~王子は魔女に騙されない①~
この辺りから本格的にワチャワチャし始めます。
第4章ー1
年が明けて実家でのワチャワチャした休みは終わり、また東京での日常が始まった。
実家での休暇は思ったよりのんびりでき た。
龍斗は"図書室"に入り浸り大人しく漫画を読みふけっていたし、Ryoは意外にも亘と意気投合していた。
私にとってRyoが仲良くする人間を見たのは光君、龍斗に続き我が息子で3人目だった。
お陰で私は光君と地元でまったり&のんびりとデートできたし、子供達にも思いがけず楽しい思い出を作ってあげられた。
中でも1番驚いたことは龍斗が亜紀と思いの外仲良くなったことだ。
漫画ばっかり読んでいた龍斗に飲み物やおやつを図書室まで運んでいるうちに、お勧めを教えたりお互いの好きな場面を再現してふざけたりして仲良くなっていたようだ。
アイドル好きの娘がはしゃぐのは予想がついたが、龍斗が亜紀を気に入ったのは意外だった。
最初は女癖の悪い龍斗を心配したが、まさかの気に入りようで実の兄より亜紀を可愛がっていた。
普段周りには女優やモデル系美女、可愛いアイドルなんかが群がっている龍斗にとって、田舎者で素朴なノーメイクの女子高生は新鮮だったのかもしれない。
年も近いし話も合ったようで亜紀も緊張が解け、冗談を言ってふざけあったりしていた。
帰る頃にはお互い"亜紀"、"龍斗"と呼び捨てで話すようになっていたし、自分のことを棚にあげて、
「変な奴に引っ掛かるなよ!」
といらぬ心配までしていた。
今のところリアル彼氏よりアイドル好きな亜紀にとって龍斗からのこの注意は必要ないものだったが、私からするとアンタ見た後にそこら辺の男見てもジャガイモだろう…って感じだった。
でも龍斗からすると本気で妹を心配するようなものだったんだろう。
亘の「ナイナイ(笑)」というチャチャに、
「何かあったら俺に連絡してくれよ。お互い"兄貴"として亜紀を見守らなきゃな!」
と、変な約束を交わしていた。
光君いわく、私達の中で1番末っ子の龍斗にできた初めての年下の"身内"だから可愛くて仕方ないんだろう…ってことだった。兄貴ぶっている龍斗が年相応に見えて私も微笑ましかった。
そして現在。
東京に戻った私達4人はお互い自分の日常に明け暮れていた。
年明け早々に龍斗は連ドラの撮影に入ったし、Ryoは新しいアルバム製作に没頭していた。
光君は春に発売予定の新しいゲーム開発で大忙しだったし、私は私で夢日記を元にした異世界小説も順調に連載が続いていたし、翻訳の仕事も以前に増して忙しくなっていた。
スキルのお陰で翻訳できる言葉が多い上に、自然な会話を訳せることで重宝されていたのだ。
だが、今年の私はそれ以上に神経を使う仕事が控えていた為、いつも以上に締切前に原稿を仕上げ、できるだけ先の仕事も片付けに入っていた。
光君の頼みで出版社とのしがらみもあり断れなかった仕事…。
配信サービスの番組出演だ!
最近流行りの"恋愛リアリティーショー"の女性陣の出演者として参加するはめになったのだ。
【王子は魔女に騙されない】という2番煎じや3番煎じ感満載のシリーズ番組だが、私は密かに魔女役での参加となっていた。
どうやらバツイチのアラフォー女子とバツイチ年下のイケメン王子が恋愛バトルを繰り広げる番組らしいのだが、その中に私みたいな恋愛する気のない魔女が紛れていて引っ掻き回すのが人気のようだ。
誰が魔女か分からない中、年下バツイチ王子は運命の相手を探し出せるのか?というところが売りのようだが、私からすれば"なぜ狭い世界で見つけようとするの?"って感じだった。
ましてや偽物の参加者がいることが分かっているのに、そんなリスクを背負ってまで恋愛をするなんて疲れないか?
まぁ、参加者の中にはあからさまに売名行為で参加している人もいるようだが…。
1月も後半になった頃、私は郊外の別荘にやって来ていた。
今日から番組の撮影がスタートするのだ。
個別の事前撮影は済ませていたが、私は髪を染められ"ゆるふわパーマ"までほどこされ、普段着たことのない衣装を番組から準備されていた。
そして、素の私を知る番組プロデューサーからの発注は、
○できるだけ喋らず大人しいキャラで!
○密かに引っ掻き回して!
○何より魔女とバレないように!
という3点だった。
「ホントに大丈夫なんですか?」
いまだに心配な私は番組スタッフに尋ねた。
「素人とはいえ私、全国放送で顔晒してますよ? 」
「大丈夫ですよ。まるで別人ですから」
「まぁ、確かに…」
鏡に映った私は自分自身でも驚くほど違って見えた。
誰かが、女は髪型と化粧と着てるモンで変わるとはよく言ったものだ。普段、使ったことのない色のアイシャドーや口紅。選ぶはずのない服に自分では決して仕上げることできないヘアスタイル。
プロってすごいなぁ…と感心していた。
「頭数揃えるための参加って約束なんですから、申し訳ないですけどバレたら脱落ってことで許してくださいね?」
弱気な私が愚痴っていると、
「分かってますって。吉川さんからも念を押されてますし、こちらとしても魔女役が足りなかったものですから無理なお願いだと重々承知してますので…」
「私としては早々に脱落したいのが本音なんですけど、一応やれるだけのことはやりますから」
「よろしくお願いします」
そんなやり取りをして本番が始まった。
一人ずつリビングに登場するのだが、バツイチ男子達はすでに揃っているようだ。
6対6の恋愛バトル。
まぁ、私はジョーカーみたいなもんだし気楽に参加するけど、他の参加者は年齢のこともあってか割りと真剣モードの人もいるので邪魔はしたくない。
けど、私の仕事は引っ掻き回すこと。
このミッションはなかなか難しい。
そうこうしている間に私の番が来た。
私は5番目の登場だった。
スタッフの「どうぞ」の声でドアを開け参加者の待つリビングへ入っていった。
たぶん放送時にはテロップとか入ってて名前や年などがBGMと共に流れてるんだろうなぁ…と、妙なことを気にする私がいた。
『おぉ~、いるいる』
心の中でツッコミが炸裂する。
当たり前だがリビングにはバツイチの男女がいて、新たに参加してきた私に注目が集まる。
『うわぁ~、こっち見んなよ』
バレやしないか気が気でない私。
「初めまして。典江、37歳です。番組に参加できて嬉しく思っています。よろしくお願いします!」
はい、偽名に年齢詐称です。
名前はまだしも年5つもサバ読むかぁ?
