第14話「決着」
第14話になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします(´;ω;`)
信次が騎士団の負の感情を取り込んで扉を開き暴走。
「てめぇを喰って俺様の力の糧にしてやるよ!!」
「アァァァァア!!」
最初に信次が仕掛ける。
猛スピードでベヒモスに迫り、魔力で覆った手刀で攻撃。
信次の攻撃はベヒモスの硬い皮膚を斬り裂いた。
「なにっ!?・・ふんっ!!」
ベヒモスはすかさず反撃に出る。
両手を組んで信次に振り落とす。
信次は攻撃を受け止めるが、下の地面が衝撃で凹む。
「なんて威力だよ!でもそれを受ける信次様もすごい・・・。」
「メルたちも信次様を助けるのですぅ!」
「いや、私たちが出て行ったら両方に巻き込まれる可能性が高いよ。まだ待つしかないわ。」
「これならどうだ?」
ベヒモスは口を大きく開け、口の中で魔力を凝縮。
口から魔力弾を放つ。
信次はその攻撃を咄嗟に躱す。
躱した魔力弾は後方の地面に当たり大爆発。辺り一帯を破壊した。
爆発により周囲に土煙が舞い上がる。
土煙の中、激しい音を立てて信次とベヒモスがぶつかり合う。
戦いを離れて見ていた騎士団。
「シュミット様、どうされますか?」
「・・魔物と魔物が戦っているのか?・・くっ、今の私たちではどうすることもできない。」
「では、いかがされますか?」
「この魔物たちと戦うには数が圧倒的に足りない。・・・退却だ!退却する!急いでナダリアへ戻り、避難勧告をするんだ!!」
「はっ!・・退却!!全員退却だーー!!」
騎士団は急いで戦場から退却した。
ミリアル平原に残ったのは信次たちとベヒモスのみ。
魔物の残党はすべて逃走済みであった。
ベヒモスは信次との戦いに夢中で騎士団が退却したことに気づいていなかった。
「ガハハ!!いいね!いいね!久々の戦い!楽しいね!!」
信次は無数の魔法の弾丸を放つ。
今の信次は自我が無いため、加減を知らない。
一発一発が高出力の魔力を込めたものである。
弾丸がベヒモスの身体を貫く。
「ぐっ!!俺様のこの体を貫くとは!!だが!俺様はこの程度では倒れんぞ?」
ベヒモスの貫いた箇所が再生していく。
「あいつ!再生能力まで持っているのかい!?」
「信次様が心配なのですぅ。段々魔力が落ちてきてるのですぅ。」
信次は現在、魔力コントロールが出来ていない。
加減なく放出しているので魔力消費も激しかった。
それでも信次は攻撃を止めない。
幾度も魔法を放ちベヒモスを攻撃。
そして黒い竜巻の魔法を放ちベヒモスは竜巻に巻き込まれた。
竜巻によってベヒモスの体は切り刻まれ、ベヒモスは吹っ飛ぶ。
ベヒモスの再生能力は魔人程では無いため、再生に時間が掛かった。
「くっ、はあ、・・てめぇを喰って力つけて俺様はまたあの野郎に挑むんだ・・・。だからてめぇを喰わせろぉーー!!」
ベヒモスが憤怒すると体が黒から赤に変化し、夥しい魔力が放出される。
「まだあんな力が!?」
「もうダメなのですぅ!このままだと信次様が呑まれてしまうのですぅ!メルは信次様を鎮めに行くのですぅ!!」
メルはダッシュで信次のもとへ向かう。
「ちょっと!!メル!!・・・もう!わかったわよ!私が少しでも足止めさせるわ!」
「行くぞ魔人・・・。喰ってやるぞぉぉぉ!!」
「 “業火球”!」
「!」
プリネラが火属性魔法を放ちベヒモスに火をつける。
そして続けざまに土属性魔法を放つ。
「“土の監獄”!」
火がついたベヒモスを土の球体に閉じ込める。
中はまるで釜戸のような状態になった。
その間にメルは信次に精神魔法を使い、信次を鎮める。
