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~回想・gauche side~

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。

年末の繁忙期を過ぎた頃、疲労からか体調不良となり高熱で寝込んでおりました。

せめて更新ぐらいと、ボーッとした頭で操作していたらいつの間にか寝落ちしてホットカーペットと自分の間にスマホが…。

電源が落ちたまま一切起動しないという不幸に見舞われ、正月休みに入りショップへも行けず。年明けに修理へ出すが時間もかかり戻ってきたらデータは全て消去、という新年早々踏んだり蹴ったりな状態でした。

遅ればせながら今年もよろしくお願いいたします。

第6章ー3





────夢を見る。


1番古い記憶は盗賊と暮らしていた頃。

なぜコイツらと一緒にいるのかは分からなかったが、たぶん拐われたのだろう。俺は雑用係として暮らしていた。


ここでは役に立たなければ殺される。

必要とされなければ無駄飯喰らいとして処分されるのだ。

物心ついた時には一緒にいた子供は半数以下になっていた。その都度、どこかから補充していたが俺と同じように生き延びた奴は何人いたのだろうか?

今となってはどうでもいいことだが…。



たぶん10歳ぐらいだったと思う。

自分の年齢すら正確に分からない生活だったが、ある日ちょっとしたミスで俺は下っ端にひどく痛めつけられた。

勿論、誰も助けてはくれない。自分の身は自分で守る、何があっても自業自得、信じられるのは己のみ。

短い人生の中で俺が1番に覚えたことだ。


しばらく殴られれば気が済むだろうと、されるがままになっていたが、泣きも(ワメ)きもしない俺に周りが(ハヤ)し立てた。


「おいおい、お前舐められてんじゃないか?」

「ガキの方が見所ありそうだな」

「おっ!将来の有望株かぁ?」

「なんだとっ!」


単なる下働きのガキより劣ると言われた下っ端はムキになって腰のナイフに手をかけた。


「殺ってやるよ!どうせガキなんて腐るほどいるんだ。代わりはいくらでも補充できるしなっ!」


そう言って這いつくばる俺の背中にナイフを振り下ろそうとした──が、その前に俺は両手を振りかぶって無防備な奴の腹に蹴りを入れた。


「うわっ!」


まさかの反撃に思わず落としたナイフを咄嗟に拾い上げ、俺は下っ端の太腿へと反射的にナイフを刺した。

死にたくない。殺られるくらいなら殺ってやる。


「ギャアァァァッ!」

「おっ?」

「やるな、あのガキ」


周りの奴等はいつもと違った状況を面白がっている。盗賊仲間と言っても所詮は利害関係で結ばれた仲だ。言うならば()()()()()()()の方が合っている。自分に利があるか被害を被らなければ手も口も出さない。盗賊の中での暗黙のルールだった。


「痛い、いってぇ」

「うるさいっ!何の騒ぎだ?」


そこへ(カシラ)が来た。

コイツらをまとめる盗賊の首領。冷酷で残忍で容赦ない男が周りに事情を聞くと、


「おい、やかましいからそいつを連れてけ」


そう言って下っ端は引きずるように俺の見えないところへ連れて行かれた。


「お前面白いな?やる気があるなら()()にしてやるがどうだ?」

「!!!」


その言葉で俺は全てを悟った。

俺は()()ですらなかったのだと。単なる()()

壊れたり使えなくなれば処分(コロ)される()だ。


「……なる!」


俺の答えはひとつだった。


「よし、誰かコイツを鍛えてやれ」


この日から俺の生活は少しずつ変わった。

下働きの時間は戦い方を覚える時間に、()ではなく()として認識されるようになった。



それから数年過ぎた頃には俺は仲間内で中堅どころにまで育っていた。(カシラ)の目は間違っていなかったのだろう。

子供だと怪しまれないことから使い勝手も良かったようだ。斥候役として旅の商人達に紛れ込み、護衛の数や見張りの交代時間を調べたり、子供だと安心している相手から運んでいる荷物の中身を聞き出したりと立派な盗賊一味に成長していた。


また思いの外、戦闘にも向いていたのか新入りの腕試し役によく呼び出された。

相手が子供だとたかをくくって油断した奴等のほとんどが返り討ちにあい、一味での俺の評価はうなぎ登りだった。スポンジのように何でも吸収する俺が一種の娯楽だったのだろう。色んな奴が自慢の技や得意なことを教えてくれた。

