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第6話「勇者」

第6話になります!

拙い文章ですがよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ

-- エルザート王国王城 地下 --


1人の男が王城の地下に降りていた。

その男は王直属近衛騎士団副団長カリム。



「・・・本音は勇者など使いたくないのだが。・・王の命令だ。致し方無い。」



カリムはそう言うと地下牢の扉を開ける。

地下牢の奥に他より頑丈な造りの鉄格子がある。

その鉄格子の中には1人の男が横たわっていた。

カリムはその鉄格子に近づき、鍵を開ける。



「勇者よ。仕事だ。」


「・・・」


「魔人と思わしき存在が確認された。至急現場へ行き討伐せよ。」


「ま・・じ・・ん・・」


「ついてこい。」



その男には手枷足枷がついていた。

カリムは手枷から出ている鎖を引っ張り、地下牢から連れ出した。



◇◆◇◆◇◆◇◆



-- 王都ラフィリム東地区 --


信次は再度王都の中に入っていた。

しかし信次が居る場所は王立図書館がある中央区ではなく東地区。



・・・さて、今はまだ騒動が起きてから数時間しか経ってないから警戒が強いはず。

そこを逆に利用する。

鉄は熱いうちに打てって言うからな。



「“闇自己造形(ドッペルゲンガー)”。」



大きい闇の塊から人が生成された。


闇自己造形(ドッペルゲンガー)は自分とそっくりの分身を作り出すことができる。

只、無属性魔法で生成すれば色合いまで全てがそっくりになるらしいが、俺は闇属性で生成しているので顔や肌の色とかが黒だ。

まぁ、陽動として使う分だから気にしなくていいか。


とりあえずこの分身をこの東地区で動かす。

そうすればこの分身に注意を引くことができて、その間手薄になった図書館に侵入する。

シンプルだが効率が良い作戦だ。

この分身でもあの護衛団って奴くらいなら倒せるくらいの魔力は込めておいた。

じゃ、さっそく作戦開始だ。



分身は信次から離れ、東地区にて騒ぎを起こした。

それと同時に信次はフードを深くまでかぶり、駆け足で中央区へ向かう。



「追えー!追えー!!」



遠くから衛兵たちの声が聞こえる。

上手く陽動は成功したようだ。

あとは図書館の周りがどうなっているのかだ・・。


中央区の王立図書館付近に来た信次は様子を見る。



おお!分身のおかげで図書館付近の衛兵の数が少ない。

あとは・・。



「“闇従者召喚(サモン)”。」



闇従者召喚(サモン)は闇特有魔法で、予め契約を交わした従者を瞬時に呼び出すことができる。

城に居る時に何体かの魔物と契約を交わし、従者としていた。


地面に闇の渦が現れ、その渦からゴブリンが出てきた。



「よし。向こうの方へ行って適当に暴れてこい。」


「ウガッ!!」



ゴブリンは駆け足で図書館付近の建物へ向かう。



「うわーー!!魔物だーー!!」


「きゃーーー!!」



市民の叫び声が響く。

図書館の衛兵も皆出てきてゴブリンのもとへ向かう。



「このゴブリン!どこから出てきた!?」


「ウガッ!!ウガッ!!」



ゴブリンは走りまって衛兵を撹乱。

衛兵が気を取られている隙に信次は無人の図書館へ侵入。


中に入ると目の前の光景に驚いた。

図書館の中は何万、何十万というほどの本で埋め尽くされていた。



「凄い・・。」



城の書庫とは比べ物にならないくらい広く、膨大な量の本。

ここから最高位魔法に関する本を探すのは一苦労だな。


信次は図書館の本を片っ端から手に取り読む。

図書館は親切にカテゴリー別に分けられていたので魔法に関するカテゴリーの棚を漁った。

外は信次の分身とゴブリンで大騒ぎ。

その間に淡々と本を読んでいた。

しかし、



「!!!」



分身の気配が消えた・・。

分身と自分の魔力は繋がっているのですぐ気付く。

まさか倒された?

人間の中にあの分身倒せるくらいの奴がいるのか?



「「ドォォーーーーーン!!!」」



図書館の前で大きな爆発音。



「なんだ!?」



信次は読みかけていた本を置き、図書館の窓から外を覗く。

覗くとゴブリンが見るも無残な姿になっていた。

そのゴブリンの上に1人の男が立っていた。

まるで中学生くらいの身長で細身。髪は長く真っ白。

腕には手枷。足には足枷がついていた。



なんだあいつ?奴隷か何かか?

