~【RR】ダブルアール~
第4章ー4
「見ましたよ~。あんな顔もするんですね?」
「ん?あぁ、見たんだ…」
ドラマの休憩中、スタッフから何度も声をかけられる龍斗は自分でもSNSの反応の早さに驚いていた。
「知ってます?すでにフォロワー150万人突破って!」
「それって凄いの?」
基準が分からない龍斗。
「凄いに決まってるじゃないですかぁ!」
その声を聞いて他のスタッフも近寄ってきた。
「もしかして【RR】の話してる?」
「そう!見た?」
「見たよぉ~♥️」
「「「私もぉ~♥️」」」
気づけば龍斗の周りにはメイクや衣装担当のスタッフが5~6人集まっていた。
「龍斗君は現場で見ることあるけど、Ryo様はあんまりテレビ出ないし、ライブチケットは取れないし、あれは貴重だよ」
スタッフの中に隠れRyoファンがいたようだ。
Ryoのことを"Ryo様"と呼んでいる…。
「Ryoのファンだったんだ?」
「デビューからの筋金入りですよ、私!」
「この子、興奮したのか昨日夜中に歓喜のメールを送ってきたんですよ(笑)」
「ちょっと言わないでよぉ~」
「写真1枚だけじゃん?そんなに嬉しいもん?」
「「「「「嬉しいですよッ!」」」」」
いつもは大人しい女性スタッフが、人数集まるとこんなにも遠慮がなくなるのかと龍斗は思った。
「だってRyo様ってテレビは滅多に出ないでしょ。歌ってる姿はライブDVDで見れてもクールなRyo様の笑ったり喋ったりしてる姿はレア物なんですよッ!?」
「へぇ~、そうなんだ。俺の前ではよく喋るし笑うし怒ってるけどな…」
「「「「「それ見たい~♥️」」」」」
女って集団になるとグイグイくるんだ…。
龍斗はちょっと引いた。
「あの天使のような笑顔!いつもクールなRyo様が歯を出して笑ってる写真なんて超レア!それに何ですかアレ?」
「えっ、どれ?」
「TOP画ですよ!」
典子が"絶対コレ"と言って聞かなかった2人が向き合う横顔の写真。
「あれにはキュン死するかと思いましたよ!」
「確かに!」
「私の知り合いの腐女子グループは夜中に祭りだぁ~って拡散しまくってましたよ(笑)」
「分かるぅ~、尊い!」
言ってることの半分も分からない龍斗は、
「とにかく喜んでくれたなら良かったよ」
としか言う言葉が見つからなかった。
「次も楽しみに待ってますから♥️」
「第2弾では動画も期待してます♥️」
「風呂あがりや寝顔のショットも♥️」
不謹慎なことを言った奴もいたが、おおむね好評だ。
出番になり席をたった龍斗は、
『アラフォーでも女のことはヤッパ女の方がよく分かってるんだな』
と典子のアドバイスに感心していた。
「社長、狙い通りでしたね」
ネットニュースやSNSでの盛り上がりに満足気な笑みを浮かべる中村女史の姿があった。
「インタビューの問い合わせも殺到してます」
スッと差し出した書類には問い合わせのあった出版社やテレビ局の名前がズラリと並んでいた。
「スタートダッシュは成功ということだな?」
「それも予想以上の…です」
神谷社長はタバコを取り出し火をつけながら、
「中村君…」
「はい社長、なんでしょう?」
「あの人は我が社にとって幸運の女神かもな?」
「というと?」
「Ryoの叔父の彼女が関わってからあの問題児2人は落ち着いてきたし、自分達から前向きな意見を出してきたり、うちにとって良いことずくしだと思わないか?」
そう言って神谷社長は一服した。
「確かに仰る通りですね」
秘書の中村もそれには同意していた。
2人が問題を起こしていた時は自分の仕事も余分に増えていたのだから。
「幸運の女神は言い過ぎかもしれんが、風向きがこっちに有利に働いていることは確かだ」
「それは私も実感しております」
「吉川氏とその彼女には何かと面倒を掛けているだろうから、今後も便宜を図ってやってくれ」
「かしこまりました」
そう返事をすると一礼して社長室を出た中村女史。
そして部屋の中には見るたびに増えているフォロワー数にご機嫌な神谷社長の姿があった。
マンションでは典子が菓子パン片手にラストスパートに入っていた。
「できたぁ~」
昨夜のSNS騒動で気が高ぶった私は、依頼されていた翻訳の仕事3本を徹夜で一気に仕上げていた。
「やれば出来るやん私!」
ただし2回ほど自分に回復魔法を使ったが…。
小説の方は書き溜めていた話があるので余裕だ。
これで自由な時間が作れたし、しばらくはSNSの投稿内容を考えるのと"魔女役"に集中できる。
「どんな感じかなぁ~?」
もう夕方が来ようとしていたがアカウントを開設し初投稿をした後、1度もチェックしていなかった。
開いて驚いた。
「に、200万?えっ、マジ?」
午前中に150万人を超えたフォロワーは順調に数を伸ばし、現時点で200万人を突破していた。
「さすがというべきか…」
驚きはしたが、すぐ納得もした。
日本屈指のイケメン人気俳優とアーティスト。
2人のファンの数を思えば当たり前と言うもんだ。
こうなると私も俄然ヤル気が湧いてくる。
好きな人のことが気になる知りたくなる気持ちは、アラフォーになっても分かるから。
そう、女はリアル彼氏じゃなくても鑑賞用イケメンや偶像に夢中になれる生き物なのだ。
