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帝国東京エンピレオ  作者: 有村 直太朗
1/1

ーそれは全ての終焉のためにー

 本文は、惨状に成り果てた世界の現状を二人の生き残りが、異次元でのこの惨劇の発端があるところへ行き、絶望と希望が交錯する事実が解き明かされていく死と生が混ざり合う、信頼がカギとなり、推測が頼りとなる推理型サスペンスとなっております。一部残酷描写が含まれますのでご了承ください。では、本編をお楽しみください。

ここは純白の薔薇が一面に咲き誇る平原に木が一本生えた静寂に満ちた場所。これは一体何の冗談だ? さっきまで、東京というネット社会に飲み込まれた高いビルが、世間が麗しいとうたっている日差しを遮る首都東京で困窮で困り果て、椅子もテーブルも部屋になく段ボールでタンポポで食を飾っていたあり様で、トイレの仕切りがなく、部屋内に異様なにおいが充満して、キッチンにはお隣さんの女性から、はるか昔、引っ越してきた当時におすそ分けでもらった土なべも、中身を確認することもなく放置していると、数年後の現在としてはダークマターになっていた。いや、もらった当時からも紫に光る液体、この世の物とは思えない液体が放っていた異臭も当時と変わっていない。そう思うと隣人はダークマターを初対面で渡すなんて、図太い女だ。何はともあれ、苦渋な人生も慣れ始めたせいで感覚がくるっているのか、はやく夢ならば冷めてほしい。そして今、煙草を吸いたいという廃人のセリフが脳裏によぎる。そして、煙草と金と酒、この三種の神器が離れた世界は限りなく不吉だ。

 普段、口にある煙草の感触がないというもどかしさが残り、純白の薔薇に目を向けることなく、一本の木に不満で動かない体を寄りかかろうと一本の木の下へ移動する。

ーねぇ幸せ?ー

 木の下で突然、色気のある令嬢のような深い女声で囁かれる。

「随分と宗教チックなことおっしゃいますね。哲学でも語るんですか?ならパスで~。」

 この突然ともいえる発言なのに、冷静で、冗談を言う余裕。しかし、なぜか、彼の眼は虚ろだ。いつもの彼は、黒髪の普段から黒のスーツを身にまとったままの外見で、貧相なことを気にすることもなく、最低な内面だが、外見はよき人に見せる高騰テクニックで、女を集めてにやけるばかり。しかし、経歴を見ると、東京の有名大学の首席を総なめしているエリートである。そのため、学歴から見て侮れない。

ーあなたにとっての幸せは、煙草という、好意にまみれたものを手に入れる事ですか?小さいですねー

「君はそんなに僕を物欲が薄れた廃人とでも言いたいんかい‼言葉がストレートで、穴あいたわ‼ここにここに‼」

男は胸に指さし、子供のように足ぶみをして怒ってる。

ー答えをどうぞー


 その言葉で、男の動きはぴたりと止まった。そして男は木の方を向いて怪しげに口角を上げた。そして応答を返した。


「僕の父親の眉間に風穴を開けてよ。僕、久しぶりに本気で笑えるからさ。」

 すると男は虚ろな目で、木に背を向ける。そして薄気味悪く笑いながら、純白な薔薇を眺める。

ー何故ですか?ー

「邪魔なものは消す。そう教えたのはあの人だ。」

ーさぞ可愛がられたのでしょうね。-

「寝言は寝て言えよ」

ーその言い方、父親そっくりではないですか。ー

ーね?、宇津木 行成。二十一歳。-

 そう囁かれるとその男は拳を握りしめる。

「僕が惨殺を願う父は、憎い父だった。血縁で結ばれてなかったら、義理でも何の関係も持ちたくないし、ギロチンで首cutして、資産奪って悠々と暮らしてたいね」

ー憎いのは何故ですか?ー

「単純だよ、父はある宗教団体の大司教で、そこの教会内の地下に存在する研究所で、ある細胞をつくってその細胞みて、高笑いしているおっさんが父だ。小学校で授業参観で、バックに聖職者服で丸刈りの奴が、ニチャア…ってわらってたら、俺はどんな顔で日常送ったらいいんだ、全く。」

