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米澤唐吉調査事務所  作者: 早瀬 薫
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第六話 9

 ある男が、白石剛を訪ね、話を聞いていた。

「米澤静枝さんの自宅を警察が家宅捜査した時に、持ち物の中に白石小夜子さんからの手紙がありました。奥さんの小夜子さんと米澤静枝さんは、随分親しくされていたようですね」

「そうですね」

「私は、米澤静枝さんが、ご主人を殺害したとは思っていないんです」

「妻もあなたと同じことを思っていました。勿論私もそう思っています。私の知る生前の彼女は、とても優しく、殺人を犯す人のようには思えませんでした」

「そうですか……」

 ある男は、白石剛に、白石小夜子から米澤静枝に宛てた手紙のコピーを見せた。そこには、『どうしてそんなに悩んでいるの? 良かったら今度会って私に全部話して』と書かれてあった。

「小夜子さんの手紙から、静枝さんが何かで悩んでいたことが窺い知れます。あの、もし良かったら、静枝さんから小夜子さん宛に書かれた手紙がおありでしたら、見せていただけませんか?」

「ええ、いいですよ」

 白石剛はそう言うと、妻の部屋から手紙を探し出し、ある男に見せた。手紙には『ごめんなさい。小夜子ちゃんに会いたいけど会えないの。家を空けられない。でも、和吉さんは小夜子ちゃんに会っておいでよと言ってくれてる。彼はいつも優しくて本当に感謝してる。だけど、最近、和吉さんは思い悩んでいるようで心配でたまらない。一人にしておけないの。だから、もう少し落ち着いてから連絡するね』と書かれてあった。

「これが、静枝さんからの最後の手紙だったんですか?」

「そうだと思います」

「小夜子さんは、和吉さんが事故で寝たきりになっていたことを、ご存知だったんですか?」

「いえ、私も小夜子も全く知らなかったんです。私達が知っていた和吉さんはいつも溌剌としていて、彼が寝たきりになっていたなんて今でも信じられない思いです。おそらく、和吉さんがそういう自分を知られたくなかったから、静枝さんも私達には何も話さなかったんでしょう」

「そうですか……。この手紙を見る限り、夫婦仲はとても良かったように思われますね」

「ええ、そうですね」

「では、和吉さんが治療のために薬を飲んでいたかどうかは、ご存知じゃないですよね?」

「そうですね」

「わかりました」

「お役に立てずにすみません」 

「いえ、充分参考になりました。ありがとうございます」


 ある男は、そう言うと、白石剛宅を後にした。


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