第11話「プリネラ」
第11話になります!
拙い文章ですがよろしくお願いします('◇')ゞ
キマイラと出会った森から抜けて平野に出た。
そこから馬で走り、野宿をしながら3日ほど経過。
行商人から報酬として貰った大量の食料がたったの1日で尽きていた。
「お腹空いたのですぅ~・・」
「少しは我慢しろ。お前が大量にあった食料を1日で食べるからだろ。」
「だって、だって・・我慢できなかったのですぅ。」
後ろに乗っているメルのお腹から大きな音が鳴る。
とは言っても2日ほど食べずに走っているから流石に俺も腹が減ってる。
どこかに町は無いか探す。
すると、かなり奥の方だが煙が上がっているのが見えた。
「メル、煙が見える。おそらく町だ。」
「本当!?やったー!!」
「あの煙が上がっている方向にある町は何という町だ?地図で調べてくれ。」
ユリウスから貰った地図は世界地図だから細かい所はわからない。
なので最初に寄った町でシュタイン連邦国全域の地図を購入してた。
メルは袋にしまってある地図を広げて確認する。
「え~っと・・森を抜けてからこう来て・・・前には山・・・あっ!!」
メルが少し声を荒げた。
「どうした?」
「信次様、この先にある町は・・・おそらく美味しい食べ物は無いのですぅ。」
「どういうことだ?」
「それは・・・」
暫く走ると煙が上がっていた町に到着。
見た感じ寂れた町。
馬から降りて町を歩いていると目の前にはボロボロの衣類を身に纏った子供から大人が沢山居た。
全員手と足には枷がつけられている。
「メルの言ったとおりか・・・」
先刻、メルが地図を見て気付いたのはこの町が奴隷が沢山いる町という事。
上がっていた煙は工場のものだった。
「おら!きびきび動け!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・。」
「なんでお前はこんな作業もまともにできねぇんだ!!」
目の前で子供の奴隷が監視している人物に何度も蹴られていた。
見ていて胸糞悪い・・・。
「お?なんだお前たちは?」
監守が信次たちに気付く。
「俺たちは旅の途中で通りかかっただけだ。」
「そうかい?じゃあ早くここから出ていくんだな。ここはランボルギー様の町だ。」
「ランボルギー?」
「ここら辺一帯の領主様だ。お前も奴隷になりたくなかったらは早く立ち去るんだな。」
「別に長居するつもりは無い。」
信次たちは町を抜けるため奥へと進んでいく。
するとどこからか話し声が聞こえる。
声の方を見るとたばこを吸っている2人の監守。
「知ってるか?ランボルギー様、最近また新しい珍しいおもちゃ手に入れたらしいぞ。」
「またかよ?本当好きだね~。今回はどんなおもちゃなんだ?」
「女だってよ。」
「女って・・別に普通だろ。いつもの事じゃん。」
「・・それがよ。普通の女じゃないって話だ。・・・なんでもその女ってのは魔物らしいぜ。」
「女の魔物!?・・いや、もうあの人は何でもありだな。俺だったら絶対嫌だね。」
女の魔物と聞いた途端、信次は監守たちに近寄っていた。
「おい。」
「な、なんだお前!?」
「いま、女の魔物って言ったか?」
「あ、ああ。」
「そのランボルギーってのはどこにいる?」
「・・なんだ、お前、もしかしておこぼれ貰おうとしてるのか?」
「やめとけ、やめとけ。ランボルギー様の趣味はかなり変だぞ?はっはっは。」
信次は監守2人の顔を少し力を入れて掴む。
「いいから教えろ・・。どこにいるんだ?」
「ひっ!こ、この町を登った丘に屋敷がある・・・」
信次は顔を潰さずにそのまま離した。
「お、お前、屋敷に行ったとしても相手にされないぞ!?」
「・・確認したいことがあるだけだ。」
そう言って信次たちは屋敷を目指した。
「信次様、向こうの方から魔力を感じるのですぅ。でも、だんだんと魔力弱まってますぅ・・。」
「ああ。分かってる。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
-- ランボルギーの屋敷 地下 --
「おらっ!おらっ!もっと良い表情を見せろ!!」
「ああああ!!」
「ふひひ。いいねいいね。もっと痛めつけちゃうよ~。・・おらっ!おらっ!」
「ああぁぁ!!」
鞭で叩き興奮する1人の男。この男が領主のランボルギー。
捕まっている女の魔物は両腕両足を鎖で繋がれて身動きがとれない。
「・・こ、この人間め!殺してやる!!」
「まだ威勢は良いな。・・・ふひひ、でも、そうでなくちゃ。・・次は皮でも剥いでみるかの?」
「・・・ぐあああ!!」
女の魔物の悲痛の叫び声が地下に響き渡る。
◆◇◆◇◆◇◆◇
信次たちは屋敷がある丘に着いた。
領主ということだけあって立派な屋敷。
見張り番が屋敷の門の前に2名立っていた。