だが、俺は忘れていなかった。

()()()()()()()()()()()()()だと言うことを…。



それからしばらくした頃、俺は初めて冒険者という職業の人間に出逢った。

討伐依頼を受けた冒険者達と盗賊の戦いを見た俺は即座に仲間を捨てた。仲間?いや、俺からすればそれこそ単なる()()()だ。

ただ生きるために必要だったから一緒にいただけで、奴等を助けて一緒に戦うという選択肢はなかった。

なぜならあの(カシラ)ですら簡単に殺られたからだ。レベルが違ったのだ。


俺は直前に拐われた子供達に紛れ込み一緒に町へ連れて行かれた。

そして生まれて初めて町で暮らす人達を知った。



────あれから1年。

俺の人生の中で唯一平和で1番居心地の悪かった時代がこの1年だった。

孤児院で暮らすようになった俺は周りと馴染めなかった。生きてきた環境が違い過ぎたのだ。


なぜコイツらは当たり前のように衣食住があると安心しきっているのか?

なぜコイツらは他人に施しを受けてヘラヘラ笑っているのか?

なぜ何の役にも立っていないくせに同じように分け与えないといけないのか?

『神に祈りなさい』とシスターは言うが、見たこともない神様は何かしてくれたのか?俺が盗賊と暮らしていた時はバカンスにでも出掛けていたのだろうか?


そんな俺が周りと馴染める訳もなく、自然と1人でいることが多くなった。元々無口で無愛想な性格に拍車がかかり俺はいつも1人だった。


ある日、町で頻発していた強盗の犯人達が孤児院へと逃げ込んで来た。

いつものように1人で過ごしていた俺は、人質となったシスターや他の子供と別の場所にいたため冷静に状況を把握することができた。


強盗は3人、憲兵は到着しているが人質がいるため身動きが取れない。犯人が持っている武器はナイフぐらいで人質さえいなければ俺でも片がつく相手だ。


迷いはなかった。

俺の居場所に勝手に土足で上がり込み、夕食の時間を奪った奴等だ。実際、食堂に準備されていたテーブルの上の食事はメチャクチャになっている。その中には俺が森で狩ってきた兎の肉もあった。何もしない役立たず達と分け与えることに納得はしていなかったが、食べられるなら我慢も出来た。だが、それを俺から奪った奴等は許せなかった。


俺は古くなった孤児院で抜け道として使っていた子供達しか通れないような場所から食堂へ潜り込み、そっとテーブルから落ちたフォークとナイフを数本手にした。

憲兵に外からの攻撃されないよう、食堂の明かりが消されていたのも幸運だった。俺が最初からいたのかすら誰も気づいていなかった。


俺はシスターを背後から羽交い締めにして右手でナイフをちらつかせる男に言った。


「シスターを離せ」


予想もしない所から予想もしない声で聞こえてきた言葉に強盗達は慌てた。


「だ、誰だっ!」

「俺だよ」


その瞬間、シスターの背後にいた男の左目にフォークが突き刺さった。


「ギャアァァァッ!」

「な、何だ」

「どうした?何があった?」


混乱する食堂内で俺は素早く3人へと近付き足の腱をナイフで切った。


「うわぁぁぁッ!」

「ギャアァァァッ!」

「助けてぇ」

「キャア━━━ッ!」


暗がりの中、食堂内は混乱していた。

俺は強盗達を逃げられないようにした後、武器を持てないよう拾い集めたフォークやナイフで手の甲を床に縫い付けた。


やることをやり終えた俺が最初に感じたことは、

──うるさい、だった。

ただ(ワメ)き、騒ぎ、泣くだけの奴等が心底鬱陶しくて仕方なかった。

手伝えと言う気はなかったが、何も出来ないならせめて静かにしてくれ、自由になったならサッサと逃げろ。暗闇の食堂を走り回って逃げ惑う奴等が強盗よりよっぽど俺には邪魔だった。


