第16話「竜人」
第16話になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします(^^♪
ムヴルヘイムに到着した信次たち。
しかし、ムヴルヘイムには異常な瘴気が立ち込めており、信次の扉を開き暴走させた。
そこで信次は魔王サタンが言っていた「修行場所」の意味を理解。
扉が開いて暴走を制御する修行をする決意をしたのであった。
「なんとなく扉が開く雰囲気がわかるようになったから、開きそうになったらメルに言う。」
「わかったのですぅ!」
「俺自身、暴走を制御する努力はする。だが、制御できなかった場合、早めに鎮めてくれ。」
「私はメルのサポートをするわ。」
「頼む。」
どの位で器が一杯になり溢れて扉が開くかわからない。
なので信次は目をつむって座る。
そして瘴気が体内に入り込むのを感じるようにした。
暫く経つと変化が起きる。
段々と苦しくなってきた。
器が徐々に満たされていく感覚。
「メル、そろそろ来るぞ・・。」
「・・わかったのですぅ。」
器が一杯になり魔力が溢れた。
そして扉が開かれる。
「うああ・・ああああ!」
黒い霧が信次を纏わりつく。
信次は必死に自我を保とうと考える。
ここからどうすればいい?
何をすれば保てる?
しかし、結局自我は保てず暴走。
すかさずメルは精神魔法で鎮める。
そして信次は気を失う。
暫くすると信次は目が覚ました。
「ダメだったか・・。どうすればいいんだ・・。」
「魔王様も言ってたのですぅ!繰り返しやればできるって!」
「・・・そうするしかないか。」
「じゃあ、私は何か食べ物採ってくるわね。」
プリネラは食べ物を採りに出かけた。
信次は探知魔具で周囲を調べる。
自分たち以外いないことを確認した。
暴走した魔力で気付かれそうだが、誰も来ない・・。
ドラゴンには魔力を察知する力は無いのか・・?
それとも単純に本当に近くにいないのか・・。
「信次様大丈夫ですぅ?」
「・・ああ、大丈夫だ。暫くはこの繰り返しになるだろうから頼むな。」
メルの頭を優しく撫でる。
メルは嬉しそうな顔をして笑う。
「えへへ、頑張るのですぅ!」
その後、何日もかけて暴走しては鎮めるのを繰り返した。
ムヴルヘイムに来て6日。
魔王の言っていた通り段々コツみたいなのを掴んできた。
器に関しても段々一杯になるのが遅くなり、器が大きくなっているのを実感。
「うおああああああ!!」
もうここに来て何度も扉を開き、何度も暴走した。
その度にメルに鎮めてもらい、プリネラはメルを回復させる。その繰り返し。
そして・・・・
やっと・・・・
「うおおおおお!!鎮まれぇぇぇぇぇ!!!」
黒い霧がいつものように信次を纏い、体が黒く変化する。
だが、今回信次は自我を保つことができた。
「・・・できた。・・暴走してない。」
「やったのですぅ!!」
「おめでとう信次様!」
暴走を制御し、自身からもの凄い魔力が出ているのを感じる。
「凄いな・・。とてつもない魔力だ・・。この黒く変化した肌とこの黒い霧は魔力によるものか。」
「凄い魔力をビリビリ感じるよ。」
「・・・でもこれ、かなり消耗が激しいな。体中の魔力がどんどん出ていくのがわかる。」
「どうやって元の状態に戻るのですぅ?」
「・・・・わからん。」
信次は目をつむって集中し、現状扉が開いている状態なので扉を閉めるよう意識した。
すると外に放出していた魔力が収まり、肌も元に戻った。
「元に戻すのは意外と簡単だったな・・・。」
これで今後は扉開いても暴走せずに済みそうだ。
日中夜問わず一緒に付き添ってくれたメルとプリネラに感謝だな。
「制御できるようになったが、まだまだ器は大きくできるな。・・・これからは移動しながらで大丈夫だと思うからそろそろ先に進むか。」
「はーい!」
今のところムヴルヘイムに居て、器が一杯になり扉が開くまでに1日ほどかかる。
ムヴルヘイムに滞在している間、これを出来るだけもっと長くしたい。
器が大きくなるということは魔力量もイコールで増えるという事だからだ。
信次たちはムヴルヘイムの中心部を目指し歩き出した。
探知魔具を使用しながら歩いていると突如画面に反応が出る。
「2・・3つの点が移動している。しかも早い。・・・そこの木に隠れるか。」
信次たちは木に隠れて様子を見る。
上空を3匹のドラゴンが飛行していた。
3匹とも最初に戦ったドラゴンよりも数段大きかった。
「でかい・・。俺らが戦ったドラゴンはあれで幼体だったのか・・。」
「すごくおっきいのですぅ。」
「あれと戦うってなると気が引けるわね・・。」
ドラゴンは魔族・人族と並ぶ三勢力の1つ。
数は少ないが圧倒的な力を持ち、魔族・人族どちらの味方にもならない中立の立場でもある。
もし、このドラゴンがどちらかの味方になったら世界のバランスが崩壊する危険性があるという事だ。
なのでドラゴンが人里に現れて襲うという事が無い。
むしろドラゴンは神の遣いとして崇められているところも存在するとの事。
「先に進むか。」
ドラゴンが過ぎ去った後、進むことを再開。
さらに暫く歩くと段々画面に魔力反応が増えていった。
「・・・結構多いな。この先に1、2・・・6、7匹固まってる。」
「でもこれってドラゴンだけを探知する魔具じゃないから別のかもよ?」
「たしかに・・。そういえば、ここでまだドラゴン以外の生き物と遭ってないな。」
反応が固まっている方を歩いていくと火の灯りが見え、人影も見えた。
焚火?人間か?
