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第28話「協力者」

第28話になります!

拙い文章ですがよろしくお願いします( ゜Д゜)

信次はパルメダ王国に到着した。

そして協力者に合うため街を徘徊していたところ、協力者がパルメダ王国・王女であり、魔人の一人であるカナリアだと知る。

その日の夜にカナリアと落ち合う為、カナリアの指示のもと城内にあるカナリアの部屋まで辿り着いた信次なのであった。



「よく来たわね。」


「着いたのか。」



いかにも王族って感じの服装を身に纏っているカナリア。



「隠し通路が直接部屋まで繋がってるのか・・。」


「緊急避難用で各部屋には隠し通路があるのよ。」



だから通った通路が入り組んで迷路みたいになってたのか・・。



「魔王様から貴方が来るとは話で伺ってたけど・・・・それにしてもここまで来るの遅くないかしら?ミッドガルドから1週間程で着くと思うんだけど?」


「・・・いや、まあ、ちょっとな。」



エルザート王国で自分の手配書が出回っていることは伏せた。



「・・・まあいいわ。魔法書の件で貴方に話したいことがあるの。」



カナリアはそう言うと一杯の紅茶を信次に差し出す。

信次は椅子に腰かけて受け取り、ズズッと紅茶をすする。



「なあ、アンタ本当にこの国の王女なのか?」


「・・そうよ。」


「王女なのに魔人って・・・。魔人ってことは人間が嫌いなんだよな?憎いんだよな?」


「・・ええ。人間は憎いし、嫌い。」


「じゃあなんで王女なんてやってんだ?魔人の力ならここから人間を吹っ飛ばせるだろ。」


「私に一国を滅ぼす、そんな力は・・無いわ。貴方と違って常に戦いに出てる訳では無いから。」



別に常に戦ってる訳では無いのだが・・・。



「・・・でもアンタは俺より先に魔人になったんだろ?」


「そうね、でも私が魔人になった時期は貴方と然程変わらないわ。・・・私が魔人になったのは今から約3年前・・・。」



■■■■■■■■■

■■■■■■

■■■



私はパルメダ王国・第1王女として生を受けた。

パルメダ王国は自然豊かで貿易も盛ん。

その為経済的には凄く潤っている国。


父も母も優しく、民も優しい。

王都も活気で満ち溢れている。

そんなこの国が私は大好きだった。



あの真実を知るまでは・・・。



あれは私が15歳の頃。

それまで外の世界がどうなっているのかなんて私には全然知る由もなかった。

城外に出るとしても王都内のみ。


ある日、私は父に駄々をこねて王都外へ出る許可をもらった。

初めての王都以外の外。

馬車の窓から眺めると、見たことのない風景が広がってとても新鮮だった。


ある町へ寄った際、護衛の目を盗んで町中を歩いて探索した。



「カナリア様ァー!いずこにィ~!?」


「凄いわ~。見たことないものばかりで楽しいッ♪」



そして、探索している最中に私はあるものを目にしてしまった。



「ああッ!!ごめんなさいッ!ごめんなさいッ!」


「オラッ!大切な商品を落とすんじゃないッ!!」



それは・・奴隷。

私は奴隷が強制労働を虐げられている現場を目撃してしまった。

とても衝撃的だった。


それからいくつもの街や村を訪問したけどパルメダ王国に存在するほとんどの町村で奴隷が強制労働を虐げられていた。

王都へ帰ってきてからもそう、今まで全然目に入らなかったけど・・王都でも奴隷は存在した。


そして私はこの国が奴隷によって成り立っている国であるという事実を知った。

奴隷が汗や血を垂らして必死で労働しているおかげで民は何の不自由も無く生活できている。

逆に奴隷を使っていない辺境の町や村では貧困に苦しんでいる。

そういった所からこの国は民を奴隷として連れてきて別の町や村に売り飛ばす。


この光景に私は愕然とした。


父や母に奴隷制度はいかがなものかと話はしたが・・・全く相手にされなかった。