実際に会えなくても元気に笑っている姿を見るだけでパワーがみなぎるのがファンなのだ。
「よしッ!全国のRyo&龍斗ファンよ!私がみんなにご褒美を配るからねぇ~」
35時間ほど寝ずにいた私は、明らかに思考回路がおかしくなっていたが第2弾の投稿をどんなものにしようかテンション高めに考えていた。
翌朝・・・
「見た?」
「もちッ!見たよぉぉぉ~♥️」
「かわいかったぁぁぁ~♥️」
「それッ!」
「カッコいいのは知ってたけど、2人とも普段はあんな感じなんだぁ」
「何回も見返しちゃった私!」
「分かる、私も!」
「良かったよねぇ。もう次が楽しみ♪」
同様の会話が全国の女子によってアチコチで交わされていた。
昨夜、仮眠から目覚めた典子が明らかに異常なテンションで動画を撮りまくった結果、アップされた内容がコレだ!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
①
ガチャガチャ。
玄関のドアが開く音が聞こえる。
「ただいまぁ~」
龍斗が画面に映る。
「ばぁぁぁ~」
「うわっ!何だよそれ?」
スマホで撮影している人物が龍斗の前に飛び出して何かしらしたようだ。
「ドラキュラだぁ~」
「バカじゃね?」
呆れたように言い放つ龍斗。
「でもうまいこと作ったやろ?」
地声になった相手は女性のようだ。
「これ白菜の芯やで」
「マジ?すげぇじゃん!」
「今日は白菜のミルフィーユ鍋やから」
「やった!ラッキー♪」
「食べたかったら龍斗もやってよ」
「するする!任せろって。慣れてっから俺」
「人数分作ったんや」
「…暇人かよ?」
そう言うと渡された白菜の芯で出来た牙を口に入れ、
「お前はもう俺のものだ…」
イケメンオーラ全開で今やっている連ドラの決め台詞をカメラ目線で呟いた龍斗。
「うわぁぁぁ~、やっぱカッコえぇなぁ!」
撮影者が女子代表のごとくキャーキャー騒ぐ中、龍斗が白菜の牙を折りながら
「鍋もう喰っていい?」
というショットで終わった・・・。
②
「ただいまっと…」
「「ヴァァァッ!」」
「うわぁぁっ、何だよッ!」
「「あははぁ、お帰り~」」
「何やってんだよ2人して…」
「龍斗が今ドラマでドラキュラしてるから白菜で作ってみたんや」
「何だそれ?」
いきなり驚かされたRyoが呆れたように言う。
「あのさぁ~、龍斗がやってるのはバンパイア。確かドラキュラはバンパイアの中にいた貴族の名前だぞ?お前の役ってバンパイアの王だろ?間違ってるぞ」
「冷静なご指摘どうも…」
「まぁいいじゃん、細かいことは…」
顔にモザイク代わりのスタンプを貼られた女性がふてくされ、龍斗が軽く流している。
「それより早く鍋喰おうぜ。腹減ったよ」
「まだ食べてなかったの?」
龍斗とRyoが鍋を囲んでテーブルに座る。
「"ピー"さんが久々に4人揃うから鍋にしたんだし待ってやろう…って言うからさ」
「えっ!そうだったんだ…」
もう鍋をつつきはじめている龍斗と驚いた表情のRyo。
「最近ずーっとスタジオに詰めてたやん?ちゃんと食事取ってないやろ?だから野菜もいっぱい取れる鍋にしたんや」
スタンプの女性がRyoの皿に鍋の具材を乗せている。
「あ、ありがと…」
恥ずかしそうにお礼を言うRyo。
「それに鍋は大勢でつついた方が楽しいやん♪ちなみに白菜のミルフィーユ鍋と野菜たっぷりの寄せ鍋2つ作っとるから」
「マジかッ!"ピー"さん、やるじゃん♪」
「"ピー君"も食べてよ。もう撮るのは後でえぇから」
龍斗とRyo以外に男女2人がいるようだ。
「じゃあ…」
「「「「いっただきまぁ~すッ!」」」」
最後に鍋2つがドアップで終わった。
③
「喰ったぁ~。ハァ~うまかったぁ~」
龍斗の満足そうな顔が映る。
「ごちそうさま」
隣できちんと手を合わせるRyo。
「龍斗、ちゃんと水につけといてよ」
「分かってるって」
スタンプの女性に言われ、食べ終わったものを龍斗が片付けている様子が映る。
「あっ、ついでにアイス取って」
アイスを所望するスタンプ女性。
「まだ入んのかよ?」
「別腹やん」
そう言う女性にカップのアイスを持ってきた龍斗が近づいてくる。
「開けてやるよ」
「おっ、サンキュー」
と言ったその時。
「あぁ━━ッ!なんでアンタが食べるんッ!?」
「へへへ、味見?毒味だったかな?」
叫び声をあげた女性に追いかけられた龍斗がイタズラっ子の表情で逃げ回っている。
「龍斗、いい加減にしとけよ」
笑いながら酎ハイを飲んでいるRyoがいた。
それもリラックスしているのか、シャツのボタンが全開で美しい腹筋まで映っていた。
「龍斗、それ"ピー"ちゃんが大事に取っといた期間限定アイスだぞ。後が怖いぞぉ?」
撮影者の男性の笑い声が聞こえる。
「えっ、それヤベェじゃん」
焦る龍斗。
「返せぇ━━━━ッ!」
女性の怒鳴り声が響いた後、画面は真っ暗になった。
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この日もワイドショーは【RR】の話題で持ちきりだった。
ネットニュースでも上位に【RR】、Ryo、龍斗が並び、なぜか白菜の牙までトップ10入りしていた。




