第37話「決着」
第37話になります!
拙い文章ですが宜しくお願いしますm(__)m
アビ王子、軍兵士たちによって瀕死の重傷を負った信次。
信次に止めを刺そうとした時、
アビ王子たちの前にパルメダ王国第一王女カナリアが現れた。
辺りがザワつく。
「カ・・カナリア様・・・・。」
アルビルも動揺を隠せない。
「な、なぜ・・お前がここにいる・・・・・・カナリアァァ!!」
「もうこの戦は終わりです・・・アビ兄様。」
「お前・・・そのボロボロの奴がどんな生き物なのか知っているのかぁ!?」
「・・・・ええ、知っているわ。彼は魔人。人間の脅威。」
「そうだ!知っているのならなぜ助ける!?」
「彼を兄様・・・アビ王子のもとへ向かわせたのは私。」
「!?・・・どういう事だ!?」
「私は貴方が行っている事、これから行うことに目をつむっていられなくなったの。だから・・彼に情報を渡した。」
「・・・魔人と手を組んだ・・だと!?・・・王女であれど今お前がやっていることは国家反逆罪だ!!わかっているのか!!」
「承知の上よ・・・・今のこの国なんかに私は居たくない・・・・だから・・・・この国を変える。」
「変える・・だと?」
「今のこの国の方針は間違っている。」
「それはお前が前々から言っていた戯言か!?」
「ええ・・奴隷制度を撤廃するわ。」
「この国は奴隷によって栄えている!!奴隷がいるから国の民は不自由なく生活ができているのだ!!それを撤廃するなど・・国の根底から崩れることになる!!」
「だったら・・・その国の為に奴隷たちはどうなってもいいと思ってるの!?彼らは物じゃない!!命をもった人間よ!!」
「なぜ分からんのだ!!奴隷は奴隷!!家畜と一緒だ!!国の為に利用されるなら本望だろう!!」
「・・・それ・・本気で言っているの?」
「奴隷というのは人としての価値を失った者を指す。だったら人の為に使うのが正しいことであろう。」
「やっぱり・・・・兄様と話し合うのは無理みたいね。」
「・・・・何をするつもりだ・・。」
「私はこの国を変える。その為に・・・パルメダ王国第一王子アビ、貴方の存在は・・・要らない。」
カナリアが魔力を高める。
大地が震え、戦場に緊張感が走る。
「ほ、本気か・・・カナリア・・。」
「こ、この魔力は・・・!?」
カナリアの膨大な魔力量に驚く王子たち。
「はあ・・はあ・・・カナリア、お前・・。」
「あら、意識はちゃんとあるのね。後で回復してあげるから座って待ってなさい。」
「お前・・人殺したこと無いって・・。」
「・・・私には覚悟が足りなかった。自身の手を汚さずに他力本願になってしまった・・・。そうじゃない。私が、私自身で本気で国を変えようとするのなら・・・もう・・・この手を汚してしまったとしても貫き通すわ!・・・その決意を固める時間を稼いでくれてありがとう・・信次。やっぱりこの国のことは私でやらなければならない。」
「・・だったら最初からそうしてくれよ・・たく。」
「カナリアァァァ!!なんだその魔力はッ!?」
「私は・・・パルメダ王国第一王女カナリア。そして・・・・この国に絶望し闇落ちした・・・・・魔人よ!!」
「「「!!?」」」
「カ、カナリア王女が・・・・魔人!?」
「ごめんなさい、王国騎士アルビル。私がこの国を変える為の・・犠牲となって。」
「妹が・・・王族が・・・魔人・・!?・・ふ、ふざけるなァァァッ!!!そんなことあってたまるかッ!!!」
「アビ兄様、貴方が王位継承をしてしまったらこの国はもっと酷くなる。」
「貴様ッ!!私の妹の皮を被った魔族だな!?妹をどこへやったッ!?」
「私は紛れもなく貴方の妹のカナリアよ。この国の未来の為に・・死んでちょうだい。」
「お前らァァァ!!!あの妹の皮を被った化け物を始末しろぉぉぉ!!!」
兵士たちが構える。
「“水の流星”。」
「!!?」
頭上から巨大な水の塊がいくつも飛来。
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
塊は地上に衝突し爆発。辺り一帯を吹き飛ばす。
信次は爆発前にカナリアに引っ張られて共に後方へ移動していた。
「・・・おい、もうちょっと丁寧に運べないのかよ。こっちは怪我人だぞ。」
「あら、ごめんなさいね。魔人なんだから我慢しなさいな。」
「どんな理由だよそれ。」
カナリアの魔法により地形が変わり果てていた。