「門にいる奴ら邪魔だな。・・・隠れて行くのも面倒くさいし、堂々と正面から行くか。」
「はーい!」
信次たちは堂々と屋敷に向かって歩いていく。
「おい!貴様ら止まれ!」
「ここはランボルギー様の屋敷だ!お呼びで無い者は通すことはできん!何か招待状でも持っているのか!?」
門兵たちが信次らを制止させようとする。
しかし、信次らはその制止を無視して前へ進む。
「おい!!聞いているのか!?」
「“永遠の悪夢”。」
門兵たちの体を黒い霧が包み込む。
“永遠の悪夢”は闇属性の特有魔法。
黒い霧に包まれた者は幻を見せられ、解除されるまで永遠に幻に襲われる。
今回、信次が見せた幻は大量の魔物に襲われるというもの。
「うわああああ!!!なんで急にこんなところに魔物が!?」
「助けてくれぇぇぇ!!!やめろぉ!!くるなぁぁぁ!!」
勿論、門兵の目の前には魔物はいない。
だが門兵たちの目に映るのは大量の魔物がいて今まさに襲われているところだ。
その間に信次たちは屋敷内に侵入。
外の騒ぎを聞きつけ、屋敷内に居るランボルギーの護衛たちが出てきた。
「なんだお前らは!?侵入者だ!!かかれ!!」
護衛たちが一斉に襲い掛かってくる。
「“魔法の弾丸”。」
一発一発的確に的に当て、護衛たちが次々に倒れていく。
メルの方も豪快な音を立てて一発一発殴って倒していた。
「こりゃ只事じゃないね。」
「うむ。見たところ侵入者は2人だけだが・・相当な腕だな。」
「あたし、人間殺すのあまり趣味じゃないだけどな~。」
「けひひ、殺して身に着けてる物を売ればいいだろ。」
「あのガキは奴隷商に売れそうだぜ?」
屋敷の二階から信次たちを見る者たちがいた。
ランボルギーが雇っている用心棒である。
メルが護衛をなぎ倒していると被っていたフードが捲れ、隠していた角が露わになった。
「角!?・・・亜人種?いや、魔物か!!」
「あの角は・・まさかオーガ!?上位種の魔物が何故ここにいるんだい!?」
「おそらく理由は雇い主が連れ込んだ魔物と関係してるのだろう。・・・それにしてもオーガが相手となると厄介。最初から全力でいかないと殺されるぞ。」
「けひひ、オーガにしては小さいが高く売れるぞっ!しかも女だ!男の方は殺してもいいが、女は殺すな!」
「わかってるよ!・・それじゃ行くよ!!」
用心棒の5人は二階から一階のエントランスへ飛び降りた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
-- 屋敷 地下 --
ランボルギーは上からもの凄い音が鳴り響くことに気付いた。
「な、なんだぁ!?何が起きている!?」
「(こ、この魔力は・・・)」
「侵入者か~?あいつら高い金を払っているのだから仕事してくれないと困るぞ!?・・・くそ、楽しんでいる最中だというのに!」
拘束された魔物の下には夥しい血が流れていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
-- 屋敷 一階 --
ランボルギーが雇っている用心棒と信次たちが顔を合わせる。
「けひひ、間近で見るとオーガの女はガキだが上玉だな。」
「魔物さんたちよ~。何用でここに来たんだい?」
「俺はここの魔物に用があって来ただけだ。・・お前らは他の護衛たちとは違うようだが?」
「俺たちは領主の用心棒に雇われた身である。」
「まっ、用心棒の他にも領主のおもちゃ探しもしてるけどな、けひひ。」
「わたし、人殺すのは趣味じゃないけど、魔物殺すのは大好きなの。」
そうか、こいつらが魔物や人を捕まえて領主に差し出しているのか。
用心棒と人攫いの二足の草鞋を履いてるわけだ。
「領主がいま遊んでいるおもちゃを捕まえるのは苦労したぜ。仲間2人も殺されたからな。まっ、おかげで取り分が増えたからいいけどな。」
「けひひ、しかも殺された奴の装備も無償で貰って売れるしな。」
この用心棒兼人攫いの奴らに嫌悪感を感じた。
「とりあえず男の方には興味ないから、そこのオーガのお嬢ちゃんは捕まえさせてもらうよ。」
「俺らもそれなりに修羅場を潜ってるからオーガも何度か相手にしたことあるぜ。」
「悪いが捕まってもらう。」
そう言うと大柄の男が急にメルに突っ込んでくる。
大柄の男が持っている武器は斧。両手に斧を所持。
メルは右手を振りかざして殴りつける。
すかさず男は斧を盾替わりにして攻撃を防ぐ。
ガードした隙を狙って大柄男の後ろから女がメルに剣で攻撃を仕掛ける。
だがメルは攻撃を躱し反撃するが大柄男が反撃を阻止。
態勢を崩したメルに横から別の女が攻撃を仕掛ける。
メルは攻撃を受けて後ろに飛ばされるが信次がキャッチ。
「信次さまぁ!」
こいつら修羅場潜っていると自負してるだけあって中々の強さだな。
連携に関しても熟練された動き。
元は腕利きの冒険者だったのか?
