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~それぞれの思惑~

第4章ー2





「ただいまぁ~」

番組のために遠出をして精神的にも肉体的にも疲れ果てた私は玄関で蚊の泣くような声を出した。

「あっ、お帰り~。初日どうだった?」

久々の日曜の休みで(コウ)君は家にいた。

「大変だったわぁ~。マジで(コウ)君恨むゎ」

「ゴメン。ホント悪いと思ってるから…」

申し訳なさそうに両手を合わせて頭を下げる(コウ)君に癒されるぅ~。

「これから毎週末に撮影があるんでしょ?大変だと思うけど体に気をつけて頑張って!」

優しい(コウ)君。

「で、どうだった?典ちゃんのお眼鏡にかなうようなイケメン男子いた?俺としてはまず他の男が"典ちゃん"って呼ぶのヤダけどね。俺ですら"典ちゃん"って呼ぶの最近やっと慣れてきたとこなのに…」

素朴なヤキモチを焼いてくれるところも好き。

(コウ)君よりイイ男が簡単にゴロゴロおるはずないやん!」

荷物を下ろしながらそう私が答えるとあからさまにご機嫌になるところも可愛い!

「それに一緒に暮らしてるメンツを考えてん?日本屈指のイケメンらと暮らしてるのに、そこら辺の素人見てどうにかなると思う?」

「まぁ、そうだよね(笑)」

2人して苦笑いしてしまった。

「で、典ちゃんはそのイケメン2人に本当に内緒にしとくつもり?」

「ッ!それ絶対に秘密やで!」

「俺は早かれ遅かれいずれバレると思うけど?」

「そん時はそん時!もしかしたらバレる前に脱落するかもしれんし、気づかない可能性もあるやん?」

「そっかなぁ~?アイツら勘はいい方だよ?」

()なこと言うなぁ…。

「とにかくあの2人には内緒にしとってよ!」

「はいはい、分かったから」

笑いながら(コウ)君は私の代わりに作ってくれていた晩ご飯をテーブルに並べてくれた。



同じ頃、連ドラの撮影現場にいた龍斗が休憩の合間にRyoに電話をしていた。

「おっ、Ryo。今大丈夫か?」

「どした?今撮影中じゃね?」

アルバム製作の為、最近スタジオにこもっていたRyoはここ数日マンションにも帰っていなかった。

「ちょうど休憩中。それより最近お前が家に帰ってこないから連絡したんだよ!」

「あぁ、(ワリ)い。でも(リュウ)も今は台本覚えて寝るだけだろ?お互い追い込み中だし」

「そりゃそうだけど…」

「お前のドラマの主題歌は俺の曲を使うって流れがやっと当たり前になってきたし、それを含めたアルバムをドラマ終了後に発売すんだから俺だって時間ないんだぜ?」

「それは分かってるって!」

「お前ドラマも折り返したし、撮り終わってないの残り何話だよ?後ちょっとでクランクアップなんだから頑張れよ。まさか淋しいとか言わねぇよな?(笑)」

ちょっと小馬鹿にした言い方をするRyoに

カチンときた龍斗はサクッと要件を伝えることにした。

「典子さんが最近変なんだよ」

「えっ?」

「もっと言うと(コウ)さんもおかしい。なんか2人とも隠し事してる感じがするんだよな…」

「ちょ、どういうことだよ?」

「お前、最近会ってないから知らないだろ?俺も夜中に帰って寝てるからマンションに戻っても中々顔を合わせてなかったんだよ。だけど、おとつい久しぶりに典子さん見たら…」

