第3話「魔人の力」
第3話です!
拙い文章ですがよろしくお願いします(*´∀`)♪
ユリウスに城内部の地下修練場まで案内してもらった。
「ここが修練場でございます。」
修練場の敷地はとても広く、数百規模の人数でも収まるほど。
ゴブリンやインプ、オーク、コボルト、スケルトン等の魔物が日々剣術や体術、魔法を鍛錬に励んでいる。
「「よーーし!!次はお前だ!!来い!!」」
その修練場の中で一際大声で叫ぶ者がいた。
一対一での戦闘訓練をしてるみたいだ。
大柄の男がスケルトンと戦っていた。
「ぬるいわっ!!」
大柄の男はスケルトンを思い切り殴って顔を吹っ飛ばした。
顔が取れたスケルトンは慌てて顔を取りに行く。
「そんなんでは人族は殺せんぞ!!次っ!!」
そうしてまた違うスケルトンと訓練を始めた。
「あいつは?」
「あれは軍事教官のバリアードでございます。体術・剣術・魔術を使いこなすことができる優秀な魔物でございます。それではバリアードに教えて頂きましょう。」
ユリウスの後を追いかけてバリアードのもとへ向かう。
「バリアード。精が出ますね。」
「む?・・おお、ユリウスではないか。軍師である君がなぜここに?」
ユリウスって軍師だったのか・・・。
「本日はあるお方に教授して頂きたいと思っておりまして。」
「あるお方?」
バリアードはユリウスの後ろにいる俺を覗いて凝視する。
「・・む、むむむ!おお!!そのお方がもしかして?」
「はい。先刻魔人になられた加藤信次様でございます。」
「貴方様が!!私でよければぜひ!!」
「それでは加藤信次様。後はこのバリアードに聞いて頂ければと思います。私は上に戻りますので失礼致します。」
「あ、ああ・・」
そういうとユリウスは上に戻って行った。
このバリアードって魔物、体長3メートルくらいでライオンみたいなたてがみで顔は鬼みたいだ。
滅茶苦茶怖そうで強そうだ。
「改めまして加藤信次様。私は魔王軍軍事教官の任につかせて頂いておりますバリアードと申します。以後宜しくお願い致します。」
顔に似合わず凄く丁寧な口調だ。
「てかユリウスもそうだが、なぜお前たちは魔人に対してそんな態度なんだ?」
「魔人というのは魔族の頂点の存在であられますので敬意をもっております。」
人間の時はヒエラルキーの底辺だった俺が今や魔族ヒエラルキーの頂点か。
・・・悪くない。
「では加藤信次様。本日は何を教授すれば宜しいでしょうか?」
「魔法に関して知りたい。実際のところ魔法なんて今まで空想上のものだったが、この世界では使えるらしいし。」
「わかりました。では魔法の基礎からお教えいたしましょう。加藤信次様、現状魔力を流れを感じることはできますでしょうか?」
「魔力の流れ?・・・いや、何も。」
「ではそこから始めましょう。目をつむって頂き、精神を集中して下さい。」
言われた通りに目をつむる。
集中するってどうするんだ?
何も考えず無になるってことか?