奴隷がいるからこの国は豊かであり、奴隷制度を廃止にしたら国が揺らぐと。

そう話す父や母、そして兄の冷たい目が恐ろしく感じた。


それから私は親族のみならずこの国の民の目まで恐ろしくなった。

平然と奴隷をこき使い、自分は働かずに豊かに生活する民。


そんな環境はおかしい。

そのうち私は人は誰でも平等で自由であるべきだと考えるようになった。

奴隷は過酷な労働、仕打ちで悲痛な声を上げ、死に至ることも少なくない。だけどそれに対してこの国の者は誰も何も思わないような行動をする。

まるで使い捨ての道具みたいに動けなくなったら捨て、使えないなら捨てる。

そして新しい奴隷を連れて来てボロ雑巾のように使う。



この現状を目の当たりにして、いつの間にか私は上手く笑えないようになっていた。



この国の人間というのは心が病んでいる、心が腐っているのかと私自身、段々憎悪が膨れ上がっていくのがわかった。

そしてある日、護衛はつけずに黙って王都の外に出掛け、ふと立ち寄った場所であるものを見てしまった。


それは・・・一瞬本当に山かと思える程に積み重なった・・・奴隷の山だ。

私が寄った場所は使えなくなった奴隷を捨てる場所。

既に死んだ奴隷、息はあるが病気や怪我で動けなくなった奴隷・・・。

奴隷として価値が無くった者がここに全て集められていた。


その現実を目の当たりにした私は言葉を無くして立ち尽くした。


そして・・・一人の男が奴隷の山に訪れた。

私はすぐ近くに隠れる。

男は奴隷の山に油をかけ、一本の松明を準備する。



「な、何を・・・!?ま、まさか・・・・。」



男は松明を山に投げる。

躊躇(ちゅうちょ)無く本当にその山をゴミのように燃やしたのだ。


奴隷の山が燃え上がる。

山の中にはまだ動けないだけで生きている者もいる。

それなのに火を点けた。

山から悲痛の叫び声が響く。

「熱い」「助けて」・・と。



私は目の前で起きたこの惨劇、この国の現実に対して言葉を失い、絶望を感じた。



これが人間のすることなの?まるで悪魔の所業・・。

・・私はなんのためにこの国で王族として生まれた?


そういった憎悪や悪感情がついに限界を超え・・・・闇落ち。

そして私は魔人となった。



魔人になった直後、私の目の前にある人物が訪れた。

その人物とは・・魔王サタンである。



「貴方は・・?」


「私は魔王サタン。」


「サタン!?魔族を統べる王が何故・・!?」


「君の強い魔力を感じてね~。来ちゃった♪」


「来ちゃった♪ではありません。急に呼び出されたと思ったら連れて行って欲しいと魔王様が駄々こねるからですよ。」



魔王サタンの横には女性のような魔物が居て、彼女の転移魔法でここへ移動してきたとの事。



「だって魔人になった子が出たんだよ?すぐに会いたいじゃないか♪」


「魔人・・?私が・・?」


「そうだよ。君の人間に対する負の感情が限界を超えた。そして死なずにこうして立っている。とても素晴らしいことだよ♪・・どうたい?私のところへ来る気はないかい?」



サタンがカナリアに手を差し伸べる。



「私は・・・この国が嫌い・・・人も嫌い・・・だけど・・・。」


「これから魔人となった君がどうするかは君自身で決めるといい。君はもう人間ではない、私たち魔族は皆君の味方だよ。・・何かあれば相談するといい。ミッドガルドの城で私は待ってるから。・・ベティス、あれ持ってる?」


「・・・・あれとは?」


「あれだよ!あれ!研究開発部に作ってもらったやつ!」


「・・ああ、あれですね。正式名称を言って頂かないとわかりませんよ。」


「なんとなく感じ取ってよ。」



ベティスが1つの魔具を取り出し、サタンに渡す。

そしてサタンがカナリアにその魔具を渡した。



「こ、これは・・・?」


「これはベティスの魔法が入っている魔具だ。ベティスの固有魔法は転移。それをこの魔具に入れてるから瞬時に移動が可能だ。但し、使用回数は1回のみ。転移先は魔王城に登録してある。ぜひ訪れてみてよ♪」


