~王子は魔女に騙されない②~
第4章ー5
「久しぶり~」
「元気してたぁ?」
「よっ、おひさ」
「まだ全員来てないみたいだな」
男女が集まって騒いでいる。
そう、ここは前回撮影した別荘だ。
週末ごとにここにやって来て撮影がある。
それも今回は1泊するので、家を出る時に事情を知っている光君は良かったが、何も知らない2人が執拗に行き先を聞いてきて困ったのだ。
光君と上手く話を合わせて誤魔化したが毎週末これではいずれバレるだろう。
早々に脱落しなければ…。
まだ来てない人もいたが、リビングのテーブルに封筒が置かれていた。
男性陣の1人がそれを取り、
「とりあえず開けてみよっか?」
と、封筒を開き内容を読み上げた。
「じゃ、読むぞ。
『みなさん、今日は全員協力して謎解きをしてもらいます。この別荘の中にヒントが隠されていますので、そのヒントを元に謎を解き答えを導き出して下さい。正解すれば素晴らしいご褒美が待っています。制限時間は夕方の6時までです。では頑張ってて下さい!』
だってさ…」
謎解きかぁ。
普通に楽しめそうやん。
ゲーム感覚で遊べる方が気楽でえぇわ。
そう私が考えていると、
「最初のヒントが書いてあるから言うよ?」
さっき封筒を読み上げた洋輔が続きがあることを言う。
あるならはよ言えやッ!
と、思ったのは内緒だ。
「最初のヒントは『ここはあたたかい』だって」
「えぇ~、何それ?」
「意味分かる?」
「とりあえずあったかそうなとこ探す?」
「そうだな、手分けしようぜ」
「じゃ、美幸さん一緒に探しませんか?」
「ッ!!!」
出たッ!早くも動き始めた。
そっか。
私は謎解きにばかり目がいってたが、本質は男女が仲良くなるためのイベントなんだよね。
1番に見つけてやるって違う方向に張り切ってたゎ。
でも、誰かを誘う気ないし他の参加者の目当ての子に声掛けても悪いから、とりあえず私は謎解きに集中しよう!
ただでさえ遅れて来てない人がいるため、今の男女比は6:6のはずが4:5になっているのだ。
魔女役なんだから魔法でサクッと見つけたいところだが、そんな魔法などない。
索敵スキルで不審な物を見つけることはできるが、ヒントが書いてある封筒が果たして不審な物になるのだろうか?
というか、スキル使うのって反則?
まぁ、時間は十分あるから適当に探してみるか。
そう決めた私は周囲を索敵した。
ヒントのあたたかいに注意して見ると、暖炉の中に何かあるように感じた。
「典江さん、良かったら俺と…」
参加者の淳史が声を掛けてきたが、その前に私は暖炉に隠していた封筒を見つけた。
「あったぁ━━━ッ!」
私が大声で封筒を見つけたことを知らせると、バラバラに探していたみんながリビングへ戻ってきた。
「次は何?」
「早く開けてよ」
「典江さん、読んで」
私が見つけたのに早く開けろとムカつく言い方をしたのは、さっき誠に誘われて浮かれていた美幸だった。
お前なんか詐欺師に騙されちまえッ!
とりあえず気を取り直して、
「じゃ、読むね。
『私の性格は真面目で働きもの』
って書いてある」
「えぇ~、どういうこと?」
「誰か分かる?」
みんなゴチャゴチャ言ってるが、私は何となく気がついていた。というか、こういうのに慣れていると言った方がいいだろう。
前世で私が冒険者をしている時に宝探しの仕事も請け負っていたから。
昔取った杵柄というか、それとなくヒントのヒントを与えてみた。
「さっきのヒントって『ここは…』って場所を示してたけど、今度は『私は…』って書いてあるから物じゃない?」
私がそう言うと、
「「「なるほど!」」」
「確かに、言われてみればそうだな」
「典江さん、冴えてる」
誉められちゃったよ(笑)。
じゃあ、おまけのヒントも出そう。
「それと『私は…』って言っても実際に人間の訳ないから、『働きもの』のものは物だと思う…」
「すごぉ~い」
「名探偵じゃん!」
「じゃあ、みんなで働き物を探そうぜ」
そう言いながらまた各自散らばって行った。
さっき私に声を掛けてきた淳史は弘美に誘われて2階へ向かっていた。
そうこうしている内に、遅れていた彩華と、透、泰之が到着した。
「何やってんの?」
彩華が声を掛けてくる。
「あっ!やっと全員揃った」
私は遅れて来た3人に事情を説明してヒント探しに参加してもらった。
ちなみに参加者を簡単に説明すると・・・
【女性陣】
典江・・・典子の偽名、37歳と偽る。
彩華・・・モデル、タレント、35歳。
美幸・・・役員秘書、38歳。
桜・・・・ピアノ講師、33歳。
陽子・・・保育士、36歳。
弘美・・・トリマー、34歳。
【男性陣】
誠・・・・DJ、詐欺師役、28歳。
洋輔・・・リーダー役の美容師、32歳。
透・・・・奥手な会社員、29歳。
泰之・・・大工、30歳。
淳史・・・モデル、俳優、27歳。
健人・・・ハーフの英会話講師、31歳。
別荘にはこの12人が集まっている。
そしていい年した大人達が必死で謎解きゲームをしているのだ。テレビ的にどうなのだろう?
