効果があるんだよね。しかも、自分の眷属まで呼んでるよ。ありゃあ、人間はおしまいだね』
イスチーナがそんなことを言っているがアリシアの頭には入ってこなかった。何故なら目の前には正気を疑う様な地獄が展開されたからだ。
ステータス説明。
基本的に私の他作品と同じです。
カルマ:『nightmare memory』において最も重要なステータス。簡潔に説明すると善悪の数値。善に傾いているか悪に傾いているかで受けられるクエストや習得できるスキルなどが決まる。
善の最高ランクが《セフィロス》、悪の最高ランクが《クリフォト》となる。