第二話 10
僕は、父母と海東光次の大学時代の話を聞くために、ようやく探し出した父親の大学時代の同級生の元を訪れた。
「君が米澤君の息子さんなんだね! いや、びっくりだね! 米澤にそっくりだよ! 訪ねてくれてありがとう!」
父と母と海東光次の同級生、宮崎幸彦は開口一番そう言った。随分と人の好さそうな初老の紳士だった。
「こちらこそ、突然のお願いにも関わらず、快く訪問を承諾してくださってありがとうございます」
「いやいや、米澤の息子さんの依頼なら当然だよ。在学時代、私は米澤には何度もお世話になってるからね。地方から下宿していた私に、何度彼が飯を奢ってくれたか分からない。感謝しきれないくらい世話になっているんだよ」
「そうだったんですか」
「うん。でも、米澤が亡くなってからもう随分経つから、まさか今になって彼の息子さんが私を訪ねてくれるなんて思いもしなかったよ」
そう言って、宮崎幸彦は、大学時代の父との思い出話を語り始めた。父はスポーツマンで、剣道や柔道が得意で、対戦するといつも自分が負けた。その結果に不満だった自分が、興味本位で入ったテニスのサークルに父も入ったおかげで、母や海東光次に知り合い、三人はいつどこへ行くにも一緒に行動するようになったらしい。
「海東と米澤は気が合ったんだろうね。私はつまらなくなって、すぐにテニスサークルを辞めてしまったんだが、米澤と海東はいつも一緒に対戦してたよ。そこに、君のお母さんの静枝さんが加わったんだ。しかし、おそらく、海東は君のお母さんに失恋したんだよ。でも、それは海東に限らず、優しく美しい君のお母さんに誰もが恋をして誰もが失恋した。何を隠そうこの私もね。君のお父さんとお母さんは、誰もが羨む理想のカップルだった」
「そうだったんですか……。全く知りませんでした。父と母が亡くなったのは、私が五歳の時でしたから」
「そんなに小さかったんだね……。君も苦労したな……」
僕は、ポストカードの海東光次の「遠蕾」を鞄から取り出し、宮崎幸彦に見せた。彼はポストカードを手に取り、「そうだね、間違いない。これは君のお母さんだ」と呟いた。




