客室にて
案内された部屋はさすが歴史ある王城の客室ということもあり、家具はどれも一級品で調和を保っています。
……………ただ、全体的に赤みがかっているのが少々気になりますが。
「それでは食事の時間になりましたら侍女が呼びに行きますので先生はゆっくりしてください」
「えぇ、わかりましたわ」
メアリーはそう言ってアリシア様と一緒に去っていきました。もちろん姉妹水要らずの会話を邪魔する様な無粋なことはしません。
「………………さてと」
私は2人の気配が完全に離れたことを確認した後、髪を極細の触手へと変化させて部屋の中と外側に張り巡らせました。
この肉体は見た目こそ人ですが、実際は億もくだらないレベルの量の触手が寄り集まって人型を形成して出来ております。髪1本でも数百から数千もの触手でできており、自由自在に伸ばすことが可能です。
そして、その触手は全て自分の手足の様に扱えます。
(…………やはりいましたね。監視の感じからフロイラインの手の者ではない様ですから、おそらくはこの国の貴族でしょうね)
私はその無粋な覗き魔達を触手の毒で昏倒させ、目立つ場所に1箇所に纏めました。
「あとは………目隠しですね」
パチンッと指を鳴らせばそのワードで『精神魔法』のジャミングが働きます。こうすれば外から魔法などで見ていても私はベッドに座ってぼんやりとしているだけに見えるでしょう。
「……………さて、お前たちもういいですわよ」
私がそう呼びかけると足元の影が波打ち、私の影を基点にして5つの影が伸びた。その影はどれも私のものではない事が明白であります。
この5つの影は私が契約している真相ノ血族の源祖の5体であります。
普段は自由にさせておりますが、今回は旅の同行としてアリシア様に内緒で着いてきてもらいました。
そして、何か気になる事があれば報告する様にと言ってありますが、この王城に入ってからその報告がありました。
「………して?何様で?」
『この王城に気になる気配が感じ取れましたのでそれの調査の申請を』
「気になる気配?」
『はい。我々と同格かそれに準ずる者の気配です』
真相ノ血族の源祖と同格?………………確かにそれは気になりますわね。
「いいですわよ。ただし、逐一報告と危険と判断したなら即時撤退を厳守しなさい。それとくれぐれも気づかれない様に」
『『『『『了解』』』』』
そうして影達は四方へと散り散りとなって離れていきました。
「………さてさて、どうなることやら」
私はこれから起こるかもしれない楽しいことに胸を躍らせました。




