第12話「合成魔獣」
第12話になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします(^^♪
信次たちはランボルギーに捉えられていたインプのプリネラを救出。
プリネラが道中の仲間として新たに加わった。
プリネラの服が無かったのでランボルギーの屋敷から女物の服を拝借。
プリネラの身長は俺よりも高く、胸もデカい。
俺の居た世界だとモデル並にスタイル抜群だ。
しかしインプなので耳が大きく、羽も生えてる。
「この服・・ダサ~い。」
ランボルギーの屋敷から適当に持ってきた服だから仕方がない。裸でいさせる訳にはいかないからな。
「耳が大きいな・・どう隠すか?」
「ああ、それなら大丈夫よ。エルフと同じ様な耳だから顔だけならエルフと勘違いしてくれるわ♪」
「なるほど・・じゃあ羽はどうする?エルフには羽生えてるのか?」
「生えてないけど・・畳めばなんとかなるわよ♪」
「・・・・。」
プリネラは服を着て羽をどうにか隠そうとしたが、背中に羽の膨らみがあるせいでどうも違和感が出る。
なので荷物を入れているリュックを背負わせてみたところ違和感が軽減。
「なんか歩きづら~い。重いし。」
「我慢しろ。」
「ちぇ~。」
プリネラは魔法量も多く、魔法に特化型。
扱える属性は火・土・風の3属性と非常に優秀。
俺やメルが使えない回復系魔法をプリネラは使用できるらしい。
旅をしていく上でありがたい存在だ。
プリネラを仲間に加えた後、ランボルギーの領地から離れた町へ寄って馬を2頭借り、次の目的地まで走っていた。
前の町から2日ほど経過し、ムヴルヘイムまでの道のりはあと半分を切っている。
「メルは信次様の後ろが良かったのですぅ。」
「文句言わないでよ。本当は私だって信次様と一緒に乗りたかったのに信次様がメルは私と乗れって言うから・・。」
「ぶー。」
今はプリネラとメルを一緒の馬に乗せている。
単純にメルが後ろで暴れるのでプリネラに押し付けてるだけ。
でもメルは俺と一緒に馬に乗れないことに不満らしい。
シュタイン連邦国で寄る最後の街は国の最北部に位置する“ナダリア”という街だ。
ナダリアで補給物資を調達した後、シュタイン連邦国の国境を抜ける。
補給するのは主に食料。
メル1人ですら食費がかさむのにプリネラの分も必要だ。
まあ、金に関してはランボルギーの屋敷にあった物が高価で売れたので心配は無いけど。
ナダリアまでは馬で走ってあと1日半ほど。
野宿にも大分慣れた。
ゲームや漫画では魔物って人を食うイメージだったが全然そんな事は無かった。
魔物の中には人間を食べる種族もいるらしいが、大体は人間と同じような物を食べる。
メルもプリネラも甘い果物が好物らしい。
今日の野宿でのご飯は鹿肉のシチューに林で摘んだ果物。
2人とも美味しそうに食べる。
「美味しいのですぅ!」
「うん、美味しいわ。」
「・・・お前たち、食べたら水浴びでもしてこい。最近浴びて無かったから少し臭うぞ。」
「信次様、そういう事は言わないように。私たちも魔物とはいえ女よ。」
「・・・・。」
「・・一緒に水浴びでもする?」
「するか。」
「私は構わないけど?ふふふ。」
「信次様も一緒に水浴びするのですぅ!」
「・・・いいから行ってこい。」
食べ終えるとメルとプリネラは水浴びに出掛けた。
少し経つと水浴びから帰ってきて焚火の横で火にあたる。
メルはプリネラの膝枕で寝てしまった。
プリネラも移動の疲れでそのまま寝た。
こうして見ると2人は姉妹みたいだ。
朝になり、ナダリアへ向けて出発。
馬で走っている途中、森から異様な気配を感じた。
