第13話「ベヒモス」
第13になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします(*'ω'*)♪
信次たちは合成魔獣との戦いを終え、改めて最北端の街ナダリアへ向かう。
そして馬で半日走りようやく到着した。
メルたちはナダリアの光景を見て驚く。
「すごいのですぅ!」
「たしかに・・。」
目の前に広がるのは大きい湖の上に立つ街だった。
湖と街への入口を繋ぐ大きい橋が掛かっており、大勢の人が行き交っていた。
「こんなに人間がいて大丈夫?私たちが魔物だとバレないかい?」
「魔力はちゃんと抑えてろよ。猫耳の亜人もいるくらいだから基本大丈夫。それにエルフと間違えられるって言ったのはお前だろ。・・匂いで見分けられたら終わるけどな。」
「匂い?」
「お腹空いたのですぅ。」
メルは町に着くといつも同じ事を言う。
「えー!先に服買いたいわー!」
プリネラは合成魔獣との戦いで服に溶解液が少しかすったらしい。
少し溶けて穴が開いていた。
そして穴が開いている場所も悪く、妙に色っぽい。
なので今回は町に着いて一番初めにすることはプリネラの服の調達である。
服屋に行き、プリネラの服を選ぶ。
羽を考慮して少し大きめを買おうとしたが、プリネラがダサいと言って却下。
結果、プリネラが自分で服を選び、同じ店で御洒落なリュックを買ってそれを羽隠しに使うことにした。
服の買い物が終わったら街の食事処へ行き、飯を食べる。
ご飯を食べ終え、最後に食料の買い出しを行って早めに街を出るはずだったが目の前には・・図書館があった。
「信次様どうしたの?」
「あ、いや・・。」
「もしかして・・ここに寄りたいの?」
そういえばここ最近全く本を読んでいない。
ここに最高位魔法に関する文献は無いと思うが、新しい魔法知識を得られるかもしれない。
「・・そういやお前たちって本は読むのか?」
「いえ、読まないわね。」
「メルも~。」
「え?じゃあどうやって魔法覚えたんだ?」
「私は字が読めないから周りにいる者に教示してもらったわ。」
「メルはいつの間にか使えたのですぅ!」
「ここに入りたいなら寄れば?私たちは全然構わないわよ?ね、メル?」
「メルも入ってみたいのですぅ!」
「・・・そうか?じゃあ入るか。」
信次たちは図書館の中へ入る。ここはエルザートの時みたく身分確認は必要無かった。
中に入ると本が沢山陳列していた。
魔法に関する文献を手に取り読む。
プリネラとメルは字読めないが、本を手に取って中身を理解しようとしていた。
だけどメルはすぐに飽きて図書館の中をフラフラして、最終的にプリネラにくっついて遊んでと駄々をこね始めた。
暫く本を読み、新しい魔法の知識を得る事ができた。
本を読むことによってイメージが固まる。
魔法はイメージだから読書は必要不可欠だ。
そしてやはり、地域によって取り扱っている本が違う。
今後は定期的に旅をして知識を深めていくってのも良いかもしれない。
「メル、プリネラ。そろそろ行くぞ。」
「はーい。」
図書館から出ると外には沢山の民衆が集まってザワザワとしていた。
「なんだ?」
「信次様、あれを。」
プリネラが指した方向を見ると、武装した騎士団が列で行進してくる。
数は1000~1500程度。
民衆の歓声が飛び交う。
「白鳳騎士団!バンザーイ!」
「頑張ってーー!!」
「キャー!!シュミット様ーー!!」
騎士団で先頭に立っている金髪男、あれが騎士団長っぽいな。
名前はシュミットか。若いし・・・イケメンだな。
「せひとも討伐お願いします!!」
「白鳳騎士団バンザーイ!!」
それにしても1000の数を引き連れてどこへ行くんだ?
何をしようとしてるんだ?
