~王子は魔女に騙されない③~
第4章ー6
「おはよう」
「あっ、おはよう」
すでに起きていた同部屋の美幸はメイクもバッチリで臨戦態勢に入っていた。
それぞれ2人部屋に分かれることになり単純に年齢順で部屋分けしたのだ。
私も急いで準備しなくちゃいけなくなっだが、自分では今のヘアスタイルを完成できないためスタッフの部屋へ慌てて向かった。
美幸は一足先にリビングへ降りていった。
やっと魔女役の典江が仕上がり私がリビングへ行くと他のみんなはすでに揃っていた。
「「「「「「おはよう」」」」」」
「おはよう、遅れてゴメンね」
朝食を食べながら昨日の夜をどう過ごしたかお互いの探り合いが始まっていた。
「トップバッターは弘美ちゃんだったんでしょ?」
「で、ラストが透だよな?」
「第一印象で早くも報告があるとは予想外だったわ」
「誰が1番人気かな?」
「それより今日は何するんだろ?」
私は話を聞きながらも食事に夢中になっていた。
昨日から食事の支度をやらずとも美味しいご飯が食べられている事実が1番嬉しかった。
適当に相づちを打ちながら軽く話を流していると、食べ終わった頃に封筒が渡された。
もはや封筒係となった洋輔がまたもや読み上げる。
「じゃあ読むぞ。
『おはようございます。昨日はお疲れ様でした。さて、せっかくの週末を家の中だけで過ごすのはもったいないので、本日は全員でお出かけします。場所は動物園です。そこではフリータイムも設けていますので、それぞれ有意義な時間をお過ごし下さい』
って、やったぁ!デートじゃん」
「うわぁ、楽しみぃ~」
「動物園なんていつ以来かなぁ」
「子供連れずに動物園なんて!」
やはりバツイチの集まり、中には子持ちの参加者も数人いるようだ。
でも私ぐらいデカイ子供はさすがにいないだろう。
ま、今は37歳だけどね。
動物園かぁ~、光君と来たかったな。
そんな風に妄想にふけっていると、
「典江さん、そろそろ出掛けるようだよ」
透が声をかけてくれた。
「あっ、ありがとう」
「昨日は名探偵だったのに、普段はわりとノンビリしてるんですね」
「そ、そっかなぁ?」
魔女役や家の3人のことを考えている様子がノンビリして見えるようだ。
「じゃ、今度は遅れないようにするね」
私はその場を離れて部屋に戻った。
「ついたぁ~」
「天気よくて良かったな」
「どこからまわる?」
「とりあえず入ろう」
ロケバスを降りた一行は動物園へと入って行った。
フリータイムはランチを食べた後と発表されたので、まずは全員で見てまわることになった。
「やっぱ象ってデカイな」
「キリンも大きかったよ」
「ゴリラの動きが思ったより可愛かった」
「ライオンは寝てばっかだったな」
「猿は人見知りしないのかな?」
など、大人達が集まって浮かれた話をしている。
私の頭の中はランチ何食べるんだろう?
ってことだったけど。
それから、昨日参加者を見ていて気づいたことがあった。
誠が詐欺師なのは確定だが、どうやら私以外にも魔女がいるようだ。
魔女2人かよ…。
それも彩華でも美幸でもなく、まさかの桜。
ピアノ講師をしているおとなしそうな女性だ。
こりゃ亜眼がなかったら分からんゎ。
男性陣よ、気をつけろ!
番組は本気で魔女役を用意してきてるぞ。
私なんか単なる当て馬やん?
っていうか私って必要だった?