・・とりあえず何も考えないようにしよう。
何も考えず集中していると波のようにゆらゆらする物を感じた。
「どうですかな?」
「何かゆらゆらしたのを感じた。」
「そうです。それが魔力の流れになります。魔力は自身から流れるものと草や木などといった自然物から発せられて大気中に流れているものがあります。」
「これが魔力・・」
「魔法とはこれらの魔力と自身の属性を混ぜて形成して放つものです。」
「属性?」
「属性とは一個体に必ずあるもので火・水・土・雷・風・光・闇・無という基本八属性にわかれます。個人の持つ属性の種類によって使用できる魔法は変わってくるのです。」
「自身の属性か。1人に対して属性はいくつ持ってるんだ?」
「そうですね。基本1つから2つほどです。3つ以上属性を持つものは滅多におりません。」
「バリアードはどうなんだ?」
「私は火と土の2属性でございます。」
「へ~。自分の属性ってどうやったらわかるの?」
そう言うとバリアードは懐から透明の石を出した。
「これは?」
「これは“発光石”といいます。この石に魔力を込めれば石が属性の色に変わります。」
バリアードがそう言って石を渡した。
「なあ、石に魔力を込めるってどうすればいいの?」
「先ほど魔力の流れを感じたように集中し、体内から流れ出る魔力を石に入れるイメージしてみてください。」
よくわからんな。
でも言われた通りさっき魔力を感じたように集中。
うん。魔力はゆらゆら感じる・・
このゆらゆらを右手で持ってる石に流し込むイメージ・・・
すると透明だった石が変色した。
「できた・・のか?」
「はい。おめでとうございます。」
石を見てみると真っ黒だった。
「これは・・?」
「加藤信次様の持つ属性は・・・闇です!」
「・・・え?それだけ?」
「はい。属性は1つですね。」
「属性が複数あると石はどんな感じになるの?」
「石に様々な色が出て斑点模様になります。火なら赤、水なら青、風なら緑など。加藤信次様の場合は石の色が単色なので1属性のみとなります。」
「なんだよ、1つだけか。魔人なんだから全属性扱えるかもって思ったのに。」
「いえいえ、全属性を持つ者などこの世にはおりません。魔族と人族含めて今まで歴史上一番属性を多く持っていた人物でさえ6属性なのです。」
「・・・闇ってどうなの?弱い?」
「と、とんでもございません!闇属性は光と並ぶ希少属性です!闇は魔族の象徴!流石でございます!」
「次は魔法の使い方を教えて。」
「では、魔法の基礎である魔法の弾丸を教えましょう。先ほど発光石という物質に魔力を注いで石の色が変化しました。次は直接物質へ注ぐのでは無く自身の魔力を手のひらの一点に集め、鉛玉を形成してみましょう。魔法とは基本イメージです。鉛玉をイメージして手のひらに鉛玉を形成してみてください。」
「鉛玉、鉛玉・・・」
鉛玉ってどんな形だっけ?丸い?細長い?
・・拳銃の弾丸をイメージすればいいか。
弾丸をイメージして手のひらに魔力を集中する。
すると弾丸の形をした小さな黒い塊ができた。
「おお!さすがです!飲み込みが早いですな!」
「おおっ・・これどうすればいい?」
「前方に飛ばしてみてください。これもどのくらいの距離へ飛ばすのか、速さはどのくらいなのかを頭でイメージする必要があります。」
前方に飛ばす・・
距離や速さをどのくらいのイメージでするかなんてよくわからんな。
距離は・・前方の壁までで、速さは・・・弾丸だから拳銃の速さくらいでいいか。
でも拳銃の速度ってどのくらいだ?時速何キロ?目に見える速さではないからな。発砲したら一瞬であの壁まで飛んでいくのか?
壁に向かって発砲するイメージを頭の中でチラッと考えたその瞬間、
「「バァァーーーーン!!」」
土煙が上がり、壁の破片が四方にはじけ飛ぶ。
「え?」
手のひらから黒い塊が一瞬で壁まで飛んで行った。
しかも壁にどでかい穴が開いた。
その衝撃で修練場に居た者たちが静まりかえってしまった。
バリアードの方を見ると口が開いたままだった。
「勝手に飛んでっちゃった・・」
「・・す、凄いですな!魔法の弾丸であの威力!加藤信次様!あの弾にどのくらいの魔力を込めたのですか!?」
「どのくらい?・・いや、よくわからない。てか魔力の量って調節できるの?」
「あの小さい弾であの破壊力を見る限り、相当の魔力を込めなければあそこまで威力はでません。加藤信次様、お体に何か変化とかありませんか?」
「いや、何も。」