藪に隠れて覗くとそこに居たのはリザードマンだった。
リザードマンたちは何やら楽しそうに会話をして食事をしていた。
「あいつらは?」
「あれはリザードマンだね。」
「魔王とユリウスが言っていた竜人ってのはあいつらか?」
「竜人?リザードマンはドラゴンじゃないから違うね。でも、ドラゴンとは近しい存在とは言われているよ。しかもリザードマンは無駄な戦いはしない、温厚な種族だってのは聞いたことあるね。」
「・・じゃあ、聞いてみるか。」
「え?ちょっと!」
信次は藪から出てリザードマンたちに近づく。
「誰だ!?」
リザードマンたちは一斉に立ち上がり武器を持つ。
リザードマンって喋れるのか・・。
だったら話が早いな。
「人間?なぜここに?」
「あー、食事中に悪い。俺は人間じゃなくて魔人。別に争いに来た訳じゃない。」
「魔人?・・・何用だ?」
「ここムヴルヘイムに竜人はいるか?」
「それを聞いてどうする?」
「いや、単に知りたいだけだ。」
「・・どうだろうな。魔人は信用ならない。教えることは無い、帰るがよい。」
「ドラゴンのこととかは?」
「それも教えることは何もない。」
「本当に知りたいだけなんだけどな・・。・・分かった、邪魔したな。」
信次はメルとプリネラのもとに戻る。
それにしても魔人って言っても特に驚いた表情も動揺もしなかったな・・。
しかも魔人は信用されてない・・。
「ダメだった。何も情報得られず。」
「リザードマンはドラゴンと共存していると聞くわ。だから見ず知らずの者には言わないんじゃない?」
「・・地道に調査するか。」
信次たちはリザードマンたちから離れ、中心部に向かって探索を再開する。
相変わらず魔具に反応する数が少なく、反応があったとしてもそれはリザードマンだった。
「もっと中心に行かなければドラゴンはいないか。」
「ただ、中心に向かえば向かうほど瘴気が濃くなってるわね。」
「信次様大丈夫ですぅ?」
「ああ、俺は大丈夫だ。」
中心部へ向かって歩いていると突如突風が吹き荒れる。
同時に魔具に反応有。反応は1つ。
位置は信次たちの約1km後ろから。
「凄い風だな。でも近くじゃない。探知範囲ギリギリのところに反応がある。」
「どこに向かってるのですぅ?」
「・・・方角的に中心だな。スピードが早い、これはドラゴンだ。」
辺りは影で覆いつくされ、上を見上げる。
「!!」
「な、なにこれ!?」
「わあ~!」
途轍もない大きさの何かが上空を飛行していた。
肉眼では収まりきらないほどのサイズ。
顔を横にずらして全貌を確認すると翼や足も確認できた。
「これ・・ドラゴンか!?・・大きさが今までのとは桁違いだ。」
規格外の大きさのドラゴンが翼を羽ばたくと突風が吹き荒れる。
「ドラゴンってあんなデカいのもいるのか。」
「びっくりしたわね・・。」
信次たちはどんどん離れていくドラゴンを見ているとドラゴンの背中付近が一瞬ピカッと光った。
その刹那、何かが信次の腹を貫く。
「がっ!?」
「!!・・信次様!!」
高速再生により貫かれた腹はすぐに再生した。
「痛っ・・・な、なんだ!?何が起きた!?」
ドラゴンの方を見ると先ほどと同じ光が複数ピカッと光る。
「くそっ!!」
信次はメルとプリネラを抱きかかえ咄嗟に横へ飛ぶ。
信次が飛ぶ寸前まで居た場所に複数飛んできた光が着弾。
「な、なんなのさ!?」
「誰かに攻撃された!」
目にも止まらぬ速さの攻撃に信次は少し驚いていた。
そしてドラゴンの背中から何者かが飛び立ち、信次たちの前に降りてくる。
「・・ふむ、お前のその再生能力といい、内に秘めてる魔力といい・・魔人じゃな?」
