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~春の嵐がやってきた・その後~

第8章はこれで終わりです。

皆さん、コロナに負けず頑張りましょう!

私は衣替えと大掃除をしました。

いつかやろう⋯と思いつつ出来なかったことをする機会だと思って開き直ってます。

第8章ー8





今日は渋谷に来ている。

朝からみんなを仕事へと送り出し、やる事やっつけてから子供達に渡すお土産を買いに来ていた。

何せ前回ここに来た時に例の件が発覚したもんだから、買い物どころではなくなってしまったし⋯。


駅から出た私は、いつものように一服するために喫煙所へと駆け込んだ。

相変わらず凄い人混みだ。

喫煙者(仲間達)よ、肩身の狭い世の中だけどその分税金を払ってるんだから頑張って生きていこう。

そんな風に我が身を嘆きながら一服していると、離れたところから「すみません、通してください」という声が聞こえてきた。

私も周りにならって隅の方に避けたところ、


「やっと会えたぁ~♪」

「お久しぶりです」

「えっ?」


私に対して話しかけていることに気づいた。

お土産リストから視線を外し、声のする方を見ると以前ここで会った女の子2人組だった。


「ここに来たらまた会えるかなぁ、と思ってあれから何回か来てたんだけど、全然会えなかったからぁ~」

「もう諦めかけてたんだよねぇ~」


興奮気味に捲し立てる2人を見た私は、


「えぇ~っと、確か⋯⋯⋯」


記憶を手繰り寄せる。


「あっ!知香ちゃんと菜々美ちゃん!」

「そう!」

「正解!」


満面の笑みで返事をする2人はさすが今時の若い子、テンションがメチャクチャ高い。

ここは男性率が高いので、かなり目立っている。


「久しぶりやなぁ。あっ!そうそう2人には改めてお礼を言わないかんと思いよったんや。お陰様で騒ぎも落ち着いたことやし、ホンマありがとう」


今回の件を最初に教えてくれた2人。

あの時ここでこの2人に会わなかったら、まだあのサイトは動いていて元嫁の悪意はどんどんエスカレートしていたことだろう。

そう考えるとこの2人は今回の功労者とも言える。

その想いから感謝の言葉をのべる私に対して、

逆に2人からお礼を言われた。


「こっちこそメッチャ感動してるし~」

「マジで典子さん、ありがとう!感謝感激!」

「はぁ?」


思いもよらぬ言葉に???(はてな)マークが頭を駆け巡る。

こっちが言うのは分かるけど、なんでこの子らが私にお礼を言うの?私、何かしたっけ?


「典子さんのお陰で【RR(ダブルアール)】復活したし~」

「もうマジで嬉しかったぁ~」

「あぁ、そういうこと」

「それだけじゃないし」

「へっ?」

「典子さんでしょ?」

「Ryoと龍斗に私らのこと言ってくれたの」

「あ~ぁ、それか!」


思い出した。

確かにあの2人にこの子らの名前言った気がする。

あんたらのファンの子からこのサイト教えてもらったんや⋯と。そのついでにチラッと名前を出したけど、それがどうした?


「ビックリしたわぁ~。まさか【RR(ダブルアール)】でRyoと龍斗の口から自分らの名前が出てくるなんて!」

「ホント!マジで驚いたし、感動したわ」

「今までの人生で1番嬉しかったわぁ♪」

「私も!泣いて喜んだもん♪」

「あぁ、そりゃ良かったな。私も嬉しいわ」


理由は分かったけど、それは私が言ったことじゃない。

確かに名前は言ったけど、SNSのことは知らんぞ?