信次は隣にいる人間夫婦に聞いてみた。
「なあ、なにが起ころうとしてるんだ?」
「あんた、知らないのかい?ミリアル平原で凄い数の魔物が集まっているのを。」
「なんでも魔物の軍勢がここを襲うために待機してるらしいぞ。それを討伐するためにシュタイン連邦国が優秀な騎士団を派遣したのさ。来たのが白鳳騎士団であればもう安泰だな。」
魔物の軍勢?
魔王が軍を出したのか?
「信次様、どうするんだい?」
「・・・気にはなるな。」
「魔物に加勢するの?」
「いや、ただ単に興味本位で魔物と人間の大規模戦闘ってのを見たことがないから見てみたいかなって。あと人間が魔物に対してどれ位戦えるのかも確認したい。」
「今から後を追うかい?」
「いや、今追うと気づかれるから時間経ってから追う。」
「何の話してるのですぅ?」
騎士団が街を出て魔物の軍勢がいるミリアル平原へ向かった1時間後に信次たちも出発した。
ミリアル平原はナダリアから東の位置にある。
馬を走らせ追いかけると前方に固まって待機している騎士団が見えた。
信次たちは走路を変更し、迂回して戦いが見えやすい丘へと向かう。
丘へ到着した信次たちは全体が見渡せるポイントを見つけて待機。
まだ戦いは始まっておらず、膠着状態だった。
魔物の数は・・大体500位か。
数では人間が有利。さて、どうなるかな?
「プリネラ、あの魔物たちは何の種族だ?」
「んー・・・ゴブリンにコボルト、オークもいるね。全部低位の魔物よ。」
「あれは魔王軍なのか?」
「いや、魔王軍では無さそうね。魔王軍であれば旗を掲げているはずだもの。」
「メル、どうだ?」
「プリネラの言っている通りなのですぅ!あれは魔王様の軍では無いのですぅ!」
「・・だとしたら他種族同士で徒党を組んでいるのか。」
「でも、こんな事珍しいわ。軍でもない限り魔物同士で徒党を組むなんてこと。余程の事情でもあるのかしら?」
戦場は膠着状態だったが、魔物側から1匹のオークが先頭に出てきた。
そのオークは他のオークよりも大柄。おそらくリーダー格であろう。
「「ウオオオオオオ!!!」」
戦場全体に響く大声で叫ぶ。
それにつられて魔物たちが叫び、一斉に足踏みする。
ドスン、ドスンと戦場に音が鳴り響き、空気が変わる。
「ウォォォ!!」
先頭のオークが叫びながら走り出し、それを見て他の魔物も一斉に走り出す。
「構えよ!!」
騎士団長シュミットが号令を発し、騎士団も戦闘の構えをとる。
魔物たちは躊躇なく騎士団に突っ込み、戦闘が開始した。
数では劣る魔物たちは持ち前の力で人間を次々と蹴散らしていく。
騎士団側も抵抗。後列にいる指揮官が随時状況を把握し適格な指示を出す。
前線では熾烈な戦いを繰り広げていた。
その中で特に目立っていたのが、騎士団長のシュミットであった。
「はあああ!!」
「さすがシュミット様!」
魔法を駆使し魔物を一掃。剣の腕前もかなりのもの。
数体の魔物に囲まれていてもなぎ倒していく。
「統率が取れてない魔物側が不利・・か。」
「そうね。敵目掛けてただ単に突っ込んでいるだけ。作戦も何も無いわね。」
「メルも戦いたいのですぅ!」
「今回俺らは観戦のみだ。我慢しろ。」
「ぶー。」
次第に状況は騎士団が魔物を徐々に追い詰めていた。
魔物の中には逃走する者も出てきている。
騎士団も勝ちを確信しているかのようだった。
やはりこの数で指揮官もいない魔物側は勝てないか・・。