「お前は?」
「儂はリムド。竜人じゃ。」
「!!」
竜人と名乗る男の見た目は人間で背中には翼、後ろには尻尾が生えていた。
(「“竜人”には近づかないことです。今の加藤信次様では勝つのは難しいと思われます・・」)
ユリウス、さっそく竜人と会ったぞ・・。
「リムド・・。何故いきなり攻撃してきた?」
「それは・・・強い魔力を察知したからじゃ。それに面白いと思ったからの~。」
「面白い?」
「最近、退屈してたんじゃよ。儂は強者と戦うのが好きなんじゃが、中々おらんくての~。・・でも、お前の魔力を感じた時、ビビッときたんじゃ。退屈しのぎになるかもってな。」
「・・別に俺たちはあんたとやり合うつもりは無いぞ。」
「ではなんの為にここにおる?」
変な嘘を言ってもこいつには見透かされそうな感じがする・・。
正直に言うか・・。
「この地で俺自身の修行と魔王に頼まれてドラゴンの勢力を調査しに来ただけだ。戦うつもりは無い。」
「修行と調査か・・。ふむふむ。あっはっはっは!正直で宜しい!・・では儂と手合わせ願おうか。」
「いや、話聞いてたか?戦わないって・・」
「儂とやればお前の修行になるし、同時に儂の力を確認できるぞ?・・・なぁに、別に命までは取らんよ。儂に付き合ってくれたらちゃんと今の儂らのドラゴンの状況も教えてやろう。」
どうする・・?
ドラゴンの勢力を確認できるのは好都合だ。しかも竜人の力も確認できる。
信次はこのリムドという竜人から並々ならぬ力をひしひしと感じていた。
「・・・わかった。手合わせ頼む。」
「よーし!ではそこのお嬢ちゃんたち離れてな。」
信次がメルたちにコクッと頷く。
そしてメルたちは信次とリムドから距離を置いた。
「だ、大丈夫かしら?」
「信次さまぁ~!頑張るのですぅ!」
「黄色い声援貰えて羨ましいの~。」
「・・手合わせって言ってもどこまでやるんだ?」
「そうじゃの・・。どちらかが戦闘不能になるまででどうじゃ?」
「・・・わかった。」
信次は構える。
「・・・・ほれ、さっさと来んかい。」
信次は一瞬でリムドまでの距離を詰める。
そしてリムドの顔目掛けて拳を振る。
しかし拳を手のひらで叩かれ、逆に信次がビンタをくらう。
「っ・・!」
信次は次に蹴りをするがリムドは軽く躱し、信次にデコピンを食らわして後方へ吹っ飛ばす。
「・・・・くっ!」
体を起こし、態勢を整えると目の前にリムドの顔があった。
リムドの打撃が信次の腹にめり込む。
すかさず蹴りで信次を地面に叩き落とす。
「がはっ!!」
「・・なんじゃ。もっと楽しませてくれ。」
「“九頭の大蛇”!!」
大蛇がリムドを襲う。
しかし、リムドは一瞬で大蛇を消し去る。
「くっ!!“散弾の雨”!」
魔力弾の雨がリムドに降り注ぐが全てはじかれる。
だが、はじいた一瞬の隙を見逃さず距離を詰めて闇魔法剣で斬りにかかる。
「!!」
「ん~。攻撃が単調で読みやすいの。」
リムドは指の爪で闇魔法剣を受け止めていた。
信次は一旦後方に下がって距離を置く。
「“闇竜のかぎ爪”!!」
信次は指に魔力で形成した爪を纏わせ、再度リムドまでの距離を詰めて攻撃。
・・・しかし受け止められ、膝蹴りの反撃を食らう。
そしてリムドは飛び上がり、人差し指を信次に向ける。
「ほれ。」
指先がピカッと光り、信次の体を貫く。
「ぐっ!!」
「ほれ、ほれ、ほれ~。」
リムドが放った光が信次の体中に穴をあける。
信次は片膝をついてしゃがみ込んでしまう。
高速再生により空いた穴は修復。
「はあ、はあ、はあ・・・。」
つ、強い・・・。
竜人ってここまで強いのか・・?