「お前も強力な魔法使えるんだな。・・・痛てててッ!!!」
カナリアは信次の頬をつねる。
「お前じゃないでしょ?カ・ナ・リ・ア。」
「・・・・ハイハイ、わかったよカナリア。」
「よろしい♪・・今回復してあげるからじっとしてなさい。」
カナリアが回復魔法を使用しようとした・・
その時、
数多の銃弾が飛んできた。
「!!」
カナリアは信次をグイッと引っ張って間一髪避ける。
「あの魔人どもを殺せェェェッツ!!!」
アビ王子が怒号を上げる。
そして生き残った兵士たちがカナリアたちに向かって走りだす。
「まだ生きてたの・・?」
アビ王子は幾人もの兵士を盾にしてカナリアの攻撃を耐えていた。
カナリアの広範囲攻撃により生き残った兵士は既に100人程。
その残った100人が特攻を仕掛けてきた。
「カナリア。」
「大丈夫。私が全て蹴りをつけるわ。」
「撃て撃て撃てーーーー!!!」
弾丸の雨がカナリアたちを襲う。
そこへ1人の男がカナリアと信次の前に現れ、銃弾を次々に弾く。
「!?・・・お前は・・。」
「よう、また会ったな。」
その男とは派手な眼鏡をかけた男。
情報屋のアイザックだった。
「なんでお前がここに!?」
「いや~、王女様に雇われちまってな。」
カナリアは城を出た後、べリアの町へ行きアイザックに信次がどこに居るのかを聞き出した。
そのついでに道案内としてアイザックを雇ったという。
「お前、この状況分かってるのか?俺とカナリアは魔人だぞ?」
「前に言ったろ?俺は魔物だろうが人間だろうが金さえ払えば情報は売ると。金払って雇われれば魔人にさえつくさ。」
「ははは、お前も相当ヤバい奴だな。」
「この世は金・・さ。」
「アイザック、信次を守れる?」
「追加料金発生するが?」
「あとで幾らでも払ってやるわ!」
「交渉成立だ。任せな。」
アイザックに信次を任せるとカナリアは銃弾の雨をかいくぐり進んで行く。
「とりあえず飛んできた物に関しては叩き返してやるよ。」
「・・・・俺も参加するぜーーーーッ!!!」
信次の前に現れたのはグロウ。
「グロウ!」
「シージン、すまなかった!!俺らは後ろで見てるしかできなかった!!」
「いや、お前たちが出てきたらあの大群の中で死ぬ可能性があった・・・出てこなくて正解だったよ。」
「シージン・・・。」
「リーネたちは?」
「あいつらは後ろで待機だ。この場面でシージンを守るとなれば・・・・俺が最適だろ?」
「・・・・だな。」
「任せろォォォ!!!どんな攻撃でさえお前を守るぜッ!!!」
「“水の刃”!」
カナリアはどんどん前に進み、向かってくる兵士を次々に倒していた。
「兄様・・・。」
「なにをしている!!殺せッ!!殺せッ!!」
カナリアはアビ王子の目前まで迫っていた。
次々に兵士を倒し、残りの兵力はたった1人となった。
「ひゅ~♪やるね王女様。さすが魔人。」
「あいつアレで本当に人殺したことないのか・・・?」
信次とアイザックが関心する。
「!!」
だが、アビ王子の前に最後の兵士であるアルビルが立ちはだかる。
「アルビル。」
「私は国を守護する王国騎士。たとえ王女であれ国に、王子に反旗を翻すのであれば敵です!!」
アルビルは剣を構えて立ち向かう。
「うおおぉぉぉぉッ!!!」
するとカナリアの後方から何かが高速で飛んできた。
そしてアルビルの右肩を貫く。
「がはっ!?」
アルビルの肩を貫いたのは信次が放った魔力弾であった。
グロウに少し回復してもらい魔力を凝縮して放ったのだ。
「・・・・ごめんなさい、アルビル。今まで国の為に尽くしてくれて・・ありがとう。“水の針”!」
カナリアが放った水の針がアルビルの胴部に突き刺さる。
「がっ・・は・・・!」
アルビルはその場に崩れ落ちた。
そして・・
「く、く、くるなぁぁぁぁ!!!化け物!!!」
「兄様・・もう終わりにしましょう。」
「く・・そぉぉぉぉっ!!」
「この国が今まで奴隷たちに行った非道・・これは兄様だけの問題ではありません。この国が成ってから現在までの王族が積み上げてしまった愚行です。・・・奴隷制度を撤廃したら民の暴動や批判の声があるでしょう。・・・だけど、この世界には奴隷など使わずとも幸福である国があると聞いてます。私はそのような国を目指し、この国を今までよりも必ず良くすると約束します。」
「・・・だ・・・・黙れェェェッ!!!」
ザシュッ!!
