第一話 1
他の作品もそうですが、この作品も日常のミステリーのような作風になっています。
子供の頃から、不思議なものに惹かれる傾向があり、
スプーン曲げや霊能力やUFOやナスカの地上絵等に興味津々でした。
それは現在でも続き、小説の中に当たり前のように登場してしまいます。
楽しんで読んで頂けたら幸いです。
この物語はミステリーであり、ファンタジーです。
「お母さん、そこにいるの?」
夜中に目を覚ました僕は、隣のベッドにいるはずの母に声を掛けた。暫く待った。しかし、返事がない。僕は、自分のベッドから這い出し、母を捜し始めた。
五歳の僕は真夜中に目を覚まし、家中を徘徊していた。遊び疲れてぐっすり眠り込んでいる時間だった。それなのに、その日、僕は目を覚ました。
ガシャーン!
父の部屋で何かが床に落ち、割れる音がした。おそらく花瓶だろう。僕は慌てて父の部屋へ走る。中へ入ろうとしたが、入れない。何か異様な雰囲気を感じて、部屋の中に入りたくても入れないのだ。
父は苦しそうに呻いていた。
母が父のベッド脇に立っている。
母は一体何をしているのだろう?
父の様子を見たいのに、母の背中が邪魔になって見えない。呻き声はますます酷くなった。僕は、父の顔が見えるように、左に二歩動いた。すると、驚いたことに、母が、両手で父の首を締めているのが見えるではないか!
僕は驚きのあまり、声も出さずに、呆然とその場に立ち竦んでいた。
その日から、僕は三日三晩熱を出して寝込んだ。あの日のことはよく覚えているのに、あの日より前のことは、全く思い出せなくなっていた。確か、父と母は仲が良かったはず。病弱な父も母も優しく、僕は幸せだったはずなのに、気付けば、僕は両親を一度に失った孤児になっていた。
今考えれば、五歳の僕が真夜中に目を覚ましたのは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。これから始まる悲惨な人生の幕開けを僕に知らしめるために……。