彩華は泰之と一緒に他のみんなのところに挨拶しに行ったが、透は私の横で居心地悪そうに動かない。
実は男性陣の中で透のオーラが1番綺麗だったので、ちょっと母性本能が働きサービスしてあげたくなった。
「透君、さっきのヒントから何か浮かばない?」
私はあえて聞いてみた。
「えっ。『真面目で働き物』ですか?」
「うん、そう。透君みたいだね(笑)」
「そ、そんなことないですよ…」
「私の想像だと『真面目で働き物』ってことは『キチンとしてて、ずーっと動いている物』だと思うんだよね」
「あっ、確かにそうかも!」
「となると、探すところは限られてくると思わない?」
「ずーっと動いている………、あっ!」
「何?何か気づいた?」
「冷蔵庫とか、時計とか?」
ビンゴッ!いいぞ透。
「それ、当たりかもよ?」
「じゃあ、僕は時計を探してみますね」
「私は冷蔵庫の中を探すゎ」
たぶん時計が当たりだろう。
だが、どの部屋のどの時計に次のヒントが隠されているかは分からない。
私は適当なところで透に声を掛け、2階の時計も全て探してまわった。
「あっ!ありました。典江さん、見つけましたよ!」
「ホント?みんなぁ~、透君が見つけたよぉ~」
2階の寝室の1部屋にあった壁時計の裏に次のヒントが貼り付けてあった。
「やるじゃん、透」
「遅れてきて美味しいとこ持ってくんだな(笑)」
「何て書いてんだ?」
「早く読んで」
「う、うん。じゃあ読むよ?」
みんなに茶化されながらも少しは馴染めたようだ。
おとなしい性格なのか、自分からは輪の中に入って行けないようなのでサービスとしては及第点だろう。
そうやってヒントを探し当てながら、最終的には謎を解き明かし無事にご褒美をゲットした私達だった。
「ちょっと緊張するね?」
「俺、こんなの着ることねぇし…」
「大丈夫!似合ってる」
「彩華と淳史はさすが板についてる」
「健人も堂に入った感じだね」
私達はご褒美として高級フレンチのディナーをゲットし、着飾った衣装で席についていた。
大工の泰之は"孫にも衣装"とからかわれていたが中々の仕上がりでよく似合っていた。
食事をしながら謎解きした1日を振り返り、思いのほか会話が弾んだ。
「でも何と言っても今日のMVPは典江さんだよね」
「「「そうそう」」」
「そんなことないよっ」
「だって10個中4個見つけたじゃん」
「正に"名探偵"だったわ」
「たまたまだって。みんなも見つけたし」
「そうだけど典江さんのアドバイスが冴えてたな」
ヤバい、張り切り過ぎたか?
目立たないようにするつもりだったのに、ついつい夢中になっちゃったよ。
「俺だけ見つけらんなかったよ、クソッ!」
誠が愚痴っている。
そりゃそうだ。
わざとだからね。
2人組のカップル優先してヒントに誘導したし、誠と別行動取ったグループに見つけさせたから。
詐欺師にはふさわしいオチだろ?
でも今日1日でメンバーはかなり親しくなれたはず。
まぁ、ご飯がおいしいゎ。
とくに日頃家事一切をこなしている私にとって、何もしなくても至れり尽くせりって最高!
後はのんびり風呂に入って寝るだけだな。
そう気楽に思っていたらデザートと一緒にまた封筒が運ばれてきた。
洋輔が読み上げる。
「じゃ読むぞ。
『本日はお疲れさまでした。謎解きゲームは楽しんで頂けたようですね。この後、皆様には第一印象で気になった相手を報告してもらいます。デザートの皿の裏に番号が書いてありますので、別荘に戻りましたら順番にスタッフのところまで来て下さい。それでは良い夜を…』
ってマジかよ?」
さっきまでの和やかな空気が一転して探り合いの雰囲気に満たされていった。
その中で魔女の私だけはデザートを存分に味わって食べていた…。
【女性陣】
典江・・・典子の偽名、37歳と偽る。
彩華・・・モデル、タレント、35歳。
美幸・・・役員秘書、38歳。
桜・・・・ピアノ講師、33歳。
陽子・・・保育士、36歳。
弘美・・・トリマー、34歳。
【男性陣】
誠・・・・DJ、詐欺師役、28歳。
洋輔・・・リーダー役の美容師、32歳。
透・・・・奥手な会社員、29歳。
泰之・・・大工、30歳。
淳史・・・モデル、俳優、27歳。
健人・・・ハーフの英会話講師、31歳。