「ひゅ~。オーガのお嬢ちゃん良い動きするね~。こりゃ、かなりの値がつきそうだ。」
「けひひ、まずは邪魔な男から処理するか。」
「オーガは私たちに任せときな。」
男2人が信次の前に立ち塞がる。
「まぁ、強いって言っても人間にしては・・・だけど。」
「なんだいあんた?角は無いし、一見人間のようだけど魔物の味方かい?」
「人間に見えて当たり前だ。俺は元人間だからな。」
「元人間?・・・まさか・・・魔人!?」
「う、嘘でしょ!?魔人が何でこんな所にいるのさ!!どうせ人間に擬態した魔物だろ?それに魔力も全然強く感じない!」
「どうだろうな?確かめてみればいいんじゃないか?」
「どうせはったりだろ。強そうな見た目じゃないし、さっきの魔法の弾丸を見る限り大した腕じゃない。」
「けひひ、殺して身ぐるみ全て奪わせてもらう。」
「待て!早まるな!まずはその男の様子を見るんだ!」
「・・様子?そんな時間があればいいけどな。」
信次は魔力をかなり抑えていたが少し開放した。
すると周りの空気が一変。
信次の魔力の重圧によって用心棒たちはまるで首を絞めつけられているような感覚、苦しさが伝わる。
「・・・な、な、なんだいこの魔力は・・・・。」
「・・・これは・・!?」
「・・やはり・・・ま、魔人・・。」
信次はゆっくりと用心棒たちの方へ前進。
用心棒たちは後退りする。
「“九頭の大蛇”。」
魔法を唱えると9つの頭を持つ黒い大蛇が現れ、屋敷の天井を破壊。
“九頭の大蛇”は闇属性の特有魔法。魔法レベルは中位。
「な、な、なによこれーーー!!」
「くっ・・・。」
「すご~い!おっき~い!」
横で見ていたメルが目を輝かせていた。
「あ・あ・・あ・・・」
「う、嘘だろ・・・」
「喰いつくせ。」
九頭の大蛇は用心棒たち目掛けて食いにかかる。
最初の犠牲となったのは信次の前に立っていた男2人。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
「やめろ!やめろ!うああぁぁ!!!」
九頭の大蛇に対抗する間も無く喰われ、辺りに血が撒き散らされた。
「“防御向上”!!」
大柄男が無属性の身体強化魔法を発動。
己の防御力を高め九頭の大蛇の攻撃を受け止めた。
「くっ!!・・・う、受け止めきれん・・・ぐあぁぁ!!」
大柄男も抵抗虚しく噛み千切られ喰われた。
「ひっ!ひぃぃぃ!!」
「こんなのを相手するのは無理だよ!!」
「喰らえ。」
九頭の大蛇の残りの頭が一斉に襲い掛かる。
残った用心棒の女は走って逃げようとするも後ろから迫る九頭の大蛇に捕まり喰われる。
「いやぁぁぁ!やめてぇぇぇ!」
「・・・ぎゃあああ!!!」
蛇はバリボリと音を立てて女たちを喰っていた。
大量の血が雨のように屋敷中に降り注ぐ。
腕利きの用心棒といえども所詮は人間。
中位魔法であっけなく殺すことができた。
九頭の大蛇によって屋敷は半壊。
しかし肝心のランボルギーの姿が見えない。
「魔力は・・・下か。」
「信次様~!ここに階段があるのですぅ!」
メルが瓦礫で隠れていた階段を見つけた。
瓦礫をどかして階段を降りる。
地下の部屋に入ると至る所に血。
そして人間と思われる亡骸と魔物の死体が大量に吊るされていた。
ここの領主って奴は人・魔物関わらずいたぶって快楽を得る外道か・・。
信次たちは地下部屋を進むと奥からビシッ!ビシッ!と何かを叩く音が聞こえる。
音の方へ進むと、ランボルギーが女の魔物に鞭を打っていた。