ーそうですか、あまりにも単純で驚きましたよー

「いや、あいつのおかげで学校でどえらいめにあったが?」

ーどえらいめ?ー

「宗教家庭の狂信者だぁ~ってあほ面の同学年に散々馬鹿にされたよ。まぁ、おかげで、校内に名前がいきわたったから、自己紹介の手間を省けたけけどね。そして、最悪、暴力はなかったけど、耳に入るいじめの暴言は耳ざわりだった。」

ーそう。-

「なぁ、そろそろお嬢ちゃんの正体言ってくれない?僕のこと知ってたけどストーカー?顔によっては、ゆるしてアゲル♪」

―どこぞのど変態か。んで正体?言って私が得るメリットは何?ー

 冷めた声で囁く、そのささやきはすぐに怒りの感情という事をすぐに理解し、行成は少し冷や汗をかく。

「メ、メリットを追求するの?僕に色々聞いといて、あまりにも酷かないか!?」

 と、何もない木に向かって必死に話しかける。

ーなら答えなかったらよかった。応答するのは勝手でしょ?ー

「ひねくれている!第一、僕にとってはここは非現実だ!突然問われた質問に答えなかったら何をされるかわからんでしょう!」

ー被害妄想が激しいこと。-

「やかましい!」

 相手の言動に言いくるめられ、黙り込んでしまう。、今思いつくのはただの暴論でしかないため発言をしても論破されるが目に見えているためだ。

「結局こんなこと聞いて何がしたい?こんな話、必要とは思えないが?」

ーこれはただの確認。私には非常に有益だったけどね。ー

「確認?何のために?」

ーその答えだけは言ってあげる。あなたには忘却の姉がいたわね。川におぼれそうなあなたを救うために川へ飛び込んで、あなたは助かり、お姉さんは、川の巨大な石に頭を打って、脳に外傷を負ったせいで、忘却になってしまった。その後、姉自身の誕生日の日に母とのサプライズディナーの帰り道の閑静な住宅街の交差点で交通事故にあって、母を守ろうと母の背中をおしたばっかりに,自身が重い外傷を負い、植物状態になって、両親が、目覚めないとあなたの姉をあきらめ、安楽死させて死なせたんですね。ー

「あれはもう五年前のことだ。あの頃は感染症「NIKOLE(二コレ)」のパンデミック時期だったから葬儀はとりおこなわれなかったよ。」

ー呆れますね。正義感を振り回して感情論だけの理性のない人間になってしまったなんて馬鹿らしい。あんなに周りから称賛され、学歴と冷静さがうりで両親にも好いてくれていたのに。これじゃ、今までの完璧を極めるため作られた豪勢な環境も、とんだ持ち腐れですよ。-

「黙れ。姉さんは人生を誰かを助けるために尽くした良き人間だ!救済ができる人間こそ、良き人間の位にたどり着ける人間だ!」

ーさぞ、執着があるようですね。はははははは‼ー

 するといきなり高笑いをし、行成は足を一歩後ろに引く。

「なぜ、笑うんだよ。てか、人の人生をなんかテレビのコメディーとでも思ってんの?」

ーねぇ?君は私が誰だと思う?答えを聞かせてよ。ー

「はい?まぁ、悪徳令嬢みたいな?それとも、悪口をほざく人工知能搭載の固形物。もはや人外。」

ーはは、言うねぇ。でも違うんだ。ー

 「もったいぶんないで、はよ言ってくれよ」

ー海老原 クルミ。カトリック宗派の宗教団体、帝国東京エンピレオの司教をつとめています。そして、またの名を、宇津木 クルミという。-

「は?」


ードゥクシ!ー

「おぅごふぅ…!?」

 腹部に衝撃がはしり、目覚めると、友人の二十一歳と、高校の同級生で、あながち頭は悪くはない、永瀬川 光 という男がすぐ隣に立っていた。この男は過去に大学を五浪した。その弱みを握り、友人内で言いふらすことを抑える代わりに、富裕層なる小島からは金を貸してもらっている。しかし最近は、頻繁な金の引き出しがあるため、毎朝サンドバックにされるのだ。