信次はその場に倒れた。
「これでお終いになってくれればいいんだけど・・。」
だがプリネラの願望はすぐ儚く散った。
「うおおおおおお!!」
ベヒモスは土の監獄を破壊。
火炎魔法も少し火傷痕が残る程度だった。
「女・・、邪魔してくれたな。」
「ふん、主人を守るのが従者として当たり前でしょ?」
「お前から喰ってやる!!」
ベヒモスはプリネラを襲いにかかる。
しかしプリネラは羽を広げて空へ回避。
「お前・・その羽、インプか。しかも突然変異したやつか。」
「その通り、私はインプ。空を飛べるからここからあんたを一方的に攻撃するわ!」
「小賢しいハエめ。撃ち落としてくれるわ。」
ベヒモスは口から魔力弾を連発。
「ちょっ!?危なっ!!」
プリネラはギリギリ回避する。
しかし、ベヒモスの攻撃は止まらない。
「ちょっと!何発撃ってくるのよ!」
その瞬間、ベヒモスの口にアッパーカットが炸裂した。
「ぐがっ!?」
アッパーカットをしたのはメルであった。
メルの強烈なアッパーでベヒモスの体を浮かす。
そこをすかさず連打、連打、連打。
ベヒモスは尻から倒れる。
「こ・・このガキ!」
「メルが相手になるのですぅ!」
「俺様と肉弾戦しようってのか?」
メルは無属性の身体強化魔法を発動。
パワー・スピードが強化された。
「行くのですぅ!」
縦横無尽にベヒモスの周囲を動き、攪乱させる。
「速っ!」
「ちっ!ちょこまかと動きやがって!!・・・・うごっ!?」
メルの拳がベヒモスの腹にめり込む。
「このっ!!」
反撃するもメルは躱して顎にカウンターを食らわす。
ベヒモスはよろけ、片膝を地面に着ける。
「信次様とやりあったダメージと疲れが相当あるわ!いける!いけるわ!」
「決めるのですぅ!」
メルが渾身のパンチを放つ。
だが、ベヒモスは片手で止めた。
「!!」
「・・・てめぇの拳は中々だが、これじゃまだ俺様は倒せねぇな。」
ベヒモスは掴んだメルの拳を潰す勢いで強く握る。
「っつ!!あああああ!!」
メルが悲痛の叫びを上げる。
「メル!!この!“突風の刃”!」
プリネラが放ったのは風属性魔法で鎌鼬のように切り裂く風の刃。
風の刃はメルの手を掴むベヒモスの腕に当たって切り裂く。
「ぐっ!!」
刃の衝撃でベヒモスはメルの手を離した。
「よし!」
「この・・小賢しいハエがっ!!」
ベヒモスは口から魔力弾を放つ。
「きゃあああああ!!」
プリネラは被弾し下へ落ちた。
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俺は・・・どうなったんだ・・・・?
騎士団の感情が沢山入ってきて・・。
途中から記憶が・・無い・・・・・。
体のあちこちが・・・痛い・・・・。
今どうなってる・・・・・・・・・?
くそっ・・・体が重い・・・・・・。
信次は意識を取り戻した。
鉛の様に重くなった体を必死で起こし、今起きている状況を確認する。
「!!!」
「・・・うううう!」
「がはっ・・・がはっ!」
メルとプリネラがベヒモスに捕まり、首を絞められていた。
2人とも体がボロボロで信次が起きるまで痛めつけられていたのが一目でわかる。
2人は必死に体をバタバタして抵抗するがベヒモスは力を緩めない。
「さて・・よくもまぁ抗ってくれたなぁ・・。今てめぇらを喰って俺様の力の糧にしてやるからなぁ・・。」
「やめろ・・・。」
ベヒモスは大きく口を開け、メルを喰らおうとしていた。
「やめろぉぉ!!!」
動け動け動け動け!!
俺の体動けよ!!
こんな俺の傍にいつも居てくれてるあいつらを・・・。
助けられなくてどうするんだ!!
動けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
その瞬間、信次の中にまだ残る魔力が溢れ出す。
扉を開いた時と同じような黒い霧が信次を纏い、肌も黒く変色。
しかし、暴走した時とは違い、今は自我を保っている。
フラフラと足元がおぼつかない中、必死に立ち上がる。
そしてベヒモスへ突っ込む。
「!!」
「うぉぉぉぉ!!!」
闇魔法剣でメルを掴んでいる腕を斬り落とした。
「ぐぉぉお!!・・クソがっ!!」
信次の頭目掛けてベヒモスの膝蹴りが飛んでくる。
だが、ひらりと躱し、その勢いで次にプリネラを掴んでいる腕を斬り落とす。
「があぁぁぁぁぁ!!!」
ベヒモスの2つの腕が地面に落ちる。
同時にメルとプリネラも落ちるが信次が2人ともキャッチ。
「ごほっ!ごほっ!ごほっ!」
「お前たち大丈夫か!?」
「な、なんとかね・・。死ぬかと思ったわ。」
「大丈夫・・なのですぅ。やっぱり信次様来てくれたのですぅ。メルは信じてたのですぅ。」
「すまなかった・・。俺がまた暴走したせいで・・。」
「ぐおおおおおおおお!!!」
ベヒモスは腕を斬り落とされ、苦痛で悶えていた。
「クソっ!!クソッ!!クソッ!!・・よくも俺様の腕を落としてくれたなぁぁ!!」
「ベヒモス、お前はここで始末してやる。」
「魔人如きが・・・死ねぇぇぇ!!!」
ベヒモスは口から高出力の魔力弾を放つ。
しかし信次は闇魔法剣で魔力弾を真っ二つに斬る。
2つに斬れた魔力弾は横に軌道が反れて後方で爆発。
「終わりだ。」
躊躇なくベヒモスを一刀両断。
「ク・・・ソ・・・が・・・。」
ベヒモスの体は綺麗に縦2つに分かれた。
信次はベヒモスを倒すと同時に倒れかける。
「はあ・・はあ・・・はあ・・・。」
信次は周りを見渡し、自分たち以外誰もいないことを確認。
「プリネラ。」
信次はプリネラに話しかけるとポーションを投げて渡す。
「なんで?私より先に信次様が飲みなよ!」
「この中で回復系の魔法が使えるのはお前だけだ。それ飲んでメルを回復させてやってくれ。大分重傷だ。・・俺は少し休んでれば大丈夫だから。」
「・・わかったわ。」
「俺は少し寝る・・。魔力使い過ぎて疲れた・・。」
そう言うと信次はすぐに眠ってしまった。
「たく、ここは戦場のど真ん中だってのに・・。まあ、今は誰もいないからいいけどさ。」
プリネラはポーションを飲んで回復する。
そして、
「“癒しの風”。」
“癒しの風”は風属性特有の魔法。
優しいそよ風がメルを包んで癒し、回復させた。
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ベヒモスとの闘いから数時間が経過。
寝ていた信次は目を覚ました。
「ん・・・・。」
目を開き、起き上がると信次は森の中にいた。
「あれ?・・・ここは?」
「信次様ぁ~!」
起きた信次にメルが抱き着く。
「メル。」
「やっと起きたわね信次様。」
「プリネラ。・・・ここは?」
「ここはゴブリンの住み家なのですぅ!」
メルの後ろには複数のゴブリンがいた。
「ゴブリン?なんで?」
「それは・・・」
プリネラから事情を聞いた。
俺が寝たあと、プリネラはメルを回復させてメルと一緒に俺が起きるまで待っていたところ、戦場に数体のゴブリンが戻ってきたらしい。
ゴブリンはベヒモスが倒されたことに歓喜し、お礼がしたいとの事で住み家まで連れてきたとの事。
「お前たちはベヒモスに困ってたのか。」
「このゴブリンや他種族の魔物はもともと違う森に住んでいたらしいんだけど、突如ベヒモスがやってきて森にある食料や仲間を全て喰われてしまったからこっちへ逃げてきたんだってさ。それでベヒモスに追われて他種族同士が集まってたところを人間に発見されてその後騎士団が来たそうよ。」
「なるほど。じゃあお前たちは別に街を襲おうとして集まっていた訳では無いのか。」
ゴブリンはコクッと頷く。
「じゃあ、とりあえずここで体力が回復するまで居させてもらうか。」
「メルは食べ物集めてくるのですぅ!」
メルにくっついてゴブリンたちも食べ物を探しに出かけた。
「プリネラ。」
「なに?」