「・・・なんだこの感じ?」
「なんか良くない感じがするわね・・。」
プリネラもこの気配に気づく。
「ちょっと寄っていいか?」
「ええ。」
「いいのですぅ!」
信次たちは馬を置いて森へ入る。
森の中を進むと大きな繭みたいなものを発見。
その繭は破れており繭の中から何かが出てきたらしい。
「さっきの気配はこれか?」
「この中から何かが出てきた・・・・ん?」
プリネラはある事に気付く。
「これ、中から出てきたんじゃないわ。」
「どういうことだ?」
「これ見て。この繭の断面を見ると外側から斬られてる。」
「ということは何者かが繭を斬って出したのか?」
「そう考えるのが妥当ね。」
「で、この繭は一体なんだ?」
「私もこんなの見るの初めてだわ。メルは分かる?」
「んーん。」
ポカーンとした表情をするメル。
「!」
信次たちから少し離れた場所に魔力を感じた。
「さっきの気配のやつだな。」
信次は素早くその気配がする方向へ移動を開始。
「あっ!ちょっと待ってよー!」
「信次様ー!」
メルとプリネラも信次を追いかける。
信次たちは木々の間をスイスイ移動しその気配する場所へ辿り着いた。
「なんだ・・あれ。」
「げげっ!・・気持ち悪~。」
信次たちは木の上からその者を目視。
上半身が人間、下半身がイモムシのような変な生き物が森を進んでいた。
しかも粘液を垂れ流して進んでいる。
「おい、あの粘液・・。」
変な生き物が垂れ流している粘液は周りの草や木を溶かしてした。
「強い酸性の粘液を分泌してるのか・・。あれは魔物か?」
「知らないわあんな魔物。・・上半身が人間ってケンタウロスじゃあるまいし。」
「変な生き物なのですぅ~。」
「・・・タス・・ケ・・タス・ケテ・・。」
「!?」
明らかにあの生き物から声がした。
信次は木から降りる。
「ちょっ!?信次様!?」
「なあ、お前言葉話せるのか?」
信次が声をかける。
すると、
「タス・・ケテェェェェ!!」
下半身から大量の溶解液を噴き出す。
「“土の障壁”!!」
プリネラが土属性魔法を発動。
地面が盛り上がり信次の前に土壁を生成。
溶解液が土壁にかかり溶ける。
「ちょっと!信次様!いきなり飛び出して話かけるなんて!」
「でもこいつ助けてって・・。」
この生き物からは人間から放たれる魔力と魔物の魔力がごっちゃ混ぜになってる・・そんな感じがする。
「ウ、ウアアアア!!」
急に叫び声を発し、頭を抱えて苦しむ。
「なんだ!?」
「アタマ・・・ガ・・イタイ・・・ダレ・・・カ・・・タスケ・・テ。」
「信次様、ちょっと離れようよ。」
「・・・ああ。」
信次とプリネラは木の上に移動する。
すると信次は生き物の腕に何かの模様を見つけた。
「あれはなんだ?」
信次は模様が刻まれている腕を指さす。
「・・・・あれは・・・・モロビニアの紋章!?」
「モロビニア?」
「モロビニアはシュタイン連邦国に隣接する国よ。・・たしかあそこは・・そう!科学実験で合成魔獣の研究をしているってのを聞いたことがあるわ。」
「科学実験?合成魔獣?」
「つまり魔物と魔物を合わせるの。そして強い1つの個体を作る。それを軍用兵器として使用するのが目的らしいわ。・・・私は小さい頃にモロビニアは魔物にとって怖いところだから近づくなって教えられていたわ。」
「どう見てもあれは魔物と魔物じゃなくて、人間と魔物って感じがするが・・。」
「じゃあモロビニアは人間と魔物を合成する実験を始めたのかしら・・。でもなんでシュタイン連邦国で??」
「ああ・・。」
魔物と魔物を合成するってこと自体許せん・・だが、
人間が人間を魔物と合成させた?