「起こし方ぐらいもっとなんかあっただろうが!」

「おい」

「なに?その怖い顔。らしくないけど?」

 それはいつもの強いの口調で、調子に乗った表情ではなく。まじめな形相でこちらの目を覗く

「お前、外見たか?化け物に赤い空。ここは現実なのか?それとも悪夢をみているだけか?」

「は?異世界漫画の読みすぎか?」

「マジに決まってんだろ!信じられないなら、外に出てみろ!俺だってまだ信じられんわ!」

 いつもの大声の限界を超えた声で目を見開き叫ぶ。その声に押されて古い木造の建築の部屋の床をミシミシ鳴らしながら、ダークマターの異臭が放たれ支配された空気を抜け、寝間着のままだったのでベランダに行き、街の様子を確認することにした。

 都会の街に吹き抜ける冷ややかな風が頬を撫でる、いつもは。そして、今日は生ぬるい感触に肌に鳥肌が浮き出る。

 そして、空は赤く染色され、ビルは破壊され、道路には人間の原型を保てなくなった肉片が埋め尽くされ、生ぬるい風は深紅の悲劇に彩られた血の温かさだと理解した。それと、同時に。

ー惨劇の序章だと悟ってしまったー

 そしてこの惨劇の根源になりゆる要因は街にうごめく蜘蛛のような体系で、筋肉の膨張が原因か、凹凸に膨れ上がり、血管が肌から剥き出し、ウニのような針が付いた触手がはえ、胴体と一緒にある顔面部分には目が十二個あり顔面の半分の裂けたような口の口内には鋭利な歯が剥き出しになり、その歯にまとわりついた黄緑の液体は粘着性で、おそらく建物に液体を吹きかけ溶けていたため酸性の液体だろう。そしてその化け物に薙ぎ払いをされたら一たまりもないだろう。

「あれは、一体なんだ…?このバケモノが生まれた原因は、要因は?」

 動揺が隠しきれてなく、声がとぎれとぎれになってしまう。

「俺がここに来るまでになんか救援にむかう団員の男がこう言っていた。魔物駆逐を行っているって。だからその人たちのところに行こう。その原因と要因を聞けるんじゃないか?」

「だからって場所を聞いたのか?分からないんじゃ、闇雲に探し回ってもその前にあのバケモノに胴体ぶち抜かれて終わる。」

「てか、お前の彼女って病気で病院に入院しているんじゃ…。」

「!…」

 気づいた瞬間振り向き、寝床にあるスマホを取り出し彼女の病院に電話を掛ける。

 行成の友達の弘中 雫。彼女とは高校の時に好きだった登山を行うため登山部に入った。その時に、部活が一緒になり、部活内での行動の時、こっそり噂になっていた、世界山脈協会の公認になっていない、世界最高峰の名を貫いていたエベレストよりも、巨大の山脈と言われた南極圏に位置する、人呼んでー瑠璃山脈ーと名づけられていた。その名は頂上に広がる瑠璃色のオーロラに反射して見える、巨大な瑠璃色の氷片から、その名がつけられたらしい。その美景をみるため、部活でそこへの登山への提案をしたのだった。そして、部長の石田 晴彦は、提案をのみこみ、希望者だけの登山となったが、南極へのチャーター便の運航が点々としているため、一度にのれる人数も少なく、部長と行成と雫、そして友人の霜月 はじめと穂高 美香と登山を挑むことになった。その後、無事登頂成功で、頂上の圧巻の風景に見惚れて、雫と行成は、お互いをたたえあい、次登る山の話まで進めていた。

 しかし、その夢はすぐに垂れ幕をおろすことになる。

 下山の時のパラシュート降下時の突然の暴風で雫は隣の山脈へと着陸してしまった。そしてその山脈は一帯が、異常現象の低酸素に見舞われ、方位磁針も酸素ポンプも全て不具合を起こし彷徨った末に彼女は意識を失い雪に埋もれていった。その後の懸命な創作により、彼女は見つかったが、彼女の容態は低酸素中毒で彼女は氷片に寄りかかるようにして、口から出た血が座っていた足一面に深紅に色づき頭を打ったのか、前髪から血が何筋も滴り、肌は真っ白で赤く肌が割れ無残だった。そして不可解に足や手などの骨がいびつに曲がり、剥き出しになっていた部分もあると言われた。その後彼女は脳に損傷を負ったため植物状態になり、今は生きているだけで大量の処置が必要になり、心臓の音が聞こえるだけで安堵する。その彼女から最後に言われた言葉は…