ディレクター考え甘くない?
当然ながら男性陣は興味津々で見てくる。
が、女性陣が怖かった。
久しぶりに亜眼の索敵スキル使ったゎ。
女って怖い、、、身を持って知った瞬間だった。
私の前にいる4人の女性達はみな笑顔でよろしく~♪などと言っているが揃いも揃って顔とオーラが一致していないのだ。
ドス黒いオーラだったり、赤く燃え盛った戦闘モード寸前のオーラだったり、黒紫って感じの澱んだオーラは呪われるんじゃないかと本気で思った。
まだ赤いオーラがマシに思えた。
単純に私をライバルと見てやる気を出しているのだろう…応援するよ、あなたを。
そして、最後の参加者が登場した。
「初めまして。彩華、35歳です。モデルとタレントをしています。素敵な出逢いがあることを期待してますので、よろしくお願いします!」
『う~わっ!派手ッ!ママかよ?』
颯爽と登場した彩華の姿は"主役は私よ"と言わんばかりの派手なメイクと衣装だった。
銀座のクラブに勤めていても不思議じゃないぞ?
いや、実は勤めてるのに嘘ついてないか?
と、ツッコミたくなる容貌だった。
一応番組となってはいるが、いわゆる"合コン"の初顔合わせみたいな場にこれだけ自己主張の強いファッションでよく来たもんだと逆に感心してしまったぐらいだ。
番組的には盛り上がるだろう。
見るからに派手でテレビ向きなキャラだから。
だが意外にも彼女のオーラはポップな淡いピンク色で本気でウキウキわくわくしているようだ。
女って分かんねぇ…。
って、私も女だけどさ。
全員の自己紹介が済んだところで、ふと我に返って男性陣を索敵してみた。
『ん?あの子、おかしくないか?』
6人中、1人だけオーラが違う子がいる。
子っていうのもおかしな話だ。
女性陣の年齢もそうだが、男性陣も20代後半から30代前半で集められているのだからいい大人だ。
その中に1人だけ澱んだオーラを醸し出している男がいるのだ。
昔、私がいた世界の盗賊や盗人、悪徳商人などから出ていたオーラと同様に見えた。
『まさか、今回って女側の魔女だけじゃなく男側にもジョーカーいんの?』
と、密かに動揺する私。
すると、番組MCから発表が!
「さぁ、始まりました!
【王子は魔女に騙されない】ですが、今回は今までと違ったルールが追加されています。」
おいおい、まさかとは思うけど…。
「なんと今回は魔女だけでなく男性陣に詐欺師も紛れ込んでいます!」
「「「「「えぇぇぇ━━━ッ!!」」」」」
ヤッパリかよ~(泣)。
一応周りに合わせて驚いた顔してるけど、詐欺師もう分かっちゃったよ、ゴメン!
アイツだよね?
確か自己紹介でDJやってるって言ってた"誠"って子。
腹黒そうなオーラ全開だもん、バレバレやん。
私の心の呟きを無視して番組はドンドン進行していく。
「魔女と詐欺師が何人紛れ込んでいるか分かりません。そんな状況の中、王子は真実の愛を見つけることはできるのでしょうか?それではスタートですッ!」
男女とも戸惑いどよめくリビングの中、私は心の中で大きな溜め息をついた。
吉岡典子、42歳。一度死んで異世界で転生し、その異世界で亡くなった魂が元の体に戻るという、とてつもないイレギュラーな体験をした主人公。スキル持ち。二人の子供を持つバツイチのシングルマザー。現在、吉川光輝と"結婚しない"ことを条件にパートナー関係にある。
吉川光輝、37歳。あだ名はヨッシー&光君。バツイチのゲームクリエイター。身なりに無頓着でちゃんとしたらモテるのに敢えてオタクを装おっていたイケメン。物好きにも典子に惚れた奇特な男。
吉岡亘、22歳。
ゲーム好きの典子の息子。普通の会社員。
吉岡亜紀、17歳。
しっかり者の典子の娘。アイドル好き。
吉川涼也、24歳。Ryoと言う名前で活躍する超人気アーティスト。国民栄誉賞を与えたいイケメンNo.1。忙しかった両親の代わりに幼少の頃から親代わりに育ててくれた叔父の光輝を光さんと慕い、現在一緒に同居中。吉川光輝の甥で横山龍斗の親友。
横山龍斗、21歳。若手No.1のイケメン俳優。テレビ、CM、映画と人気抜群の国民的スター。ただし15歳より前の過去は謎に包まれている。スキャンダルも人気のうちと流した浮き名は数知れず。それすら人気に繋がる、吉川涼也とは親友。
リコ、享年19歳。亜眼持ちのB級女剣士。
唯一使えた魔法は簡単な回復魔法。




