第9話「ギルティ」
第9話になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします(*'ω'*)
信次は城の廊下で魔王候補者の1人であるギルティとばったり会う。
「お前ここで何してんだ?」
「ユリウスを探してる。何処に居るのか知らないか?」
「あのジジイが何処に居るかなんて知るか。」
「・・そうか。すまなかったな。」
信次はそう言ってギルティの横を通り過ぎた。
しかし、
「・・ちょっと待て。」
「・・なんだ?」
「お前エルザートに行って中途半端で帰ってきたらしいな。」
「・・何が言いたい?」
「人間のところに行って国の1つも潰さず帰ってくるってのはどういうことだ?ああ?」
「お前には関係ないだろ。」
「あ?気に入らねぇな。魔人になって力を得たのに何してんだお前?」
妙に突っかかってくるな。
こういう奴を相手にするのは面倒臭い。
さっさとここを離れた方がいいな。
「まだ俺自身、力がどれ位あるのか分からないんでね。エルザートは様子見で行ったんだよ。あとこれから出掛けるんでまた今度。」
軽く流してその場を立ち去ろうとする。
「・・おい、待て。」
「まだ何か?」
「・・魔王候補は本当は3人だった。ザイロは魔界樹の警護で付きっきり、カナリアは全く表に出ず何してんのかわからねぇ。だから俺様が魔王の最有力候補だったのによ・・。お前がポッと出てきて候補が4人に増えちまった。・・邪魔なんだよなお前。一国も潰せない中途半端野郎が。」
絡んできた理由はそれか。
単に魔王の椅子が取られるのが不安なのか。
俺にとっては別に魔王に興味無いしどうでもいいのだが。
「で?結局どうしたいんだお前は?」
「今から俺様と戦え。」
「どうしてそんな展開になるんだ?」
「うるせぇ。今のお前がどの程度なのか見極めてやる。」
「ダメなのですぅ!信次様はまだ休養中なので戦えないのですぅ!」
メルが信次とギルティの間に入って制止しようとする。
「ああ?なんだクソチビ。邪魔してんじゃねぇ。」
「痛っ!痛っ!」
ギルティがメルの頭を掴み持ち上げる。
「おい!やめろ!」
「あ?じゃあ今から戦うか?」
「・・ダ、ダメなのですぅ。信次様はまだ戦えないのですぅ。」
「テメェには聞いてねぇんだよ。」
ギルティがメルを横にぶん投げる。
そしてメルが壁に激突。
「メル!」
「たくっ、たかがオーガごときのガキが。俺様に意見してんじゃねぇ。」
「お前・・!」
「くくく、いい目するじゃねぇか。さっさとやろうぜ?」
魔族の中にもこんな奴がいるのか・・。
こいつの人を見下し、蔑む目は嫌いだ。
だからメルに危害を加えた分、1発殴らないと気が済まない。
「メル、大丈夫か?」
信次はメルにもとへ駆け寄る。
「メルは大丈夫ですぅ。でも信次様ダメですぅ!まだ戦えるほどの魔力は回復してないのですぅ!」
「なんだ?お前魔力回復してないのか?だったら素手での殴り合いでもいいぜ?」
それならこちらとしても好都合。
「どこでやるんだ?」
「どこでもいいぜ?別にここでもな!」
いきなりギルティが突っ込んできた。
「お前がどんなもんなのか見せてもらうぜ!」
ギルティは速い打撃を連発。
信次は躱すことが出来ず、受け流すのが精一杯だった。
速い・・そして1発が重い。
反撃のタイミングが無い・・。
「どうしたどうした!?異世界からの候補者様よぉ!」
「くっ!」
防戦一方。
ついに受け流すことが出来ず一撃喰らう。
「っ!・・くそっ!」
反撃したが軽く躱されてしまう。
ギルティは廊下の壁や柱、天井を蹴って高速移動。
マジか・・。
速すぎて目が追いつかない!
「どこ見てんだ!」
後ろから思いっきり蹴りを喰らう。
そして前方へ吹っ飛ぶ信次。
「信次様!」
「かはっ!・・くそっ!」
「・・なんだよ、相手にならねぇのかよ。・・おい、立てよ。」
思うように体が動かない・・。
まだエルザートでの戦いの疲れが残っているせいか?
