~衝撃の告白①~
やっとメインキャラが出揃いました。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
第7章ー1
私達はマンションの近所の公園に来ていた。
そう、ゴーシュと再会した時に一緒に来たところだ。
「どこまで連れてくんだよ」
「ここらでいいか……」
杏仁豆腐をたいらげた後、ゴーシュの言った異世界という話を信じられない3人が──主にRyoが──証拠を見せろと騒ぐため、この公園にやって来たのだ。
「ここで何を見せてくれるのかな?」
さすがに大人の光君はRyoのように喰ってかかったりはしないが、信用もしていないようだ。
「典ちゃん……マジなのか?」
「龍斗、あんたの兄貴と私を信じなよ」
私はそう言って全てをゴーシュに委ねた──というのは綺麗事で、本音は現世のゴーシュの実力を誰よりも見たかったからだ。
記憶の中にある勇者ゴーシュの姿を思い浮かべる。
あそこまではないだろう。あれをここでやられるとこの辺り一帯が吹き飛ぶし…。
ゴーシュ本人もそう言ってたしな。
「……じゃあ始めるぞ?」
そう言うゴーシュにコクリと頷き、私は全員に後ろに下がるよう注意した。
ゴーシュが何もない空中に向けて右手をふった。
手であおいだくらいのはずが、その指先から小さな旋風が起こり春一番の強風のように大きくなった。その風はゴーシュの周りで吹き荒れながら留まっている。
「うわぁッ!」
「嘘だろ!?」
「ッ!」
3人とも目の前の光景を信じられないような顔で見ている。そんな3人をよそに、今度はポケットから出したジッポに火をつけたゴーシュは、その火に息を吹きかけた。
「うおぉぉぉッ!」
「やべぇッ!」
「危ないッ!」
ゴォォォ━━ッとジッポの火が大きくなり、南国の男性がよくやるファイアーダンスの時の炎のように燃え盛った。そしてその炎はさっきの旋風の反対側に留まっている。
「行くぞ……」
そう言ったゴーシュが両手を広げ、まるで指揮者のように大きく振り上げた。
すると風と火が重なりあい、ゴォォォ━━━ッと冬の夜空に火柱が上がった。まるで打ち上げ花火を見ているようだった。
辺りが夜とは思えないほど明るくなり、近所の人何人かがカーテンを開けているのが見えた。
唖然とする3人をよそに、ゴーシュは砂場へ移ると右手をおもむろに砂の中に突っ込んでかき混ぜた。
すると砂場の砂が勝手に動き始め、みるみるうちに砂の城を作り上げた。
「ゴーシュ、これって……」
「分かるか?王都の宮殿だ……」
「「「・・・」」」
もう3人は声も出なかった。
ただただ呆然としながら目の前の現象を何とか理解しようと努めているようだ。
「まだ水魔法と雷魔法があるが水魔法を今やると寒いだろうし、雷魔法は住宅の密集したところでは危険だからやめておく……」
「確かにそうやな!」
「「「・・・」」」
誰も返事しないし……、まぁこうなるわな。
「後は何をすればいい…?」
「いえ、もう十分です……」
「……あぁ……」
「兄貴……マジだったんだ……」
「だから言うたやん!」
「「「こんなの実際見るまで信じられるかよッ!」」」
「……おっしゃる通り」
その後、危険ではないスキルを色々と披露し、ひとまず信じてもらえたようなので私達は一緒にマンションに帰ることにした。
「さ、どうぞ入って」
「邪魔する……」
マンションに着いた時には23時を回っていた。
「明日早い人おる?」
私は翌日のスケジュールを確認した。
「俺は午後から」
「俺も昼前ぐらいかな?」
「光君は?」
「さっき真鍋に連絡して休み取ったよ……仕事どころじゃないし」
「じゃあ、時間は十分あるから私からちゃんと説明するわ」
リビングのソファーにそれぞれ腰を下ろすと、誰もが確実に今夜は長くなりそうな予感がしていた。
「まず私は40歳の時に事故にあったんや。光君と知り合うきっかけにもなった高速バスの事故。どうやらそん時に私死んだみたいなんや」
「「「はぁぁ?」」」
「だよね、そうなるよね。でもマジでそうとしか思えんのや」
「どういうこと?」
光君が心配そうに私を見る。
「目を覚ました私は長い夢を見てた感じだったんやけど、どうやらその夢は転生した私の人生だったみたいで、いわゆる走馬灯のように19年分の記憶が一気に頭に流れ込んできて…」
「……もしかして、典ちゃんの小説って……」
「正解!そうあの小説はある意味ノンフィクションなんや。異世界の自分の話……いわゆる自叙伝みたいなもん?」
「マジかぁ!」
「何だ、その小説とやらは?」
ゴーシュが私に尋ねる。
「ちょっと待ってよ……あぁ、これこれ」
私は自分の部屋から文庫本を1冊持ってきてゴーシュに渡した。
無言でそれを受け取ったゴーシュは説明は任せたとばかりに黙々と小説を読み始めた。
「で、最初は私も夢やと思っとったんやけど、記憶の中にあるスキルが使えたもんやから……」
