第15話「入口」
第15になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします('◇')ゞ
信次達はゴブリンの森から出て徒歩でナダリアへ向かっていた。
ナダリアまで徒歩だと結構かかるが時間かければその分魔力も回復する。
全員ベヒモスとの闘いで魔力を消費したので丁度良かった。
「そうだ。ベヒモスについて聞いてみるか。」
「誰に?」
「うちの博識爺さんに。」
「?」
信次は通信魔具を取り出し、ユリウスへ繋げる。
「・・はい、こちらユリウスでございます。」
「ユリウス、俺だ。」
「加藤信次様。どうされましたか?」
「昨日、ベヒモスって魔物と戦った。異様に強かったんだが何か知ってるか?」
「ベヒモスとですか?・・・ベヒモスは先代魔王様の時代に生まれた魔物でございます。傲慢で暴食、食べた者の魔力を取り込み、強さを増す厄介な魔物でございまして、その強さを見込んで先代魔王様が軍への勧誘を行ったのですが勧誘を断った魔物でもあります。しかし・・ベヒモスは人間に封印されたと聞いておりましたが・・。」
「それが最近復活してゴブリンや他の魔物を襲っていた。」
「そのベヒモスを加藤信次様が倒されたと?」
「ああ。」
「それは流石でございます。ベヒモスは食べれば食べる程強さを増しますので魔人に匹敵する可能性があると言われていた魔物。それをあっさり倒してしまうとは感服でございます。」
「・・ベヒモスって他の魔物と同じで沢山いたりするのか?」
「・・・いえ、ベヒモスは突然変異で生まれた個体でありますので数は1匹のみと把握しております。」
「そうか・・。」
あんな魔物が沢山いたら結構面倒臭いし、魔物側も被害が尋常じゃないしな。
「ユリウス、ありがとう。」
「加藤信次様、今どちらに居られるのですか?」
「シュタイン連邦国北部のナダリアだ。」
「おお!ムヴルヘイムまであともう少しでございますな。残りの道中お気を付けくださいませ。」
「ああ。」
ユリウスとの通信を終えた。
「今のは?」
「魔王軍の軍師でもあるユリウスだ。博識でいつも頼ってる。」
「へ~。」
「メルもユリウスとお話ししたかったのですぅ!」
「あ、悪い。」
「ぶー。」
信次たちは数時間かけてナダリアへ到着。
しかし、ナダリアには沢山の騎士団員が駐在していた。
さらにナダリアの住民がほぼ居なくなっており、活気あった街が静かになっていた。
「ベヒモスの一件で住民は避難でもしたのか?」
「そう考えるのが妥当ね。」
「・・・そこの者たち止まれ!」
入口にいる騎士団員に呼び止められる。
「お前たち、今このナダリアには入れん。すまないが違う街へ行ってくれ。」
「馬だけ借りたいんだが。」
「ダメだ。迂回して違う街へ行くんだ。」
「はあ・・、メル。」
「はい!なのですぅ!」
メルは精神魔法を団員にかける。
「じゃあ、俺たちは中に入らないから馬を2頭ここまで連れてきてくれ。」
「・・わかりました。」
団員はそう言うと走ってナダリアの中へ入り、馬小屋から馬を連れてくる。
そして馬に乗り、ナダリアを迂回してムヴルヘイムへ向かうことにした。
馬で走っていると前方に大きな山々が見えた。
「あれがムヴルヘイムか?」
「いえ、ムヴルヘイムはあの山の奥ね。あの山々を超えた先がムヴルヘイムよ。」
「まだ先か・・。」
さらに馬を走らせると国境付近に到着。
関所があった為、入国した時同様メルの精神魔法を使用し、関所を通過。
信次たちはついにシュタイン連邦国を抜けたのである。
目の前に広がる光景は山しかない。
信次は地図を広げて行路を確認。
「ん?ここってどこかの国ではないのか?」
「ムヴルヘイムへ繋がる山々は全てどこの国も保有していない土地よ。」
「・・・じゃあ翼竜呼ぶか。」
信次は笛を鳴らす。
てかこんなに遠い場所から笛鳴らしても来るのか・・?