そう思った時、
「「ドーーーーーーーーン!!!!」」
魔物側から大きな爆発が起き、土煙が舞う。
騎士団も驚き、何が起きたのか理解していなかった。
「何が起きた!?」
「シュミット様!前方で大きな魔力を感知しました!」
「・・こんなところに居やがったか。たくっ、逃げんじゃねぇよ雑魚共が。」
魔物側から一匹の魔物が現れた。
色は黒く、体長は3メートル程の巨体。上半身が筋肉で膨れ上がった体をしており、ねじ曲がった大きな角が2本生えた魔物。
「な、なんだあの魔物は・・?」
騎士団はその異様な黒い魔物の姿を見て動きが止まった。
黒い魔物は手に掴んでいるゴブリンを頭から喰らう。
「なっ!?」
「あいつ・・味方を喰ってやがる・・。」
「てめぇらは俺様の餌なんだから逃げんなよクソが。・・・ん?なんだぁ、人間も居るじゃねぇか。・・しかも大量に。がっはっはっ!こりゃ当分餌には困らねぇな!」
黒い魔物は高笑いをし、騎士団を見つめる。
「シュ、シュミット様!」
「あのような魔物は見たことが無い。だが慌てるな!陣形を整えろ!」
「あー、長いこと寝てたから久々に人間にありつけるな。」
黒い魔物はポキポキと首を鳴らす。
信次たちは丘で淡々と戦況を眺めていた。
「あの魔物はなんだ?仲間じゃないのか?」
「あの黒い体・・角・・あれは・・いや、まさかベヒモス!?」
「ベヒモス?」
「ベヒモスは人間を喰らうだけでなく同族も喰らう魔物で、人間も魔物も食糧も全て奪い喰い尽す。その地を滅ぼす存在と恐れられていた為、昔に封印されたと聞いたことがあるわ。・・でもなんで?封印が解けたの?」
「その封印したのは誰だ?魔王か?」
「いえ、人間と聞いているわ。数十人の魔法使いでベヒモスを封印したと言われてる。魔王様だったら殺してるわよきっと。」
「凄い強そうなのですぅ!」
「同族喰らいか・・。なんか見ていて気分良いものじゃないな。」
「そうね。ベヒモスは人間からも魔物からも恐れられ、忌み嫌われている存在だもの。」
「俺は長いこと眠ってたから腹減ってんだよ!!森の食いもん喰い尽しただけじゃ満足できねぇ!!てめぇらの肉をよこしな!!」
ドスンドスンとゆっくり前へ歩くベヒモス。
歩いている最中、近くにいるオークを捕まえて喰らう。
「ウギィィィィィィ!!」
オークの断末魔が響き渡る。
その光景を目の当たりにした騎士団員たちは恐怖で立ちすくむ。
ベヒモスは魔物を捕まえては喰らい、捕まえては喰らって食べ歩きをして騎士団の方へ向かう。
「こんな魔物が街へ入ってしまったら終わりだ!!ここで私たちが食い止めるぞ!!」
シュミットが皆を鼓舞する。
「構えーーー!!・・・・放てーーー!!」
騎士団は大量の矢を放つ。
しかし、ベヒモスに当たるが硬い皮膚を貫くことはできない。
「まだだ!!第二射構え!!・・・放てーー!!」
二回目の矢を放つもやはり効かない。
「矢はダメだ!!直接やるしかない!!・・陣形を作れ!!」
ベヒモスの周りを騎士団が取り囲む。
「魔法を放てーーー!!」
取り囲んだ騎士団の後方には魔法部隊がいて、大量の魔法弾がベヒモスに放たれた。
「今だ!かかれーー!!」
シュミットの掛け声のもと、取り囲んでいた騎士団が一斉にベヒモスに向かって行く。
しかし、
「うがっ!!」
騎士団員の1人がベヒモスにあっさり捕まる。
「離せっ!!離せっ!!」
捕まった団員は必死に抵抗する。