「なんと!!あれほどの魔力を込めたのにも関わらず体に変化なし!流石魔人になられたお方!魔力量が桁違いです!」
バリアードのリアクションが凄く暑苦しい。
「あのくらいのを放つと普通だとどうなるの?」
「そうですね。私の場合ですとあれほどの魔力を込めて放つと全魔力の5分の1を消費し、疲労感が出ます。並の者であればあの一発で全ての魔力を消費してその場に倒れます。」
「魔力は無限にあるわけじゃないから量の調整をしなきゃダメなのか・・。よし、調節するやり方を教えてくれ。」
そこからバリアードにまず自身の魔力量がどのくらいあるのか確認する方法を教わり、次に魔力量を調節するやり方を教わった。
魔法を使えるなんて今までの世界では絶対あり得ないこと。
それが楽しく思え、無我夢中で教わった。
何かに夢中になるなんてことは今までの人生で経験したことが無かった。
それから基礎である魔法の弾丸の他に応用攻撃魔法、防御魔法なども教わった。
さらに城内部にある書庫に魔法に関する書物があるという事なのでバリアードと別れ、書庫で手当たり次第読みまくった。
こっちの世界の文字はわからないが何故か読める。
勝手に頭の中で翻訳してるような感覚だ。
魔法の文献を漁って読んでると闇属性特有の魔法や一個人にしか使用できない固有魔法というのも存在する事もわかった。
ユリウスが言っていた国を破壊するほどの威力をもつ「最高位魔法」を使用するためには相当な魔力と条件が必要であるというのも文献を読んでわかった。
バリアード曰く、現段階での俺の魔力量は城に滞在する魔王軍の中で一番魔力量のある魔物の倍くらいあるとの事。
只、他の魔王候補者は俺よりさらに魔力量があると言っていた。
というのも他の魔王候補者は何十年も前から居るらしく、魔力量は鍛えれば上がるらしい。
経験の差ってやつだ。
とりあえず俺は魔法に関して知識を深め、魔力量を増やすために鍛錬を行った。
そのあとバリアードから魔法に特化してる魔法指南役の魔物である魔法使いのクガンを紹介してもらった。
魔法には「低位」「中位」「高位」「最高位」の4段階に分かれており、バリアードには「低位魔法」を一通り教えてもらったのでクガンには「中位」から教えてもらうことにした。
「努力」という言葉は俺には無縁だったが、今は魔法を覚えること、これが楽しくてしょうがない。
今までの人生を取り戻すかのように日々鍛錬に明け暮れた。
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この世界に来て1ヵ月ほどが経過した。
クガンには「高位魔法」まで教えてもらうことができた。
クガンでも「最高位魔法」は扱えないとの事で、これに関しては自身で覚えなければならない。
この1ヵ月でクガンが教えられる低位~高位魔法は大体習得。
次にそこからバリアードに再度バトンタッチ。
魔法の次は体術・剣術を教えてもらうことにした。魔法は魔力を消耗するし、魔法だけで戦うのは得策ではないからだ。
格闘技経験ゼロの俺だが、魔人になったせいか身体能力が異常に上がっているので相手の動きがよくわかる。
だけどバリアードの攻撃を何回か躱せるが全て躱せず打たれる。
「さすが加藤信次様。筋が良いですな。」
「やっぱり凄いなこの体。パンチの軌道とか次に何がくるのかが瞬時に判断できる。・・けどまだまだだな。」
「では続けて参りますぞ!」
その後もバリアードと修練を重ねた。
体術・剣術の修練をして2ヶ月。
その後さらに魔法の修練を行った。
異世界に来て約半年・・・。
とりあえず城にいる魔王軍の魔物の中で他を寄せ付けないくらい一番強くなった。
他の魔人の奴らが実際どれくらいの強さなのかはわからないがあまり興味は無い。
俺は憎い人間を殺すために力をつけただけなのだから。
だけど未だに「最高位魔法」に関しては習得できずにいた。
城の書庫の文献だけでは物足りないのでユリウスに相談したところ、
「それでは人族のいる街へ出向いてはいかがでしょうか?人族は我々よりも知識は深く、膨大な量の文献も持っております。そこでなら最高位魔法のヒントが得られるかもしれません。」
「でも魔人の俺が行っても大丈夫なのか?」
「貴方様は魔人ですが、見た目は人間と変わりませぬ。魔力を抑えて街へ入れば気付かれることは無いかと思われます。・・まあ、気付かれたら気付かれたで街を滅ぼせば良い話です。ほっほっほ。」
高々に笑うユリウス。
人に会うってのは嫌だが最高位魔法の知識が得られると考えるなら仕方ない。
俺は街へ行くことを決意した。