~運命の日②~
第6章ー8
「とりあえずみんな座ろう」
そうみんなを促して私は1番に椅子に座り直し、渇いた喉にウーロン茶を流し込んだ。
話題は“私とゴーシュ”から確実に“龍斗とゴーシュ”に移っていた。
もう龍斗は半泣きっぽいし、ゴーシュは異世界私に見せていたような保護者のような顔をしている。
「ちょ、ごめん。改めて聞くけど龍斗のいた施設で同じように暮らしてたしぃ君ってゴーシュなん?」
「あぁ……」
「マジ?」
「マジかよ!」
「・・・」
まさかのRyoと一緒に突っ込んでしもたゎ。
相変わらず光君は言葉が出ないようだけど。
「あのジェイソンが今では人気俳優とはな……」
「俺……ず、ずっと会いたかったんだ……」
「あぁ……」
「でもまだ子供だったし、ズズッ……探すのにどうすればいいかも分からなくて……」
「そうだな……」
「俺も名前変わったし、しぃ君の名前も分からなかったから……ズズッ……」
「泣くな……」
「ズズッ……泣いてねぇよ……」
いや完全に泣いとるやん。
人気俳優が鼻すすりながら泣いてるけど、イケメンだとドラマのワンシーンみたいで見るに耐えうるな。
「さっきも言ったが今の俺は黒井剛士だ。リコと同様ゴーシュと呼んでくれ。今の俺にしぃ君はキツイ……」
「ズズッ……じゃあ俺も、今の俺は横山龍斗。龍斗でも龍でも好きなように呼んでよ。俺だってジェイソンはキツイよ(笑)」
「分かった……」
さっきまでの殺伐とした雰囲気は消え去り、どこか和やかなムードに切り替わったことに安堵した私は疑問に思ったことを聞いてみた。
「なぁなぁ、ゴーシュがしぃ君だったことは分かったけど、なんで龍斗がジェイソンなん?」
「……言ってないのか?」
「あっ、うん。あの頃の話はあんま……」
口ごもる龍斗。
代わりにゴーシュが答えてくれた。
「リコは俺がなぜしぃと呼ばれていたか知ってるのか?」
「えぇ~っと確か士郎だからしぃ君だったと……」
「あぁ。その通りだが、なぜ士郎かは聞いたか?」
「あっ、11番目の11を漢字で書いた士から取ったって聞いたけど?」
「そうだ。そしてこいつは13番目だったから……」
「分かったぁ━━ッ!だからジェイソンや!」
「マジで…?」
Ryoが呆れた顔で龍斗を見る。
「兄貴みたいな強い名前にしたかったんだよ」
照れ隠しなのか、ふて腐れたような龍斗が可愛い。
「とにかくゴーシュがしぃ君だったことは私も知らんかったんやけど、ゴーシュは龍斗のこと知っとったん?」
「いや、今日ここで会って気づいた……」
「10年以上会ってなかったのによく分かったなぁ?」
「身に纏うオーラというか雰囲気に覚えがあってな……」
「さすがゴーシュ」
「兄貴が覚えていてくれて俺は嬉しかったけどな!」
「オーラ?」
光君がいらんとこに気づいた……か?
マズイ!話題を変えよう。
「ところで、何でゴーシュは施設から出たん?」
私は小さなことに気づきそうな光君の意識をそらすため、急いで話をそらした。
「中学を卒業したら高校に行かず施設を出て働くつもりだったからな……」
「そうなんやぁ…。でも、そもそもゴーシュは事故で両親が亡くなっても親戚とかおったやろ?」
「確かに。なぜ施設に?」
おっ!うまく光君が違う話題に食いついてくれたぜ。
「事故の後、とりあえず親戚に引き取られたが、俺が前世を思い出したからな。扱いに困ったんだろう……、しばらくして施設に放り込まれた……」
「何だよそれッ!」
「マジで?最テーな親戚やな!」
私と龍斗が一緒に怒りに燃える。
「……まぁ、仕方ないだろう。不気味な子供だったと思うぞ?」
「あっ、なるほど。そうなるか……」
「えっ、何で?兄貴が何を思い出したって?」
「何で昔を思い出すと不気味なんですか?」
今度はRyoがいらんとこ突いてきたぁ━━━ッ!
気づくな!流せ、聞き流せぇ━━━ッ!
「ぶ、無愛想、不気味じゃなくて無愛想な子供だったんやろ?ま、身内亡くした子供の扱いは難しかったってことやな…。それで施設入れたんやろ。でも、さっきも聞いたけどゴーシュが出たのは何で?」
よし、話が元に戻ったぞ!
「高校に行かず働くことに決めたら金を入れろと言われてな。施設に入る時、親戚は親の遺産も預けていたはずが奴等が食い潰したようだ……」
「何て奴等ッ!」
「そういうとこだったよな……」
「龍斗……」
「龍……」
これには光君とRyoの2人とも言葉にならなかったようだ。
同じ施設にいた龍斗が1番分かってることだろう。
「じゃあ、高校行かずにどっかで働いたん?」
「いや、中卒のガキの働き口なんかそうそう見つかるわけもなくてな。チンピラみたいな暮らしをしていた時に知り合った刑事がお節介で、色々と世話してくれて……」
「そうだったんやぁ……」
「それからどうしたんですか?」
おっとぉ、光君が普通に話しかけてくれたぁ!嬉しい。
「ちょくちょく家に連れてかれてメシを食わせてもらったりしてたら、高卒認定取れって言われてな。その後も資格を取れと次々言われて……」
「いい人に出会えたんやな……」
「あぁ……」
「何の資格取ったんですか?」
光君が素朴な質問をすると、ゴーシュはおもむろに財布からある物を取り出して見せてくれた。
「これだ……」
「免許証?車の免許なら私も持っとるよ」
「典ちゃん違う。フルビット!凄いよこれッ!!」
「「マジかッ!」」
私を除く男3人が大興奮してるけど何?フルなんて?