「えっ!スキルって典ちゃんも兄貴みたいなの出来んの?」
「マジかッ典平!?」
「典ちゃんそうなの?」
「いやいや、ゴーシュみたいなん出来るわけないやん!そもそもレベルが違うんやで。異世界のゴーシュは勇者で、私はしがないB級冒険者やし……」
「兄貴が勇者!?」
「で、典平が冒険者!?」
「・・・」
もう光君は声も出ないようだ。
「そう、異世界ではゴーシュの方が一回りくらい年上だったんかな?私が小さい頃、村を襲った魔物をやっつけてくれてみんなを助けてくれたんや。これが命の恩人ってわけ」
「「「なるほど」」」
やっと納得してくれたようだ。
これで浮気という冤罪は晴れた。
「んで、そんなゴーシュに憧れて私は冒険者を目指したんやけど、結局B級ランクにしかなれんかったんや」
「その上ってA級以外あんの?」
「A級とS級があるけど、その上に選ばれし者しかなれない勇者があるんや、それがゴーシュや!」
「兄貴スゲェ、さすがッ!」
「勇者ってどんだけスゲェの?」
おっ?食いつくねぇ。やっぱ男にとって気になるとこやろな。
「魔王を討伐して世界を救うくらい!」
「「マジかッ!?」」
「実際救ったしね。ゴーシュが本気で戦うと辺り一帯が焦土と化すぐらいだったんやで!大地や海が裂けるんやから!」
「エグいな、勇者……」
3人がゴーシュの方に視線をやるが、当の本人は小説に夢中だ。
「んで、私は大量発生した魔物との戦いで死ぬんやけど……」
「えっ、典ちゃん死んじゃうの?」
光君が妙なところに食いつく。
「だから前にも言ったやん?勇者は別におるからリコは死ぬんやって」
「あれはこのことだったんだ……」
昔、光君が私の夢日記を見た時に言われた言葉を思い出したようだ。
「でもそこで死んだから今の私があるんやって。運良く事故で死んだ直後の自分にそのまま転生したみたいで、端から見たら一瞬心臓が停止したのに息を吹き返した感じかな?」
「で、で、典ちゃんはどんなスキルがあんの?」
龍斗ノリノリやな…。
つうか、3人とも期待を膨らました目で私を見るな!
さっきのゴーシュの後じゃ、どんなスキルもショボいわ。
「ちょっと考えたら分かると思うけど……」
「何?ちょっと待って!俺当てるから」
「言語スキル」
「言うなよぉ~、当てるって言ったじゃん!」
龍斗がむくれている。
「……まさか、典ちゃんが何ヵ国語も喋れるのは……」
「そう言語スキルのおかげ」
「何それ、超便利じゃん!」
今度はRyoが羨ましがっている。
「まぁ、この世界じゃ反則技みたいなもんやけどな(笑)。おかげで翻訳や通訳の仕事に困らんわ」
「だろうな……」
羨ましいのか妬ましいのか、微妙な顔でこっち見んなよRyo。
「で、典ちゃんのスキルはそれだけ?冒険者やってたんなら他にもあるんじゃないの?」
「えっ?」
「伊達にシステムエンジニアやってないよ。異世界ゲームとかでスキルの構築やら入力したことあるんだから」
「そっかぁ、光君は詳しいよね」
「珍しいのがあるだろ……」
小説を読んでいたはずのゴーシュがいきなり話に加わった。
「あぁ、幸運スキルね」
「何それ?」
「そのまんま、幸運なスキルだよ」
「滅多にない特殊スキルだ。手に入れようとして身につくものでもないからリコ独自の固有スキルだな。所持している者は文字通り幸運な奴だろう……」
「兄貴も持ってないの?」
「俺も幸運スキル持ちは初めてだ……」
「スゲェじゃん。じゃあそれで何が出来んの、典平?」
「何が出来るってわけじゃないんだよねぇ……」
「「どゆこと?」」
私も説明に困った。
冒険者になるためにギルドで登録した時、初めて自分に幸運スキルがあることに気づいたのだ。
他に持ってる人もいなかったから、どうすれば発動するとかどんな使い道が正しいのか私にも分からなかったからだ。
「私もよく分からんけど、たぶん願いが叶うとか不運を避けられるとかやと思うんや……」
「死んだのに?」
確かに!龍斗ナイスツッコミ!
「いや、そうなんやけど考えてもみて。元々この世界の人間にスキルなんてないやん?だから呆気なく事故にあって死んだ。でも異世界に転生したおかげで幸運スキルが手に入った。そしてこれのおかげで両親が死んだ時も私だけ生き残ったし、5大魔法の1つも使えないのに冒険者になれた。そして何より死んだはずの今の自分に戻り生き返ったんやで、スゴくない?」
「まぁ、言われてみればそうかもな……」
「それに、私が宝くじ当たったのも……」
「「「幸運スキルかッ!?」」」
「そうとしか思えんやろ?」
「何だ、宝くじが当たったのか?」
10億当たったことを知らないゴーシュが私に尋ねる。
「うん。絶対このスキルのおかげやと思うゎ」
「じゃあ良かったな、前世と違って……」
「今考えると絶対無理!あんな世界……」
私が笑いながらゴーシュを見ると、彼は開いていた小説を静かに閉じて昔話を語り始めた・・・。