「行成はこのオーロラを次、誰とみるのかな。」

 本当だったら、隣には雫がいて、また笑ってくれたはずなのに。

 そのトラウマが激しく残り、登山はやめ、人との関係の断絶をし、じぶんから最高な人生を歩もうという思考は持てなくなった。そう、過去にとらわれているのだった。そして姉も植物状態で後に安楽死で死んでしまった。大好きな人が二人も同じ状態に陥った、事実から逃げているのか。

 その過去から、死なせるなんてできないという心が、体を動かす。

「お、ちょい待て!死ぬぞ!待て!」

 何回も止めようと忠告を連呼する光の声をふっきり、ボロボロの玄関を大きな音をたて開き、彼女の頬に垂れた血と全く同じ、赤き道路を突っ走る。その後を天哉は急いで追いかける。

 道端には、いつも描かれていた平和な情景が、無情にも平地にされていた。苦痛だ、血という物は自身の生涯を飾っている気がして、憎い。父に完璧というものを華美に輝く鋭い刃で教えられた時も、横断歩道で誕生日の幸福に埋もれた気持ちが無情にも一台の車の犯罪によりかき消されてしまった無実の姉がおくった人生も、予想外の事故で有り余る彼女のこれからの日常が途切れた時も、視界は赤く染められていた。

 でも彼女は復活の見込みがあったのだった。それはたまに彼女の手が動いたという看護師の証言から、冥界を彷徨う意識は戻りつつあるといわれたのだった。だから、そんな彼女を失いたくないのだ。

 しかし、不注意ではいられない。こんな非現実の世界で普段の常識は通用しない。そのため、空から猛毒の針の雨が降るや、道路に世界の中心まで深い穴が開いたり、腐った皮膚で黄色の目で樋爪を持つ化け物に思いっきり腹部を切り裂かれたり、そんな物事を警戒しなければならない。そのため、様々な方向を確認し、余分な体力が保てるように途中に歩いたりする。

 すると天哉が追いつき、呼吸を荒げ、行成の頭を一発殴る。

「いっだい…。」

「はぁはぁ…先走るな」

 光は、行成の肩に手を置き、走るを止めるように促す。

「走ればいつかつく。断念しろなんて、承知はしない‼」

「俺はあきらめろとは言ってない!ただ、救済できる当てがないなんてこの状況では無謀すぎる。」

 確かに無謀なことだ。第一周りの建物が瓦礫になり果てているというのに生きているのかは不思議だし、周囲の建物を当てに病院を探すという事ができないため、跡形のない瓦礫から推測というのはまさに無謀だ。

「でも行く当ある?あんな未知の生物がいるんだぞ?普段の避難所なんてもうぶっ壊れてるよ…。」

 光は、口調が早くなり、明らかに正気でないことが見受けられる。

「足あんだろ、歩けんなら歩いたほうがいい。場所を異生物に特定されるし、目をくらませるんだよ。相手は人智を越えた怪物だぞ?」

 行成は光を説得するように言い分を言った。

「はい、言い回し変えただけで、絶対に彼女救出のためじゃんかー‼」

 恐怖に陥った光が、さらに怖がり、ついてくるしかなくなるという状況を見計らって、様々な言い分を持ち合わせて話したが、光はまだ平常心を保てているようだ。行成は計画失敗で不満顔だ。

「グダグダ言っていたって、状況は変わらない。俺は行くんだ。死にたくないしな。オオオオオオォォォォ!」

 行成は自らを鼓舞するかのような熱い咆哮を叫び一心不乱にどこかに走る。雫の容態の回復があったという希望を捨てるなんて言語道断。ついに行動へと考えは移行してしまったのだった。

「待て、そこのセールスマン。」

 いきなり呼び止められて辺りを見回す。すると走っているうちに西洋の商店街のような廃屋が立ち並ぶところに来てしまっていた。この危機的状況、やはり付近はもぬけの殻だ。

 そして声の出どころとなる後ろを振り返ると、青い廃屋の上に翡翠のパイプを口にくわえて水色の髪で水色の民族衣装のようなものを身にまとう男が、長い槍を持ち、気分悪そうにこちらを見下ろしていた。