その後、食堂へ雪崩れ込んできた憲兵によって強盗は連れ出されたが、誰の仕業かみな分からなかった。

俺は食堂の隅でダメになった夕食を見ていた。


現状の把握をしようと憲兵隊長が周囲を見回す。すると、泣き(ワメ)く子供達の中で1人無表情に佇む異様な子供に気付いた。


「おい、何か見ていないか?」


それは単なる勘だったが間違っていなかった。

自分の問いかけに無表情なままで答える子供。


「男が3人入ってきてシスターを人質にした。食堂がメチャクチャになった。外の奴等は助けに来なかった。アイツらを動けなくした」


淡々と答える子供に隊長は、


「見たのか!何があったんだ?」


唯一話が出来そうな子供に問いただした。


「アイツらの手と足を封じた」

「それは誰がやったんだ!」

「だからさっきから言ってる。ナイフとフォークで動けないようにした。殺してはいない」


無表情のまま言葉少なめに状況を話す子供を見て隊長はやっと気付いた。


「まさか……」

「俺の食事を台無しにした」


強盗達を仕留めたのは若干1()3()()()()()だった。



その後、俺は事情を聞きたいとある場所へ連れてこられた。

柄の悪そうな大人が多いと思ったが、盗賊の奴等と似てる雰囲気は孤児院の大人より安心できた。


夕食を台無しにしたので叩きのめした、と説明する俺を見て、隊長ともう1人のオッサンがなぜか小声で話をしている。

そして俺は孤児院に戻ることなくここで働くこととなった。


孤児院では憲兵から説明を受けたシスター達が俺の引き取りを拒否したそうだ。

なぜ助けてやったのに放り出されるのか、俺には理解できなかった。自分の居場所、自分の食事を取り返すはずがその居場所は無くなった。

代わりにここで働くこととなった。

ここは冒険者ギルドだった。



────そして冒険者となった。

あれから3年。ギルドで働きながら町での暮らしや常識を覚え、冒険者になるための努力をした。

憲兵と相談していたオッサンはギルド長だった。

13歳の子供が強盗の大人3人を返り討ちにしたのだ。

冒険者になる素質ありと見たようだった。

ただ正当防衛とはいえ孤児院から素性を聞いた憲兵が、盗賊と暮らしていた俺の常識と世間とのギャップを心配して住み込みで働くこととなったのだ。


だが俺には合っていた。

やったこと、出来たことに対する正当な報酬。

いわゆる─働かざる者食うべからず─労働に対する報酬。

孤児院での皆平等などという寝惚けた甘っちょろい考えよりよっぽど俺には理解できた。

だいたい皆平等ならなぜ俺には親がいない?家族も住むところもなく盗賊と暮らしていた俺と、貴族の子供が平等でないことぐらいバカでも分かる理屈だ。

ここは生まれも育ちも関係なく、依頼を達成した奴が上に上がれる実力主義の場所だ。這い上がってやる、俺は心に誓った。



16歳で冒険者としてデビューした。

Fランクからのスタートだったがギルドの最短記録を塗り替え、みるみるうちにCランクまで駆け上がった。

その頃から手の甲に妙な痣が浮かんできた。

それと同時に色んなスキルも身につけた。火、水、土、風、雷の五大属性はもちろん、自分が亜眼持ちであることを知ったのもこの頃だった。


そんな時、王都に勇者が出現したという噂を聞いた。

勇者とは冒険者より格上の絶対なる強さを持つ者で、神話やおとぎ話などでよく題材になっていた。

各国に勇者は現れるがその強さがそのまま国の優劣を決める為、その時代に現れた勇者のランクが世界のバランスを決めていた。

そして勇者には必ず体のどこかに勇者の(シルシ)があるそうだ。

その(シルシ)で勇者の強さが一目で分かるという。


俺はどんどん濃くなっていく左手の甲の痣がもしかするとその(シルシ)なんじゃないかと思っていた。

そんなものになりたいと思ったことは1度もないが…。

だが、勇者が現れたのなら大丈夫、もう安心だ。

逆に何かの呪いじゃないかと心配になった…。

そこで俺は指抜きの革手袋をするようになった。

黒革の手袋は痣を隠せる上に剣の滑り止めにもなってくれかなり重宝した。俺はどんどん依頼を達成して気づけばAランク冒険者として名前が売れていた。


そして念願のSランク冒険者となったある日、オークの集団に襲われていた田舎の村にやって来た俺は人生の転機を迎える。



オークの集団を討伐した俺は唖然としていた。

戦いの最中に破れた左の革手袋からあの痣が見えていた。

問題はそれではない。その痣が光っていたのだ。

どういうことか解らずにいた俺に村長(ムラオサ)が告げた。


「おぉ、勇者様じゃ。勇者様が村を救って下さった」



同じ時代に2人の勇者など滅多にないことだった。

新たな勇者の出現は素早く王都へと伝わり、俺は初めて王族と会うこととなった。もちろんもう1人の勇者ともだ。

城にあがった俺は呆れた。

