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~春の嵐がやってきた⑤~

登場人物のモデルは勝手ながら、

吉川 光輝(コウキ)・・・中村倫也

吉川 涼也(リョウ)・・・吉沢 亮

横山 龍斗(リュウト)・・・横浜流星

黒井 剛志(ゴーシュ)・・・綾野 剛

というイメージで書いてます。

単なる好みです。特にゴーシュはピッタリです。

第8章ー5




4月も後半にかかりGW目前という時期に私達は最後の仕上げに入っていた。

Ryoのライブに龍斗を秘密の出演者(シークレットゲスト)として登場させ、そこで【RR(ダブルアール)】の再開を知らせること。

そして今回の黒幕を暴いて社会的制裁を加えること、この2点に絞られた。ただこっちに関しては私とゴーシュしか知らない。


「で、俺は何を協力すればいいんだ?」

「私も行ってこいとだけ言われて何も知らなくて…」


訳も分からず中村女史から仕事帰りにマンションへ寄るように言われてやって来た郷田&五十嵐のマネージャーペアは、私の方を見ながら聞いてきた。

抜かりはない。しっかり会社の上にも根回しは済んでいる。


「五十嵐さんにはRyoのライブチケットを準備してもらいたいんです。関係者席とかで何枚か確保してるでしょ?」

「えっ、いや、まぁ、あるっちゃありますけど…。吉岡さんの分ですか?」

「そうですね、私も会場で見てみたいかなって」

「分かりました」

「郷田さんは東京2daysの最終日に龍斗をライブに連れてきて欲しいんです。なのでその日のスケジュール調整をお願いします」

「はぁ?マジか?今からかよッ!」

「急な話で申し訳ありません…」


淡々と話を進める私の隣で(こう)君が頭を下げる。

それを横目に私はゴーシュが乗り移ったかのような無表情で話を進める。

今の私は吉岡典子(保護者)というより、リコ(冒険者)の意識と感覚が色濃く出ていた。


「お2人ともご心配なく。Ryoと龍斗のイメージに傷がつくようなことはしませんから。ただ……」


そう言葉を切った私は、マネージャー2人だけにしか聞こえないような小声で、周り目を警戒しながら睨みつけるような視線で本音をぶつけた。


「私にケンカ売ってタダで済むと思うなよ、ってことを骨の髄まで身に染みてもらおうかな、と…」

「ちょ、ちょっと私…怖いんですけど…」


五十嵐さんが若干引き気味だ。


「ふっ。五十嵐さんてまだ独身よね?いずれ家庭を持って子供ができたら分かると思うよ。身内、それも我が子に手出されたら母親は鬼にも悪魔にもなれるってことが……」

「「・・・」」


マネージャー2人は無言で私を凝視している。

これまでこの2人は私のいい面しか知らなかったから、今の私を見て驚きと共に少々戸惑っているようだ。何をするつもりなのかと…。


「決行はライブ東京2daysの最終日。そこで全部終わらせる!Ryoと龍斗は後で流れを説明するから頭に叩き込んどいて」

「分かった」

「了解!」


この2人には(こう)君とゴーシュという()を与えると驚くほど素直に私の言うことを聞くので扱いやすい。


「あと(こう)君は真鍋さんに連絡を取ってくれる?」

「真鍋に?そりゃいいけど何で?」

「それは後で説明する……ゴメン」

「分かった」


そう言うと、(こう)君は立ち上がって別室から真鍋さんに連絡を取っている。


「あのぉ~、Ryoのライブで何かあるんですか?」


不安そうな五十嵐さんがおずおずと質問してくる。

私は出来る限り精一杯の笑顔で返事をした。


「えぇ、サプライズが…。楽しみにしてください」

「「は、はい…」」


ただ、その笑顔の目は笑っていなかった・・・。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



2daysライブの最終日。

私は控え室でタバコを吸いながら計画に漏れがないか再度確認作業をしていた。

黒幕(獲物)はすでに会場へやって来ている。

上手く釣れたようだ。


典平(のりへい)、準備出来たぞ!」


そこへ本日の()()()()がドアを開けてやって来た。


「そう?じゃあ後は龍斗の到着を待つだけやな…」

「あぁ」

「Ryo、アンタちゃんと覚えた?」

「覚えたって!」

「今回の件は私は勿論やけど、一連の騒ぎを終わらせるためにするんやから絶対に失敗は許されんで!」

「分かってるって!」

「お互いの為に…」

「やってやるよ!」

「任せたで!」

「あぁ!」


そう言って私とRyoはガッシリと握手を交わした。

こんな風になるなんて出会った頃からは考えられないくらいの進歩だ。

でもあんたらに秘密にしてることもあるんや、ゴメン。

裏の計画は私とゴーシュだけで進めてる、許して!


「まずはライブを盛り上げてきなよ」

「任せとけって!」


そう返事をするRyoの向こうからスタッフの


「開演10分前!お願いしますっ!」


という大声が聞こえてきた。


「頑張って!」

「行ってくる」


そう言い残してRyoは部屋を出て行った。

そして運命のライブが始まった・・・。





ライブ開始から1時間ほど経過したところで、Ryoが会場のファンに向かって話しかけるようにマイクを取った。


「今日は来てくれてありがとう」

「「「「キャアァァァ━━━━ッ!!!」」」」


首から掛けたタオルで汗を拭いながら、文字通り“水も滴るいい男”状態のRyoがライブ合間のMCをスタートさせた。


「ここ最近、色んなことがあって皆にメッセージを送ることが出来なかったんだけど、実は今朝マネージャーから報告があって…」


会場のアチコチから「な~に~」「教えて~」など黄色い声が飛び交っている。


「知ってる人も多いと思うけど俺って今、叔父さんちに同居してるんだよね。あっ、龍斗も一緒に…。えっ?知ってるって(笑)。それでさぁ、俺達が転がり込んだせいで叔父さんの彼女がネットでかなり叩かれてさぁ…。そう、典子さん。みんなよく知ってんね?」