あの人間も理由は分からんが実験に使われるモルモットみたいな扱い・・。
エルザートでのウィズって奴もそうだったが、人間のやっていることが醜い。反吐が出る。
「クル・・シイ・・・タ・・ス・・・・ケテ・・・。」
信次は苦しむ姿を見て人間だが助けたくなった。
「解放してやる。」
「え!?本気!?あれは・・もう助からないわ。」
「ああ、なんとなくわかる。」
エルザートで勇者と戦った時と同じ感覚。
この者を倒して苦痛から解放してあげることが助けることであると感じた。
「あれは魔物と合成しているとはいえ、人間よ?」
「・・・それでも苦痛から解放させてやりたい。」
「信次様・・。」
「信次様ぁ!どうするのですぅ?」
信次は再度木から降りる。
「楽にしてやる・・・。」
信次は手を広げ魔法を発動しようとした・・・その時、
「アアアアァァァ!!!」
急に暴れだす。
「イタイ!!アタマガ・・・イタイィィィ!!!」
溶解液を勢いよく全方向に噴射。
信次は溶解液を躱す。
「ちっ!メル!プリネラ!」
「はい!」
「わかったわ!」
メルとプリネラも木から降りる。
そしてプリネラが火属性魔法を放つ。
「“火の矢”!!」
「ギャアアアア!!!」
火の矢は見事命中。
体が火に包まれる。
・・・だが、
生き物の背中が変化していき、羽が生えた。
「なっ!?」
そして飛翔。高く飛び上がる。
「進化した!?」
高く飛び上がり回転。
回転の勢いで自身に纏わりつく火を消火。
その回転によって下半身から大量の溶解液を広範囲に撒き散らす。
「!!」
プリネラは手早く土壁を生成し防御。
しかし、飛び散った一部の溶解液が無防備のメルを襲う。
「メルっ!!」
咄嗟に信次が高速移動してメルを庇う。
「信次様っ!!!」
「ぐっ!!」
メルを庇った信次の背中は溶解液によって皮膚が溶けてただれる。
信次に激痛が走る。
だが、高速再生により体は修復。
「あれが信次様の高速再生・・・。」
「信次様!ごめんなさいなのですぅ!メルのせいで!」
「気にするな。俺はすぐ治る。」
「(咄嗟に身を挺してメルを庇うなんて・・・私を助けてくれた時もそうだったけど・・仲間想いで、なにより・・優しい人なんだ。)」
「あの溶解液に接近戦は向かないな・・。メル、お前はここで見てろ。」
「・・はい。なのですぅ。」
「プリネラ、お前は火の魔法で攻めてあいつの動きを止めてくれるか?」
「・・ええ!!」
空を旋回する合成魔獣に狙いを定める。
「“火炎の散弾”!!」
火の散弾が合成魔獣に命中。
体中火に包まれる。
「ギャアアアア!!!・・・タス・・・ケ・・・・テ。」
「・・・ああ、今解放してやる。“九頭の大蛇”!」
動きが止まったところに信次が魔法を発動。
大蛇が一斉に合成魔獣を喰い尽す。
「こんな方法でしかお前を救えないが許せ。」
「ヤ・・・ット・・・・カ・イ・・・・ホウ・・サレル・・ア・・リ・・・ガ・・・ト・・・ウ。」
合成魔獣は跡形も無く大蛇に喰われた。
「やったー!」
「凄いのですぅ!!」
空から何か光る物が落ちてきた。
それを信次が拾う。
「・・・ドッグタグ?」
ドッグタグは兵士が装着する認識票。
負傷や死亡によって口が聞けなくなった場合でも身元などがわかるようになっている。
名前は・・・アル・アイザック。
モロビニアの兵士か。
「それどうするの?貰うの?」
「まさか。」
信次はドッグタグを目につきやすい所にそっと置いた。
「じゃ、気を取り直して街へ向かうか。」
「おー!なのですぅ!」
「・・信次様って本当に魔人?」
「どういうことだ?」
「いや、人間が嫌いだからって魔人になったんだよね?なのに助けようって思うなんて。」
「人間は嫌いだ。でも・・・なんでだろうな。何かに利用されたり、騙されたり、そういうのを見ると黙ってられないみたいだ。・・魔族である魔人として可笑しいよな?」
「・・・ううん。そんなことないわ。」
プリネラはこの時、信次が信頼できる人であることを確信した。
「改めて、信次様についていこうって心から思った!」
「なんだそれ。」
「だからこれからもよろしくね信次様っ!」
信次たちは次の街ナダリアへ向けて出発する。




