怒り〜1
どうも、私はルナティア・フォルター。
顔も知らんクソ女神の勇者召喚に巻き込まれて死んで転生して、邪神の眷属になった普通の女の子。
異世界でのんびりしようかな〜、と思ったがあいにく世界は戦争真っ只中。どうしようかと悩んでいたら、私の嫁とよく共に冒険した仲間が私を追いかけてやってくると邪神から聞いたから魔王と協力して人間をプチプチ潰しながらみんなを探しています。
嫁はすぐに再会できたし、先日、仲間のひとりである姉が見つかったので順調である。
………………………まぁ、ここまでのあらすじはもういいか。
今私は戦場にいる。
「死ねぇえええ!!!」
「うっさい」
バヂュンッ!!
なんかうるさかったから潰した。すると骨の欠片も残さずにそれは血溜まりとなった。
私が戦場にいる理由はアリシアから助っ人の依頼が来た為である。
世界初の大規模戦争において質は魔王軍が上だが、数は人類軍のほうが多い。いくら強くても物量戦になれば負けてしまうかもしれない。しかし、数を増やそうにも魔王軍はどこも人材不足である。そのため、私たちが戦場に出向いて手助けをしているのだ。
「しっかし、味気ないものじゃのぉ」
正直言って暇である。相手さんは少し触れれば弾け飛ぶ様な貧弱ぶりだ。どこの初心者向けのフィールドだよ…………
「………む?なんじゃこれ?」
とここで血溜まりの中から小さな小瓶を見つけた。拾ってみると中には淡く光るオーブが入っていた。その光は弱々しいものの、どこか慣れ親しんだものだった。
(…………この光、どこかで)
私はその見覚えのある光について記憶を漁っていると、
ーーーータスケテ
「………………ん?」
声が聞こえた気がして辺りを見渡すも一面血の海のみ。つまりは私以外は誰もいない。
ーーーータスケテ
「ッまたか……、まさかこれか?」
私は声の発信源と思しき光る小瓶を調べた。封印の刻印が刻まれた至って普通の小瓶、振ったりしても音はしないよくわからないものだった。
そんな時、ふと私の脳内にリュウエンの顔がぽや〜っと浮かんで消えたことでその光がなんなのか思い出した。
「ーーーーあぁ、精霊か」
精霊は『nightmare memory』においてストーリーなどによく登場する重要な種族である。
火、水、風、土の四元素精霊が基本であとは闇や光、変わり者だと鉱物や毒の精霊などがいる。魔法を扱う者にとって精霊は身近でいて無くてはならないとても大切な存在である。
ちなみにリュウエンの種族である"煉獄龍精"は精霊と炎龍のハーフという設定を持っている。
ーーーーダレカ、タスケテ
「あぁ、わかった。今出してやるぞ」
私は小瓶を開けて中の精霊を解放した。随分と弱っていた為、MPを回復するMP回復ポーション(霧吹きバージョン)を吹きかけて回復させた。
すると、光の球体だった精霊は白いワンピースを着た真っ白な手のひらサイズの女の子になった。
ーーーーアリガト、タスケテクレテ
「別に構わんよ。精霊はよき隣人、隣人同士助け合うのが基本じゃよ」
ーーーーソウナンダ…、アナタカラリュウセイノニオイガスル
「それは我の嫁じゃな。我が嫁は煉獄龍精という炎の龍精じゃ。して、何故にこんな小瓶に入れられておったのじゃ?」
私は疑問に思ったことを精霊に聞いた。アリシアとの情報共有の際、この世界の精霊の立ち位置は『nightmare memory』と同じであるとわかっている。そんな精霊を小瓶に封印まで施して閉じ込めるなどあり得ない話である。
ーーーーワタシ、ニンゲンニツカマッタ。ニンゲン、ワタシタチヲドウグノヨウニリヨウスルノ。ツカエナクナッタラステラレル。
「ーーーーーーーーなんじゃと?」
私は精霊の説明を聞いて頭に血が昇るのを感じた。
物みたいに扱う?使えなくなったら捨てる?………この世界の人間共は腐っているのか?私が契約している者にも精霊はいる。前に召喚して話をしたが、人と変わらない感性を持っていた。
そんな精霊をーーーーーーー。
「お、いたいた。うっわ…………すげー血の海じゃん、やっぱあれが魔王か?」
そんな戦場に似合わない軽い調子の声が後ろから聞こえてきた。振り返るとそこには二度と見たくなかった顔があった。