「だ、誰だよ…。そんな槍、銃刀法違反だぞ。今ここで法がつうじなくとも、持ってるのがおかしくないか?」

「まぁ、ここの世界線の法律なんか知るよしもない…。」

 今更そんなことを言われて、驚くことでもないが、言っていることは確実におかしい。

「ん?ってことはもしかして…。」

「まぁお前にとっては異世界から来てるな俺は。」

 表情を変えずにのうのうとパイプを吸っている。

「このゲテモノを作り出したのはあんたか?んじゃ、お前殺せばこのゲテモノ死ぬか、試してもいいか?」

「まだ初対面のおれに言う言葉かそれ。」

「んじゃ、お前はあの人智をこえたゲテモノと関連性があるか、YESかNoで答えろ。」

「ならば先払いとして、助けてほしいか、助けてほしくないか、答えを求む。」

「そりゃ助けてほしいのはやまやまだけどな…。」

 ーバこんー

 いきなりなにかが崩れた音が聞こえて背中が硬直しゆっくり後ろを見ると、ビルの間から一つ目の腐った皮膚で毒牙で歯ぎしりをたてて、こちらをのぞくあいつがいた。

「は、ははははは…うん…殺すなら屋根の上の方が手ごたえがあると思うぞ?」

「最低だな。」

ーウォォォォォォぉぉぁぁぁぁぁあ‼」

 例の奇形の生物は奇声を上げ、背後に隠していた五本の触手がこちらに近づいてくる。

「死にたくない、死にたくない、天国と地獄なんて誰かがつくったおとぎ話だ。虚言だ。楽園なんてない。動け足、動けあし、動け‼」

「フーン、触手を隠すなんて姑息だな。バケモノよぉ。」

「そんなこと言っている場合…。」

言葉を言う前にいつの間にかあいつにおなかを抱えられ空中にいた。

「は?」

「別次元に逃げよう。」

そういうと右手に隠していた大物の鉈を深紅の大空にふり、その大空を切り裂いた。

 その切れ口からは大量の水が流れ落ちてきている。

「冗談はほどほどにしろよ…?」

「俺をまだ常人の類とか思ってるわけ?」

「今なくなったわその概念‼」

「とりあえず捕まっとけ。最後の生き残りがよ。」

「あ?」

 そういえば光どこいった?その問いを脳裏に浮かべた瞬間、下からその答えとなる大声が返ってきた。

「オォォォォォォイ‼」

 その瞬間、光の大声が響きわたった。それも怒り込みで。

「ん?まだ生き残りが?それとももうゾンビ?あれ。」

「あー、ゾンビですね。」

 すまない光。お前が大声を鳴らしたせいであの異生物がこっちをガン見してるんだ。今いったら殺される。生き残りが俺らだけなら、道連れ、もはや人類滅亡だぜ…。

「うぅぅぅぅぅつぅぅぅぎぃぃぃ‼」

「あいつ、お前の名前よんでるぞ?友人か?助けるか?」

「いいえ、実家近くの橋の下に出没するホームレスです。あ、指名手配犯なんで救済して特に利点は無いですねぇ~。」

「きぃこえてんぞぉぉぉぉぉお。うそこいてんじゃぁぁぁねぇぇぇぇぇええええ‼」

 うん、聞こえてるのはいいけど、心に言葉をとどめておこうよ。言ったら僕も危うく…。

「今助けに行くからな。」

「ぶはぁぁぁぁあ‼」

 体はいきなり垂直降下し魂が体に追いつけていない。

「捕まえた。」

 やはり、一瞬で光の頭を手でわし掴みし、大空に開いた亀裂へと連れてかれる。

「これどこに行くんだ?」

 そう問うと、眉間にしわを寄せ難しい顔で答えた。

「たぶん、亀裂があんな水だから、出口は最悪かもな。」

「最悪って?」

 その最悪とは水で全身が濡れるってところか。命がかかっている身では拒絶反応と脳が答えない。

 と言って異世界に行くという波乱の展開に頭が追い付かない。

 右を向くと光が必死こいて異次元の人間の持っていた槍に指だけで掴まっていて、槍が天哉の指に食い込み、血が乱れるように垂れている。異次元の人間の服をつかんでいたが、移動時の風圧に耐え切れず、手を放してしまい、刀の方に捕まるしかなくなり、今、バランスを無理やりとっている状況だ。おそらく、多量出血は間違いなしだ。

