3, 弟子?
陽菜穂さんは不思議な人だ。
僕は中学校の頃にいじめをされていた。いじめをされては学校を戦略的に休み、ほとぼりが冷めた頃に登校し、またいじめをされては戦略的に学校を休む。その間に自分という存在を希薄にさせ、遂にはいじめっ子が僕という存在を忘れるようになって行った。
高校に入ってからはいじめられる事は無かったけど、僕は更に自分という存在を薄くして、見事に一年生の時に一人も友達を作らないボッチ道を極めていた。どうだい僕ボッチ最高ーッ!ヒャッハー!
しかしそんな僕が持つボッチオーラや、ボッチバリアーも陽菜穂さんには通用しない。
ぐいぐいと僕の中に入ってくるし、舌足らずな僕が饒舌に会話をしてしまっている。
ボッチパワーが中和されている?その時の僕はそう感じていた。
僕の事を色々と聞いてくる陽菜穂さん。
「好きな食べ物は?」「カレー」
「好きな本は?」「ラノベ」
「好きな音楽は?」「アニソン」
女の子と会話する事が、こんなにも楽しい事だとは思わなかった。しかも目の前にいるのはテレビでも見た事が無い程の超絶美少女天使だ。ずっと、ずーっと心臓がドキドキしている。
部屋のチャイムが鳴り、ドアの鍵を業者さんが直しにきた。業者のおじさんが部屋の中をちらほら見ていたのは陽菜穂さんが可愛い過ぎるからだろう。
「陽菜穂さんは学校は何処なの?」
「勿論、八雲君と同じ南陵高校ですよ!明日から登校します!同じクラスになれるといいのだけど……」
なッ!
超絶美少女天使が降臨して来たら、学校はパニックにならないか?僕のボッチ生活は大丈夫なのかな?
「八雲君?」
「陽菜穂さんが学校に来たら、凄い人気出そうだね(汗)」
「………………」
突然異変! 天変地異の前触れか!
今までの明るい陽のオーラを纏っていた陽菜穂さんが、負のオーラを纏って俯いてしまった!
「ど……、どうしたの?」
「(ぼそっ) ヤなんです……。目立ちたくないんです……」
「えっ?」
「(ぼそっ) 私……極度の対人恐怖症で…………人が恐いんです」
僕の心に雷が落ちた!稲妻が轟いている!なんですとーーーッ!
僕の留守に僕の部屋に上がり、シャワー迄使ってしまう行動力。
初めて会ったばかりの僕にプロポーズしてくるストロングハート。
楽しそうにお話する天使の微笑み。
……が対人恐怖症?
「えっ?でも、会ったばかりの僕と楽しそうにお話ししてるし、可愛いし、綺麗だし、天使だし」
俯いている陽菜穂さんは顔が紅潮してるし、余程の事なのだろうか?
「か、顔が赤いよ?大丈夫?」
陽菜穂さんは今度は耳迄赤くして更に深く俯いてしまった?大丈夫なの?
「(ぼそっ)……嬉しい……(ポッ)」
「ん? き、聞こえなかったんだけど……」
「わ、私は八雲君みたいになりたいんです……」
僕になりたい?……僕は何だ?僕は男だ……。
えっ?
男に成りたいの!
それはダメだ!
大天使ミカエルが許しても僕が絶対に許さない!
「八雲君みたいな、素敵なボッチに成りたい……」
良かった~♪ 男に成りたい訳ではなかったんだね♪ 陽菜穂さんは超絶美少女天使でいて下さい!
「僕みたいなボッチ?」
「はい」
俯いていた陽菜穂さんが顔を少し上げる。紅潮した頬に、少し潤んだ瞳からの上目遣いの美少女がそこにいた。
か、可愛い過ぎる!
しかし僕もボッチ道を極めた男だ!サイコロを振り6ゾロのクリティカル回避!
しかしなんて事だ!陽菜穂さんのウルウル瞳光線は回避無効のチートスキルだった!
僕はチャームの魔法をクリティカルでかけられました。
僕は陽菜穂さんの奴隷です。
何でも聞いて下さいご主人様。
イエス!ユアマジェスティ!
「八雲君みたいに、誰からも目に付かず生きていきたい……」
陽菜穂さんの綺麗な瞳から宝石のような雫が頬を濡らす。
「私を八雲君みたいなボッチにして下さい(ニコ)」
涙を湛えた瞳でニコって微笑む天使様はモナリザの微笑(見た事無いけど)等くすんでしまう至宝の微笑みだった。
勿論僕が言える言葉は一つしかない。
「はい」
こうして僕のボッチ道に超絶美少女天使の弟子が出来ましたとさ(ポッ)。
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