第一話 8
翌日、大学の講義が終わった後、天文同好会の部室に赴くと、運のいいことに部室にはみっちゃん一人しかいなかった。僕は思い切って、みっちゃんに声を掛けた。
「あ、あの、僕のことを知ってますか?」
「あ、はい、こんにちは。勿論ですよ。同じ会員の方ですよね」
「あの突然すみません、僕、君のことを好きになってしまったんです! 僕と結婚してもらえませんか?」
「ええーーーーーっっっっっ!!!!!」
「冗談じゃなく本気です! 君はいつも笑顔で親切だし、天文の知識も豊富で尊敬しています。生半可な気持ちじゃありません。僕は、君を一生幸せにしたいと思っています!」
「あの、ちょっと待って! 結婚より、まず、お付き合いから始めませんか?」
「お付き合いから、とはどういうことですか? 友達付き合いではなく、恋人付き合いととっていいんでしょうか?」
僕がそう言うと、みっちゃんは満面の笑みで頷き、「実は、私もあなたのことが気になっていたんです」と言った。僕は、天にも昇る夢心地だった。
その日から僕のバラ色の人生が始まった。あれだけ女子を毛嫌いしていたのに、今までの僕の人生は一体何だったのか?と思われるくらい女子と過ごす毎日が充実し始めた。彼女は、他大学ではなく同じ大学の法科に所属していて僕と同じく検察官を目指しており、名前は山本道代なのだという。なんだか、どこかで聞いたことのあるような名前だなと思ったが、山本道代なんていう名前の女性は、世間にはごまんといるだろうとは思った。
山本道代とは、いつも一緒に行動した。彼女も僕と同じく両親を幼い頃に失っており、唯一の身内だった祖母も二ヶ月前に病気で亡くしていた。だからだろうか、僕と山本道代は、お互いいつも一緒に居たがった。僕は、彼女を運命の人だと信じて疑わなかった。
それなのに、ある日突然、その日はやって来た。