第7話「ラフィリム攻防戦」
第7話になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします( `ー´)ノ
信次と勇者の本格的な戦闘が開始。
両者はあらゆる魔法を駆使して戦う。
信次と勇者の戦う場の上空。
そこに一匹の蝙蝠が飛んでいた。
「・・さて、異世界から来た魔王候補者がどんなものか見ものだね♪」
空を浮遊している蝙蝠から映し出される映像で戦いの様子を見ている者がいた。
それは魔王サタン。
遠く離れた魔王城から映像で信次の戦いぶりを観戦していた。
「“地獄の炎”!」
信次が高位魔法を放つ。
黒闇の炎が勇者目掛けて飛んで行く。
「うがぁぁぁ!!」
勇者は風属性のバリアを発動。
だが、信次の炎に耐えきれずバリアが割れダメージを負う。
バリアによって弾かれた一部の炎の欠片が街中に飛散。
瞬く間に街が炎上する。
炎上した街を護衛団が鎮火に向かう。
「ふぅー!ふぅー!」
勇者はダメージを負ったはずだが、自我が無いので痛みを感じない。
傷も再生し、さらに興奮する。
「まじーーーん!!」
勇者が魔法を放つ。
空気の刃が信次を襲う。まるで鎌鼬。
かすめるだけで体がスパスパと切れ、連続で放ってくるので防ぎきれず左手が切断された。
「くっ!!痛っ!!」
高速再生能力ですぐ再生しても切られた時の痛みは変わらない。
信次に激痛が走る。
再生能力がある魔人は決して不死身ではない。
再生能力を使用するのに魔力が消費されるからだ。
しかも再生能力は自動的に魔力を消費する。
魔力が尽きたら再生は出来ない。
なので同じ再生能力を持つ者同士、どちらかの魔力が尽きたら勝敗が決する。
「うがぁぁぁあ!!」
勇者は狂ったように魔法を連発。
街への被害など考える良しもなく、信次に向かって放ち続ける。
それを躱すが、追尾性の魔法のため信次も魔法を放って打ち消す。
信次と勇者の闘いによって城下町の被害が凄まじいものとなっていた。
逃げ回る者、恐怖で泣き叫ぶ者、立ち尽くす者、必死で避難させる者で町は大混乱。
信次と勇者の闘いは魔法戦から次は肉弾戦に切り替わる。
勇者は鋭い爪で信次に襲い掛かる。
信次は皮一枚のところで攻撃を躱し、カウンターを浴びせる。
だが、痛みを感じない勇者は殴られても躊躇せずに襲いかかる。
「こいつっ!!」
「うがぁぁぁっ!!」
勇者は信次の首に噛みつく。
「ぐあっ!!・・・・なにすんだお前っ!!」
信次は必死で勇者を引きはがして前方へ投げ飛ばす。
信次の首の一部が食い千切られていた。
周りにいる者は勇者の戦いぶりに恐怖を感じた。
信次の食い千切られた箇所は再生。
しかし信次の魔力は徐々にそして確実に減っていく。
そしてついに勇者が大技を放とうとしていた。
手を掲げ大きな球状の風の塊を生成。
建物の瓦礫などが風によって塊に吸い込まれる。
「あれ受けたらマズイな・・」
塊に込めた魔力量が今までとは比べ物にならない。
あれを放ったらこの街一帯が吹き飛ぶくらいだ。
「あれは・・ダメだ!勇者よ!この街を・・王都を破壊する気か!」
近衛騎士団副団長カリムが勇者に叫ぶ。
しかし勇者には声は届かない。
「カリム様!ダメです!ここは避難を!」
「やべー!!これマジでヤバイやつっす!!」
「バカ!!お前も早く離れろ!!」
護衛団団長の1人がカリムに避難するよう呼びかける。そして呼びかけた後、興奮する団員を無理矢理引っ張り戦場を離れる。
「ま・・じん・・・殺す。」
お前はあのクソッタレ研究者の精神操作のせいで、そういう命令受けてるんだろ?