しかしベヒモスは口を大きく開ける。
「や、やめろ!やめろ!!やめてくれぇぇぇぇ!!!」
ベヒモスは頭から丸かじりする。
むしゃむしゃと美味しそうに喰らい、首無しの死体をポイと捨てる。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」
「がははは!!やはり人間は美味いな!!脳が濃厚でたまらない。もっと喰わせろよ。」
ベヒモスは不気味な笑みを浮かべて態勢を低くして戦闘態勢に入る。
騎士団全員はベヒモスから強烈な重圧を感じた。
「!!!・・・来るぞっ!!」
ベヒモスはその体格から想像もつかない速さで移動。
団員2人の頭を掴み頭同士をぶつけ合う。
団員の頭はぐちゃぐちゃに潰れ、飛び散った肉片や血を飲む。
「・・・なっ!!」
「次はどいつにするかな~。」
ベヒモスは周りをキョロキョロ見渡す。
騎士団の中に恐怖で逃げ出そうとした者がいた。
ベヒモスはその者を見つけると瞬時に移動。
「逃げるなよ。」
逃げた団員に拳を叩きつける。
団員は即死。
死んだ団員を掴んでまた頭からかぶりつく。
「んー・・・やはり生きたまま喰った方が美味いな。死んだら味が落ちる。」
その後もベヒモスは次々と騎士団を襲い、喰らい続ける。
戦場には悲鳴と血が飛び交っていた。
「す、すごいわね・・・。ベヒモスがあんな強さなんて・・。」
「人間全部やられちゃいそうなのですぅ。・・・信次様?」
「う・・・が・・・・。」
信次の体の中に騎士団の恐怖・悲しみ等の感情が大量に入って来る。
徐々に器を満たし、ついに溢れ扉が開かれた。
「うああああああ!!」
大量の魔力が信次から溢れる。
エルザートの時と同様、黒い霧が信次を纏い、肌も黒く変化した。
「信次様!?な、なんて魔力・・。」
信次が扉を開いたことにより、ベヒモスが気付く。
「・・ん?なんだこの魔力は?」
ベヒモスは後ろの丘を確認し、信次を発見した。
「ほ~、ありゃもしかして魔人か?久しぶりに見たな。」
ベヒモスは騎士団への攻撃を止めて、丘の方へ走る。
そして信次たちが居る真下の崖を思い切り殴る。
すると崖が崩れ、信次たちは下へ落ちた。
「いたたた、信次様!メル!大丈夫かい!?」
「メルは大丈夫なのですぅ!」
「ほう、魔人の他にも魔物がいたのか。角からしてオーガか?もう一匹の女は・・耳だけじゃわからねぇな。だが、2匹とも美味そうだ。」
「そう簡単にはやられないよ!」
「なのですぅ!」
「ウオアアアアア!!」
信次は瓦礫を魔力で吹っ飛ばし、ベヒモスに突っ込み殴りつける。
ベヒモスの巨体をいとも簡単に吹き飛ばした。
しかしベビモスはすぐに立ち上がる。
「おー、おー、さすが魔人。やるじゃない。」
「アアアアアア!!」
「なんだ?お前自我が無いのか?・・・まぁいい、お前を喰らえば俺様自身、かなり強くなれそうだ。」
「メル!信次様はどうしちゃったのさ!?」
「扉が開いて暴走しちゃったのですぅ。メルが鎮めないとダメなのですぅ。」
「扉!?でももの凄い魔力・・。今のこの状況で信次様を元に戻したら危ないんじゃないのかい!?」
「だからちょっと困ってるのですぅ・・。プリネラ、どうすれば良いのですぅ?」
「とりあえず信次様がベヒモスを倒すまで待つしかないね。」
「がっはっは!魔人とやるのはいつ以来だ!?元人間風情が・・喰ってやるよ!!」
信次とベビモスの戦いが始まる。