後で確認じゃ。


「で、典子さん。今日は何で渋谷(ここ)に来てんの?」

「あぁ、久しぶりに田舎に帰ろうかと思って、子供らにお土産買いに来たんや」

「知ってるぅ~。2人いるんでしょ」

「そうやけど、よう知ってんな?」

「例のサイトに載ってたから⋯」

「あぁ、なるほどね⋯」


2人がちょっと気まずそうな顔をしちゃったけど、それはこの子らのせいじゃない。気にしなくていいのに、派手な見た目と違ってえぇ子やん。


「なら、高校生の娘が喜ぶようなもん選んでくれる?」

「「えっ?」」


急な私の提案にたじろぐ2人だが、そのまま強引に話を進める。


「いや、時間があったらの話やけど。ほら、私もうオバサンやから若い子らに流行ってるもんとか分からんし。東京でこんなん流行ってるってやつ教えて。お礼にお昼奢るし」

「マジ?全然OK!」

「うわっ。メッチャ楽しくなってきた」


()()の言葉が効いたのか、いい返事だ。


「よしっ!じゃあ行こうか。これでも働く大人やから今日は財布の心配いらんでぇ」

「「やったぁ~♪」」


こうやって話してみると亜紀と変わらんな。

普通の娘さんやんか。つうか、いくつよ?


「ちなみに2人とも何してる人?」

「私達は美容師の専門学校に行ってる」

「あぁ、なるほどね。だから派手なんや」

「何?髪のこと?」

「確かによく言われる」

「金髪と赤い髪だもんね。普通の人からは引かれる」

「でも似合ってるやん。お互いに練習とかするん?」

「するする。この色もお互い練習で染めたし」

「じゃあ、カットも?」

「うん、するよ」

「なら私の髪も切ってって言ったらやってくれる?」

「「えっ!!」」


いきなりカットの依頼をする私に驚きの反応を示す2人。

その表情はさっきまでの顔と違って、プロを目指している美容師の卵に切り替わっていた。


「嘘、嘘、冗談やって」

「もう、ビビったじゃん」

「さすがに人様の髪はまだ無理よ~」


明らかにホッとした表情に変わる2人。

⋯だろうね。さっきの顔からは驚きと共に不安気な様子が醸し出されていたもんね。まだまだヒヨッコか⋯頑張れ2人。


「とりあえず腹ごしらえする?」

「「うん!!」」


そう言って私達はタバコを消して2人がオススメする店へと歩き出した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ただいま~」

「お帰り~」

「えっ!何でお母さんおるん?」

「ビックリしたやろ~?」

「何のサプライズよ?で、お母さんだけなん?ヨッシーは?」

「ここにいるよ。亜紀ちゃん、お帰り」

「あっ、ヨッシー久しぶり~」

「あんた、実の母親より(こう)君かいっ!」

「だってヨッシーのが優しいもん」

「それは俺も同意する」

「亘っ!あんたもかい、裏切り(もん)!」


私は今、自分ちに帰省していた。

例のゴタゴタが片付いて(こう)君も有休が取れたので、一緒に里帰りすることにしたのだ。GWも終わり飛行機のチケットも取りやすかったので子供達には内緒で。

バイトから帰って来た娘へのサプライズが成功し、笑いが起きるリビングに黒い影が近づいてきた。


「うわっ!」

「あはははっ、やっぱり驚いた」

「だから言うたやん。俺やってビビったんやし」

「えっ?えっ?誰この人?」

「紹介するわ。この人は黒井剛士、ゴーシュって呼んでる。亘には先に説明したけど、お母さんが昔世話になった人なんや。命の恩人やで!」

「いや、そんなことは⋯」


ゴーシュが私の説明に戸惑ってる。


「そうなん?命の恩人って⋯あっ!分かった。バスの事故の時に助けてくれた人やろ?」


亜紀が都合良く勝手に話を進めてくれたので、それに乗っかることにした。


「そうそう!さすがえぇ勘しとるやん」

「だって命の恩人って言うたら、あん時ぐらいしか思いつかんやん?黒井さん、ありがとうございました」

「あ、あぁ⋯いや、俺の方こそ⋯」


ん、どした?なんかゴーシュが挙動不審やん?