もともと人間を憎んでいるのに人間に利用されて・・。
お前と同じ人間を憎んでいる俺が・・解放してやる。
信次には勇者が悲しみ、もう終わりにして欲しいと願っているように感じた。
「終わりにする・・」
信次は両手に魔力を集中。
強大な魔力によって信次周辺はまるで地震が起きたように揺れた。
俺が今使える最強の魔法で決着つける。
終わりにしてやるから・・恨むなよ!
「うがあぁぁぁぁ!!!」
勇者が魔法を放つ。
それと同時に、
「“闇竜の逆鱗”!!」
両手の魔力を合わせて1つにまとめた黒い塊を放つ。
放った魔法は黒いドラゴンの姿に変化し飛んで行く。
勇者の魔法と信次の魔法がぶつかり合う。
その衝撃波によってさらに街は破壊。
衛兵たちも衝撃で吹っ飛ぶ。
どちらの魔法も一時は均衡していたが、信次の魔法が競り勝ち、勇者と勇者が放った魔法諸共吹き飛ばした。
吹き飛ばした先には王都ラフィリムを囲む壁があり、壁に衝突。そして大爆発。
爆発中、勇者は再生を繰り返していたがついに魔力が尽きて再生不能となる。
「あ・・り・が・・と・・・う」
そして勇者は消滅した。
爆発は多大な被害をもたらし、東地区が全壊。王都ラフィリムの5分の1が破壊するという未曾有の大惨事となった。
「ななななな、なんてことだ!!」
遠くで見ていたウィズが勇者が敗れたことに驚愕してた。
「王都が・・・」
カリムが呆然と立ち尽くす。
信次は魔力を多く消費してしまい、両手を膝に乗せるほど疲労困憊だった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
ヤバイ・・。
魔力使い過ぎた・・。
でも手加減できる余裕なんて無かったしな。
「カリム様!!・・今が好機です!」
「!!」
「魔人が消耗しております!倒すなら・・今です!」
マズイな・・。
今の力で乗り切れるか?
一斉に護衛団と衛兵が信次に襲いかかる。
信次はすぐさまその場を離脱。
しかし、
「逃すか!」
「!!」
信次の行く手に第三護衛団団長バルフォイが立ち塞がり、剣を振りかざした。
信次は咄嗟に残った魔力で腕を強化。
腕は切断されなかったが勢い良く地面に叩きつけられた。
「うっ!!」
倒れたところをすかさず第三護衛団副団長ギャンが追い打ちをかける。
剣を顔めがけて刺そうとするが信次は躱す。
「くそっ!おしいっす!」
「はぁ、はぁ・・。おいおい、こっちは手負いですけど?」
「あんたは魔人なんでそんなの関係ないっす!」
「ギャンおどき!」
第七護衛団団長プリズナが土属性魔法を放ち、信次がいる地面一帯が高く盛り上がる。
同時に四方八方から無数の弓矢が放たれた。
「闇の殻!」
信次全体を殻が覆い、弓矢を弾く。
「なっ!?まだ力残ってるの!?」
信次は防戦一方。
このままだと本当にヤバイ・・。
俺が人間を駆逐するはずなのに、このままだと俺が逆にやられる。
人間ってやつは弱ってる相手に本当寄ってたかって攻撃してくる・・。
信次の下で赤い鎧を纏った1人の男が剣を構えていた。
王直属近衛騎士団副団長のカリムだ。
カリムは剣に魔法を付与。
「行くぞ、魔人。」
カリムは攻撃態勢に入り、勢いよく信次に向かって行く。
「くそっ!」
瞬時に闇魔法剣を生成しカリムに対抗するが、万全の状態のカリムの剣に対して満身創痍の信次の剣では太刀打ち出来なかった。
カリムの力に圧され、段々と剣先が信次の喉元に近づく。
「魔人よ、王国に仇名す貴様をここで討伐する。」
信次を見るカリムの目が冷たく感じた。
この目は以前にも見たことがある・・。
この異世界に来る前だ。
施設でも学校でも会社でもバイト先でも、俺と関わった人全てが俺に対して冷たい目をしていた。
どいつもこいつも・・。
なんでそんな目をするんだ・・。
そんなに俺を嫌う?そんなに憎いのか・・?