「ありが・・とな・・メルを助けてくれて・・。」
ボソッと小さい声で呟く。
「え?なに!?もう一回言って!?」
「だから!ありがとなっ!・・・たく。」
「あははは!ちゃんと聞こえてるよ!」
「お、お前・・」
「今さら何言ってんのよ。貴方は私を助けてくれた。私は貴方に尽くすと決めたの。だから礼なんて勿体無いわ。・・・でも、信次様ってちゃんと面と向かってお礼言えるんだ。」
「・・・もともとそういうキャラじゃなかったけどな。この世界に来て、色々価値観とか見方が変化してきた・・のかもな。」
「信次様の話もっと聞かせてよ。」
「・・・また今度な。」
「えー、なによ!いいじゃない!」
「よし、俺らも食べ物探しに行くぞ。メルとゴブリンだけだとゲテモノを持ってきそうだ。」
信次は立ち上がり、食料を探しに向かう。
「あーん!ちょっと待ってよー!私も行く!」
———————数時間前
プリネラたちがゴブリンに呼ばれて住み家についていった後、戦場に騎士団が戻ってきた。
とてつもない魔力同士のぶつかり合いの反応が消えたからである。
「シュミット様、これは・・・?」
「・・・・。」
騎士団全員が目の前に広がる光景を見てゴクリと唾を飲み込んだ。
爆発などで平だった大地が凸凹になっており、戦場跡を見て、当時の戦いを想像しただけで体が震えてくる。
「これほどの戦いをしていたのか、あの魔物たちは・・・。」
「シュミット様!あれを!」
団員が指差した方にはベヒモスの死体が転がっていた。
「この化物を倒すとは・・・。あの者、危険だ。・・誰か!誰かこの魔物と戦っていたもう一匹の魔物をみた者はいるか!?」
シュミットの問いに誰も答えられなかった。
誰1人として信次の顔を見ていなかったのだ。
「ナダリアには避難勧告を出して住民は避難させたが、あのような魔物がまだ近くにいると思うと気が気じゃないな・・・。国として対策を即急に考えなければ。」
「シュミット様、この死体どうしますか?」
「・・・持って帰ろう。この魔物を調べたら何かわかるかも知れない。」
こうして騎士団はベヒモスの死体を荷台に乗せ、戦場を後にした。
————————ゴブリンの住み家
信次たちは集めた食材を料理し、みんなで囲んで飯を食べていた。
「とりあえずお前たちはベヒモスの脅威から解放された。良かったな。」
「ウガッ!」
ゴブリンは嬉しそうな顔をした。
そして信次に何かを渡した。
「・・これは?」
「ウガッ!ウガウガ!」
何言ってるのか全然分からない。
「これは前に洞窟で拾った物だって言ってるよ。」
「なんなんだこれ?」
ゴブリンから貰ったのは何かのペンダント。
「さあ?ただの装飾品じゃないの?・・・でも、ゴブリンたちがこれをお礼として受け取って欲しいってさ。」
「・・ああ、貰っとく。ありがとな。」
「綺麗なのですぅ!メルも欲しいのですぅ!」
「こら!これは信次様が貰った物なんだからメルは貰えないの。」
「ぶー。」
「じゃ、体力が回復するまでここに居るから宜しくな。」
「ウガッ!」
その夜、飯を食べた後は各々戦闘の疲れですぐ眠りについたのであった。
ただ、信次は起きており、寝ころびながら今日起きた出来事を考えていた。
あの時、黒い霧みたいなのが体中に纏っていた・・・。
あれは扉を開いて暴走を制御できたってことなのか?
咄嗟で無我夢中だったから制御しようって意識はしてなかったけど・・。
あれがちゃんと制御できれば・・・。
魔王は繰り返していればそのうち制御できるようになるって言ってたけど、制御できなくてまた自我が無くなって暴走したらメルたちを巻き込む可能性もある・・。
早くものにしないとな・・・。
————朝になった。
「おはようなのですぅ!」
いつも通り元気なメルが信次を起こす。
一晩寝たので体力的には大分回復した。
ただ、魔力自体はまだ全快ではないが、戦闘しなければ問題ない。移動している最中に自然と回復する。
「お前たち、ありがとな。また、何か困ったことあったら俺たちや魔王軍に助けを求めるといい。同じ魔族だ、助けてやるから。」
「ウガッ!」
信次たちはゴブリンに別れを告げて森を出る。
昨日の戦闘で馬は逃げてしまったので徒歩でナダリアへ戻ることにした。