「聞いてる場合じゃねぇ…早く行ってくれ!光の指が限界だ。」

「痛ってぇ……だれか…死にだぐっ…ない!」

 そう声を荒げる光が、とうとう手を離した。

 行成は手首をつかんだ。光の目は虚ろで、気を失ってしまった。

「早く…早く!」

「もう着く。絶対にあいつの手首離すなよ。この空間で落下なんてしたら、二度と現世に戻れなくなる。いいな?」

 そう言った直後、突然水の中に入り、何の伏線も境も、暗くて見えなくて、聞かされなかったため、息を吸うのを忘れとっさに口をふさぐも息が保てたのは、ほんの数秒だった。光は口を閉じてふんばるということができないため、大事に至りかねない。

 脳の中で絶体絶命を感じていると、行成と光の髪を乱暴に引っ張り異次元の人間はものすごい勢いでそれでも前に進む。水圧がすごく、髪を引っ張られると思わずツッコみたくなって間違って口を開けてしまった。その瞬間、命が断つような気がした。

「ここだ!」

 そう異次元の人間が叫ぶと水から抜け出しやっと異世界の世界にたどり着いたようだ。

「ぷはーっ!ふーはーふーはー…。」

 過呼吸が止まらない。でも異次元の人間の方を見ると、自分の過呼吸で聞こえないのか、とても冷静に静かに呼吸をしている。

「大丈夫か?随分と息が切れているようだな。」

「死の淵を見てきたような気がする…さっきの状況で平常心持てるなんて、世界線が変わるだけで、メンタルの度合いが場違いだ…。」

 異次元の人間は、また翡翠のパイプを吸い出し、こっちを見ている。

「そっちはなんかいい能力の一つや二つ持ってないの?」

 まるで能力を物のように言っている言い方だ。

「その問いがおかしいもんな…まず。」

 そう話してると光は、這いつくばって、行成のズボンのすそを強い力で握りしめる・

「助けぇろや…。」

 消えかかりそうな声でそう訴える光の両手の指は今でも血が絶えず流れている。光の意識も朦朧としているのだろう、光の目に光は灯らず、開きで半目開きで、こっちを見ている。

「あの異次元さん、何か止血するものありません?それか、この世界にヒーラーいますよね?さすがに同次元の人間の仲間の光が消えたら、同時に僕も時効ですよ。」

「最低か。利益なかったら助けないんかよ。そして、移動に救急箱みたいなでかい四角持ってけんわ。そしてヒーラーなんて、この世界では数人単位の優れた力…。ただし、止血なら俺が持ってる包帯がある。自分も負傷は日常茶飯事だからね常時所持している。」

 そういうと光は自分で立ち上がり、少し足がふらついているが、異次元人間のてから包帯を奪うように取り、自分の腕に巻いた。

「はぁ…どうやら助かったらしいけど、宇津木、俺をホームレスだと虚言をはいて…。俺がその言葉が耳に入ってなかったら危うく天界に召されるところだったぜ…さすが最低人間。」

「結局は助けたし、過去の過ちは水に流そう。だから、最低人間は、言葉撤回な?」

「お前ら静かにしろ…。ここに来てしまうなんて…それも能力者は俺だけか…。」

「そういえばここは純白色の西洋系の建造物に囲まれた中庭のようだな、天井はガラスが張ってるな、吹き抜けか。俺たちが出てきたのは真ん中にある円形のため池か。」

 行成の言う通り、純白の建物に四角形に囲まれて、下を見ると、緑の芝生が綺麗に管理され、壁際には、純白のバラが咲いている。ここは中庭か?

「ここがやばい言うてはりましたよね?なんちゅうところなん?」

「ここは、帝国東京エンピレオ研究所。これがお前らの世界の有様の,厄災の根源かもしれない。」

 その言葉は信じがたい、そして同時に危機感を覚える。

「それはもう出回ってる情報?というか、この世界の現状況の概要を話せ。」

 とりあえず話を聞こう。この異次元の世界について。

「この世界も今巨大なバケモノの徘徊などがあって死傷者が絶えない。だが、こっちは人間も荒れ狂う事態になっている。その理由が人工的に作られた洗脳をメインにして異能力所持者の限界以上の能力を出し、心情と知能がなくなり、皮膚に凹凸に腫れあがり、皮膚は黒く、触手触角を無数に増やし、細胞に完全に支配されれば、自我の持たない、バケモノに成り代わってしまう末路になるー壊胎細胞ーというものが、発見された後、一週間後が、この有様だ。」