ギルティは信次の服を掴み引きずり上げる。
そして服を掴んだまま滅多打ち。
信次は抵抗できずボコボコにされた。
「・・・ちっ!もう終わりか。弱過ぎてつまんねぇな。・・これじゃあ万に一つもこいつが魔王になることは無いな。」
ギルティはゴミを捨てるように信次を投げ捨てその場を去った。
その場から信次は動けなかった。
「ク・・ソッ・・!」
悔しかった。一方的にやられて、なにより1発殴ると決めていたのに出来なかった自分に。
「信次様ぁー!」
メルが走ってくる。
「信次様!お体大丈夫ですか!?無茶しちゃダメなのですぅ!」
「・・メルは大丈夫なのか?」
「メルは頑丈なので全然大丈夫ですぅ!それより!信次様を運びます!」
「え?いや、メルじゃ俺は持てないだろ・・」
「大丈夫なのですぅ!!」
メルは信次をひょいと軽く持ち上げて走り出す。
「ええ!?」
もの凄いスピードで部屋まで運ぶメル。
数分で元居た部屋に着いた。
メルは信次をベッドに降ろす。
「回復するまでここでじっとしてるのですぅ!その間にメルがユリウスを連れて来るのですぅ!」
そう言ってメルは駆け足で部屋を出て行った。
「・・・痛てて。再生が遅い・・。魔力が足りてないってことか・・。」
暫く寝ているとメルがユリウスを連れて来た。
ユリウスは先ほどの俺と同じ格好の状態で持ち上げられていた。
「信次様!ユリウスを連れて来たのですぅ!」
「あ・・ああ、わざわざすまないなユリウス。」
「滅相もございません。貴方様の助けになるのなら如何なる時でも馳せ参じましょう。・・それで今回はどのようなご用件でございましょうか?」
「・・まずはその態勢を変えようか。」
ユリウスはメルに持ち上げられたまま、横になった状態で喋っていた。
メルはユリウスを降ろす。
「これは失敬。・・では改めてどのようなご用件でございましょうか?」
「修行のためムヴルヘイムへ行きたい。どうやって行けばいい?」
「ほぅ、ムヴルヘイムに行かれるのですか・・。あそこはドラゴンの生息地。たしかに修行にはもってこいの場所ですな。・・・ムヴルヘイムへはミッドガルドから北へ進み、シュタイン連邦国を抜けてさらに北へ進んだ所にございます。」
ユリウスは丁寧に地図を出して説明してくれた。
「翼竜では行けないか?」
「翼竜が人族の国に侵入した場合一斉に攻撃を受けてしまいます。エルザート王国の時と同様でシュタイン連邦国の手前で降りるのが良いでしょう。シュタイン連邦国を抜けたら翼竜を呼び、北へずっと進んでムヴルヘイムを目指して下さい。ただ、ムヴルヘイムはドラゴンが住む地でとても過酷な環境です。翼竜だと奥まで進むことはできません。ムヴルヘイムの途中で降りることをお勧めします。」
「なるほど。ちなみにドラゴンってのはどのくらい強いんだ?」
「ドラゴンの幼体ですら魔物数百を一掃できる程です。」
「マジかよ・・。」
「はい。只、ドラゴンは力は強大ですが数が少ないのです。なので数を減らさない為に今まで魔族・人族の戦いでは中立の立場として動いておりました。」
「小さい頃でその強さなら大人ならどの位なんだ?」
「成体のドラゴンは魔人にも匹敵すると言われております。その中でも特に気を付けなければならないのが・・・“竜人”と呼ばれる存在です。」
「“竜人”?」
「“竜人”とは何千年に一度、突然変異で生まれる人型のドラゴンです。知能が高く、魔力も他のドラゴンとは桁違いで、ドラゴンの中で神格化されている存在です。・・昔、何代か前の魔王様と一戦交えて魔王様が敗れたと言われております。」
「そんなのもいるのか・・・」
「なので“竜人”には近づかないことです。今の加藤信次様では勝つのは難しいと思われます。」
「・・だな。触らぬ神に祟りなしだ。」
「ムヴルヘイムで修行するのであれば奥へは入らず比較的手前でするのが得策かと。」
「魔王からドラゴンの調査も依頼されてるんだよ。」
「な、なんと!?・・・それでしたら良い魔具がありますぞ。」
ユリウスはそう言うと魔法を唱える。
「“空間道具箱”。」
ユリウスの目の前に小さな円形の空間が広がり、そこに手を入れる。
「凄いな。なんだこれ?」
「これは空間道具箱と言って、空間に物を保管する事ができ、取り出すことが可能な魔法でござます。」
「便利な魔法だな。」
「私は戦闘には不向きでございますので、お恥ずかしながらこのような魔法しか使用できません。」
「いや、普通に凄いと思うぞ。」
「この魔法を褒めて頂けるとは有難うございます。」
手を抜くとユリウスの手に何か機械のような物が握られていた。
「これは?」
「これは魔力探知・計測の魔具でございます。探知範囲はせいぜい半径1㎞までですが、無駄な戦いをせずに索敵・計測するには十分だと思います。」
「滅茶苦茶便利な道具だな。助かる。」
魔具は使用者の魔力を媒介として使用することができる道具である。
魔具は人族でも多く普及しており、火を点けるなどの家庭用の魔具から兵器として使用される軍用魔具まで開発されている。
以前エルザートにて信次がユリウスと通信した物も魔具である。
ちなみにユリウスが持っている魔具は人族が開発したのを改良して高性能にした製品。
「あと何か必要な物はあるか?」
「あとはしっかり休養をとって頂き、万全の状態で出向くのが宜しいかと。」
「・・そうだな。そうする。色々ありがとうな。」
「感謝など滅相もございません。私は貴方様方に尽くすことができて幸せでございます。」
とりあえずムヴルヘイムへ行く方法とドラゴンの情報は手に入った。
あとは体力を戻して出発するだけだ。
-----それから5日が経ち、ムヴルヘイムへ向けて出発することになった。