1時間ほど待つと大きな羽音を響かせ翼竜が飛んできた。
「すごい・・。これが翼竜?」
「本当に来た。・・でも1時間で来るって早くないか?」
「これは別の翼竜なのですぅ!翼竜は色んな所にいて一番近くにいるのが飛んでくるそうなのですぅ!」
「そうなのか・・。」
「って、前にユリウスが言ってたのですぅ!」
たしかに魔王城から乗ってきた翼竜と比べると少し大きいな。
メルは翼竜の背中に乗り、俺は足に掴まる。
プリネラは・・・。
「・・・翼竜1匹で3人乗れるか?重さ的に大丈夫か?」
「失礼ね!私はそんなに重くないわよ!」
「いや、翼竜が運べる重量の話だ。・・行けそうか?」
信次が翼竜を撫でて反応を確認する。
翼竜は「大丈夫、問題無い」と言わんばかりの自信満々の顔をして大きな声を上げた。
「よし、じゃあ頼むぞ。プリネラはもう1本の足に掴まれ。」
「わ、わかったわ。」
プリネラはドキドキしながら翼竜の足を掴む。
そして翼竜は一気に飛翔。
「あはは!すっごーい!!」
「てかプリネラは羽あるから飛べるんじゃないのか?」
「飛べるけど長時間は無理だし、こんな高く飛べないわ。」
「飛行限度があるのか。」
「行くのですぅ!」
翼竜はスピードを上げる。
翼竜から見る広大な山々が連なる圧倒的な景色。
その山々の奥に他よりも一際高い山が見える。
「あれがムヴルヘイム・・。」
あの山だけ異質なのが遠目から見てもわかる・・。
「グァ!!グァ!!」
突然翼竜が鳴き出す。
「どうした?」
「これ以上は進めないらしいのですぅ・・。」
ムヴルヘイムに近づくにつれて空気が徐々に変わっていく感じが全員に伝わる。
危険を察知したのか翼竜は降下して信次たちを降ろした。
信次たちを降ろしたあと、翼竜は戻っていった。
「さて、先進むか。」
「はい!なのですぅ!」
信次たちは山を歩いてムヴルヘイムへと向かう。
山を歩いていた時、突如上から火の玉が飛んできた。
信次たちは緊急回避。
信次たちの辺りが大きな影で覆いつくされた。
「!?」
上を見上げると・・・1匹のドラゴンが姿を現した。
「「「ギャァァオォォォ!!!」」」
「ドラゴン!?」
「おっきいのですぅ!」
「ドラゴンなんて初めて見たわ・・。」
ドラゴンは口元に火の塊を生成。ブレスの準備をしていた。
「お前たち散れっ!!」
信次の掛け声のもと、ドラゴンのブレスが放たれると同時にメルとプリネラは即座にその場を離れる。
ドラゴンが放った火のブレスは辺りの木々を燃やし尽くした。
「いきなりドラゴンと出会うなんてな・・。このドラゴンは・・・成体?幼体?どっちだ?」
ドラゴンとは初めて対峙するのでどのくらいの大きさが幼体なのか成体なのかが分からなかった。
「そんな事今はどうでもいいか。ドラゴンがどれほどのものか確認してやる。メル!プリネラ!」
プリネラは羽を広げ飛翔。
「“突風の刃”!」
風の刃がドラゴンを襲う。
同時にメルが近づき、ボディブロー。
・・しかし、ドラゴンの皮膚は鱗で覆われて硬く、風の刃が通らず、メルの打撃も効かなかった。
「硬っ!!」
「ちょっと痛いのですぅ・・。」
ドラゴンは尻尾でメルを薙ぎ払い、プリネラの方へ火のブレスを放つ。
メルは吹っ飛ばされ、プリネラは間一髪ブレスを避けた。
「“九頭の大蛇”。」
信次は闇魔法の九頭の大蛇を発動。
「喰らえ!」
大蛇の9つの頭が一斉にドラゴンを襲う。
「ギャァオォォォ!!」
大蛇に噛みつかれるが鋭い爪で次々と大蛇を切り裂く。
そしてドラゴンは信次に襲い掛かる。
ドラゴンは片手で叩き潰そうとしたが信次は避ける。
叩きつけた地面は崩れ、木々がなぎ倒された。
「すごい力だな・・。“闇魔法剣”。」
信次はドラゴンに接近して振りかざす。
ドラゴンの腕に傷をつけることはできたが斬り落とすことは出来なかった。
「ギャオオオオオ!!」
「硬いな・・。もっと切れ味を上げるか。」
闇魔法剣にさらに魔力を込める。
そして再度ドラゴンの腕を斬りにかかる。
ドラゴンは尻尾で信次を攻撃。
ひらりと躱し、見事に腕を切断した。
「ギャォオォ!!」
ドラゴンは高く飛び、逃げて行った。