「その細胞がこの研究所と関係が?」

「ここはカトリック系宗教会とつながっていてね、活動報告や内部資料などを世間に明かすことのない今までずっとその研究所は未知の領域で、研究者の出入りは全く見かけることがないため研究所内に定住している可能性がある。やはり外部に教会内の話が漏れることが恐れているのか?」

 そういえば、夢で帝国東京エンピレオという宗教団体の名が出ていた。そして、夢で、散々問いかけてきた謎の女の名は、姉の名前だった。しかし、声色が全く違う。つまり、高い声だったため、あまり信じようとはしなかった。その研究所名は耳にしたことはなかった。なぜ夢に出てきているのか?姉が関係しているのか?どちらにしろ、故意的に脳内に映し出されたとか、この世界線ではないだろうか。可能性があるなら、なぜだろうか。

 推測できることが多々あるが、むしろ真実が見えていないため推測するしかない。今日は、おかしな夢を見て、町が人智を超えた奇獣に崩壊される不可解な状況。この二つの事件の関連性は、否めない。

「しかし、研究所の運営を務めている帝国東京エンピレオは、教会の方だと一般に信者を受け付け、世間にも好評を得ている。そして、人間でも、たちうちできない奇獣がいる現状を打開することができるのが、この教会だけになった。理由は、対抗できる特例の異能力が使える武装集団ー奇人隊ーを作ったからだ。そのため、今の世界のトップは、帝国東京エンピレオの最高権威者カイラス・フランキスになった。」

「この世界にはもう武力を持つものが権力者になる世界か。富裕層も、政治家も、たかだか庶民と同価値か。」

「そうだ。そして奇獣の退治が進められている中、正義といわれてきた帝国東京エンピレオで、奇妙な事件が起こった。研究所付近で、行方不明事件が多発している。そして、その事件の起きた後ぐらいから、今まで奇獣の対決は、隊員が死に奇獣が死ぬという接戦だったが、奇獣の増加があり、奇獣の襲撃の抑制は無理に等しくなってきている。」

「つまり、誘拐した人間を奇獣に変えているっていうことか。」

「異能力所持者が暴走したときにそいつの血液から成分検査したところ、ある細胞が原因で、洗脳性がある細胞ということが明かされ、その所持者が奇人隊に所属していて、奇人隊で暴走を起こした人間の死体を全て調べるとほかの被害者には見られない細胞だということがわかり、教会内で使用されている細胞だと判明した。つまり、この奇獣を生み出したのは教会である可能性が高いらしい。」

「自らの隊員を細胞で奇獣にするなんて、抑制というよりも悪化する。悪化して教会に生まれる得はなんだ?ずっと最高権力者になれるというカイラスの欲望ゆえの独裁とか?」

「でもそれって、研究員って従うの?細胞のせいで自らも細胞の管理の怠りとかで、危うくなるのは自分なのにやるの?あ、いてて…」

「目的は研究員に聴取するんだ。そして、俺たちの研究所で行うミッションは三つある。」

「は⁉俺たちも狂信者がらみの研究所に侵入すんの⁉正直言ってむ・ぼ・う!能力なし男だし。」

「そうや!まずだいたい違う次元の俺らを連れてきたのはなぜ?ハッキリ言って身代わりしかならないけど。」

「理由はな、研究所に関連する人間が欲しかったからだ。さっきから驚いた顔してるが宇津木、おまえ知ってるよな?」

「は⁉そういえば父は、細胞を作っていると言っていた。でも父は、外部の情報を漏らさないっていう姿勢っていうわけでもなく、自慢話のように語っていた。口封じをされているなんてこともなかった。だから、また違うと思う。そして、姉は…。」

「君の姉さんは、帝国東京エンピレオに所属している。国家から所属名簿を極秘に見せてもらった。でも、その血縁者なら何かと思ったが、知らないか…。だとしても、隠している可能性だってある。同行してもらおうか?どちらにしろ、ここにいたままだと抜け出すことができない。同行する他ないらしいではないのんか。」