何かやばそうな感じはする。

少しここで様子を見るか・・。


信次がそう思った瞬間、

男が急にこちらを見る。

信次に気付き、猛烈な速さで突進。



「「ドォォォーーン!!!」」



衝撃で図書館の一部が破壊。

信次は咄嗟に回避。



「なんだこいつは・・」


「・・ま・・じ・・ん」


「魔人?こいつ、俺の正体わかってるのか?」


「まーーじーーん!!」



発狂し、再び突進してくる。

だが、この速さなら躱すのに問題は無い。


先程と同じように躱そうとするが、白髪の男が突進してる最中に魔法を発動。

頭上に無数の魔法陣が出現。


その魔法陣から風属性の槍が飛んでくる。

信次は槍を次々と捌くが、捌いてる途中で白髪の男に距離を詰められ殴られる。

そして信次は後ろへ吹っ飛んだ。



「ぐっ!」



本当になんなんだこいつ!?

普通に強い・・・。



「構えよぉぉぉぉし!」


「!?」


「放てぇぇぇぇぇっ!!」



四方から魔法の弾丸(マジックバレット)が放たれた。

白髪男に気を取られてたので反応が鈍る。

数発被弾してしまった。

だが、魔人の持つ高速再生能力によって瞬く間に回復。



「あの尋常ではない回復力・・・。やはり魔人か。」



信次はいつの間にか周りを囲まれていた。

取り囲んでいるのは数十人の衛兵、護衛団である。



「うひょー。あれが魔人っすか?初めて見たっす。普通の人間と見た目変わらないっすね。」


「おい!マーキュのやられた姿を見ただろ。決して気を抜くな。」


「別に気を抜いてるわけじゃないっすよ。これが俺の平常運転っす。」



取り囲んでいる中に昼間の奴らと同じような白いコートを来た奴が数人いる・・。



「他の者は住民の避難を優先せよ!」



その中で一際目立っているのが赤い鎧を身に纏った男。

あれが統率している奴か?



「人間でありながら闇に落ち、魔族に成り果てた者よ。我が名はエルザート王国王直属近衛騎士団副団長カリム。貴様を王国に仇なす存在としてこの場で排除する。」



たく、俺は魔法書を探しに来ただけなのになんでこうなる・・。



「うう!!・・ううう・・・!!」



白髪男が唸っている。

他の奴とは明らかに異質。そして魔力量が違う。

この中で一番厄介なのは間違いなくこの白髪。

こいつから・・・消す。



「“闇魔法剣(ダークソード)”。」



闇属性の魔力で形成した魔法剣。

斬れ味を追究して何回も試行錯誤した。


信次は一瞬で白髪男までの距離を詰め、斬りにかかる。

白髪男の右腕を切断。しかし、



「!!」



残った左手で右肩の肉をえぐり取った。



「ぐっ!!」



こいつ!!わざと右腕を斬らせやがった!!

普通やるかそんなこと!?

俺みたいに再生できるならまだしも・・・。


その時、目の前の光景に信次は目を疑った。

あろうことか白髪男の右腕が再生されていく。



「なっ・・・」



再生速度は信次程ではないが徐々に再生されていた。



「お前、なんで・・?」


「ほっほっほ。それは私が説明しましょう。」



取り囲んだ後方の列から白衣を纏った1人の男が現れた。



「初めまして魔人の御仁。私はエルザート王国研究開発部門所長のウィズ・マガレッツィーニと申します。」


「ううう!!・・・ううう!!」


「静まりなさい。」



ウィズが手をかざすと白髪男が大人しくなった。



「何をした?」


「まずはこの者が何者なのかを教えてあげましょう。彼はエルザート王国が誇る“勇者”です。」


「勇者?・・・こいつが?」



ユリウスがたしか勇者はいるって言ってたな。

こんな情緒不安定なのが勇者?

でもこいつから感じるのは・・。



「魔人の恐ろしい強さというものは代々伝えられてきました。普通の人間が到底太刀打ちできる相手ではないということを!・・なので今までの魔人との闘いは人族が持つ“数”で対抗してきました。しかし!人間の数は限りがあります・・。なんとか数には頼らない方法が無いかと世界中で考え、何百年と試行錯誤を繰り返してきました・・。そして!人間は魔法技術の進歩によって、ついに!ついに辿り着いたのです!数に頼らずに魔人を倒せる方法を!」



ウィズが熱く語っているが周りの人たちはどこか暗い表情を浮かべている。



「先ほども言ったとおり、ただの人間では魔人には太刀打ちできません。残念ながらそこまでの実力差が人間と魔人にはあるのです。・・ただの人間ではね。」


「何が言いたい?」


「魔人に対抗する・・。そうなると魔人に近い実力がある者でなければならないのです!・・貴方は魔人に匹敵する者がいると思っていますか?」


「さぁ?俺も最近魔人になったばかりだからわらないんだよね。」


「そうですか、最近ですか・・。実はいるんです。魔人に匹敵する者が・・・。いや、正確には潜在能力がですが。」


「?」


「貴方は魔人です。魔人になる為には何が必要ですか?・・・そう、“闇落ち”です。“闇落ち”は人間に対して負の感情の限界点を超えた時になる現象の事。通常“闇落ち”した場合はほとんどが死に至りますが、稀に死に至らず、意識を何も持たない廃人、つまり植物人間となる者が出てくるのです・・。」