「俺、フルビッターに会うの初めてだわ!」
あのRyoまでもが興奮してゴーシュを見る目が変わってる。
意味分からんのやけど、なんじゃいそりゃ?
「分かんない?典ちゃんの免許証の表示は原付と中型…」
「うん、オートマ限定やけどな(笑)」
「今それはどうでもいいんだよッ!」
うわっ、Ryoに突っ込まれたわ。
「で、黒井さんの免許証よく見て!」
「えっ、あっ!全部に文字がある!」
「凄いことなんだよ、これ!」
「さすが兄貴ッ!」
「いや、これマジでスゲェわ」
何か私をよそに男達だけで盛り上がってるな。確かに全部の免許取ってるって凄いけど、異世界を知ってる私としてはゴーシュの凄さはそんなもんじゃない!──と逆に言いたい。
「やっぱり凄いな、ゴーシュは……」
「つい前世の癖でカードのランクを上げなくなってな……」
「あぁ、なんか分かるわ(笑)」
ゴーシュにとってはギルドカードのようなもんか。
となるとこの免許証はS級カードってことか!そりゃスゲェわ。
「身分証にもなるし仕事も見つけやすくてな……」
「「「だろうね!!」」」
うわっ、ハモっとるし。男のロマンみたいなもんか?
「金を貯めてコイツを迎えに行くつもりだったが……」
「えっ!?」
「約束しただろ……」
「覚えててくれたんだ……」
龍斗がまたウルウルし出したやん。
でもやっぱりゴーシュはゴーシュのままだった。
異世界で私達を助けてくれた勇者ゴーシュだ!
「それをおやっさんに話すとすぐに動いてくれて…。あの施設の摘発に一役買ってくれたんだ……」
「おやっさんて?」
「世話になってた刑事だ……」
「あれ兄貴のおかげだったんだ!」
「だが、時すでに遅くお前はいなかった……」
「俺も飛び出したから……」
「すまなかった……」
「そんなこと全然ないよッ!」
ゴーシュが龍斗に頭を下げている。不思議な光景だ。
「あそこにいた頃のコイツは前世のリコみたいでな…。今度こそ守ってやりたかったんだが、また助けてやれなかった……」
「そんなことないって。龍斗はちゃんと覚えてたやろ?今のこの子があるのはゴーシュがいたからやと思うよ?前世の私がそうだったもん。ゴーシュがいたから頑張れたんやで!」
「そうだよ!」
龍斗が必死でゴーシュにお礼を言ってる。
──と、その時。
「あの~、話の途中すみませんが、ところどころ気になる箇所があったんですけどお聞きしても?」
「ッ!!!」
光く━━━━んッ!
何に気づいたんか知らんけど、そのままスルーして知らんぷりして欲しかったわ、私。
「俺も引っ掛かってんだけど……」
Ryoおまえもか?
えぇやん、今日は。感動の再会ってことで終わろうよ。
「典ちゃんからは危ないところを助けてもらったと聞いてますが、俺は年上かと思ってたんですよ?でも会ってみたら一回りも下だった。年齢的にかなり若い頃の話になりますよね?」
「・・・」
「あ、ゴーシュは若い頃から強かったから、なっ?」
「確かに兄貴は昔から強かった」
龍斗の助け船もあり何とか誤魔化そうと必死な私と無言のゴーシュ。
「その昔からってのがさっきから気になってんだけど、話聞いてっと典平の子供の頃から知ってるように聞こえんだけど……おかしくね?」
「俺もそこ気になってた。どういうこと典ちゃん?」
「えっ、そう?」
「さっきの免許証のランク上げる昔からの癖ってなんだよ?」
「えぇ~と、子供がカードゲームとかするやん?」
「典ちゃん、黒井さんが子供の頃は施設にいたんじゃないの?」
「!」
光君とRyo、血は争えないっていうか、この2人こういうするどいとこ似てるな、クソッ!
「施設にいた頃の子供の黒井さんが命の恩人っておかしくない?」
「それに施設にいた頃の龍が昔の典平に似てるって、どう考えても黒井さんが上に聞こえんだけど?」
「そういえば……変だよな?」
うわっ、泣き止んで冷静になった龍斗も加わりやがった!
「まだ何か隠してんじゃねぇの?」
「典ちゃん……」
「兄貴……」
マズイッ!非常にマズイ状況や。
どうしよう、何て誤魔化そう。
頭の中でうまい言い訳をフル回転で考えていた私の隣から、
「何だ、異世界のこと言ってないのか?」
「「「へッ!?」」」
おかわりいいか?──的な軽いノリで真実を告げたゴーシュは、残り少なくなった円卓の料理を口に運んだ。