「わ、私は・・。」


「じゃあ、そういうことで~・・。」


「ま、待ってくださいッ!!・・・私を連れて行って下さい!」


「うん♪いいよ~♪ベティスお願いね~♪」


「3人分の転移は魔力使うんですよ・・。」


「まあまあ、帰ったら休んでくれればいいから♪」



ちょっとイラっとした表情をするベティスに対して悪気の無い無垢な表情をするサタン。



「はあ・・・ではいきますよ。」



ベティスはサタンとカナリアの肩に触れ、転移。


魔王城でパルメダ王国の現実をサタンたちに話すカナリア。



「カナリア、君は自分自身が良いと思う方向に進みなさい。さっきも言ったろ?私たちはいつでも君の味方だ。困ったことがあれば協力は惜しまない。やってみるといいさ。」


「・・・はい。ありがとうございます。」



そうして私は魔人としての人生を新たにスタートした。



■■■

■■■■■■

■■■■■■■■■



「・・・私はこの国全てが憎い。」


「じゃあなんでアンタはまだここに居て王女なんてやってるんだ?憎いなら国を滅ぼすみたいな考えにならないのか?」


「それでは何の解決にもならないわ。」


「?」


「私はこの国が憎い・・だけど生まれ育ったこの国を捨てることはできない。」


「じゃあどうするんだ?」


「だから変えるの。この国の在り方そのものを。国を外から壊すのではなく内側から変え、生まれ変わらせる。その為に私はここにいる。」


「内側から変える・・・。」



カナリアの真っ直ぐな瞳に信次は、



「アンタ凄いな。」


「?」


「人間が嫌いで憎いのに国を変えるだなんて俺じゃ考えつかないわ。」


「私は全ての人間が嫌いな訳じゃないの。見てくれは良いだけのこの国は腐ってる。根本的に改革しなければ民は救えない。キレイにしないと。」


「これからどうするんだ?」


「まずは私が王位を継ぐことからね。そこから奴隷制度の廃止を手始めに行う。」


「それからは?奴隷制度の廃止に反対するものは多いだろ?奴隷で成り立ってる国だし。」


「そうね。だから奴隷制度の廃止に賛同できない者に関しては処分するわ。」


「ん?」


「そういう者はこの国に要らない。制度に賛同する者のみでこの国を立て直すわ。」


「・・処分とは?」


「追い出すなり殺すなりしてこの国から抹消するの。」



先ほどの真っ直ぐな瞳とは違い、信次はカナリアからどす黒い何かを感じた。



ああ、やっぱり魔人なんだなこいつも・・・。



「・・まあ、アンタの今後に関してはどうでもいいが。」


「ど、どうでもいいとは何よ!」


「俺が今回ここに来たのは最高位魔法の魔法書奪還に関してだ。アンタが協力者なんだから何か情報は持ってるんだろ?」


「・・・ええ。」


「その情報を教えてくれ。」


「魔法書を奪ったのは“隻眼の鬼”という男。」


「“隻眼の鬼”?オーガか?」


「いえ、魔物のオーガではなく人間。隻眼の鬼は通り名よ。」



なんだか中二臭い通り名だな・・・。



「で?その隻眼の鬼とやらは何処にいるんだ?」


「その男がよく居る場所は南部の町“ベリア”。そこの冒険者ギルドに頻繁に立ち入りしているそうよ。」


「・・冒険者か。通り名じゃなくてそいつの名前は?」


「そこまではまだ分からないわ。実際行ってみて確かめるのね。」


「わかった。」


「あと、この件に関しては私の兄も絡んでいるわ。」


「・・どういうことだ?」


「兄と隻眼の鬼は繋がっているのよ。」


「?」


「兄が外へ出る時の護衛として隻眼の鬼を雇っている。」


「じゃあアンタの兄についていけば解決だ。」


「そうもいかないのよ。兄は3ヵ月以上前から城を出てるわ。」


「ん?今日昼間に顔だしていた王子は?」


「あれは弟のイカルガよ。それと私から貴方にお願いがあるの。」


「・・・なんだ?」


「兄を抹殺して。」


「ッ!?」



突然の依頼に紅茶を吹き出す信次。



「この国の王位継承権第一位は兄であるアビ。私は二位。私が王位を継げばこの国を変える動きが出来るの。だから協力してちょうだい。」


「いやだね。」


「!?」



信次は即答。



「何で俺がアンタの兄貴を殺さなきゃならん。アンタが国を変えたいって気持ちはわかった。だけど第三者の俺に邪魔な者を消せってのはちょっと違くないか?これは・・この国はアンタの問題だろ?アンタ自身で解決しなければならないんじゃないのか?」