 言っていることはごもっともで、能力なしの立ち位置は、ここでは不利だ。

「全力で守備してくれよぉ…常人だったら今までの話、信じてないぜぇ…」

「いいだろう。俺がこの教会に招いた。全責任はこの身で受けるつもりだ。」

 すると、翡翠のパイプを口元から離し、腰を上げて立った。

「言う言葉が、まるでRPGみたいだ…雑魚キャラじゃないことを祈ろう…。」

「おい?なんか言ったか?」

「何でもないです。それより、れいの三つのミッションは?」

 そう問うと、こっちに熱い眼差しをおくり、笑みを浮かべた。

「一つ目 研究者からの懐胎細胞についての事情聴取。二つ目 研究所の封鎖。三つ目 カイラスとの接触。大まかにいったが簡単に言えば、細胞を掻き消すことだ。」

「無理無理無理…。細胞の根絶なんて、遂行中に感染して人外になるよ…。」

 三つとも、三人では到底達成できるミッションではない。無理というのは当然だ。

「死にたくないなら来い!こうしてる間にも細胞感染が進行している。急ぐぞ。」

「話止めた?ん、君いま話止めたよね?うん?」

 行成が話をグダグダ一つ一つ、つっかかっていると光が、二人の会話を断絶し、行成の右手を震える手でつかむ。

「って光、どうした?そんな痙攣した手でつかんで…ま、まさか恋愛まがいの行為…⁉」

 冗談を口にしてみたが、光の目は見開いていて目が点になり、手の震えはいっこうに止まらない。すると、消えかかった声で何かを呟いた。

「お、俺…ここに来たことが…ある気が…でもなぜ…異次元だろ?。」

 とうとう頭を押さえてその場に倒れこむ、苦しんでいる様子ではなく驚いた動揺のようだ。

「落ち着いて話せ。過去にここで何かあったのか?」

 行成がそう問うとある人名を口から漏らした。

「みか?」

 聞いたことがない名前だ。

「みかって、女性の名前だよな。」

「でも…ここの職員とか信者とかではないと思う。」

 ということは外部からの人間なのか、仲間につながるならいい話だ。

「連行されたとかが一番あり得ると思う。」

「でもなんでそんな…。」

「お前ら部外者か…?どこから侵入した?警備の穴を見つけてくるとは、とんだ害悪なやつめ!」

 話を分断するように背後から見知らぬ声が聞こえてきた。

 その発言と同時に怒りから急にこちらに走ってきたのだった。

「ついに見つかったか…早く逃げろ!」

 異次元の人は行成らを先に行かせて戦いの構えをとる。責任を取るというのはボディーガードという意味なのか。

「害悪はどっちだよってばよ…。光行くぞ…。」

 光は放心状態という異常状態の束縛から解放できていないため、行成は光の服の襟をつかみ、強引に研究所内に引きずり込む。

「バケモノさんよ、ここで瀕死とか情けない姿になったら、無責任だからな。」

「いったろ?責任はとるって。」

 そう言って研究員の方に振り向いてしまった。それでも、中の案内を務めないとなると予想外だ。もう無責任を作っている気もするが、そうムカついていられない。

 そして、中庭につながるドアを開けた。

 その瞬間、禁断の場所へ、立ち入ってしまった。

 ついに開始された研究所への侵入。あの細胞に姉と父が関連しているかもしれない。その可能性に恐れているのか、俺の足は止まってしまう。

 未知の研究所。謎の夢。違う次元と自らが住む次元で、起こった大事の概要は、同じ。つまり、リンクしているのか?俺らが惨殺される未来と、この世界に光がともる晴れた未来。絶望と希望が交錯するなか、研究所内の事実が、俺らの運命に亀裂を、刻む。

 帝国東京エンピレオにとって、細菌をつかって周囲の人間まで暴走させることは利点があるのか?しかし、帝国東京エンピレオは、奇獣に襲われて死の淵を見ている人を救済している。この矛盾が生じる行動にきっと意味があるだろう。

 相手が馬鹿なら扱いやすい。だが、きっとそうはいかないだろう。あの懐胎細胞が在るかぎりは。



 どうも作者のカフカです!帝国東京エンピレオを読んでいただき感謝いたします!

 これからの帝国東京エンピレオが、本ストーリーの本筋となっておりますので、第二章にもご期待いただけると幸いです!

 少しだけネタバレを言ってしまうと、宇津木 行成とこの研究所は、宇津木の過去が絡み合う展開に…!

 第二章 研究員の遺言 ぜひ期待してお待ちください。


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