第七話 1
ココを見付けて、城ヶ崎海岸から帰って来た翌日の夕方、僕は、山本道代の事務所のソファーに座り、彼女と向かい合って話していた。
「常木美也子の案件はあなたに任せます。自分はやりません! あんな女はごめんです!」
「冗談じゃないわ! あなたの貧乏事務所のために受けてあげたんでしょ。私が暇だから今まであなたの仕事の手伝いをしてきたとでも思ってるの? うちはこれでも忙しいの!」
山本道代の言う通り、実際、事務所の中は、女子高校生で満杯になっており、みんなでトランプして盛り上がりながら、神崎美波の相談の順番が回ってくるのを待っていた。
「犬捜しは、神崎さんも手伝ってくれてたし、君は昨日は城ヶ崎海岸にいたから、その間の電話番は誰がやってたんだ?」
「あなた、検事をやってたんでしょ? 知識は豊富なはずよね? 今の時代、転送電話というものがあるくらい知ってるわよね?」
「そうか、忘れてたよ……」
「まったくもう。お宅には転送電話なんか必要ないから、忘れてたって仕方ないわね」
「いや、しかし、俺は絶対受けない。あの女が何て言ったのか、君は覚えてないのか? 自分の旦那を警察に突き出してくれと言ったんだよ! 正気の沙汰じゃない!」
「覚えてるわよ。でも、あの人、捕まえてくれたら、お金は幾らでも払うと言ったのよ。あなたは、この依頼を絶対に受けるべきだと思うわ」
そんなやり取りをしているところに、事務所のドアがふいに開き、新宅正司が現われた。
「ついさっき、明日の午後三時に店に来てくれと常木さんから連絡があったから、OKしておいたんですけど、良かったんですかね? どうせ所長は暇だからいいですよね?」
「ほら、行くしかないじゃない? 約束を破ったら警察に突き出されるわよ。私は、明日は予定があるから行けません」
そう言いながら、山本道代はニヤッと笑った。
僕は、そんな山本道代の顔を無言で睨みつけていた。