「・・・・。」


「そもそも兄を殺したいなら自分でやれよ。今まで戦いに出てないとはいえ、アンタも魔人なんだから人一人くらい殺せる力はあるだろ。」


「・・・・。」



カナリアは下を向き暗い表情を浮かべる。



「もしかして・・・アンタ、人殺したことが無いのか?」


「・・・そ、そうよ。無いわよ!人を殺したことなんかッ!」


「魔人になって、近くに人間がいると凄い嫌悪感とかで殺したくならないか?俺は最初そうだったけど。しかもここ国の城だろ?身内やら警備やらで人が多いし。殺戮衝動にかられそうになりそうだけどな。」


「なるわよ・・。私も最初の頃に比べたら慣れたけど・・毎日こらえてるわ。でも殺せない・・・まずは王位を継いで国の方向を変えるところから始めないと。・・だから兄の存在が邪魔になるの。兄は奴隷制度の思想を一番良く思っている人。兄はこの国だけでなく、他国にまで手を伸ばそうとしている。」


「どういうことだ?」


「他国を侵略しこの国の領土を広げ、さらに奴隷の数を増やす。そしてまた奴隷を働かせて国の強度を高める。それを繰り返す。兄の最終目的は・・・世界の王となること。」


「大それた目的だな。」


「・・いまこの国では奴隷を使って武器や防具等の製造、大量生産を行っているわ。奴隷は人件費がかからないし、使えなくなった捨て新しい奴隷を使用する・・。兄はよく頻繁に外へ出る。それは奴隷確保のため国中動き回っているの。」


「ただの糞野郎だな、アンタの兄貴は。」


「だから貴方に頼むの。理由はなんだっていい。城でなく外で殺されることに意味があるの。奴隷の反乱、魔物に襲われたとかの理由をつけて兄を消せれば。」


「・・・・まあ、俺の目的は魔法書だ。魔法書を奪った隻眼のなんたらの近くにいるアンタの兄貴が魔法書を持っている可能性が高いってなら奪い返すだけ。その際、抵抗するなら俺は容赦なく倒す。・・・それでいいか?」


「ええ。」


「にしても、キドといいアンタといい、どうしてこの世界の兄妹は互いに殺し合うのを好むのかね。」


「ていうか貴方・・・さっきからずっ~と私の事を“アンタ”って呼ぶけどなんなの!?私にはカ・ナ・リ・アっていう名前があるのよ?失礼するわね!」


「ええッ!?」



急に態度が変わったカナリアに驚く信次。



「いや、アンタだって俺のこと・・」


「カ・ナ・リ・ア!」


「・・・はあ、カナリアだって俺のこと“貴方”って呼んでるじゃないか。一緒だろ。」


「全然!一緒じゃないわよ!私は王族よ!?私は貴方って呼ぶけど貴方が王族をアンタ呼ばわりする方がおかしいわ!」


「なんだそれ・・。」



なんだコイツ・・・凄く面倒くさい・・・。



「カナリア様!どうかされましたでしょうか!?」


「!?」



城を見回っている衛兵がカナリアの大声に気付いて部屋の前まで来てしまった。



「なんでもないわ!大丈夫よ!・・・・・いい?貴方はこれからべリアへ向かいなさい。ここからだと馬で2日あれば着くわ。」



カナリアはボソボソと小さい声で喋り出す。



「・・・わかった。」


「じゃあ隠し通路からまた戻って。帰り道わかる?」


「この部屋の窓開けてくれるか?」


「・・どうする気?」



カナリアは信次に言われた通り窓を開ける。

信次は窓から外を覗く。

カナリアの部屋は城の上層部。城には灯りが何個もあり、その灯りで影が多く存在していた。



「ここから出る。」


「ちょっと!ここは高いわよ!?それに下には見回りの衛兵が沢山いるから見つかるわよ!?」


「ああ、大丈夫大丈夫。」



信次はそう言うと影潜伏(シャドーダイブ)で灯りから出る影に潜り、また別の影に潜る。それを繰り返してあっという間に地上へ降りた。



「うそ・・。」



信次の行動に唖然とするカナリアだった。



「さて・・南部の町べリアか。早くお使いを終わらせたいもんだ。」



信次はべリアに向けて王都アンタリーゼを出発した。

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