~家族団らん①~
第3章ー7
「ただいまぁ~」
やっと着いた愛しの我が家。
新年早々、あんな騒ぎに巻き込まれるなんて幸先不安になるわ…。
亜紀は芸能人2人が気になるみたいで我先にとリビングへ走り込んでいた。
行くなら荷物も持って行けよ…。
「亘、悪いけどそれ冷蔵庫に入れて」
「うん、分かった」
力仕事はやはり兄ちゃんやな。
缶ビール1ケース買って来たし急いで冷やさなきゃ。
あの2人がいるとなるとアッと言う間に無くなるって簡単に予想がつくわ。
「典ちゃん、おかえり」
ソファーでくつろぐ光君が出迎えてくれた。
が、問題児2人の姿が見えない。
「あれっ?あの2人は?」
「親子だね。亜紀ちゃんも1番にそれ聞いたよ(笑)」
私の問いに笑いながら顎でクイッと居場所を示す。
それは我が家1番の自慢の部屋。
亘に指示を出し、荷物を冷蔵庫へ運ばせると私は勢いよくドアを開けた。
「アンタらせめて出迎えくらいないん?」
その部屋は我が家において"図書室"と名付けられている漫画の溢れかえった部屋。
四方の壁には全て作り付けの本棚があり、部屋の真ん中にあるソファーベッド以外は本棚が乱立しているネットカフェのような部屋。
「あぁ、おかえり」
「典子さん、この部屋すげぇな♪」
淡々と出迎えの言葉を発するRyoと興奮気味の龍斗。
そんな中、ソファーで仲良く並んでいる2人にドリンクとつまみを運ぶ我が娘。
漫画読んどんのかいッ!
まぁ、静かでえぇけど。
つうか、まず聞くことあるし!
何当たり前のようにまったりしとんじゃコラッ!
「ちょっとアンタらッ!まず説明してくれるかなぁ?どういうことなん?」
夢中で漫画を読んでいる2人を図書室から引っ張りだして、ことの経緯を尋ねた。
「だからぁ~、新年のサプライズだったわけ」
Ryoがふてくされた顔で言った。
その顔ですら見とれてしまう最強の顔面。
娘の目はずーっと♥️だ。
すると隣の龍斗も続いた。
「俺が言ったんだよ。今年の正月は郷田さん達も安心して休み取るだろうから、俺らも帰省について行ったら面白いんじゃねぇ?って。ついでにサプライズで驚かそうぜって…」
「あんたらねぇ…」
呆れた。自分たちの価値が全然分かってない。
こんな田舎にイケメン芸能人のツートップがいきなり現れたら大騒ぎになるの目に見えとるやん。
つうか事故とか起きんで助かったわ。
日頃のマネージャーの苦労が身に染みて分かったゎ。
いつも問題児に振り回されて大変なんやろなぁ…。
まぁ、他のスタッフもいるやろうから何とかなってるんやろうけど・・・
「ちょっと待って!」
私は最悪のことが頭をよぎった。
「…もしかして、正月中ずーっとここに泊まる気じゃないよね?ホテル取ってるんやろ?」
頼む!取ってると言ってくれッ!
「ホテルなんか取ってないよ。」
Ryoが冷静に答える。
「典子さんち、こんだけ広いんだから俺ら2人ぐらい増えても大丈夫っしょ?」
龍斗からのまさかのダメ押し。
「典ちゃん、俺からも頼むよ。コイツら放っておくと心配が増える一方だから、一緒にいた方が無難だと思うんだ」
光君の一言が決定打だった。
私の"のんびり寝正月"計画は無惨にも崩れ去り、休みが終わるまでマネージャー2人の代わりをしなければならないということが確定した瞬間だった。
「亜紀、それ持っていって」
「こっちでえぇん?」
「それはあっちのテーブル」
私と娘は晩御飯の準備に追われていた。
本当は正月くらい家族と一緒に外食三昧して、こたつでゴロゴロとテレビ見ながら光君とまったりするつもりだったのに。
その予定は2人が来たお陰ですべて狂ってしもうたやんかぁ。
「典ちゃん、せっかくのお正月なんだからゆっくりしなよ。食事は外に食べに行けばいいんだし」
光君が気をつかってくれる。
が、分かってない。
「あのねぇ、光君。ここは東京と違って滅多に芸能人を見ることのない田舎なんやで。その上、正月でどこ行っても人がいっぱいだっていうのに、2人連れて出掛けようもんなら食事にありつく前に今日のお参りの二の舞やで?」
「あっ!」
「分かった?」
「…なるほど。うん、そうだね」
こういう天然なところも可愛いんやけど、光君は身内やから警戒心が薄いわ。
Ryoと龍斗やで!