アビ王子は腰に備えていた短剣でカナリアの腹部を刺した。
「カナリア!」
信次が声を出す。
だが、カナリアは刺されたことに全く動じなかった。
「・・・・・さようなら・・・兄様。」
「や・・・やめ・・・・。」
「“超高圧水流切断”。」
カナリアは高圧水流でアビ王子を真っ二つにした。
この瞬間アビ王子側は全滅。
信次たちの勝利となった。
「終わったか・・。」
カナリアがゆっくり信次たちのもとへ戻ってくる。
「まさか王女様が魔人だったなんてな。」
「・・・あなたは?」
「俺はグロウ。シージンの仲間だ。」
「シージン?・・・ああ、貴方はこの人が魔人って知っているのね?」
「おうよ。魔人だろうがシージンはシージン。良い奴だ。」
「王女よ、第一王子は討ち死にした。これからこの国をどう変えていくのかはアンタにかかってる。国がどう転ぶかどうかはアンタ次第だ。」
「・・ええ、わかっているわ。この国を一から再建する。それはとてもいばらの道であることも覚悟の上よ。兄様たちの死を無駄にしない為に・・・。」
「・・・カナリア。」
「何?」
「お前の兄貴をぶった切ったのはいいが、魔法書はどうなった?」
「あ・・すっかり忘れてたわ。」
「おい。」
「魔法書は貴方の目的でしょ?それは自分で探しなさい。」
「ほぼ魔力切れてボロボロな状態で動くのがキツイんだが・・・。」
「たく、魔人のくせに苦戦するってどういう事よ。」
「こっちは前日に勇者たちとやり合ってたんだよ。さすがに連日での戦いはキツイっての。」
「勇者!?貴方ヴァーサスと戦ってたの!?」
「そうだぜ。俺たちとシージンは勇者一味と戦ったのさ。」
「驚いたな・・。それで勇者たちに勝ったのか?」
「まあな。」
「ひゅ~♪国の最高戦力に勝っちまうとは魔人ってのは敵に回したくないね。」
「「シージン!!グロウ!!」」
後方で隠れていたリーネたちが信次たちのもとへ駆け寄る。
「・・貴方たちは?」
「お、王女様!?なんで!?」
「こいつらは俺らの仲間だ。」
「カナリア、それより回復頼めるか?」
「そうだったわね。・・・“泡の治癒”。」
カナリアは水属性の回復魔法を発動。
泡が信次に触れ、みるみるうちに回復する。
「回復魔法じゃ魔力は回復しないが、外傷は結構治ったな。」
「それじゃ貴方は魔法書を探してきなさい。」
「ああ。」
信次はそう言うと1人でアビ王子たちが居た場所へ向かう。
アビ王子のところへ到着し、死体を探るが魔法書は無かった。
だが、内側ポケットに何かの鍵を発見。
「・・・という事は。」
周りを見渡すとアビ王子が乗っていた馬車を発見。
戦闘によって横たわっていた。
そして馬車の中を探すと宝箱のような鍵付きの箱を見つけた。
「これか?」
先ほど見つけた鍵を鍵穴に指すとピッタリ一致。
箱の中から魔法書を取り出す。
「やっと見つけた・・・・。これが偽物だったら悲しいがな。」
魔法書を持ってカナリアたちのもとへ戻る。
「見つけた?」
「ああ。これで俺の目的は済んだ。後は魔王に渡すだけだ。」
「そう。それじゃあ魔王様に宜しく伝えといて。」
「ああ・・・それと今後のことなんだが。」
「なに?」
「ここにいるグロウ、リーネ、アスタロ、ラングリットをかくまってくれないか?」
「・・・・そうね。貴方と王女である私が魔人という事実を知っているのはここにいる者たちだけ・・・。」
「それと勇者たちはグロウたちと面識がある。あいつらに今後も狙われる可能性だってある。」
「そうね。わかったわ。彼らをかくまう場所は用意するわ。」
「シージン、俺らはお前と一緒に居られないのか?」
「グロウ・・・。今の状態では難しい。魔王軍は人間を敵対視してるからな。安易に連れて行くとお前たちが危険だ。」
「今の状態では・・・か。」
「ああ。」
「わかった!だけど俺らはいつでもシージンの味方だ!お前らもそうだろ?」
「当たり前じゃない!」
「そうだね!」
「ああ!」
「だから助けが必要ならいつでも呼んでくれ。俺らはパーティーだ!」
「おう。」
信次とグロウたちはゴツンと拳を交わす。
「アイザック、貴方はどうするの?魔人に加担した訳だけど?」
「俺は冒険者且つ情報屋だぜ?自由に生きるさ。只、あんた達は高い金払ってくれるからお得意様だ。金さえ払ってくれればいつでも情報は売るよ。」
「そう。・・・それじゃあ帰りましょうか。」
そうして信次たちは戦った戦場を後にして帰路に着いた。




