第三話 4
僕が困ると、決まって訪ねるのはやっぱり沢登小五郎の家だった。今日も豆太郎は、僕を見つけると「がるるるるるるる」と狂ったように吠えまくった。そんなに吠えると血管が切れて死ぬぞと思うのに、吠えるのを止めない。僕も負けじと「がるるるるるるる」と豆太郎に吠え返したが、やっぱり彼は怒ったままだった。小五郎は、「やれやれ」と言いながら、またもや豆太郎を隣の部屋へ監禁した。豆太郎と僕の間には、高くてぶ厚い壁があり、一生崩れることはないのであろう。
「豆太郎が狂ったように吠えるのはお前だけだから、お前が来たとすぐに分かる」
「便利なヤツだな」
「ところで、今日は何の用だ?」
「実は頼み事があってな」
「何の?」
「緑のオカッパに話を聞きに行かねばならん。手を貸して欲しい」
「緑のオカッパ? 河童は緑に決まっているが、なんだそれ? 人間か?」
「人間の女だ」
「全身緑色なのか?」
「小五郎! お前、いつからそんなキャラになったんだ? 女の髪型がオカッパで、緑に染めてるんだよ!」
「なんだ、髪型か……。早く言えよ。それで、なんで俺がお前に手を貸さねばならんのだ? まさか、また女が苦手だからとか言うなよ」
「そのまさかだ」
「お前な、いい加減にしろ! なんで俺がお前の女嫌いというしょうもない理由で、仕事を手伝わなければならないんだ? 新宅君に頼めばいいじゃないか!」
「新宅は、急用で二週間田舎に帰ることになった」
「そんなんじゃ仕事ができないだろ! いい加減克服しろ! お前には、まともに喋れる女は一人もいないのか!」
「レイデンと山本調査事務所の女所長なら喋れる」
「は?」
「分かった。もういい、お前の言う通りだ。自分でなんとかする」
小五郎にはそう言ったが、僕は考え込んでいた。まさかレイデンに頼むわけにはいかないし……。あ、そうだ! 山本道代に頼めばいい! 彼女に、緑のオカッパを調査してくれと頼めばいいと思い付いた。我ながらいい案だと思った。