「・・・お前たち大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。」
「メルも大丈夫なのですぅ!」
「いきなりドラゴンが出てくるなんてな。」
「まあ、ムヴルヘイムの近くだから不思議じゃないけどね。」
信次は荷物をゴソゴソ探る。
そして魔具を取り出す。
「それは?」
「これは魔力探知の魔具。魔王からドラゴンの勢力も調査して欲しいって頼まれて、ユリウスからこの魔具を借りた。」
信次は魔具に魔力を込める。
すると魔具の画面に点々と赤いマークが表示された。
「この赤い点が魔力。・・ほら、今ここに点が3つあるのが俺たちだ。そしてこの移動している点、これは今さっきのドラゴンだな。」
「へー。便利ね。」
「この魔具の探知範囲は半径1km。これでムヴルヘイムにいるドラゴンの数を数える。」
「これで相手の強さとかはわからないの?」
「流石にそれは無理だ。そういう魔具があればいいんだけどな。」
「信次様!信次様!メルも見たいのですぅ!」
魔具をメルに渡す。
「じゃあ先へ行くか。さっきみたいにいきなり強襲される事も考えて進もう。」
「わかったわ。」
「はい!なのですぅ!」
山を登るとムヴルヘイムが目前に見えた。
ムヴルヘイムは厚い雲を突き抜けて頂上が見えない。
一体標高どれ位あるんだ・・?
信次は地図を広げて確認。
「ムヴルヘイムって結構広いな。魔具の範囲は半径1kmだから・・・・片っ端から調べるの面倒臭いな。」
とりあえず今いる地点から魔具を使用。
画面に自分たち以外の反応は無し。
「よし、行くぞ。」
信次たちは歩き出す。
暫く歩くと、地面の色や空気が一変した。
「空気が重いな・・。」
「ええ・・。」
「着いたのですぅ!!」
ついに信次たちはムヴルヘイムへ到着した。
魔具を確認するが半径1km以内には反応無し。
「少し休憩するか。」
「そうね。」
「はーい!」
信次たちがいるのはムヴルヘイムの端。
ムヴルヘイムの中心部へはまだ30km程あった。
「それにしてもここの空気重いな・・。標高が高いからか?しかもなんか全体的に暗いな・・。」
「違うわ。これは・・瘴気ね。しかも密度が濃い。」
「なんでこんなに瘴気が濃いんだ?」
「さあ?そこまではわからないわ。」
「信次さまぁ・・。」
メルが凄く眠そうな顔をしていた。
「・・みんな疲れたし、ここで休んでいくか。」
「そうしましょ。」
ここはムヴルヘイムの端っこだけど油断はできない。
いつまたドラゴンが来るか分からないからな。
信次とプリネラが見張りを交代制で行い、信次は眠りについた。
そして・・・信次が寝ている時、変化が起きた。
なんだ・・・?
体が熱い・・・。
この感じ・・・まさか・・・。
「う・・あああああ!」
突如信次が唸る。
唸り声を聞いてメルが起き、プリネラが気付く。
信次の体から黒い霧が出て纏わりつく。
「信次様!?・・これってベヒモスの時と同じ!?どうして!?」
「あああああああ!!!」
「鎮めるのですぅ!」
メルが精神魔法で信次を鎮める。
信次は意識を失って倒れた。
そして・・・少し経つと目が覚めた。
「・・・な、なんでいきなり扉が開いたんだ!?」
「・・・たぶん、この瘴気のせいじゃないかしら?」
「瘴気の?」
「ええ・・。しかもここの瘴気、濃度が異常に高いわ。私たち魔物にとっては特に問題は無いのだけれど・・。」
信次は魔王が言っていたことを思い出した。
(「それなら器を大きくするのと扉を開くのに丁度良い修行場所を教えてあげよう・・」)
「扉を開くのに丁度良い」ってのはこの瘴気にあてられて自然に暴走するからか・・。
この瘴気の中で少し寝ただけで暴走・・。
この瘴気に慣れれば器も大きくなるってことか。
・・・だったら、
「メル、プリネラ。少しここに滞在してもいいか?ここの環境に慣れたい。」
「メルは賛成なのですぅ!」
「私も賛成ね。」
「どうもこの瘴気の中だと扉を開いて暴走しやすくなる。それを繰り返して制御できるようになりたい。」
「メルも大変だろうけど疲れたら私が回復させてあげるわ。」
「ありがとなのですぅ!」
信次はまずはここで暴走を制御できるようになってから中心部へ向かうことを決意した。




