幕間〜バケモノと呼ばれた少女
拾われてから何日経ったかわからない。
私を拾った人は『鬼龍院 椿』というお嬢様。真っ白な髪の毛と青っぽい薄い色の目という見たことない色をしている人。いつも丁寧口調で掴みどころがない人。あとは凄くお金持ちだってことくらいかな。
なんでそんなお金持ちのお嬢様が私を拾ったのかはわからない。ただ、わかることは私はここから逃げられないってこと。………別に逃げないけど。
だってここの生活はあの家よりも格段にいいし。
ご飯もちゃんと食べれるし、身体も綺麗にしてくれるし、静かだし。不満があるとすれば少し臭うくらいかな。
私は昔から耳と鼻がいい。あと夜も明るく見える。
だって私はバケモノだから。お母さんもお父さんも私のことバケモノって言っていたからバケモノ。
バケモノは人間じゃない。人間じゃないからあの2人は毎日私に向かって嫌な顔して叫んでいる。
叩かれはしない。前に叩かれて叩き返したら、あの2人は余計に怖がる様になったから。
私はバケモノ。人間じゃない。
***
「またぼんやりとしていますね澪様」
縁側で日向ぼっこしていたら後ろから椿ちゃんが抱きついてきた。ちなみにこの呼び方は彼方さんが提案してきた。
「────椿ちゃん?」
「そうですわ。椿ちゃんですよ〜。ふふっ」
と椿ちゃんは機嫌良さそうに笑ってそう言った。
椿ちゃんは暇さえあれば私の側に来て抱きついたりして話しかけてくる。1番びっくりしたのは朝起きた時に布団に潜り込んでいた時かな。それも全裸で。
「日向ぼっこは気持ちいいですか?」
「…………」
椿ちゃんがそう私に聞いてくる。私はそれに頷いて返す。あの家だとこうすると舌打ちされたけど、こっちだとそれはされない。
だから、気楽でいい。
と椿ちゃんは私が頷いて反応したことに気分を良くしたのか更に密着してきた。
椿ちゃんからはふんわりと石鹸の匂いとキツくない香水の香りと…………………僅かに何かが腐った匂いと血の匂いがした。
最初は気づかなかったけど、椿ちゃんからは良くない匂いがする。いくら洗っても落ちないくらいにべったりと付いている。
たまにここの下から何か物音が微かに聞こえてくるから多分それだ。
何なのか聞きたいけど、聞けば私も下の何かと同じ事をされる。バケモノの私だって痛いのは嫌だから。
「────澪様。澪様は私に何か聞きたいことがあるのでしょう?言ってみてくださいな」
と椿ちゃんが急にそんなことを言い出した。
「…………………何のこと?」
「誤魔化しても無駄ですよ。───もう気づいているのでしょう?この屋敷の地下に何があるのかを」
「…………………」
どうやらここまでの様だ。
私は椿ちゃんに手を引かれて例の地下に連れて行かれた。