まるで歯が立たない・・・。
「し、信じられないよ・・。信次様があんな一方的になんて・・・。」
「信次さまぁ・・・。」
メルとプリネラが心配そうに信次を見つめる。
「なんじゃ、お前さんの力はそんなもんか?・・まだまだ魔王の力には遠く及ばんの~。」
「!・・あんた、魔王と戦ったことあるのか?」
「あるぞ。と言っても戦ったのは随分昔のことじゃ。今の魔王の・・その前の・・前くらいの魔王・・・いや、もっと前だったかな・・?」
「はは・・あんた一体いくつなんだよ・・。」
「儂はかれこれ六千年くらい生きとるぞ。・・あの頃はまだ儂らと魔族はバチバチにやり合ってたからの~。」
六千って・・・。
経験と場数が違いすぎるだろ・・・。
この圧倒的な力・・・魔族に向けられたら只事では済まされないな・・。
「お前さん、名前はなんじゃ?」
「・・・信次だ。」
「そうか、では信次よ。お主まだ力を秘めておるな?」
「!」
「その力を儂に見せてみろい。・・ほれ。」
「・・いや、これは扉が開かないと無理なんだ。」
「なんじゃ、何言っとるかよくわからんの~。信次よ、出せない力というのは無いんじゃ。お前さんは力を引き出すことに不安があるように見えるが?」
「!!」
たしかに扉が開いて制御することはできるようになった・・。
だけど制御できたのはつい最近のこと。
万が一また暴走するような事が起きたらって不安な気持ちは正直ある・・。
この竜人・・・少し手合わせしただけでここまで見透かされるのか・・。
でも、扉が開くのは負の感情が器に収まりきらなかった時・・。
ムヴルヘイムの瘴気で自然と負の感情が溜まるが、まだ一杯にはならない・・。
そもそも器が一杯にならなくとも扉を開くことは可能なのか?
でも、もし可能であれば制御を完璧にできるまで時間を短縮できる。
「・・なあ、少し時間をくれ。」
「ええじゃろう。」
信次は目をつむり集中する。
扉・・まず扉ってのはそもそも何なんだ?
扉はあくまで体中に実在するものではなく、例えに過ぎない・・。
じゃあどうやって開く?今までどんな感じで開いた?
負の感情が溢れたら扉が開く・・。そして負の感情が体から溢れたらそれが魔力に変換する・・。黒い霧、黒い肌になるのがそうだ・・。
!
負の感情が変換?・・もしかして負の感情って魔力みたいに感じ、捉えられるものなのか?
・・・集中しろ・・・集中しろ・・・。
今は魔力を感じるのではなく、負の感情を感じろ・・・。
信次は体内にある負の感情を感じるため深く集中する。
・・・そして体の中で緩やかに流れる水のようなものを感じた。
その水の流れを伝っていくと緩やかに流れたあと滝のように下へ落ちていく。
・・・・・これか!?これが負の感情?
水が下へ落ち、下には水が溜まっていた。
信次は水を触る。
すると触った水から恐怖や悲しみ、怒りなどの感情が伝わってきた。
やっぱりこれが負の感情だ・・。
でもこれをどうやって扉を開いて魔力に変換する?
扉を開く・・開く・・・。
溢れ出たら開く・・・。
・・いや、そんな難しく考える必要は無いのかも。
魔力と同じように感情を感じ、捉えることができた・・・。
だったら魔力と同じでイメージしろ・・。
この溜まっている感情を体外に取り出すイメージ。
扉っていうのは体内から体外へ出すための扉・・。
リムドはジッと信次を見つめていた。
信次の中で何かが変化をしているのを感じたからである。
すると、信次から段々と黒い霧が出てきた。
「・・ほう。来たか。」
次の瞬間、一気に信次の体から黒い霧が噴き出した。
信次は黒い霧を纏い、黒い肌に変化した。
自らの意思で扉を開くことに成功したのである。
そして信次はゆっくり目を開く。
「・・・できた。扉を開くことができた。」
「なかなかの魔力じゃな。これは・・楽しめそうじゃ。」
「リムド、待ってくれてありがとな。おかげで成功した。」
「ここまで待ったんじゃ、楽しませてくれないと困るぞ。」
「期待に添えることができるかわからないが・・さっきよりも強いぞ。」
「みたいじゃな。・・・ほれ、来い。」
信次は構え、戦闘態勢に入る。