「亜紀、あんたは荷物置いてきな。晩御飯にするで」

「分かった」


返事をしながら娘は2階に上がって行った。


「亘は風呂が沸いとるから先に入っとき」

「ほな、そうするわ。ヨッシー風呂から出たら一緒にゲームしよう」

「うん、いいよ」


そう言って息子もリビングから出て行った。

私はゴーシュを見て尋ねた。


「ゴーシュどしたん?」

「いや、息子はまだしも娘の⋯亜紀か?亜紀はリコの子供の頃に似てるな」

「そう?」

「顔立ちとかじゃなく、雰囲気というかオーラが昔のお前にそっっくりだ」

「典ちゃんの子供の頃ってあんな感じだったの?やっぱ親子って似るのかな?」

「自分ではよく分からんわ」

「物怖じしないところとか、真っ直ぐ人の目を見るところとか、初めてリコに会った時を思い出したよ」


感慨深かったのか、ゴーシュが遠い目をしている。

でも私と初めて会った時ってメチャクチャ子供だった時やん。

それと今年で18になる亜紀がそっくりって大丈夫か?

まぁ、あの世界とこの平和な世界じゃ精神年齢が違って当たり前やから、比べたらそう思うのも仕方ないけどね。

そうしていると自分の部屋に荷物を置いてきた亜紀が2階から駆け降りてきた。


「晩御飯って何なん?」

「キーマカレーやでぇ~。あんたには温泉卵もつけてやろう」

「いやったぁ~。兄ちゃんは?」

「もう食べて済んどるから、風呂に入っとるわ」

「みんなは食べたん?ヨッシーと黒井さんは?」

「いや、俺は後で⋯」


ゴーシュの面白いくらい亜紀に戸惑ってる姿が微笑ましい。

そんなゴーシュに助け船を出したのは(こう)君だった。


「亜紀ちゃん待ってたから今から食べるよ」

「ほな、みんな一緒に食べようで。お母さんも座って!」

「はいはい。ほな、みんなの分も準備するわ」

「じゃあ、手伝うよ」


そう言って(こう)君がキッチンにいる私のもとへとやって来た。

テーブルには初対面のゴーシュを質問責めにする亜紀の姿があった。

大丈夫かな?ゴーシュって子供が苦手だった気がするけど⋯。


「なぁなぁ、黒井さんて何してる人なん?」

「ゴーシュでいいぞ⋯」

「んじゃ、ゴーシュって何の仕事しよん?」

「俺は探偵というかボディーガードというか、まぁ何でも屋みたいなもんだ」

「うわっ、何それ。何かカッコえぇやん!」


そう言う娘の瞳は、初めてゴーシュに会った時のロンやルルと同じように輝いていた。きっと私もあんな瞳で勇者(ゴーシュ)を見ていたんだろう。似ていると言われたのも納得だ。


「無理言ってでも一緒に来て良かったね、典ちゃん」


カレーを皿によそいながら(こう)君がコソッと呟く。


「うん、ホント。ゴーシュにこそこんな風に家族団欒を味わって欲しかったんや」


いつも人の悪意や闇の部分を見て生きてきたゴーシュにこそ、今の平和な世の中で笑って生きて幸せになって欲しい。

目の前のゴーシュは普段の無表情からは想像できないくらい亜紀の質問に振り回されて、焦ったり戸惑ったり固まったりしている。


「お母さん、まだぁ?ゴーシュのカレー(はよ)してよ」

「はいはい、もう出来たよ」

「じゃあ、みんなで食べようか」


(こう)君の言葉をきっかけに、ゴーシュ以外の3人が一斉に声を発した。


「「「いただきま~す!!!」」」

「っ!いただきます⋯」


ワンテンポ遅れてゴーシュもいただきますと言う。

そこには幸せな家族団欒が確かにあった。

本当の家族じゃなくても暖かな温もりを感じる空間が広がっていた。


こうして私の里帰りは幸せに包まれて過ぎていった⋯。





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