~面倒事①~
ごめんなさい、すみません、申し訳ございません。
年始の目標をさっそく破ってしまいました。
更新が随分と遅くなりました。
短めですが、とりあえず再開させてもらいます。
第9章ー2
その男──真鍋は焦っていた。
親友吉川の元嫁・香のやらかした事で、結局彼は
再び傷つく羽目になってしまった。
独立して一緒に会社を立ち上げ、彼と共に仕事を頑張ってきた。そして新しい出逢いによって彼は立ち直ったはずだったのに⋯⋯。
香のせいで予定が無茶苦茶だ!
仕事に支障が出たのだ。
4月半ばからの約1ヶ月の間、吉川は心ここにあらずという感じで作業の進捗がかなり悪かった。
そのお鉢が回ってきたかのように、今になって納期に間に合うかどうか微妙な状況になっていた。
「おはよう真鍋。だいぶ遅れを取り戻したぞ」
「そうか、マジで頼むぞ」
「あぁ、任せとけって」
吉川は画面を見たまま挨拶をする。
「お前、また会社に泊まったのかよ」
「家に帰る時間がおしいからな」
「彼女に会えなくていいのか?」
「大丈夫。最近までしっかり充電してたからな」
「おっと~、ご馳走さま」
かなり進んだみたいで、これなら納期にギリギリ間に合いそうだった。元々できる奴だった上に心配がなくなり仕事のスピードもアップしていた。
「ところで、この前の話は大丈夫なのか?」
「あぁ、何とか⋯」
「いや、マジで気をつけろよ!?」
「心配してくれてありがとうな」
「最近はおかしな奴等が増えたんだから⋯」
「確かにそうかもな。分かってるって⋯」
2人のそんな話とは別件で新たな厄介事がすでに起きていることを、この時はまだ知らずにいた───
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私はあの後、Ryoと龍斗のいる芸能事務所に所属することとなったので、自分の仕事のスケジュールが2人のスケジュールと調整されることが多くなった。
Ryoがツアーに、龍斗が撮影にと2人が家を留守にしている間に自分の小説を進めて、マンションに帰ってくる普段は翻訳の仕事をメインにするようになった。なぜなら翻訳は言語スキルのおかげでただ読めばいいだけなので、目を通せば終わる仕事だからだ。
契約する際に収入の取り分の話もあった。
本来なら私は今まで通り個人で仕事ができる立場で、会社に属する必要はない。だから自分の印税やら報酬をわざわざ会社に分配することは無駄と言える。だが、組織に属するということは守ってもらえるということでもある。
元々はネットの中傷被害から守る為にとった社員扱いという措置だ。だから稀に見る厚待遇となった。
何と8:2!もちろん私が8割である。
損をしたとは思っていない。
顧問弁護士というのは有難い存在だ。何かあった時には会社という組織が守ってくれるし、多くの情報も手に入る。
それに宝くじに当たった私としてはお金はあんまり問題ではなかったのだ。
問題は今まで以上に2人の監視役としての時間が増えたことだった。
そして私はいきなり大役を任されることとなった。
「私がRyoの臨時付き人?!」
「お願いできますか?」
淡々と話すのは中村女史⋯⋯私の天敵だ。
「いや、待って下さい。何でいきなりそんな話になるんです?Ryoにはマネージャーの五十嵐さんがいますよね?」
「その五十嵐ですが、この度結婚が決まりまして来週から2週間休みを取るんです」
「えぇ━━━ッ!?五十嵐さん、結婚すんの?」
「先日のハワイ旅行は式場の下見を兼ねてたようです」
「だから、あんなに必死だったんですね⋯」
「そこで、その間Ryoのお目付け役として吉岡さんに臨時の付き人をお願いしたいのです」
相変わらず表情を一切表に出さず用件を告げる敏腕秘書。
どうせここでゴネても勝てないんだろうなぁ⋯。
潔く引き受ける代わりに、こちらの要求を飲んでもらう方が得策だろうと考えた私は中村女史に自分の要望を述べた。
「分かりました、お引き受けします。ただし条件があります」
「⋯条件とは?」
「まず期間は五十嵐さんが戻ってくるまでの間に限ること。
次に私はあくまでもサポートとしてつくので、会社から代理マネージャーを1人つけてください。私はRyoのスケジュール管理や仕事相手の情報、東京での土地勘もありませんから」
「分かりました。そちらの件に関しては問題ありません」
「最後に、これが1番重要なんですが⋯」
私が一息ついて最重要事項を告げる。
「私の立ち位置としてはRyoのお目付け役ですよね?言い方悪いですけど、ワガママ放題の2人を監視・監督して問題を起こさないように事前に食い止めることが私の役割だったと思いますが?」
「確かに⋯以前お話した際、そのようなことを申し上げました」
「なら、私はあくまでも付き人ではなく保護者としてRyoに付きます。仕事を円滑に進めるためにも、私とRyo2人の間の態度や言葉遣いに関しては一切口を挟まないで頂きたいんです。よろしいですか?」
「⋯それはどういう意味ですか?」
中村女史は感情が読めない視線で私を突き刺す。
「難しいことではないんです。単にこの会社のドル箱スターのRyoに周りはかなり気を使っているんでしょうが、私からすればただの兄ちゃんだってことです。あっ!もちろんイケメンの兄ちゃんですよ。正式な付き人でもないのに、仕事で上下関係つけられても扱いに困るんで、私としては対等な立場で2週間を無事に乗り切りたいと⋯」
言いたいことは言った。
さぁ、中村女史よ!返答はいかにッ!?
「了解しました。それでこの件を受けて頂けるなら、こちらとしては問題ありません」
「では、お互い五十嵐さんが戻ってくるまでの間、改めて協力体制を取るということでよろしいですね?」
「こちらに異存はございません」
そう言って私達は右手を差し出してきつく握手を交わした。