パニックになるわッ!
実際、昼間になったばっかりやん。
「とにかく東京に帰るまであの2人はうちから出さずに監禁状態にしとかなヤバいやろ?」
「ほな、ずーっとうちにおるん?」
亜紀は興奮気味に食いついた来た。
「出せると思う?」
「ううん」
取れるんじゃないかってぐらいの勢いで左右に首を振る我が娘よ。
勇気があるならどっちかと買い物にでも行ってみろよ?パニックが起きて地獄を見るわ。
「マジかぁ、、、うちにRyoと龍斗が、、、」
亜紀が浮かれ過ぎてるようだ。
さっきから「どうぞ」とか「これも」とか、話したいけど興奮と緊張で会話にはなってない。
だが、いつもはあまりやらない手伝いを進んでやっているのは確実に2人のいる空間にいたいからなのは見え見えだ。
亘は光君とリビングのテレビでゲームしてるし、Ryoはそれをなぜか嬉しそうに横で見てる。龍斗は漫画に夢中だし…。
そんな中、亜紀が私に恐る恐る聞いてきた。
「スマホで撮ったらダメかな?」
「はぁぁぁ?」
私の返事を聞く前に口調でアウトと察した娘は、
「無理やわな、そりゃそうだ」
と、慌ててスマホをポケットに入れた。
「いいよ、別に」
「えぇ━━━ッ!マジでぇ━━ッ!」
「アホかぁぁぁッ!」
さっきまでゲームを見ていたRyoが私達親子の会話を耳にして、まさかのOKを出したもんだから私と娘は真逆の反応をした。
「泊めてもらうんだから写真の1枚や2枚、別に構わないけど?」
「やったぁぁ━━━ッ♥️」
「待て待て待てぃッ!」
喜ぶ娘をよそに私が止めに入った。
「亜紀、ダメやで。Ryoも簡単にOKせんといて」
「何でダメなん?Ryoさんがえぇって言うてくれとるやん?」
私達のやり取りに光君や龍斗も気づいたようで話に参加してきた。
「どしたの?」
光君がRyoに尋ねた。
会話の流れを説明したRyoは、
「それぐらい気にしなくていいのにね」
と、愛想笑いしながら娘に話しかける。
「それなら、俺も一緒に撮るけど?」
龍斗まで参戦してきた。
「ありがとうございますぅ~♥️」
亜紀はもうその気だ。
「あかんって言いよるやろッ!」
私は亜紀を怒鳴りつけた。
「アンタ、簡単に"写真撮って"って言いよるけど分かってないで。どうせ撮ったら自慢気になんぞかんぞ載せる気なんやろ?これが街中でたまたま見かけて撮ったんならセーフやで。でも個人的なコネで撮った写真が出回ったら大変なことになるんやで?ちょっとはそのこと考えたん?」
「あっ…!」
私のあまりの勢いに全員が押し黙った。
「速攻で炎上して袋叩きにあって、身元バレて嫌がらせされるん目に見えとるやろ」
「そんなことは…」
「あるんやッ!」
龍斗の反論を即座にさえぎった。
「アンタらは自分たちの影響力が分かってない。自覚しなよ!アンタら2人は一般人からしたら手の届かないスターなんやで?」
「いやぁ~」
「龍斗、褒めとんちゃうで。客観的な事実を言いよるだけやから」
そう私に言われ、口を尖らせて拗ねる龍斗の顔はやはりカッコ可愛い。
だが、ここは甘やかさずにいかなければ。
「2人がうちの娘に優しくしてくれるのは正直嬉しいし、亜紀が一緒に写真撮りたい気持ちも分かるで。でも後のこと考えた?騒ぎになってからでは遅いんやで?昼間のこともう忘れたん?」
そう言ってやっと亜紀はハッとしたようだ。
「お母さんが初めて空港で龍斗に会った時の話したよね?あん時も龍斗が"お礼に"って言ってくれたけど、お母さんチャントわきまえて握手だけしてもらった。そりゃ一緒の写真撮れたらメッチャ嬉しいけど、ツーショット写真なんか撮ったらアッと言う間にネットで拡散されるやろ?」
「…ゴメン」
亜紀のテンションが一気にしぼんだ。
「気持ちは分かる、分かるで!だけど写真じゃなくて、目に焼き付けろ!記憶に焼き付けろ!心に焼き付けろッ!」
そう私は言い放った。
「じゃ、全員で撮ろうよ」
「えっ?!」
急にそう言った光君に亜紀と私は驚いた。
「で、涼と龍斗のスマホで撮るのならいいんじゃない?亜紀ちゃんがアップしたらファンの子の嫉妬で炎上するかもしれないけど、逆に"家族団らんに参加しました"っていう感じで本人がアップするなら大丈夫でしょ?」
「光さん、さすがッ!」
「あったまイイ~」
なるほど・・・
亜紀が自慢気にアップしたらやっかみで炎上するだろうけど、大好きな芸能人が自分達と同じ一般ピープルと気軽に写真撮ってくれたら、"羨ましい"とか、"やっぱり優しいんだ…"とか、"もし自分が会えたら私も…"とか、思うかも?