何の為か分からぬ過剰な装飾や貴族達の衣装、何よりもう1人の勇者の(シルシ)()()()にあった。恥ずかしくないのか?あんなものを常に人前に出す気が知れなかった。


王族の前でも無表情で無愛想な俺はあまり喜ばれず、強さのランクだけを確認されて国外には行かないよう釘を刺された。

どうやら強さは俺の方が上だったようだ。

勇者と言われても俺自身は今までと何の変わりもないのだ。

冒険者として依頼を達成して報酬を得る暮らしをしていた。


そのうち、俺は闇の勇者ゴーシュと呼ばれるようになった。

もう1人が光の勇者ミゲルだそうだ。単純に着ている物の違いだろうか?やたら金ピカな装備を身に付けていたなぁ、と俺は思い返していた。俺と言えば、見た目は何だが最高の魔物で作った最上級の装備を身に付けていた。派手さはないが実用的だった。

五大属性の他に闇属性の魔法も取得したのはこの頃だった。


そんな暮らしの中である冒険者ギルドに立ち寄った時のことだ。


フード付きのコートを着てなるべく顔が見えないよう、他人と関わらずに過ごせるよう注意していた俺はギルドの隅で食事を取っていた。


「そりゃ1番はアイツだろ?」

「バカ言え。それよりアッチだろ」


ギルド内で妙に盛り上がっているテーブルがあった。どうやら最強ランキングとやらを作っているようだ、……暇な奴等だ。

すると隣のテーブルの男が口を挟んだ。


「結局は勇者が1番だろ」


その一言でギルド内は冒険者ランキングから光と闇の勇者どちらが強いかの論争となった。


「やっぱ光の勇者ミゲルだろ?正に神話通りじゃないか」

「分かってないなぁ。実力では闇の勇者ゴーシュだろ」

「でも国の公式行事に参加するのはいつも光の勇者だぜ?」

「じゃあ、国が認めた勇者はやっぱミゲルか?」


そんなどうでもいいことを延々と言い合う奴等を横目にして俺は食事の続きをしていた、すると。


「話にならんわ!そんなん決まってんだろ!」


急に若い女の声が混じってきた。


「最強はゴーシュ。()()()だろ!」


ふと見ると反対側のテーブルに座っていた年若い冒険者パーティーの1人が男達に喰ってかかっていた。


「おうおう、やっとB級になったばっかの新米が何偉そうに言ってんだ?お前に勇者の違いが分かんのか?」

「アンタ達こそ勇者の何を知ってんだよ!」


自分より強面(コワモテ)の屈強な男達を前にしても一切引かない女は怒涛のごとく言葉を発した。


「私はゴーシュに助けられた村出身だ。だからこそ本当の勇者が誰か分かっている。国からも冒険者からも見捨てられた私達の村をオークの襲撃から助けてくれたのはゴーシュだった。たった1人で魔物の集団を殲滅させたんだ。最強の勇者を名乗るにふさわしいのはゴーシュだ!彼以外認めないっ!」


あまりの勢いに押され周りの男達も一瞬たじろいだ。


「で、でも光の勇者だって……」


反論しようとした男の声を遮って女は続けた。


「勇者?自らは前線に立たず、騎士や魔法使いとパーティーを組んでトドメしか刺さない奴が勇者だって?美味しいところだけ持ってく奴のどこが勇者だッ!だいたいそいつは私達の村が襲撃に合うっていう時に、ドラゴン討伐だと嘘をついて第2王女の誕生パーティーに参加していたような奴だぞ!そんな奴が最強の勇者なんて絶対に認めない!例え国が勇者はミゲルだと言っても最強の称号だけはゴーシュのものだ!それだけは絶対に譲れない!もらった恩と命はゴーシュに返す。世界中がゴーシュの敵になったとしても私だけはゴーシュの味方だ!反論ある奴はかかってこいッ!」


あまりの出来事にギルド内は水を打ったように静かになった。

ハッと我に帰ったギルド職員がまぁまぁと仲裁に入り事なきを得たが、自分のことでもないのにあんなにも必死になる女のことが俺は少しだけ気になった。

静けさを取り戻したギルドで俺はこっそりとさっきの女の素性を職員に尋ねた。リコというB級になりたての冒険者だった。


ギルドを後にした俺は記憶を頼りにリコとやらを思い出そうとしたが、あんな女は知らない。会った記憶など全くない。

すると、足元にリンゴが転がってきた。それを拾い上げた俺に子供が近づいてきた。それを手渡すと、


「お兄さん、ありがとう」


そう言ってリンゴを受け取った子供は去って行った。


「あっ……」


かすかな記憶の片隅にあったリコという名前。


「あの時の子供か?」


随分前に魔物の討伐で向かった村。どちらかと言えば子供には好かれない俺に対して遠慮なく近寄って話しかけてきた子供達。

分からなかったモヤモヤした気分が少しだけ晴れた気がした。



それから俺は気晴らし程度のつもりでリコの情報を手に入れていた。俺と同じ孤児で、同じように冒険者となり、聞くところによると同じく亜眼持ちのようだった。俺は勇者と認定されてから亜眼が魔眼となり、より強力な威圧や催眠のスキルを手に入れていたが…。