「見たら、何だよっ?」

「茶髪にパーマ当ててた」

「はぁ?」

「いや、だからぁ~、髪型や服装が急に変わってたんだよ!いかにも男受けしそうな感じに…」

「男受けって、今更か?」

Ryoは数日会っていない典子の今までを思い出しながら、男受けを狙ってイメチェンした姿を想像してみた。

「・・・無理だろ!あの典子さんだぞ?」

想像できなかった。

「そう言うと思ったよ。だけどマジなんだって!」

Ryoに信じてもらえないことが龍斗に火をつけた。

(コウ)さんの典子さんへの態度がとにかく変なんだよ!弱みでも握られたか?」

「それ、どういうことだよ?何で(コウ)さんが?」

叔父の変化には敏感なようだ。

「いや、だから分かんねぇけど何かあったんじゃね?いつもに増して典子さんの(コウ)さんに対する態度がデカイし、(コウ)さんも典子さんに気つかってるみたいだし。さっき(コウ)さんに連絡したら、典子さん出掛けてて晩ご飯を(コウ)さんが作ってたんだぜ?」

「何で(コウ)さんが?今日の日曜は久しぶりに休みって書いてたぞ?」

リビングにある4人のスケジュール表でしっかり叔父の予定はチェックしている人気アーティスト。

これにはさすがの龍斗もちょっと引いた。

だが、今はそこじゃない。

「そうなんだよ。せっかくの(コウ)さんの休みに典子さんが1人で出掛けて、(コウ)さんは留守番っておかしくね?出掛けるなら一緒だろ?」

「なのに1人で男受けしそうな格好をしてか?」

「そう!それだよっ!まさかとは思うけど正月に元嫁のことでかなり怒ってたじゃん?元嫁から連絡あったこと(コウ)さんが内緒にしてたから、典子さん仕返しで他の男に…」

「なんだとッ!!」

見当違いな想像で話に花が咲く残念なイケメン2人。

「いや、分かんねぇよ?実際のところ分かんねぇから連絡したんじゃんか」

電話の向こうのRyoが感情的になっていることを感じ取った龍斗は、少々ヤバいなと思い話題を変えた。

「おっと、そろそろ休憩終わるから切るな。とにかく一度お前も帰って来いよ。根詰め過ぎて倒れないよう気を付けろよ?じゃあな」

「おい、ちょ、待てよ!」

電話はすでに切れていた。

とにもかくにも(コウ)さんに会いに家へ帰ろうとしたRyoをレコーディングスタッフが必死に止めることになったのは全て龍斗のこの電話のせいだった。

また、この後に作られたアルバム収録曲は怒りを爆発させたようなバリバリのRockで、女性ファンが多いRyoには珍しく男性ファンを取り込むきっかけとなる曲が完成する。ついでにライブで盛り上がる定番曲となることを今はまだ知る由もなかった…。



龍斗がRyoに電話した1時間ほど後・・・

「どうしますか社長?」

相変わらずデキる女の雰囲気が溢れだしている秘書の中村さんが神谷社長に問いただしていた。

社長室にいたのは神谷社長に中村秘書、そしてマネージャーの郷田の3人だった。

「別にいいんじゃないか。今や当たり前だろ?」

「ですが、何かあればすぐ炎上してしまいますよ?誰がチェックするんですか?」

気楽な社長に慎重な秘書が歯止めをかける。

「でもあの2人ですよ?絶対話題になりますって!」

マネージャーの郷田が食い下がる。

「本気で言ってます?」

射るような眼差しを郷田に向ける中村秘書。

「いや、、、私も最初は反対したんですよ。でも2人揃って珍しくヤル気満々だし、今やSNSは避けて通れない発信ツールとなってますから」

「確かにそうですが…」

この会社の売上約半分を叩き出している稼ぎ頭2人がやりたいと言っている以上、無視するわけにはいかないが今までの行動を鑑みて安易に了承するわけにもいかなかった。

中村秘書の脳内はフル回転でリスクとリターンを天秤にかけていた。

「禁止しても勝手にやり始めたら意味ありませんが、やり始めるにしても誰かが管理しないと暴走する可能性もありますよね」

「うむ…そうだな」

社長は秘書の言葉を静かに聞いていた。

「SNSへ投稿する前にチェックする必要があることは納得いただけますよね?ではその役目は誰がやるんでしょう?マネージャーであるあなたですか、郷田さん?」

「私にやれと言うならやりますが…」

「無理でしょう!」

速攻で否定された。

「仕事中ならまだしも、プライベートまで管理できますか?だいたいSNS自体が昔でいう日記の進化版のようなものなのですから。寝る前に投稿されたら内容のチェックなんてできるはずがありませんよね?」