だが、もう1人魔女がいることは私にとって喜ばしい状況だった。
別に本気で恋愛しに来たわけでもなけりゃ、長くテレビに映りたいわけでもない。
そんな私にとって魔女が他にもいたことは早々に脱落しても大丈夫ってことだ。
となりゃ、私はプロデューサーに頼まれていた、
【喋らず、引っ掻き回す、魔女とバレない】
をやり遂げれば脱落しても問題ないはずだ。
責任を持って綺麗に退場しよう。
そうこう考えているうちにランチとなった。
動物園の中でも大きなレストランのテラスでワイワイしながらの食事となった。
ここまで自ら進んで絡みに行ってなかったが、やることが明確になった私はターゲットを決めた。
もちろん"詐欺師"の誠と俳優という淳史。
ここまで見てきて私が嫌だと判断した2人。
このどちらかを脱落させたい。
誠は言うまでもなく詐欺師だからだが、淳史は単純にウザかったのだ。
チョイ役でテレビにも出ているようだが私からすると無名に近いのに、妙にイキッテるというか偉そうなのだ。
ランチの際も今出演しているドラマの話をドヤ顔で話しだして私は肝が冷えた。
「今も出てるんだけど、絶対みんな知ってるドラマ。龍斗が主演のヤツだから」
「!!!」
まさかのいらん繋がりを持ってるヤツがいた。
「えぇ━っ、すごい!」
「どんな役なの?」
「龍斗と話したことある?」
女性陣に受けは良かったようだが、淳史本人じゃなく完全にみんなの興味は龍斗一色だ。
"虎の威を借る狐"を生で見たのは初めてだった。
ホントか嘘か分からないようなことまでペラペラ喋っていたが、その内容は私の知る龍斗ではなかった。
それに何の役か陽子が聞くと、龍斗の周りにいる脇役バンパイアの1人だった。
単なるエキストラに近い。
それをここまで上からドヤ顔で言われると、一緒に暮らしている私にとってムカつく以外の言葉が見つからなかったのだ。
「やっぱ事務所のプッシュが違うんだよな。確かにイイ男だけど、俺だってそこそこイケてるじゃん?それに龍斗ってNGもよく出すんだぜ?俺は完璧なのに。俺も大手の事務所に入れば良かったかなぁ…」
これには無意識にスキルを発動して威圧していた。
それを感じ取ったのか、淳史は急に話を切り上げて別の話題に変えたようだが、私はイライラが止まらなかった。
『龍斗がどんだけ睡眠削って台本覚えてると思ってんだ!』
『お前は台詞が少ないから完璧なんだろ?台詞の量が違うんじゃ!』
『ドラマ撮影中は夜遊びも控えて健康にも気を使ってるっていうのに』
『うちの子が事務所のゴリ押しで売れてるみたいに言いやがって!』
もう気分は親バカの母親だった。
このことがあって私の獲物は誠と淳史になったのだ。
ランチが終わりかけたところで私は、
「誠さん、良かったら一緒にペンギンコーナー見に行きませんか?」
と、言って詐欺師に声を掛けた。
「あぁ、いいよ」
簡単に詐欺師は引っ掛かった。
今まであまり目立たずにいた私が1番に誘ったことで、一斉にその場が動き始めた。
番組的にもこのフリータイムは撮れ高が期待できるところだろう。
それぞれ誘っているが、案の定オロオロしている透。
淳史はモデルの彩華を、秘書の美幸はハーフの健人を、大工の泰之と美容師の洋輔が保育士の陽子を誘って3人で動き始めた。
残ったのは透と弘美ともう1人の"魔女"桜だった。
【女性陣】
典江・・・典子の偽名、魔女、37歳と偽る。
彩華・・・モデル、タレント、35歳。
美幸・・・役員秘書、38歳。
桜・・・・ピアノ講師、もう1人の魔女、33歳。
陽子・・・保育士、36歳。
弘美・・・トリマー、34歳。
【男性陣】
誠・・・・DJ、詐欺師役、28歳。
洋輔・・・リーダー役の美容師、32歳。
透・・・・奥手な会社員、29歳。
泰之・・・大工、30歳。
淳史・・・モデル、俳優、27歳。
健人・・・ハーフの英会話講師、31歳。