いつもはあまりプライベートの話をしないRyoが、会場のファンと掛け合いのようなMCタイムを作り出していた。

ファンにとってはご褒美のような時間だ。


「その犯人が分かったって情報が入ってね……」


そう、ちょうどこの日に犯人の情報が世間に流れ、五十嵐マネージャーへ届くよう手を回したのは勿論私達だ。

新見とか言うヤクザがいる組にゴーシュが頼んでおいた件。

それは、GOサインを出したら森川の悪行を一気にネットに流して犯人をネットで袋叩きにし炎上させることだった。

勿論、当の本人(犯人森川)は組の人間に拉致されてすでに日本にいない。表向きは海外逃亡したことになっているが、実際は奴隷のごとく働かされているのだが…。


Ryoも龍斗もマネージャー達も、今日の段取りから私が前もってこの事を知っていたのか疑問に思ったようだが、ゴーシュが昔のツテを使って──世話になったオヤジさん──捜査情報を手に入れてくれ、今日あたり正式発表されると密かに連絡をくれていた、と伝えるとゴーシュの株はうなぎ登りとなった。

龍斗にいたっては「さすが兄貴!」とうるさいくらいだった。


「これでやっと安心できたよ。だってさぁ、俺のせいで(こう)さんと彼女が破局とかしてたら責任半端ないじゃん?」


そんなRyoの問い掛けに会場のファン達は、


「分かる~」

「良かったね~」

「お疲れさま~」


などと、しきりに大声で返事を叫んでいる。

さぁ、ここからがRyoの見せ場だ。

ちゃんと覚えたセリフでファンを虜にしろよ!


「何よりさぁ、男の独り暮らしを想像してみてよ。家事も一切出来ないんだから悲惨だよ?外食ばっかで栄養は偏るし、洗濯物は溜め込むし、寝坊で仕事に支障をきたすし…。じゃあ、誰にやってもらう……ってなると結婚だし……」


「「「「「イヤァァァァ━━━ッ!!!」」」」」

「「「「「キャァァァァ━━━ッ!!!」」」」」


()()の二文字が出た途端、ファンの叫び声が会場のあちこちから嵐のように吹き荒れ、さながら阿鼻叫喚の絵図だった。


「でしょ?ま、俺もまだまだ結婚なんて想像つかないから今の生活で満足してんだよね……」


その言葉に会場中から安堵の溜め息が漏れる。


「ただ今回みたいな騒ぎになると家追い出される可能性が出てくるわけよ?そうなると俺や龍斗はまた昔のように独り暮らしに戻るから困るんだよね。特に龍斗なんか問題児だったし」


会場のアチコチから笑い声が聞こえている。

スキャンダルだらけだった龍斗の噂は有名なようだ。


「それにさぁ、考えてみてよ」


明るい声でRyoが言う。


「箱根駅伝の強い大学とかってさ、監督の奥さんが寮母として一緒に暮らしてるじゃん。栄養考えた食事で健康管理して悩み相談とかもしてんでしょ?だから選手は一生懸命練習できるわけじゃん。何が違うわけ?それと一緒だと思うんだよね」


分かりやすい例えに「あぁ~」という納得の声が重なって聞こえる。

そう言われれば女性ファンの気持ちも収まりがつくようだ。

ここまでは予定通り、頑張れRyo!


「それにさぁ……」


ダメ押しの最後の切り札をここで出しておく。


「面倒くさいからやりたくないって今まで拒否ってたSNSもファンの為にやるべきだって言い出したの彼女だしね。ああいうのって女性は好きなんでしょ?……ね?やっぱり(笑)。でもさぁ、男って面倒が勝っちゃうんだよね」


Ryoが上手く話しかけながらファン心理をついていく。


「だけど『私がファンだったら嬉しい!絶対喜ぶ!』って頑なに言うんだよ。押しが強いったらないから、本当マジで!」


会場が笑いに包まれる。


「それがきっかけで始まった【RR(ダブルアール)】だけど、そもそも俺ら何すればいいか分かんないから、最初は戸惑ったんだよね。でも典平(のりへい)……いや、典子さんが、ちょっと間違っただけじゃん。みんなツッコミ早くない?ついつい出ちゃっただけじゃん。厳しいなぁ……」


私へのRyoの典平(のりへい)呼びに会場のアチコチからツッコミが入り、本当に会話している雰囲気になったファンはとても楽しそうだった。噛んじゃったけど、結果オーライだ。


「とにかく!彼女の突拍子もない案に乗って白菜で吸血鬼になったり、デートっぽい動画撮ったりしたら反響すごくて…」


会場からも「良かったよ~」とか「もっとやって~」とか声があがっている。


「みんなの声がリアルに感じられたんだ。応援してくれてるファンのことが本当に身近に感じられて。コメントも全部は難しいけど、開いたタイミングでちょくちょく見てるよ。たまにこっちが笑っちゃうようなこと書いてる子もいて龍と一緒に笑ってる」


その言葉に会場はまたもや悲鳴のような歓声に包まれる。


「今回の件でヤメようかと思って更新せずにいたんだけど、典子さん本人に『それは違う。ファンの為に続けるべきだ!』って言われて…。随分悩んだけど騒ぎも落ち着いて犯人も分かったことだし【RR(ダブルアール)】再開することにしましたぁ━━っ!」


その瞬間、本日何度目かの大歓声が会場に沸き上がった。


「みんなも楽しみにしててくれよ━━━っ!!」


その言葉と共に音楽がかかり、Ryoは無事役目を終えてライブ後半が始まった。




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