俺もお前らが憎い・・。
その目をやめろ・・。
やめろ・・やめろ・・。
消えろ・・消えろ・・。
ドクン・・・
その瞬間、信次の中で何かが目覚めた。
「アァァァァァアアア!!!」
「なに!?」
信次から魔力が放出。
その勢いでカリムは吹き飛ばされ下に落ちる。
プリズナの魔法で盛り上がった地面は崩れ、信次は下に着地した。
「な、なんだいあれは!?」
信次の体からドス黒い瘴気のようなものが出ていた。
信次の体も黒く変色している。
同時に周囲にいる者に得体の知れない恐怖を与えた。
その恐怖に中には嘔吐する者、失神する者も出た。
「お!この短期間で扉を開いたね!」
魔王城で戦いを眺めていた魔王サタンが関心する。
「アァァァアア!!!」
「おいおい、あの魔人、さっきまで魔力が尽きかけてたんじゃないのかよ?」
第三護衛団団長バルフォイが動揺。
「尽きかけてるってより・・ふ、増えてないかい?」
「ははは、ヤバイ・・っすね。」
第七護衛団団長プリズナと第三護衛団副団長ギャンが恐怖を感じた。
「臆するな!!王都を守り、民を守るのが我々だの役目だ!!」
信次から発せられる得体の知れない恐怖に対して全員を鼓舞するカリム。
「私が先陣を切る!!後をついて来い!!一気に畳み掛けるぞ!!」
カリムは攻撃態勢を整え、突進する。
「オマエキエロ」
信次の指先から魔法が放たれた。
目にも留まらぬ速さで一瞬にしてカリムの横腹を貫く。
「がはっ!!」
「キエロキエロキエロキエロキエロキエロ」
指先から魔法を連発。
カリムの体が蜂の巣のように穴だらけになる。
「が、がはっ・・」
「カリム様!!」
「オマエノメキライダ」
信次の魔法がカリムの右目を貫いた。
「ぐぁぁぁぁあ!!!」
カリムが無惨にやられている光景を目にして他の者は動けずにいた。
まるで金縛りにあっているかのように恐怖で動けない。
「ニンゲンニクイ、ゼンイン・・・コロス」
「ひぃぃっ!!」
「アァァァァア!!」
信次の体全体から黒い球体状の魔法が数十個放たれる。
魔法は360度全方向に飛び散り、街を破壊。
衛兵たちにも当たって負傷者が続出。
「アァァァ!!コロス、コロス、ニンゲンニクイ」
余りの恐怖と重圧に失神、失禁する者が続出。
護衛団団長クラスの者は辛うじて立っているのがやっとだった。
「あー、このままだと彼、ダメになるね。完全に呑まれてる。ベティス、彼を連れ戻して来てくれるかい?」
魔王城で見ていた魔王サタンは側近の魔物であるベティスに回収の依頼をする。
「かしこまりました魔王様。」
ベティスはそう言うと一瞬にして魔王の間から姿を消す。
次の瞬間、信次の前にベティスが出現。
「ま、魔物!?」
その場にいた者は驚きを隠せなかった。
別の魔物が応援に来てしまった。
もう終わりだと内心覚悟を決めた。
しかしベティスは信次の体に触れ、信次と一緒にその場から姿を消した。
「!?」
「消え・・た?」
「た、助かったんすか?」
居なくなったのを確認すると全員がその場に倒れこむ。
エルザート王国王都ラフィリム。
魔人襲撃によってたった1日で王都の5分の1が全壊。
このニュースはすぐに世界中に知れ渡ることになる。
次話から新章に入ります!