「おい。」
信次が声をかけるとランボルギーが気付き振り向く。
「な、なんだ貴様は!?」
「声をかけるまで気付かないとは相当夢中だったんだな。」
「どこから来た!?用心棒の奴らは!?あいつらはどうしたぁ!?」
「死んだ。」
「バカな!あいつらは私が選んだ選りすぐりの用心棒たちだぞ!?」
ランボルギーの後ろには鎖で四肢を繋がれた女の魔物がいた。
服は破れ、鞭で打たれたであろう傷が体中に生々しく残っていた。
片腕に関しては皮を剥がされた形跡も見受けられる。
信次はそれを見た瞬間、ランボルギーに対して殺意が湧いた。
「あいつら!!高い金払っていたのに死におって!!」
「お前・・もう黙れ。」
信次は手刀でランボルギーの首を刎ねた。
首は宙を舞い、地面に落ちてゴロゴロと転がる。
「メル、鎖外してやれ。」
「はい!なのですぅ!」
メルは鎖を外して女を開放した。
「あ、あんたは?・・・人間?・・いや、魔物かい?」
「俺は魔人だ。お前が領主に捕まったと聞いて助けに来た。」
「な、なんで?」
「俺は元人間だが人間が死ぬほど嫌いだ。逆に魔物は仲間だと思っている。それだけだ。・・・これを飲め。」
信次は女にポーションを渡す。
信次は再生能力はあるが回復系魔法が使えない。
メルも同じく回復系魔法が使えない。
なので、もしもの時用にポーションを購入していた。
女はポーションを飲み、回復させる。
「あ、ありがとう・・。」
「お前は何の魔物なんだ?」
「インプ。」
インプって城にも居たけどこんな姿してなかったような?
小柄で言葉も喋れないし。
「俺が見てきたインプとは違うのな。」
「私は突然変異して人型になったインプだよ。だから言葉も喋れる。」
「そっか。・・お前、名前あるのか?」
「あたしの名はプリネラ。魔人様は?」
「俺は加藤信次。こっちは・・」
「メルなのですぅ!」
「・・・プリネラ、お前これからどうするんだ?」
「・・・私が住んでいた場所はあいつら(ランボルギーの用心棒)に焼き尽くされちまったからね。行く宛がないよ。」
「そっか・・。じゃあ、今後同じことが無いように気をつけろよ。」
信次はそう言って地下部屋を後にしようとする。
「え!?ま、待って!」
「?」
「そこは「俺についてこい」みたいな事言う場面じゃないの!?」
「え?いや、連れて行く理由が無いから・・・。」
「理由が無くても男ならカッコよく言うところでしょ!?」
「いや・・。」
「貴方に助けてくれたお礼がしたいの!」
「・・・本音は?」
「行くところ無いし、1人じゃ嫌!だから一緒に連れてってよ!お願いよ!!」
プリネラは信次の腕にしがみつき懇願する。
豊満な胸が腕に当たる。
やはり魔物は素直な生き物だ。
自分が言いたいことを隠さずに話すことができる。
・・たしかにこの弱っている状態のプリネラを放置するとまた捕まるかもしれないし危険か。
「はあ、・・・わかった、ついてこい。」
「やったー!ありがとう魔人様!」
「魔人様って呼び方はやめてくれ。」
「じゃあ信次様!よろしくね!」
「メルも仲間が増えて嬉しいのですぅ!よろしくなのですぅ!」
「メルもよろしく。お互い信次様のために頑張りましょ。」
「プリネラ。」
「はい?」
「・・・まずは服を着ろ。」
「・・あっ、やだ~。信次様のエッチ~。」
「置いていくぞ?」
「ごめんなさ~い!」
こうして旅の仲間に新しくインプのプリネラが加わった。