俺は気になった。今までの人生で俺を必要としてくれたのは、俺に利用価値があったからだ。ガキの頃も、冒険者となってからも勇者と呼ばれるようになってからもだ。


依頼を達成するからこそ感謝されるが、それは冒険者としての仕事として当然のことであり、失敗して暴言を吐かれている奴等も何度となく見てきた。役に立たない冒険者など必要とされないのだ。


勇者に至ってはもっとひどい。

勇者は助けてくれて当たり前、見返りなど求めるはずもない、善意と正義感で生きていると思っている。

そんなものは腹の足しにもならない。

そもそも俺は好きで勇者になったわけではない。


望んだのは誰にも文句を言われずに、自分の好きなように生きていける力であって、その為に冒険者となったのだ。

人助けや正義感などと1番遠い生き方をしてきた俺に何を求めているのか?


1度偶然にも魔物と遭遇した商人を助けたことがあったが、それは依頼対象の獲物だったからであって進んで助けたわけではなかった。だが、それをきっかけに助けてくれることが当然とばかりの風潮となり、報酬を催促すると勇者のくせに…とか、他の人はタダだったのに…とか、面倒になったのでフード付きのコートを着て、なるべく顔が分からなくするようになった。


そんな中で再び出逢ったリコという冒険者。

何年も前のたった1度の出来事であそこまで俺に対して熱くなれるのはなぜだろう?俺の味方?意味が分からなかった。

俺に味方など今まで1人もいなかったからだ…。



────そしてあの日がやって来た。


リコも強制参加させられているという戦場にやって来た俺は、周りの魔物を狩りつくし目的の人物を見つけた。

と、思ったその瞬間。

何があったんだ?

なぜリコが俺の腕の中で息も絶え絶えになっているんだ?

まさか俺を庇ったのか?

俺よりよっぽどランクの低いB級冒険者が?

何よりも大切なのは自分の命だろう?

なぜ?なぜ??なぜ???


その後のことはあまり覚えていない。

怒りに我を忘れた俺は大量発生した魔物を殲滅した。

いや、虐殺という方がピッタリだったのだろう。

戦場となった森はおびただしい数の魔物の死体と、魔王のごとき血塗れの姿で立つ俺に冒険者達は戦慄を覚えていた。



それから俺は姿を消した。

王都では数十年に1度の魔物の大量発生を制圧したことでパレードが行われていた。そのことが余計に俺を苛立たせた。


なぜ、討伐にいなかった勇者ミゲルがパレードに参加して、先頭に立ち手を振っているのだ?

俺はいい。元よりそういうものに興味はない。

だが、褒め称えられるべきはミゲルではない、決して!

俺を庇って死んでいったリコこそが英雄ではないのか?


俺は今までの人生で他人を助けたことはあっても、他人に助けられたことは1度もなかった。助けてくれたと思うと見返りを求められた。純粋な好意を受けたことがなかったのだ。

大人になるとそれも皆無だった。

助けられることが起きないからだ。

最強の勇者と呼ばれるようになってから、俺が助けを必要とすることがなくなったからだ。


なのに、生まれて初めて何の見返りもなく、俺の味方だと言った女を俺は助けることが出来なかった。

あの時の感情は何と言えばいいのだろう。

リコの命を奪った魔物への憤怒。

リコを助けなかった周りに対しての憎悪。

リコを助けられなかった自分への悔恨。

そしてリコを失った喪失感。


その時初めて独りでいいいと思っていた俺が、仲間と呼べる友人を欲していたことに気がついた。

だが、その友人は俺の為に俺の腕の中で死んでいった。


それからの俺は無為に時を過ごし、森の中で独り生きた。

もし生まれ変わるならば次は仲間と呼べる友人を作りたい、と微かな想いをはせながら孤独な一生を終えた。




今年は遅れることなく更新することが目標です。

理想は月に2~3話の更新です。

本業もあるので申し訳ありませんが、あたたかい目で見守ってくださると有難いです。

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