確かに亜紀が撮るよりはマシかも。
「せっかくのお正月なんだし、記念に撮ってもいいと思うよ。『叔父さんちの家族と』ってコメントつけたら大丈夫だよ」
すると私以外の全員が、
「そうだよ」
「光さん、スゲェ」
「ヨッシーありがとう」
「なら大丈夫やろ、お母さん」
みんな私より光君の意見を聞くよね?
これも人徳のなせるわざなんかな?
まぁ、えっかぁ~。
初めて全員揃ったことやし、何より新年明けましておめでとうってことで。
「分かった、分かったから」
私がそう言うと、亜紀がキャーッと歓声をあげて自撮り棒を取りに行った。
やれやれ…という私の隣に光君が近づいてきて、
「ありがとう典ちゃん」
って、逆やろ?
こっちこそお礼を言う立場やのに。
「ううん、こっちこそありがとう。私が頭ごなしに反対したんで場の空気が悪くなりそうだったのに、光君のおかげでこんな風に正月を迎えられてホンマ助かった。子供らも喜んどるし私も嬉しいわ」
「なら良かった」
そう言いながら私に微笑む光君。
その時しみじみと思った。
「私ってつくづく幸せ者やなぁ」
「ん?」
「光君のお陰で私はいいことづくめで幸せやなぁ~ってこと」
「何それ?俺こそ典ちゃんのお陰で幸せだよ。出会う前からは想像できないくらいにね」
「そうなん?光君がそう思ってくれてるなら私も嬉しいゎ」
「「ふふふっ(笑)」」
お互いの目を見ながら微笑んだ。
「お母さん、こっち来て。撮るよ!」
亜紀に呼ばれた。
「ヨッシーもコッチやで」
「光さんは俺の隣」
わちゃわちゃしながらそれぞれの立ち位置を決め、私が真ん中で左右に亜紀と亘が、その後ろに光君を挟んで左右にRyoと龍斗が立ち、
「じゃあ、撮るよ?」
「「「はい、あけおめぇ~」」」
無事、新年の記念撮影は終了した。
吉岡典子、42歳。一度死んで異世界で転生し、その異世界で亡くなった魂が元の体に戻るという、とてつもないイレギュラーな体験をした主人公。スキル持ち。二人の子供を持つバツイチのシングルマザー。現在、吉川光輝と"結婚しない"ことを条件にパートナー関係にある。
吉川光輝、37歳。あだ名はヨッシー&光君。バツイチのゲームクリエイター。身なりに無頓着でちゃんとしたらモテるのに敢えてオタクを装おっていたイケメン。物好きにも典子に惚れた奇特な男。
吉岡亘、22歳。
ゲーム好きの典子の息子。普通の会社員。
吉岡亜紀、17歳。
しっかり者の典子の娘。アイドル好き。
吉川涼也、24歳。Ryoと言う名前で活躍する超人気アーティスト。国民栄誉賞を与えたいイケメンNo.1。忙しかった両親の代わりに幼少の頃から親代わりに育ててくれた叔父の光輝を光さんと慕い、現在一緒に同居中。吉川光輝の甥で横山龍斗の親友。
横山龍斗、21歳。若手No.1のイケメン俳優。テレビ、CM、映画と人気抜群の国民的スター。ただし15歳より前の過去は謎に包まれている。スキャンダルも人気のうちと流した浮き名は数知れず。それすら人気に繋がる、吉川涼也とは親友。