そういや魔王もそんな事言ってたな。



「・・私たち研究者はそこに目をつけたのです!・・魔人となった者は負の感情に負けず耐えて覚醒した。廃人となった者は負の感情に負けたが、結果死に至らなかったという点。魔人と廃人の共通点は・・“生き延びた”ということ。・・なので!魔人と同じ“生き延びた”という共通点を持つ廃人には魔人に匹敵する潜在能力、魔力が眠っているのではないかと考えたわけです!」


「!」


「そして我々研究者の推測は正しかった!廃人には魔人と同等の魔力、再生能力が与えられていたことが判明したのです!さらに!魔法技術は常に進歩してきた!なので我々は廃人になった者に精神操作魔法を駆使しました!心奥底に眠る潜在能力を目覚めさせ、引き出すために!」


「!!」


「長年の研究の末、ついに成功したのです!死をも恐れず、我々の命令を忠実に聞く人類最強の切り札が!」


「お前・・・」



心の奥底からグツグツと煮えたぎる感情。



「魔人に匹敵する魔力を持ち合わせ、尚且ついくら斬られようが燃やされようが再生する!とても勇ましい!!・・・なので!その者を敬意を表して我々は・・・“勇者”と呼ぶことにしました!」



人間に絶望し憎んだ者に対して精神を操り、自分の意思とは関係なしに人形のように扱う・・・。

これが人間のやることか・・?

本当・・腐ってんな・・・。

人間ってやつは・・・。



「廃人を精神操作できる研究が成功し、我々は世界に多くの勇者を作るため実験を繰り返しました。」


「!!」


「より多くの廃人を生み出すために負の限界点を超えさせる実験を行いました。ああ、勿論実験に使用したのは主に罪人や奴隷ですが。まぁたまに違うのも実験にしてましたがね。ほっほっほ。・・・これがなかなか上手くいかないものでしてね~。拷問して限界点を超えさせようとしたら“闇落ち”する前に死んでしまう者も多くて困ったものです・・。」


「・・・おい。」


「爪を一枚一枚ゆっくり剥がして苦痛に悶える顔、釘を体に打ち込み歪む顔、目玉をくり抜く時の悲痛な声。それが楽しくてしょうがない・・・おっと、失礼。これは私の趣味の話をしてしまいましたね・・。」


「・・・っ。」


「その他にも拷問だけではなく本人の目の前で身内を処刑してみたりして負の限界点を超えさせようとも試みましたが・・・。」


「・・・・・。」


「“闇落ち”したとしてもそのまま死んでしまうのが殆どで・・。廃人になりやすい種族はないかというのも現在研究してましてね〜。あ~!どこかに良い実験材料はいませんかね~!私は研究がしたいっ!!没頭したいっ!私は全て知りたいのです!人間魔物問わずに全てを!!これから貴方を弄れると思うと・・・興奮してきましたー!」



ブツン!



「この・・・クズがぁぁぁぁぁっ!!!」



信次の溜まっていた感情が爆発。

信次からとてつもない魔力が放出される。

魔力から発せられる圧で周辺の建物が壊れ、木々が倒れる。



「な、なんという魔力・・・」


「これやばいっす!やばいっす!!」


「ほっほっほ。さすが魔人ですな・・・。勇者よ、この魔人を殺しなさい。殺してその魔人の体を隅々まで私が弄るために。」


「ま・・じ・・ん!」


「これで人類で初めて生身の魔人の体を研究することができますぞ。ゾクゾクしますな〜。」


「クズが!!殺すっ!!」



信次は勇者ではなくウィズの方へ真っ先に向かう。

しかし、勇者がそれを阻止。



「勇者よ。期待しておるぞ。」



ウィズはそう言ってこの場を離れた。



「待て!このクズ野郎!!」


「まじーーーん!!」



怒り狂ったように殴打してくる勇者。

それに応戦せざるを得ない信次。

2人の戦いに誰も手を出さない。

というより出が出せないのだ。

肉弾戦の他にもお互い魔法を連発する。



「お前ら避難しろ!!俺らでは介入できない!!」



護衛団の掛け声のもと、衛兵たちが一斉にこの場を離れる。

戦場に残ったのはカリムと各護衛団団長と副団長のみ。



「こりゃ凄いな・・」


「魔人の強さは聞いたことあるが、勇者がここまでの強さとは・・・」



この場にいた全員が勇者の強さを目の当たりにし、同時に勇者の怖さを感じた。

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