「確かにそうですが…」

理路整然とした説明をされ気弱になる郷田だった。

「だからと言って"やらない"という選択肢はないと私は思いました」

「えっ!?」

思いがけない答えに驚く郷田。

「ドラマやアルバムの発表が本人から直接メッセージとして届くなら素晴らしい宣伝効果が得られることは確実でしょう。また今以上のファン獲得に繋がる可能性も大です。何より対宣伝費が格段に浮くことは目に見えてます」

どうやらリスクよりハイリターンが見込めるという結論に至ったようだ。

「SNSを始める上で2人にいくつか条件を提示しましょう。その条件を飲めばOKだと、こちらが譲歩したように仕掛けるのです。会社からすれば好感度アップに繋がるツールは真っ先にやらせたいものです。ただ今までの2人にとってSNSは諸刃の剣でした。ですが最近の現場での態度やにプライベートの落ち着き具合から見て、始めるなら今が絶好のタイミングかもしれません!」

まさか中村女史からの追い風がくるとは思ってもいなかった郷田は小さくガッツポーズをした。

「ではSNSに関して…」

郷田が確認を取る前に、

「いいだろう、許可しよう」

神谷社長からアカウントの開設許可が降りた。

「ただし、自分勝手にされると困るので中村君と相談して条件をいくつか詰めてもらうぞ?」

「はいっ、もちろんです!」

「かしこまりました。早急に条件をピックアップしてまいります」

郷田はホッと胸を撫で下ろしていた。

最近聞き分けも良くなり現場でも上手くコントロールでき始めたところなのに、まさかのダメだったと伝えようもんならまた以前の操縦不能な2人に戻りそうで内心ヒヤヒヤしていたのだ。

「社長、本当にありがとうございます!」

郷田は深々と頭を下げると足早に社長室を出て行った。

早速、Ryoと龍斗に教えてやらなきゃな…、これでアイツら今にも増して俺に感謝するかもな…と鼻高々にスマホの操作をし始めた。



吉岡典子、42歳。一度死んで異世界で転生し、その異世界で亡くなった魂が元の体に戻るという、とてつもないイレギュラーな体験をした主人公。スキル持ち。二人の子供を持つバツイチのシングルマザー。現在、吉川光輝と"結婚しない"ことを条件にパートナー関係にある。


吉川光輝、37歳。あだ名はヨッシー&(コウ)君。バツイチのゲームクリエイター。身なりに無頓着でちゃんとしたらモテるのに敢えてオタクを装おっていたイケメン。物好きにも典子に惚れた奇特な男。


吉川涼也、24歳。Ryoと言う名前で活躍する超人気アーティスト。国民栄誉賞を与えたいイケメンNo.1。忙しかった両親の代わりに幼少の頃から親代わりに育ててくれた叔父の光輝を(コウ)さんと慕っている。吉川光輝の甥で横山龍斗の親友。


横山龍斗、21歳。若手No.1のイケメン俳優。テレビ、CM、映画と人気抜群の国民的スター。ただし15歳より前の過去は謎に包まれている。スキャンダルも人気のうちと流した浮き名は数知れず。それすら人気に繋がる、吉川涼也とは親友。



郷田さん。独身貴族の龍斗のマネージャー。


中村さん。Ryoと龍斗の所属する会社の社長秘書。


神谷明。Ryoと龍斗が所属する会社ライトエンターテインメントの社長。



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